けものフレンズ2を見た万事屋+α   作:黒龍

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本番の2話です。
ここから本格的なけもフレ2の大まかな感想と9話の話になります。

※個人的な見解や私見も入っています。


第2話:1話~9話 我慢できない怒りもある

「はぁ~……やっと終わった……」

 

 けものフレンズ1期12話を見終わって一息つく銀時。両手を畳の上に置いて体を支えながら天井を見上げる。

 居間から見える外の景色はすっかり暗くなり、時間の経過を如実に示している。

 

「お疲れ様です」

 

 お妙はニコリとした笑顔でアニメ12話を一気見した銀時を労ってお茶を差し出す。

 とにかく面白くなくて見たくない。新八の愚痴とかどうでもいい。ととにかく駄々をこねる銀時ではあったものの1期は途中から面白くなるから我慢してください、という新八の助言を信じてけものフレンズと言うアニメを走破した。

 

「まぁ、悪くなかったんじゃねぇの」

 

 と銀時が初めてけものフレンズの感想を口にする。

 途中でアニメ視聴を中断しない程度には銀時もこのアニメを評価できたので、概ね最初の評価を良い方に裏切った作品と思っている。

 

「やっぱ面白い奴は2回目でも面白かったネ!!」

 

 と神楽は大絶賛している。

 銀時的には大絶賛するほどでもなかったが、まぁ文句を言う部分は特になかったくらいである。

 そして銀時は最大の問題を思い出す。

 

「んじゃま、次は問題の2期だっけか?」

「……とりあえず、時間も遅いので明日にしましょう」

「そうだな。さすがにここから連続はきちィな」

 

 と言う新八の提案に乗っ取り、2期視聴は明日になった。

 

 

 そして時間は経ち、翌日。

 再び志村邸にてアニメ視聴の為に居間へと集まる、銀時、新八、神楽、お妙、近藤。

 

「ガーハッハッハッハ!! それではみんなで仲良くけものフレンズ2期を見ようではないかァ!! フレンズだけに!!」

 

 と豪快に笑うゴリラ似の男。

 上座に座る近藤はひとしきり大笑いしてから妙へと顔を向ける。

 

「しかしお妙さん!! こうやって一緒にアニメを見るとは、まさに我々はフレンズと言うよりファミ――」

「なぁにさも当たり前のように参加したんじゃこのゴリラのフレンズの出来損ないがァーッ!!」

 

 妙は怒りの鉄拳を近藤の腹へとお見舞いする。

 

「オボワァッ!!」

 

 と悲鳴と共に胃液と血液を口から吐き出すゴリラ似の男性は江戸の治安を守る真選組と言う武装警察組織の局長である近藤勲その人である。ちなみに妙のストーカーである。

 銀時はとしていつものように妙にストーカーしてしばかれている近藤など慣れた光景なので机に頬杖を付きながら新八に指示を飛ばす。

 

「おい、新八。そこにいるゴリラの成り損ないは放っておいてとっととけもフレ2を見るぞ」

「キョッホォーイ!! ついに2期見れるネェーッ!!」

 

 神楽は待ちに待った続編が見れると言う事で大喜びである。

 銀時も、かばんとサーバルがあれから一体どんな旅をするのか少し期待している部分がある。

 

「じゃあ、再生しますね……」

 

 新八は光が宿らない瞳のままリモコンの操作を始める。

 

「よ、よろずや~……!!」

 

 そんな時だった。妙にしばかれるだけしばかれた近藤がボロボロのメタメタになりながら畳を這いずって銀時の隣にやって来る。

 

「なんだゴリラモドキ。俺は今からけものモドキじゃなくけものフレンズを見るのに忙しいから話しかけんな。邪魔したら殺すぞ」

「フッ……初々しいな……。そうやってけもフレ2を視聴する前の俺を見ているようだ……」

「なんだ。お前も見てたのか。まぁ、お前の世界は優しさの欠けらもねぇからな。さぞ優しい世界に心癒されたんだろ」

「優しい世界……か……」

 

 近藤は畳に這いずったまま遠い視線を明後日の方向へと向ける。

 チラリと近藤の様子を見てから銀時は新八が2期に怒りを燃やしていたことを思い出す。

 

「2期の出来が悪いって言ってもよ、どうせ1期に比べてってことなんだろ? 熱が入った奴に取っちゃ少し質が落ちただけでも結構看過できないなんてことはよくある話だ。ぱっつぁんとかは一度熱が入ると燃え上がるタイプだからな」

「確かにな……作品を見る上で視野と心の広さが狭まるのはよくないことだな……」

「でもま、銀さんはちょっと質が落ちようが騒ぎ立てるほどのめり込んでねぇから、ちゃ~んと客観的に評価するけどな」

 

 銀時の言葉を聞いて近藤はフッと笑みを零し。

 そして耳に小さくではあるが、覚悟した方がいいぞ、と言う言葉が聞こえた気がした。

 そして始まるけものフレンズ2――。

 

 

 ※ここから先は感想の簡略化の為に台本形式にします。

 

*1話視聴中。

 

銀時「…………おい。かばん……どこ行った? 旅の続きは?」

 

妙「きっと何かあったのよ。新主人公のキュルルちゃんと記憶を失ったサーバルちゃんとカラカルちゃんがその謎を紐解いていくに違いないわ」

 

銀時「なるほどな。後から謎を明かしていく感じが。まぁ、よくある手法だな。そんでかばんを見つけてから旅再開か」

 

神楽「私的にはカバンとサーバルの旅をまた見たかったんだけどナー……」

 

*1話終了。

 

銀時「最初はやっぱなんか物足りねぇな。やっぱ通過儀礼みてぇなもんか? まぁ、カラカルって今までにいねぇキャラ出て来たし期待してもよさそうだな。こっから面白くなっていくってことか」

 

妙「なんだかサーバルちゃんの性格……変ね? 気のせいかしら?」

 

 と妙は既に1話で違和感を覚え始める。

 

神楽「面白かったネ! デカいセルリアン現れた時はめっちゃわくわくしたアル!」

 

 神楽はかばんちゃんのことは仕方ないと諦め物語を楽しむことにシフトする。

 

*2話

 

銀時「このレッサーパンダだったか? 妙に勘に触るな。俺が短気なだけか?」

 

 と銀時は若干イライラし始め、

 

妙「なにかしら? なんだかこう……フレンズに言葉では説明できない違和感を覚えるわ」

 

銀時「つうか話も変じゃね? なにがとは言わねぇが、なんか妙な違和感感じるんだよな……。なんでだ?」

 

 と妙どころか銀時も更に違和感を覚え始める。

 

神楽「うほほい! パンダ中々やるアルな!」

 

 

*3話

 

銀時「まぁ……いいんじゃね?」

 

妙「イルカちゃん可愛いわね」

 

神楽「ん~……ちょっと物足りない感じがしたネ」

 

 

*4話

 

銀時「可もなく不可もなくだな……。そろそろ、面白くなっていくはず……だよな?」

 

妙「あら? この子1期に出てきた子と同個体かしら?」

 

神楽「ん……ん~……?」

 

*第5話

 

銀時「これ……1期の話の焼き回しじゃね?」

 

神楽「なんかぎすぎすしてばっかで優しさ感じないネ」

 

妙「ゴリラさんはお腹が弱いのね~。どこかのゴリラモドキさんと違ってもう少し頑丈にならないと皆を引っ張っていけないわよ~」

 

*第5話ラスト

 

銀時「ちょっと待てちょっと待てちょっと待てェェェェェェ!? マジか!? マジなのか!? えッ!? 成長してんの!? なんで!? 旅の続きは!? つうかサーバルってこれアレだよな!? ただぶつ切りにして切っただけだよな!? 〝ちゃん〟はちゃんと入るよな!?」

 

妙「あらあら、かばんちゃんじゃなくてかばんさんねえ~」

 

神楽「う、うっほほい!! か、かかかかばんが出て来て……ど、どどどどドキドキ展開ネェェェェェ!!」

 

*第6話視聴中

 

銀時「〝ちゃん〟って言ってねェェェェェ!! どうなってんだこれどうなってんだこれ!? なにがあった!? っていうかこれ何年経ってんだ!? 1期から2期に期待した話の続きが全部吹き飛んだぞ!?」

 

神楽「うぎゃああああああああああ!! かばんちゃん返せェェェェェェ!!」

 

妙「あらあら~。かばんさんすっかり偉くなっちゃってま~」

 

*第6話視聴終了

 

銀時「うっそだろおいッ!! このままお別れすんのッ!? 謎は!? 謎はなにか解き明かしてくんねェの!! そしてなんだボスのあの扱い!! 1期で生まれた絆はどこいったんだよ!! かばんさんは本当にかばんちゃんなのかよ!? なんの謎も明らかになってねぇぞ!! 思わせぶりなセリフ聞かされただけでお別れしちゃってんじゃねェか!!」

 

近藤「海の謎のセルリアンには触れんのか?」

 

銀時「知るかッ!! あんな唐突謎ドリームなんざッ!!」

 

近藤「面白さは?」

 

銀時「わっかんねェよ!! これ面白い面白くない以前の問題なんじゃねェの!?」

 

神楽「…………」

 

妙「あらあら~。これで新しい旅のお供できたわね~」

 

*第7話視聴中

 

銀時「まぁ……いいんじゃね。もう謎が解き明かされるのは最終話付近まで待つわ」

 

神楽「…………」

 

妙「あらあら~。ゴマすりちゃんは中々愛嬌があるじゃない~」

 

*第7話視聴終了

 

銀時「いやそこはゴマすり鳥も入れろやァーッ!! のけもの作ってんじゃねェよッ!! 確かにフレンズっぽくない鳥かもしれないけど、そこは入れるだろ普通ゥ!! 優しい世界はどこだよ!? これ本当にけものフレンズなの!? のけものフレンズじゃねェの!?」

 

近藤「面白さはどうだった?」

 

銀時「面白くねェぞッ!! どうなってんだ!! もう7話だぞ!! 7話も俺はずっとこんな無味無臭を味合わせられてんのか!?」

 

妙「あらあら~」

 

神楽「…………」

 

*第8話

 

銀時「誰か教えてくれッ!! 俺は一体なに見させられてんだ!? なんで優しい世界でギスギス空間見せられなきゃならねぇんだよッ!! フレンズがフレンズに暴力振るってんぞ!! ファン自称してんなら暴力振るうんじゃねぇよ!! 新八見習えコノヤローッ!! なんでこんな整合性も何も取れない物語が出来上がってんだ!? これプロが作ってんだよ!? プロが作ってるんだよな!?」

 

妙「ライブのシーンは良くできてるわね~」

 

神楽「うっぷ……」

 

*第9話ED開始

 

 ズガァンッ!! と銀時はテレビのリモコンを画面に叩きつけ、テレビの画面は粉々に砕ける。

 

神楽「オボロロロロロロロロロロロロ!!」

 

 神楽はあまりのストレスに嘔吐をする。

 

 

 兎にも角にも終盤は阿鼻叫喚の嵐ではあったもののけものフレンズ2を9話まで見終わった銀時たちは、

 

「「…………」」

 

 ぐったりしていた。

 それはもう歴戦の戦士が闘い疲れ切ったかのようなぐったり具合である。

 やがてそんな銀時はグッタリとしながらも立ち上がり、幽鬼のようにふらりとしながらも言葉を絞り出す。

 

「胸糞悪ィィィィイイイイイイイイイイイイイ!!」

 

 天に向かって銀時の口から吐き出されたのはまさに実直な感想であった。そしてそのやり場のない感情はダムのようにとめどなく噴き出す。

 

「チクショーチクショーチクショーチクショーチクショーチクショォォォォオオオオオオ!! なんで優しさとか友達で構成された世界でこんな胸糞わッッッるいもん見せられなきゃならねェんだよ!! なんだこれなんだこれなんだこれなんだこれなんだこれ!!」

 

 一方の神楽は、

 

「うぎゃああああああああああああああああああ!! 私の心にどす黒いなにかがァァァァアアアアアアアア!! コレ取ってェェェェエエエエエエエエ!! この黒い感情取ってェェェェエエエエエエエエエエエエエ!!」

 

 苦しみのあまり転げまわる。

 後ついでに、

 

「うォォォオオオオオオオオオオオ!! イエイヌちゃアアアアアアアアアアアアアん!! なんでこんな結末にィィィイイイイイイイイイイイイイイ!! 虚しいとかそんなレベルじゃねェんよコレ!!」

 

 近藤も涙を流して感情を吐き出す。

 そんな阿鼻叫喚の惨状を見て新八は光のない眼差しのまま告げる。

 

「僕の気持ち……分かりましたか?」

「分かりましたか? じゃねェよ!! てっめよくもこんな精神汚染物質見せてくれたな!! こんなもん可視化された邪悪そのものじゃねェか!!」

「いや、それは言い過ぎでしょ。ただ単にそれは感性の違いですって。それにそもそもこんな風に不遇な扱われ方をする創作のキャラなんてたくさんいるでしょ。だからイエイヌちゃんがこういう風に扱われたって文句言うことはないんですよ」

「あぁ、そうだな!! まどマギとかリリカルとか銀魂とか不遇で悲惨な境遇な奴はいっぱいいるよな!! でもな!! それはそう言う常識がまったく違う世界観だって前提があるとか、不遇な扱われ方したらおかしいって普通の感性持った主人公とか周りのキャラとかいるし、ギャグならギャグでツッコミ入れるキャラがいねェと成り立たない設定なんだよ!!  だけど誰もツッコミ入れねェんだよ!! なんでサーバルもカラカルも誰も何も言わないねェんだよ!! ツッコミが放置されてただただ狂ってんだよコレは!! 警察が公に犯罪推奨しているってレベルで俺たちとの常識が合わねェんだよ!!」

 

 新八の考えを怒声を浴びせながら真っ向から否定する銀時。

 一方の神楽は、

 

「お茶がァァァァァ!! 飲まれないお茶ァァァァァ!! 笑顔でおうちにお帰りィィィィィィ!!」

 

 半狂乱になって転げまわっていた。

 銀時の意見を聞いて新八は少し視線を逸らしてから真顔で告げる。

 

「ならイエイヌちゃんの自業自得ってことじゃないでしょうか? ほら、イエイヌちゃんはキュルルを拉致した挙句、勝手に守って勝手に傷ついただけでしょ?」

「あぁそうだな!! 確かに人を護る使命だもんな!! 傷つくのも優しくされないのも自業自得――ってなるワケねェだろ!! キュルル拉致したの暴力のフレンズ共じゃねェか!! そしてイエイヌにそれを指示したような様子一切見られなかったぞ!! つうかただの依頼人でアルマジロコンビの独断って考える方が自然だわ!!」

「でもキュルルにはイエイヌちゃんは拉致の首謀者に見えるはずです。そんな人に優しくできるはずありません」

「確かに首謀者のイエイヌをキュルルが警戒するのは無理ねェよな!! じゃあなんでキュルルはイエイヌと笑顔で遊んでるんだよ!! イエイヌの事情もとっくに聞かされた後だぞ!! それでも警戒してんなら、遊ぶ前に立ち去るくらいの事は試すだろう普通!! そんで迎えに来たサーバルとカラカルと喧嘩別れしてイエイヌの待っている家選んでんだぞ!! その時点でイエイヌにある程度の信用か信頼はあってしかるべきじゃねェの!? そしてなによりイエイヌは警告も聞かず勝手な行動をしたキュルルを命がけで守った功労者だぞ!! 自業自得なのキュルルの方じゃねェか!! そんな自分を命がけで守った相手に優しさの一つも見せねェとかおかしいにもほどがあんだろ!! つまりなにか!? 主人公様はイエイヌを心許したと思わせて後で突き放す計画でも立ててたかのよ!! とんだ腐れ外道だなおい!!」

「つまりそういうことなんでしょう。キュルルは外道だったと――」

「そこが一番おかしいだろうがァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 最大の矛盾点に対して銀時は溢れんばかりの声を吐き出す。

 

「おかしくありません! これはきっと人間の業を表現して――!!」

「これのどこが業なんだよ!! これのどこが!!」

「子供が捨て犬を拾ってきたけど子供に動物を世話する能力がないから捨てなきゃならないというまさしく人間の業そのものを伝えて――!!」

「キュルルにとっちゃイエイヌは捨て犬だってか!? いやおかしいだろ!! イエイヌはフレンズだぞ!! 飯の確保もうんこ処理も全部自分でできんだよ!! むしろ世話されてたのはキュルルの方じゃねェか!! 業を表現してェならイエイヌもサーバルもカラカルも使い古しのボロ雑巾の如く酷使して使い潰すくれェの業を見せろや!! いや見たかねェけど!!」

「じゃあ銀さんは何が良いと思うんですか?」

「ねェよそんなもん!! 強いてあげればイエイヌが健気で気遣いができてキャラに一貫性があるってとこかな!! でもそのせいで余計にラストが腹立たしいんだよこれ!! なんで命がけで守ってもらってんのにお礼も労いの言葉も治療も何もしねェんだよ主人公様は!! そんでサーバルを褒めまくってんだぞ!! 人の心がねェのかあいつは!! そしてなにより『おうちにおかえり』からやれやれ感だぞ!! イエイヌのことなんでマジでどうでもいいんじゃねェか!! 主人公組に心がねェのにもほどがあんぞ!! つうかキュルルは人なのか!? あいつがけもフレ2期の人代表って嘘だろおい!!」

「つまりこれは人間の悪い部分を表現して――」

「だからそこおかしいんだって言ってんだろうがァァァァァアアアア!!」

 

 なぜだか分からないがさっきからしつこく妙な理論を提唱してくる新八に対して銀時は張り裂けんばかりに怒声を浴びせる。

 

「つまり人間のお子様――引いては人間はみんなこんなんですって制作側が伝えてるってことなんぞコレ!!」

「いやそれは曲解過ぎでしょ! これは悪い人間を表現して――!」

「そのキュルルにまったく『悪』がねェのが問題なんだろうがァッ!!」

「…………」

 

 銀時の怒声に押し黙る新八。

 銀時は自身の意見を捲し立てる。

 

「今までにキュルルに外道要素だったり悪党要素が一つでもあったか!? サーバルやカラカルや他のフレンズがそんな要素に気付いたり指摘したりするシーンが今まで一つでもあったか!? ねぇよな!? 生意気要素はあってもクソガキ要素は見受けられなかったぞ!! そんでこいつは今まで人間様の叡智でフレンズ助ける善意のヒトってことになってんだぞ!! それがどうしてああなんだ!?」

「僕にも分かりません」

「つまり製作はこう伝えたいんだな!! 人間様の善意はイエイヌを助けない不道徳の塊だってことだなチクショォォォォォォ!! じゃあ悪意ってなんだコノヤロォォォォォォ!!」

 

 もう自分でも何言ってんだか分かんないくらい頭を沸騰させる銀時に握り拳を作りながら天井に猛る思いぶつけ、ビシッと新八へと指を突き付ける。

 

「新八ィィィ!! 俺たちはいったい今まで何を見てたんだ!? 何を見させられてんだッ!?」

「けものフレンズ2です!! 間違いありません!!」

「新八ィィィィィィ!! これは自主製作の二次創作アニメだったか!?」

「違います!! たくさんの人が関わった公式アニメです!!」

「まじかよチクショォォォォォ!!」

 

 と新八はビシッとした返答を聞いて同時に銀時は頭を抱える。

 

「間違いであって欲しかった!! けものフレンズって優しい世界じゃなかったのかよ!! ケモノたちと友達(ダチ)になっていく物語じゃなかったのかよ!! 1期抜きにするにしても酷過ぎんだろ!! タイトル詐欺じゃねェか!! 9話で誰とお友達になったんだよ!! それとも製作は友達(ダチ)は都合の良い奴隷か盾か消耗品とでも伝えたかったのか!? 2はまるでテーマが違うなおい!! 1期が好きになった俺にはこんなモン思いつかねェよ!! 肯定もできねェよ!!」

「きっと脚本はそこまで考えてません。製作の過酷な環境が原因でコレが出来上がってしまったんでしょう」

「言っちゃったよ!! 今まで触れようとしなかった部分に!!」

 

 ついに擁護理論すら止めてしまう新八に対して銀時はもうそれが尤もであろうとはどこか思っていた。

 

「あぁ、そうだよ!! ドラゴンボールの原作にないくれェの引き延ばしを考えれば、制作の環境や都合でアニメの作りが雑になるなんて事や良くある話だ!!」

 

 銀時にとってはそこだけは結構同意できる部分ではあるのだが。

 

「でもな!! これは作画云々の問題じゃなくてストーリーが問題なんだぞ!! 動きがない! 絵が雑な〝だけ〟なら俺も全然気にしないんだよ!! でも表現が足りないどころかセリフも動きも足りないんだぞ!! それでああなったんだぞ!! これはしょうがないで済むレベルの話なのか!? そもそもなんで何十人関わってる作品で素人でも分かる悪いとこくらい修正できなかったんだよ!! おかしいだろ!!」

「それくらいアニメ製作現場が過酷なんてよくある話です!!」

「現場が過酷で作画じゃなくて話が酷くなるなんて事あったんだな!! 勉強になったわ!!」

「じゃあせめて!」

 

 と新八はなおも食い下がる。

 

「せめてイエイヌちゃんの気持ちだけでも汲んであげましょう!! イエイヌちゃんがキュルルを思う気持ちを!!」

「それとキュルルのあの塩対応をまったく責めないのは別問題だろうがッ!! 論点ズラしてんじゃねェよ!!」

 

 ついには新八は完全に押し黙ってしまう。

 銀時はグイッと体を振り向かせ、

 

「おいお妙!! お前はどうなんだ!? いくら腹黒のおめェでも言いたい事の一つや二つあんだろ!!」

 

 下座で正座しているはずであろう妙へと声を張り上げる。

 

「………………」

 

 そもそも今まで静観していたのが不思議なくらいだったが、

 

「お……お妙……」

 

 ようやく理由が分かった。

 妙は正座したまま微動だにしていない。安らかな笑顔で口から血の一滴を滴らせながら真っ白に燃え尽きている。

 

「あッ……姉上ェェェェェェェェェェェェ!!」

 

 まさかの姿に新八が慌ててお妙を介抱しに駆け出す。

 するとポンと銀時の肩に手が置かれる。

 銀時が振り向いて手を置いた主の顔を見れば、涙を流す近藤の姿が。

 

「お妙さんは……その広い心でなんとかけもフレ2を受け入れようとしたが……9話で力尽きてしまったようだ……。1期を視聴済みなせいで……そのダメージは計り知れなかったことだろう……」

「…………」

 

 銀時は顔をゆっくり戻し、

 

「姉上ェェェェェェェ!! しっかりしてください姉上ェェェェェエエエエエエ!! フィクション!! これフィクションですから!! 実在の人物がこれ作ったのはホラーですけど、これフィクションですからァァァァアアアアアアアアアア!!」

 

 妙を仰向けにして横たわらせてなんとか意識を戻そうとフォローする新八と、

 

「ぬォォォオオオオオオオオ!! 消えろけもフレ2ゥゥゥゥゥウウウウウウウウ!! 私の心から消えろォォォォオオオオオオオオオ!!」

 

 ガンガンガンガン!! とDVDデッキに頭を打ち付ける神楽の姿が銀時の身に映り込む。

 その惨状を見て頭が少し冷えてきた銀時は大きくため息を吐き、妙を介抱しる新八へと顔を向ける。

 

「新八……お前よ。なんでさっきからけもフレ2って言うか、9話のフォローしてたんだ?」

 

 ピクリと新八の動きが止まり、首を振り向いて銀時へと顔を向ける。

 

「そ、それは……」

 

 言いよどむ新八に銀時は机へと腰を下ろしながら落ち着いた声で告げる。

 

「万事屋でも一番の常識人枠であるテメェが一番9話を認められねェはずだ。そもそも、けものフレンズって題名の作品でアレをやんのはまじでNGだ。それくらいおめェだってとっくに分かってんだろ?」

 

 新八はゆっくりと立ち上がり、俯きながら暗い声で告げる。

 

「銀さん……本当に批判する時は否定だけじゃない。肯定もしなきゃいけないと僕は思うんです……」

「…………」

 

 新八の言葉を聞いて口を閉ざし、ただじっと顔を見つめ話を聞き続ける。

 

「僕は思うんですよ。ファンだからって批判するにしてもちゃんとそのシーンを精査して納得いくかいかないか吟味し、その上で感想を言おうって。いくらつまらなかろうと整合性なかろうと矛盾だらけだろうキャラに一貫性がなかろうと安易に否定しないって。そこはおかしいけど好意的に肯定している人もいるんだから、よほどの事がない限りおかしいと思うだけにして心の中にしまい込もうって」

 

 「でもッ!!」と新八は語気を強めて声を張り上げ、

 

「けもフレ2の9話はダメだったッ!! 8話で原子崩壊したものが9話でビックバン起こして画面外の僕に飛び火したんですよ!! つまらないだけとか1期ファンを煽って逆撫でするだけの内容だったなら僕だってまだ許せた!! ガッカリするだけで済んだ!! でも9話のラストは許せなかった!! マジで怒りと共に心を抉られるような感覚を覚えますよあんなの!! 現実に当てはめたくねェよあんな恩知らず!! むしろいたらマジでむかっ腹立ちますよ!! 僕の知ってる良識と常識があそこにだけはどこにもないんですよ!!」

 

 捲し立て、膝から崩れ落ちる。やがて頭を抱え込み。

 

「悩んで悩んで悩んだ末にフォローする理由も探してみたんですけど……そもそも無理ィィ!! あんなのフォローできるワケない!! 逆転裁判だって逆転できないくらい詰んでるんですよアレ!!」

 

 新八はガバっと顔を上げて思いのたけをぶつける。

 

「けものフレンズって言う前提がある時点で9話のラストは擁護不可能な領域なんですよもう!! なんでけもフレって作品を作ってる前提でアレが生まれたのか僕には皆目理解できません!!」

 

 吐き出し終わったのか肩で息をする新八はゆっくりと立ち上がる。彼の心に溜まった鬱憤を聞いて銀時は「なるほどな」と言い、夕方となった外の景色を眺める。

 

「そもそもの話だが、アニメどころか創作全般に言える事かもしれねェけどよ……創作の世界は基本ありえない世界だ。だから、そんなありえない世界にどうこう言う方が間違ってるのかもしれねぇな。キュルルの言動がありえないってもそのうちの一つだ。そして俺にしろお前にしろ、そんなありえない世界にマジにブチ切れた一人だ。だが、結局それはありえないものに何ムキになってんの?って話にもなる。そしてそんな俺たちはありえないものに踊らされたただの道化ってことだ」

「…………はい。……そうです……ね……」

 

 気のない返事ではあるもの、銀時の言いたい事を理解しているのか新八は顔を俯かせながらも反応を示している。

 銀時は遠くを見つめながら言葉を続ける。

 

「でもよ……それでもよ……人間つう生き物は普通に見聞きしたもんに心は動かされるし、考えさせられだってする。例え、頭カラッポにして考察せずにアニメやジャンプ見てたって何かしら感じるんだよ。考えるんだよ。それはクソつまんねぇ校長の長話だってそうだ」

「…………はい。僕だって、それはわかります」

「つまんねぇだけなら、居眠りなり欠伸なりして終わりだ。でもな! あの『ワケわかんねぇモノ』に俺は怒りを覚えちまった! 気付いちまったんだよおかしなところに! 理解できねぇとかつまんねぇだけだったらどれだけ良かったことか!」

 

 思い出してきてまた我慢できなくなった銀時はすぐに声を荒げるが、すぐに声音が冷静な物へと変わる。

 

「ありえないもんにありえないもんなりのルールっつうのがある。世界観がある。お前や神楽だって、俺がクズ行為したら怒ってくれたよな?」

「はい。もちろん」

「国民的ガキ向けアニメの奴らにしたってそうだ。ジャイアンは人から物奪う皆の嫌われ者のガキ大将だ。スネ夫だって自慢話したら周りの奴らが不快感を覚える。いじめられっ子の主人公ののび太だって秘密道具を使って調子に乗り出したらドラえもんが怒りだす。しんのすけだってクソガキ行為したら親に叱られるんだ」

「えぇ。むしろ子供向けアニメでジャイアンが人の物奪って賞賛されたりしたらそれもう恐怖ですよね」

「でもな、そんなクソガキ連中だってアニメ本編でも映画でも誰かを助けたりしたら褒められたりお礼を振舞われたりしてんだよ。そしてそんなクソガキ共も良い事をされたお礼を言うんだよ。あのしんのすけですらだぞ? でもキュルルはそれが出来てねぇんだぞ? 別にクソガキですらねぇのに。そんなもん見せられたら虚無じゃなくて不快感と同時に怒りしか湧かねぇんだよこっちは。もう文句を持つってレベルがファン以前の問題なんだよ、アレは」

「………………」

 

 新八はもう何も言えなかった。銀時は更に言葉を続ける。

 

「特にコレは今まで触れなかったが……イエイヌが犬だと仮定した話でもコレはひでぇんだよ。――つまりは犬っつう動物が命を懸けた誠意にあいつはまったく応えなかったんだぞ? 人の代表たるあいつが。俺たち人間てそんなに人でなしばっかだったのか?」

「キュルルはセルリアンなんじゃないですか?」

「じゃあ、あいつがセルリアンだって想像できるだけの伏線張れって言いたいが……もう何も言えん。期待するだけ損だ」

「そう……ですね……」

 

 銀時は大きなため息を吐いた後、腰を上げる。

 

「あーだこーだ色々言ったが、もう後の祭りだ。9話が放映されちまった以上、お蔵入りでもしねェ限りは取り消しなんてできねェだろ。それにこんな内容だ。ネットでも大炎上なんだろ?」

「はい……まぁ……」

 

 と新八は気のない返事をする。

 銀時は腕を組んで告げる。

 

「なら、大半の奴がおかしいって感じてるって事で納得する他ねェだろ。それ以上、俺たちにできることなんざねェしな」

「そ、そうですね……」

「1期は間違いなく面白かったし、それでいい。けもフレっつうコンテンツは死ぬかもしれねェが、良かったと思った作品はちゃんと記憶にあるんだしよ」

「はい。もう1期と2期は別物くらいの感覚で見た方がいいですね。まぁ、そう考えても9話だけは許せませんけど」

「まぁ、アレはマジで人間の価値観が変わらねェ限りは許されないだろうしな。とは言え、言いたい事言い尽くしちまったし、これ以上あーだこーだ言っても時間を消費していくだけだしな」

「ですね」

 

 新八は身近な誰かに言いたい事を言うだけ言って途切れたのか、スッキリした表情が見受けられる。

 これからもちょくちょくネットでけもフレ2の情報を手に入れるだろうが、愚痴を零せる相手が身近にいるのだ。あそこまで負の感情をため込む事も早々はないだろう。

 そろそろキリもよさそうなので、銀時は一つの言葉を新八に贈る事にする。

 

「でだ。最後に俺から言いたい事が一つだけあるんだが、言わせてもらっていいか?」

「ええ。どうぞ」

 

 銀時は息を吐き出し、真面目な顔で。

 

「けものフレンズ2ってさ――」

「はい」

「――けものフレンズじゃないよね?」

 

 新八はただ、無言で頷く他なかった。

 


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