提督の提督による艦娘のための軍事小噺   作:柱島低督

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モチベが死んでました(震)
許してつかーさい……

それでは、続きです。


第五回 戦車の防御 (非金属材料&設計技術編)

さて、これまで散々、さもAPFSDSが最強であるかのように吹聴して回ったが、APFSDSは着弾の際、自身のユゴニオ弾性限界をも上回った運動エネルギーを装甲に与えている。

 

つまり、装甲側が液体と同様に振舞う中を、液体として振舞う弾芯があっさり通過していくのだ。

ということは、ユゴニオ弾性限界*1が極端に高い物質に対しては無力なのだ。*2

 

その一例として、前回では劣化ウラン*3を挙げたのだが、非金属に目を向ければまた別の材料が見つかる。

 

 

 

それがセラミックス*4である。

 


 

セラミックスはつまり焼き物である。*5

 

しかし、たかが焼き物と侮る(なか)れ。砕けて割れやすいのだが、その硬度は鋼鉄を上回る*6。つまり、ユゴニオ弾性限界が極端に高い*7のだ。

 

これに目を付けた一部の設計者ら*8が、*9防弾鋼板の中にセラミックスを封入してしまった。

 

それが、複合装甲(Composite Armor:コンポジット・アーマー)*10である。

案外割れてしまうのではと不安になるが、実際にはそんなことは無く、セラミックにヒビが入る速度がAPFSDSの弾速より遅い、という説明でも理にかなっているといえる*11

 

しかし、焼き物は脆い。

貫通は許さないのだが、自身が砕けないということではないのだ。

従って最初期型の複合装甲は、一発被弾しただけで全体にひびが入り使い物にならなくなる、というリスクも抱えていた。

 

それに対する対策が、チョバム・アーマー*12である。

セラミックの詰まった金属製のケースが一面に敷き詰められ、接着されているのだ。結果として、ひび入りになる部分は、被弾個所の一部に局限されるのだが、抜本的な改善とは言えない。

 

(ただ、着弾個所のセラミックが侵徹体にまとわりついて、その抵抗により威力を大きく減退させるのが複合装甲の目的なので、一概に駄目とも言い切れないのが実情ではある)

 

そして、とある装甲が開発された。

 

 

 


 

拘束セラミック複合装甲

というやたらと長い名前を持つのだが、先の複合装甲が

 

「ある程度貫通させながら砕けたセラミックが纏わりついて減退させる」

 

目的だったのに対し、

 

「ガチガチに固めて弾丸を砕く」

 

という*13回れ右をしたかのように目的が変化している。

 

とはいえ『チョバム・アーマー』の延長線上にあるような構造で、高密度のセラミックがギュウギュウに押し込まれた合金製の箱がタイル状に並べられているのだ。*14

 

これは日本の90式戦車が有名である。

というのも、採用例がチャレンジャー2(欧)、M1エイブラムス*15(米)とこの90式のみだからだ。

そして、90式はこの3つの内最大の厚みを持っているのだ。*16

 

その結果、「正面の防御力はM1エイブラムスを若干上回る」とさえ言われた、超ハイスペックな代物に仕上がった。*17

 

これの何がおかしいかと言うと、一発の被弾で防御力がガタ落ちしていた旧来型の複合装甲に比べ、防御力の低下が発生しにくい点である。具体的には、被弾によりセラミックが粒子状に砕けるものの、セラミックの割れる速度は砲弾の弾速よりも遅いので貫通されない。違いはその後だ。

 

セラミック粒子は、高密度の周囲のセラミックに阻まれて行き場を失う。つまり、被弾によるヒビをセラミック粒子が埋めている状況になるのだ。

ここに、砲弾の運動エネルギーから転化した熱エネルギーが加わると、セラミック粒子が焼結してヒビが埋まり()()()()、自己再生じみた装甲が完成したのだ。

 

なんかもうAPFSDSがなんぼのもんじゃいといわんばかりの怒涛の勢い*18でいろいろひっくり返して、攻防がほぼ拮抗しているのが現代の戦車戦である。

 

 

 


 

ここまで素材の話をしてきたが、設計面でも、防御力を高める工夫は随所にある。

 

一番オーソドックスなのが、傾斜装甲だろう。

 

装甲材を、敢えて傾斜させて配置することで、実際の装甲厚より分厚く見せかけることが可能なのである。また、表面が十分に硬ければ、弾頭が滑って力を逃がすことができる。*19

ピタゴラスさんはさておき、傾斜装甲が一番猛威を振るったのはやはりT-34だ。

 

傾斜装甲が高い防御力を発揮し、WWII序盤の独軍主力戦車、III号の37mm砲や長口径50mm砲、IV号戦車の24口径75mm砲の攻撃をほとんど受け付けなかった。

 

上下方向での傾斜のみならず、左右方向で傾斜をつける場合もある。IS-3重戦車の正面装甲がわかりやすいか。*20

 

 

 

その次は、空間装甲。

 

こいつが対応できるのは一部の砲弾に対してで、その砲弾というのがHEAT*21だ。メタルジェットで貫通力を得るHEATは、そのメタルジェットが空気によって大きく減退すると本来のポテンシャルを発揮することができない。

*22

 

(結果的に)空間装甲として機能した*23もので考えると、最古のものは*24独軍のIII号・IV号戦車で、極端に薄い車体側面を対戦車ライフルから保護するため後期の型で追加されたシュルツェンだろう。

もとは対戦車ライフルを防ぐためだが、それがHEATに対して有効に機能することが実証されてしまったのだ。

 

ただ、信管が高感度で設定されているHEATを車体より手前で起爆させるには、薄い鉄板を張る必要はなく、鋼鉄製の網*25があればいいことになる。*26

 

この網の楯は、現代ではさらに密度が落ちて、ゲージ装甲として別物として扱われる。

一時期、RPG対策のため、(重量がかさむ装甲を張れないような軽車両に)搭載されることもあった。*27

 


 

 

 

「……とまぁ、なんか話してるこっちがこんがらがりそうなことになってるが……」

 

「とにかく、その装弾筒付翼安定徹甲弾、とやらが万能でないのと、装甲に関していろいろな人が腐心しているということはよく伝わった」

 

「あっさり締めるねぇ」

*1
つまりは硬度

*2
壁に水をかけても水が壁に落ち込まないように

*3
正確には、原子の密度が大きい重金属なので、弾芯の侵徹が阻害される

*4
時と場合によるがファインセラミックスに限定される

*5
唐突

*6
要するに剛性が低い代わりに極端に硬度が高い

*7
鋼鉄の10~17倍前後

*8
変態ども、あるいはキチ〇イ共と読んでもよろしいダメです。攻撃優位の戦車戦を突き崩した有能な方々です……ノハズ

*9
流石に焼き物オンリーは厳しいので

*10
積層装甲とも

*11
……はず

*12
Chobham Armor

*13
清々しいほどに

*14
チョバム・アーマーからの変化は、セラミックが高密度になった程度である

*15
の、一部の型

*16
チャレンジャー2の砲塔正面最厚部で約60cm・90式は同約80cm

*17
高性能かつ重い装甲なので、90式も他の自衛隊戦車に比べ10t以上重い。よって本州に多くある橋梁は6割ほどしか渡ることができないと試算され、(仮想敵であった)ソ連の侵攻に備え、ほとんど北海道に配備された

*18
例としては、90式戦車が実弾での耐弾試験において自身の120mmAPFSDSが2発と、HEAT-MPを3発砲塔正面に受けるも、自走可能だった

*19
大丈夫?三平方の定理使う?

*20
IS-2(の、前期型)でも、車体正面の左右部がこのような形になっている。

*21
対戦車榴弾(第三回を参照)

*22
戦後第二世代MBTに関しては、装甲を捨てて機動力全振りの設計となったが、最低限として重量を食わない空間装甲が広く用いられた。

*23
つまり、設計段階では考慮されていなかった

*24
恐らくだが

*25
つまるところゲージ

*26
実際、パンツァーファウスト(歩兵の対戦車装備で、原理はHEATに近い)を食い止めることに目的が移行した最後期型のIV号戦車では、シュルツェンは網状になっている。

*27
ちなみに、ソ連も手をこまねいて見ていたいたわけではなく、タンデム弾頭にしたりと対策を立てている




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