けものフレンズ2を見た万事屋+α   作:黒龍

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※個人の見解や解釈を多分に含んでいます。そこをご理解して読んでください。

けものフレンズの、危機なのだ!!


けものフレンズは、本当に名作だと思います……。


最終回:怒りの先 後編

 桂のテロ行為阻止から場面は移り変わる。

 外は明るく、時刻は昼だ。

 場所は代わり、江戸一のとんでも発明家であるつなぎに作業用のゴーグルを掛けた白いひげを蓄えた老人である平賀源外の工場。

 源外は工場の中で大きな円柱型の装置の操作盤を弄っていた。

 カタカタと言う靴音に気付いてか、源外は後ろを振り向き工場の入口へと顔を向ける。

 

「おォ、来たか銀の時」

 

 シャッターが空いた工場の入り口をくぐった先に立っているのは三人の男たち。

 さきほど源外が呼んだ銀時。その隣には新八。そして後ろに立つのは桂である。

 銀時が一歩前に出ると、源外は声を掛ける。

 

「お前さんの注文通りのモンが出来上がったぜ」

 

 源外が下にコードやパイプが繋がった大きな機械の土台の上にこれまた大きな円柱型の鉄の箱が付いた装置。その前に左右に開くであろう鉄の扉が付いている。

 源外は装置を親指で指す。

 

「コイツがありゃ、お前さんの言う通り『姿形がねェ存在に実態を与える』事が可能だ」

「サンキュー爺さん」と銀時は軽く右手を上げる。「ならこっちは準備できたぜ」

「そうか。こっちもけものフレンズ2のデータは12話分ちゃんと入れたぜ。そんじゃま、装置を動かすからちょっと待ってな」

 

 源外は操作盤に弄り始める。

 

「ところでよ銀の時」

 

 源外は操作盤弄りながら視線を動かさずに銀時へと声を掛けてくる。

 

「俺もけもフレの1期と2期を見ちまった。だからお前さんがこれからどうするかはあらかた予想が付く」

「おい爺さん」と銀時は眉を顰める。「俺は見るのやめとけってちゃんと忠告したんだぜ? ぜってェ精神に悪いからせめて見るとしても1期だけにしとけってな」

「あぁ。だが、俺の発明が一体どんなことに使われるか把握しときたかったからな。だからこそ、俺も見たんだよ」

 

 やがて円柱型の機械の細い溝が光始め、駆動音が鳴り始める。

 源外は操作盤を弄り続けながら語る。

 

「そんで、見て色々と理解しちまったもんだから、心臓病起きたのかと思うくらい胸が苦しくなった」

「だから止めとけって言っただろ」

「まぁ、そこは俺の好奇心による落ち度だ。言い訳しねェよ」

「つうかその歳でアニメに感情移入すんのかよ……」

「歳で体は鈍くなっても心はそう簡単に鈍くなったりしねェもんよ。いくつになろうが苦しい時は苦しいし、悲しい時は悲しいし、憤る時は憤るもんだ」

「そうか……」

「だからお前さんらがこれからする事に口出ししねェよ。もし俺の予想通りの奴がこの発明から出てきて、予想通りの展開に何なら、俺の溜飲も少しは下がるかもしれねェしな」

「どうだかねェ。あんたの期待通りになるとは限られねェぞ。2みてェにな」

「ガハハハ!! ちげェねェ!」

 

 と源外は笑い声を上げ、すぐさま真顔へと戻る。

 

「まぁ、とにもかくにもアレを見ちまうと余計に俺もコイツの開発に躍起になっちまったよ」

「そうかい……ご苦労だったな……」

「よせやい。労いの言葉なんてお前さんらしくもない」

 

 よっぽど精神的に堪えてるようだな、と源外は呟くと同時に稼働していた装置が止まり、やがて……。

 ガンッ!! ガンッ!! ガンッ!! 円柱型の鉄の箱の扉を中からナニカが打ち破ろうとする音が聞こえてくる。

 扉は内側から押し出され、軋み、ひしゃげる。

 その異常事態ととも取れるような状態を見て源外は後ろ足で装置から離れようとしながら声を掛けてくる。

 

「いいか、銀の時。分かっちゃいると思うが、〝コイツ〟をどうこうしたって何かが変わるワケじゃねェ。そいつは分かってんだろうな?」

「あァ」

 

 銀時の短い返事に源外は「そうか」と頷いて安全そうな場所まで離れた時だった。

 ガシャンッ!! と扉が内側から破られ、隙間から鋭く長い爪の生えた真っ黒な両手が出てくる。真っ黒な手は鉄の扉が両側に手を掛け強引に外側へと開けられる。

 扉が強引に外側へとひしゃげ姿を現すのは、黒い異形だった。

 全身は真っ黒で毛は一本もなく大柄で筋肉質。顔には一本の毛もなく口は口元まで裂けギザギザの歯が生え揃い、目元には目が無くまさに能面。頭のてっぺんには毛の生えていないケモミミが二本は生えている。

 そしてなんと言っても目立つのは黒い筋肉質な胸板にカラフルな文字が張り付けられている――『けものフレンズ2』と。

 なんとも形容し難い存在が円柱型の装置の中からゆっくりと歩いて姿を現す。

 銀時はゆっくりと自分の前へとやって来る異形に目を向けながら安全圏へと離れた源外へと声を張って話しかける。

 

「おい爺さん。コイツがけものフレンズ2の概念的なアレでいいんだな」

「おう! 思った以上にとんでもねェバケモンが出て来たが間違いねェ! 胸のタイトルの通りそいつがけもフレ2のアレなアレだ!」

「いや表現ふわふわァーッ!!」

 

 とここでやっと新八が声を出してツッコミ入れる。

 

「『けもフレ2の概念が形になったモノ』ですよ!! 忘れないでください!!」

「もうメンドーだからこのまま続行するぞ」と銀時。

「おいコラ!!」

 

 新八が文句を入れる中、ドシドシと思い足音を立てながら『けものフレンズ2』もとい黒い異形が銀時の三歩前で止まる。

 黒い異形は鋭い歯が生えた口から荒い息を出し、銀時は自身の前で立ち止まる頭一つ分デカい異形を見ながら源外へと話しかける。

 

「爺さん。コイツって会話出来たりすんのか?」

「さぁな。さすがにここまで人間とかけ離れた奴となるとなんとも言えん」

 

 と源外が答えた時だった。

 

「なんだ……貴様は?」

「うッ、うわッ!? しゃ、喋った!? 会話できるの!?」

 

 まさか異形が喋ると思ってなかったであろう新八はどもりながら驚き、銀時は眉一つ動かさずにポケットに手入れるとカチッと音が鳴る。

 

「我に何か用なのか?」

 

 と異形が問いかけてくるので銀時は気だるげな声を出す。

 

「おい二次創作」

「誰が二次創作だ!!」

 

 と異形は露骨に怒りを露わにしながら右手を横にぶんと振る。鋭い爪が当たりそうになるで銀時は真顔のまま背中を逸らして爪を避け、少し後ろに下がる。

 異形は息を荒くしながら吠える。

 

「我はけものフレンズの本家本元であるけものフレンズ2であるぞッ!! 二次創作呼ばわりとは聞き捨てならんッ!!」

「そうかい。なら本家本元様の2。俺はお前に用があんだよ」

「……なんだ?」

「意外に素直ですね……」

 

 新八の軽めのツッコミを聞きながら銀時は問いかける。

 

「2ってさぁ、パラレルだよね?」

「バカを言え。2は正当な1の続編だ」

 

 と異形は一蹴する。

 

「なんで続編なの? なんでパラレルにしないの?」

「決まっているだろう? 1を否定する為だ。2をパラレル設定にしたのではファンに棲み分けさせるだけで意味がない。1ではなく2のキュルル、サーバル、カラカルの三人の旅こそが王道であり正史。それを2を見た者たちに印象付けなければならんのだ。1の優しい世界もかばんも全ては邪道であり外伝。〝本当〟のけものフレンズは2。それ以上でもそれ以下でもない」

「そういう悪意もりもりのヘイト創作は二次創作でやってくんない? 棲み分けできるし、別物って前提で無視できるし。それを公式でやれるのホントしんどいんだけど。つうか公式が前期否定設定とか持ち出されると1期を純粋に楽しめなくてツライさんなんだけど、俺」

「貴様ら1期ファンの気持ちなど知った事ではない!! 文句など知らん!! 楽しむなら2期を楽しめ!! そうすれば気が楽になるぞ!! サーバルとかばんの旅は終わったのだからな!! これから始まるのはキュルルとサーバルとカラカルの旅だ!!」

「あ~そ~。そうなんだ~。そういうこと言っちゃうんだ~」

 

 銀時は感情の籠らない声で告げ、横の新八が拳を握りしめ腕を震わせ今に殴りそうになっているが銀時がガシッと掴んで止める。

 銀時は新八の腕を抑えつけながら告げる。

 

「なるほど。つまりけもフレ2と1期のファンの俺らはマジで相容れないって事だな。じゃあ、言いたいこと言えたし聞きたいこと聞けたから爺さんの装置入ってさっさと概念に戻ってくんない?」

「折角体を手に入れたのだぞ。1期ファンを残らず駆逐させてもらおう」

 

 異形の言葉を聞いて銀時はゆっくり言葉を告げる。

 

「お う ち に お か え り」

「おッ? イエイヌの回か? アレは良回であっただろう? 感動したであろう?」

「と っ と と お う ち に お か え り」

「誰が帰るか!! 貴様ら1期ファンを消し去ってからだァーッ!!」

 

 異形は指先に長い爪が生えた拳を銀時に向かって振りかぶる。

 その拳が銀時の顔面に直撃し、ズドンッ! と言う鈍い音が工場内に響く。

 銀時が攻撃されながらも横にいた新八、後ろにいた桂はとくに表情は変化させず、ただ成り行きを黙ってい見つめている。

 

「じゃあよ、最後に聞かせてくれや」

 

 拳を額で受け、少しだけ額から血を流す銀時は異形の黒い腕をガシッと掴みながら鋭い視線を向け、問いかける。

 

「キュルルの正体は?」

「知らん。続編を待て」

「サーバルとかばんに何があった?」

「知らん。続編を待て」

「フウチョウコンビって結局なんなの?」

「知らん。続編を待て」

「最終回の船セルリアンは?」

「知らん。続編を待て」

「海底火山は?」

「知らん。続編を待て」

「そもそもなんでカラカルもキュルルを覚えてねェの?」

「知らん。続編を――」

「そればっかじゃねェかァァァァァァァァァァ!!」

 

 銀時が叫び、異形のどてっ腹にボディーブローを炸裂させる。

 

「ぐぼォッ!!」

 

 あまりの衝撃だったのか口から唾液を噴き出す異形は両手で腹を抑えながら両膝を付く。

 銀時は両膝を付いて見下ろす形となった異形に鋭い視線を向けながら声を掛ける。

 

「なら次の質問だ。瓦礫の下敷きになったアムールトラはどうなった?」

「し、知らん! ぞ、続編を待て!」

 

 と顔を上げながら必死に答える異形に銀時は「あっそ」と返す。

 すると新八が一歩前に出て。

 

「なんでぺパプはアムールちゃんが埋まった瓦礫の上でライブを?」

「それは伏線回収だ。だってオオミミギツネが願ったことを――」

「ただ猟奇作品になってるだけじゃねェかァァァァァァァァ!!」

 

 と新八が異形の顎にアッパーカットを炸裂させる。

 

「ゴバァッ!!」

 

 後ろに吹っ飛びながら仰向けに倒れる異形。だがすぐさま起き上がり、

 

「おのれこの危険なアンチ共がァァァァ!! 少しは2を認めんかァァァァァ!!」

 

 怒りの声を震わせる。

 すると、

 

「では、貴様が最終回で流した1期OPのファンサービスに対してお応えしよう……」

 

 いつの間に異形の後ろに間り込んでいた桂が、

 

「アレのどこがフレンズだァァァァァァァァァ!!」

 

 異形の背中にドロップキックを叩きつける。

 吹っ飛ぶ異形を銀時と新八はそれぞれ横に下がって避け、異形はそのまま大通りへと吹き飛ばされる。

 そのまま地面に倒れ込む異形を見た銀時はポケットからトランシーバーを取り出して、告げる。

 

「〝お前ら〟、聞いた通りだ。準備OKだぜ」

「おのれェェェェェェェェ!!」

 

 異形は怒り、顔を上げてゆっくりと立ち上がろうとする。

 すると今度は少し遠く方から異形に向かって土煙を上げて走って来る黒い車が一台。後部座席には大量の黒いバズーカが乗せられていた。

 そして黒い車の運転席に乗る土方と助手席に乗る近藤は息を吸い込み、

 

「「のけものばっかじゃねェかァァァァァァァァァァァッ!!」」

 

 異形は思いっきり車のフロントにぶち当たり、そのままきりもみ回転しながら空中に投げ飛ばされる。そして異形をぶっ飛ばした車は止まり、土方と近藤は扉を開けて出る。

 すると停まった車を横を駆け抜け空中をきりもみ回転する異形に向かって走り出す人影が二人――それは神楽と志村妙だった。

 妙と神楽は怒りの表情を浮かべながら、

 

「うォォォォオオオオオオオオオオオオ!! けもフレ2ゥゥゥゥウウウウウウウウウ!!」

「全話見てやったぞォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 空中に浮かぶ異形の真下まで走り込み、異形に向かってジャンプする。

 

「「すっちゃかめっちゃかなのはお前じゃァァァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!」」

 

 二人の鉄拳が腹に炸裂し、凄まじい衝撃によって天高く吹っ飛ぶ異形。

 そして銀時、新八、桂、近藤、神楽、妙はそれぞれ黒いバズーカを肩に乗せて天に吹っ飛ぶ異形――けものフレンズ2にそれぞれ向け始める。

 

「フレンズを散々傷つけ蔑ろにし……」

 

 と新八が思い出すのは不遇な扱いとなったイエイヌにアムールトラにボスにかばんさん、

 

「いつもギスギスしてばかり……」

 

 と近藤が思い出すのはお約束と言わんばかりに口喧嘩を始めるフレンズたち、

 

「けもの要素は間違いだらけな上に終盤は消え去り……」

 

 と桂が思い出すのは雑な間違いに終盤ではほとんど描写されなくなったけもの要素、

 

「伏線も謎も回収もしない展開も本筋もぶん投げる……」

 

 と土方が思い出すのは今までなんだったと言わんばかりの伏線に謎に展開に本筋、

 

「優しい世界を消し去り……」

 

 と妙が思い出すのは1期の優しいフレンズたち、

 

「1期の好きだった要素をこれでもかと投げ捨て……」

 

 と神楽が思い出すのは1期で好きになったあらゆる部分、

 

「なにより1期を否定する……」

 

 と銀時が言葉を呟いた時だった。

 空中で異形が張り裂けんばかりに声を張り上げる。

 

「バカか貴様等ァァァァァアアアアアアアア!! 我を否定すれば2期のフレンズたちも否定することになるのだぞォォォオオオオオオオオオオオ!!」

 

 銀時が空中へと吹き飛び続ける異形を毛だえる気な瞳で見つめながら呟く。

 

「おめェが居ようが居まいが、あいつらが笑って生きれる世界はとっくに出来てんだよ……。どんなに否定しようとな」

 

 そして銀時の言葉を皮切りに全員が一斉に心の思いを叫ぶ。

 

「「「「「「「お前を公式けものフレンズとは認めねェェェェエエエエエエエエ!!」」」」」」」

 

 ほぼ同時に全員のバズーカから弾頭が発射させられる。

 そして空中に吹き飛ぶ異形は呟く。

 

「忘れるな。……けものフレンズ2は永遠にふめ――」

 

 ドガァァァァァァン!! と凄まじい爆発と衝撃が空中で起こる。

 

「…………」

 

 銀時を始め、空中の爆発を眺めていた七人はバズーカを下ろすのだった。

 

 プツン! 

 

 とそこで『映像』は途切れ、真っ黒な画面へと変わる。

 黒い画面に映った眼鏡の青年――新八はDVDデッキを動かし、ディスクトレイから一枚のディスクを取り出す。

 

「やっと……完成した……」

 

 新八は手に持ったディスクを眺め、やがて後ろを振り向き、『けものフレンズ2―怒りの先―』の上映を志村邸の居間で一緒に眺めていた者たちへと視線を向ける。

 銀時、妙、近藤、桂、土方、源外はぐったりした様子で机に突っ伏し、神楽に至っては畳の上に大の字で寝ている始末である。

 そう、あの異形――つまりはけものフレンズ2を倒した話は全部銀時たちが作った自主制作物なのだ。

 怒りを吐き出すと言う目的の元、けものフレンズ2をぶっ倒すと言うテーマに乗っ取って作ったのがこの自主製作映像。仕事しながら合間を縫っては作ったものだ。決してなんの報酬も得られない。あるのはただ憂さを晴らせるかもしれないと言う思いだけ。

 ちなみに土方だけは近藤が魂の抜けた屍みたいだったので、とにかく彼の気持ちに理解を示す為にもけもフレ視聴を決意した上で今回の映像制作に参加した口である。沖田と山崎にもちょっと協力してもらったりしている。

 怒りと憎しみを糧とした1か月ぶっ通しの制作はかなりの気力も体力も精神力も全てを疲弊させていた。

 

「お前ら……なんべん俺の機械(からくり)をぶっ壊せば気が済むんだ……」

 

 と源外は机に突っ伏しながら声を出す。

 ちなみにあの異形は源外が作った機械(からくり)人形であり、セリフも銀時たちがけものフレンズ2を見て感じ取った事からキャラクターを設定してセリフを当てはめたのである。

 

「NGでも構わず毎度毎度粉微塵にぶっ壊されて一から作り直す俺が一番しんどかったけどな……」

 

 ちなみに銀時たちあんまりにも怒りが根深いのかとにかくぶっ倒すシーンになると徹底的に破壊行動に移る事が多数あった。

 毎度毎度台本にお構いなしに各々がもうめちゃくちゃにボコボコにするもんだから、NGは出まくるは作り直すはで製作時間がどんどん伸びてしまったのは言うまでもない。

 銀時は新八にジト目を向ける。

 

「特に問題だったのは、俺のセリフのシーンでぱっつぁんが必ず機械(からくり)のセリフ遮って鉄拳おみまいするから、強引に止めるしかなかったんだよな……」

「いやいくら考察した要素で作ったセリフでもやっぱり腹立つもんは腹立ちますから。我慢できないんですよ」

 

 新八が正直な気持ちで説明し、銀時へとジト目を向ける。

 

「そう言う銀さんや源外さんだって『概念がアレ』とかちゃんとセリフ覚えて下さい。何度NGしたことか……」

「しょうがねェだろ、俺はあの時点でまで行くととにかくぶっ飛ばす事が頭に先行してセリフがあやふやになんだよ。最後の決着シーンは見せ場だから何回かリテイクしたろ? でも段々後から気持ちが乗らなくなるから良い感じのシーンがアレしかなかったんだよ」

「俺歳だし……」

 

 銀時に続いて言い訳をする源外の言葉を聞いて新八はため息を吐いてから告げる。

 

「桂さんの説得のシーンだってモロに2に対する怨念が出て間違えてるし……」

「俺だって色々と妥協してはいてもな、抑えきれなかったんだよ」

 

 と銀時が言い訳をし、新八はため息を吐く。

 

「……しかも銀さん、桂さんのシーンだけは撮り直し嫌がるからNG込みのアレを採用する羽目になっちゃうし……」

「ヅラの独白シーンなんかに貴重な時間なんか使いたくねェからな。NGぶっこんでOKくらいでいいんだよ。拘る必要なしだ」

「ヅラじゃない桂だ!! つうか銀時酷くない!? それはちょっとないんじゃない!?」

 

 桂が文句言う中、新八はそのままディスクケースの蓋を開ける。

 

「まぁ、創作による怒りは創作で対抗って発想は良かったと思うんですけど……」

 

 新八はディスクを半透明な四角いディスクケースにしまいながら深くため息を吐く。

 

「ぶっちゃけ……このメンツで思い描いた映像を考えた通りに作ろうって言うのが高難易度でしたね……」

 

 そこまで言って新八は神楽と姉の妙にジト目を向ける。

 

「神楽ちゃんと姉上の暴走度合いが凄かったですよね……」

 

 ちなみに一番機械(からくり)人形を好き勝手にぶっ壊した比率が高いのは神楽とお妙である。

 妙はニコニコした笑顔で。

 

「つい熱が入ってしまったの。ほら? 言うじゃない。真の名優の演技には魂が籠るって」

「私と姉御の名演に恐れ入ったアルか?」

 

 神楽は寝転んだまま腕を組んでふんぞり返り、新八はそんな女子二人を見てため息を吐く。

 

「ようは魂を込めるほど怒りが籠ってんでしょ?」

「とにもかくにもなんとか完成した……」と近藤は拳を握り満足げな表情で告げる。「俺たちの思いの丈を込めた物を……」

 

 銀時は『けものフレンズ2―怒りの先―』をしまったケースを新八から受け取り、眺めながら声を出す。

 

「コイツがこうやって形になる事でいくらか留飲が下がったかもな……」

「にしても……」

 

 と大の字になって仰向けに寝ていた神楽が上半身を起こして近藤へとジト目を向ける。

 

「なんで私のシーンよりマヨラーの考察とゴリラの独白シーンの方が長いアルか? 定春の家族としての悲しみよりもゴリラの悲しみとIQ足りない考察の方が上と申すアルか?」

「おめェは語るだけ語って後は喋らなくなったんだからしょうがねェだろ。つうかIQ足りないとはなんだ」

 

 と土方はキレ気味にツッコミ入れ、説明する。

 

「アドリブ&ドキュメンタリー方式を取っちまったんだから我慢しろ。冷静な俺の考えと近藤さんの悲しみの独白が思ったより長くなっただけだ。深読みすんな。ちなみに犬の飼い主代表のおめェの悲しみも怒りも十二分に伝わったから大丈夫だ」

 

 と土方がタバコを吸いながら煙を吐き、それを聞いた新八はボソリ。

 

「ぶっちゃけあんだけ長い愚痴をまき散らしたら土方さんが冷静な考察をしているってのも説得力ありませんよね? 一応愚痴はカットはしましたけど」

「それはそれ。これはこれだ。アレ見て感情を抑える事の方が難しいんだよ。口で吐き出さんと頭が怒りで冷静に働かなかったんだ」

 

 タバコを吸いながら言い訳する土方。

 土方の言葉を聞いて妙が頬に手を当てながら疲れたように言う。

 

「まぁ、怒っている時のように感情が揺らぐ時が人間の本心が一番出る瞬間らしいけど、同時に思考が鈍る瞬間でもあるものね。怒りを抑えながら考えるのって難しいものだわ」

 

 すると新八が少し不満そうに愚痴を零す。

 

「まぁ、土方さんや姉上の言い分は分かるっちゃ分かるんですが……ぶっちゃけ僕も独白シーンは欲しかったなァ……。思いの丈を訴えたかったし……」

「俺だってそうだ! もっと俺の背負った悲しみと怒りを表現したかった! だからもう一回ちゃんと撮り直そう!!」

 

 と桂も胸を両の拳でバンバン叩きながら訴える。

 土方は青筋浮かべて、

 

「全員の感想入れたらキリがねェんだよ、我慢しろ。あと桂のシーンは俺的にはどうでもいいから撮り直しは却下だ」

 

 とツッコミと辛辣な言葉を入れてから話し続ける。

 

「怒りは後半にとっておくとして、近藤さんには悲しみをチャイナには犬の飼い主としての悲しみと憤りを出し切ってもらうことには成功したと言って良いだろう。桂には憤りを持つ者は暴走せず溜め込まず、何に対して怒りを向けるべきかを表現できたはずだ。2に関係する一番の問題だった部分でもあるしな」

「しかし、まさか近藤さんどころか神楽ちゃんまでがNGなしの一発撮りを成功させるとは思いませんでした」

 

 と新八が関心したように告げると近藤は腕を組みながら真顔で答える。

 

「そりゃ、ただ心の内に思ったことを体で表現しながら吐き出しただけだからな」

「うんうん」と神楽も。

「…………」

 

 そもそもこの二人は演技なんぞ欠片もしてないのは丸分かりである。

 ちなみに近藤と土方のシーンは完全にアドリブであり台本など用意されていない。

 なにせ土方が、

 

『必要ない。近藤さんに思いを吐き出させ、俺がそれに答える場面と考え語る場面を撮れ。あッ、俺がけもフレ2期を見てから1期を見るの前提で話しは進めていくからな? さすがに逆から見れば冷静な感情で話せるだろ。あと、チャイナの愚痴もアドリブでやらせろ。近藤さん同様にありのままの方がリアリティがある』

 

 で済ませたからである。どうやら土方は近藤と神楽には自由に喋らせた方が良いと思ったのだろう。そもそも万事屋も真選組二人のシーンも完全にただの記録映像――つまりドキュメンタリーに近い。ちなみに土方の考察シーンさへも。ちなみに沖田と山崎のセリフは編集によるものだ。

 銀時は右肩を揉みながら気だるげな声で答える。

 

「つうかほとんどの奴のセリフが暴走したり噛んだ以外はほぼNGなんて一つもねェのは当然言えば当然か。アレほとんど俺らの思った事と作品に対する印象を尺に合わせて全部載せたもんだしな。演技の練習なんてそもそもする必要ねェくらい気持ちが乗ってるんだからよ」

 

 とどのつまり、半分はただの怒りを爆発させた者たちを撮ったドキュメンタリー創作なのである。後は作品に対する印象を形にして表現しただけ。

 

「それで映像が完成したワケですけど……みなさん……。気持ち……少しは楽になりました……?」

 

 銀時は両手を後ろに倒して天井を見上げなら呟く。

 

「すげェ……虚脱感……。まぁ……少しはスッキリした……」

 

 銀時の言葉を皮切りに神楽、妙、近藤、桂、土方、源外は呟く。

 

「疲れた……」

「心は少し軽くなったかもな……」

「だが、同時に虚しさも感じている……」

「怒りを出し切るだけ出し切った後ってのは、こんなに疲れるモンなんだな……」

「なかなかできん体験だった……」

 

 各々の感想を聞いてから、新八は銀時へと顔を向ける。

 

「……銀さん。それ、どうしますか?」

 

 新八が半透明な四角いディスクケースに目を向けると銀時は手に持つディスクケースを見ながら呟く。

 

「どうすっかなぁ……コレ……」

 

 作ったは良いが怒りを発散させる為に作ったのでこれからどう利用するかは決めていなかったのだ。

 

「折角作ったんだ。ネットの動画投稿サイトにでも流してみるか? 色々と貴重な意見が聞けるかも知れんぞ?」

 

 と土方は腕を組みながら言って、言葉を続ける。

 

「まぁ、桂と手ェ組んで製作したのバレたくねェから桂だけは顔面モザイク&名前はピー音にするが」

「いやなんで俺だけ猥褻物扱いなんだ!! お前と近藤がモザイク&ピー音になれ!!」

「近藤さんはともかくなんで俺まで猥褻部扱いにされなきゃならねェんだよ!」

「え゛ッ!? トシッ!?」と近藤。

「えどちほーの平安を護る警察である俺と、えどちほーを脅かすテロリストのテメェじゃどっちがモザイク処理受けるかなんて自明の理だろうが!!」

 

 と土方が桂にビシッと指を突き付けると桂はすぐさま怒りを見せながら反論する。

 

「貴様こそいい歳した大人の公務員がアニメへの批判創作なんぞして恥ずかしくないのか!! 恥を知れ!!」

「それ思いっきりおめェにブーメラン刺さってんだろうが!! 俺ら全員穴の貉なんだよ!! そもそもこんなモンに正当性もクソもあるか!! 殴られたら殴り返す!! ただそれだけの話だろうが!!」

「それが社会人の言うセリフですか!? ちょっとは堪える努力をして下さい!!」

 

 と新八がツッコミ入れると、土方がグッと拳を握る。

 

「やられたらやり返す!! 倍返しだ!!」

「おめェは半沢直樹か!!」

 

 とツッコミ入れてから新八ははぁ……、とため息を吐く。

 

「つうかそもそも、僕らまでギスギスいがみ合ってどうするんですか? 折角けもフレ2の批判してても僕らがこんなんじゃ説得力薄くありませんか?」

 

 新八の言葉を聞いて冷静な態度へと戻っていく土方はタバコの煙を吐いてから応える。

 

「……冷静に考えてみろ? こんな事に説得力も正しい答えもクソもあると思うか? ようは俺たちの行動って批判しながら作品と殴り合ってるだけなんだぞ?」

「いや、それだと批判している人全員が殴り合ってる理論になっちゃうんですが?」

「それはそれ。これはこれ。うちはうちだ」

「あんた全然冷静じゃないじゃん!! 言ってる事滅茶苦茶じゃねェか!! もうちょっと落ち着いて物事を考えて発言しましょう!!」

「そもそも俺らはただ行き場のない怒りを形にして決着付けただけだ。まぁ、勝ちも負けもねェがな」

 

 と言って土方は遠くを見つめるように天井へと顔を向ける。

 

「俺は今回の作品かどうかも分かんねェモンを作ってようやく分かったが、作品つうのは多かれ少なかれ自分の中にある思いだったり考えだったり好き嫌いだったりアイデアだったりとにかく色んなモンを詰め込んだ結晶体だと思った。だからこそ2に悪意があると俺たちは受け取ったのかも知れねェが……。まぁ、そこは置いといてだ。作って発表したモンに正しいもクソもねェ。結局、なんもかんも見た奴任せになっちまんだよ。そしてそれは2って言う作品が大いに証明した」

 

 土方はタバコの煙を吸い、そしてまた吐いてから新八へと顔を向ける。

 

「俺たちも今回作った作品を公開しちまえば評価も何もかも俺たちの手には負えなくなる。その恐怖を覚悟した上で公開するかどうか選ばなきゃならねェんだ……」

「…………」

 

 なにを思ってか新八は口を閉ざし、土方は顔を銀時へと向ける。

 

「おい万事屋。お前はどうする? 今回の件はお前が発案者だ。だから公開決定権はお前に任せる。ネットの感想が賛否両論になろうが俺はお前を恨まん」

 

 土方の言葉を皮切りに全員の視線が銀髪の男へと向けられるが銀時はただケースを見つめて黙ったまま。すると源外が言葉を漏らす。

 

「まぁ、投稿するとしても俺ら別に役者ってワケでもねェしなー。冷静に考えたら顔そのまんまにするのってはちょいマズイかもな。やっぱ編集して全員違う顔にするって方が無難かもしれん。とりあえずま~、まずはゴリラ顔の近藤(そいつ)をゴリラに変更するとして」

「ええええええええッ!?」と近藤はまた驚く。

「それじゃ編集した意味ないネ」

 

 と神楽が言うので源外は頭をポンと叩く。

 

「あぁッ! それもそうだな! ならモザイクでいっか!!」

「んな殺生な!! つうかなんでモザイクかゴリラの二択しかいないのォ!?」

「そんで映像の出だしはちょっと物足りねェから、編集して色々つけ足すか。冒頭には『けものフレンズ2によって傷ついた者たちが居た』みたな文字とか入れてよ」

「それ良いアルな!」と神楽。

「ちょっと待ってェッ!! 話進めないでッ!!」

 

 と近藤が必死に声を掛ける。

 

「俺ゴリラかモザイク確定なの!? えッ!? そんな無慈悲な編集されちゃうの俺!?」

 

 困惑する近藤を無視して神楽は人差し指を立てて言う。

 

「次にぱっつぁんは眼鏡かモザイクで私はぼっきゅぼんのナイスバディーでよろしくアル」

「わかった」と源外。

「おいコラァァァァァ!! 聞き捨てならねェぞおい!!」

 

 と新八がすぐさま苦言を呈する。

 

「なんで僕は無機物かモザイクの二択なんだよ!! そしてサラッと自分は美化しようとするし!! ズルいぞおい!!」

 

 今度は編集談義で盛り上がりそうな雰囲気になった時、妙が銀時へと声を掛ける。

 

「どうします銀さん? このままですと、男性はモザイクで女性は月下美人……まぁ、私はもともとですけど。とりあえず今言ったような感じで投稿ってことになりますね」

「ちょッ!? 姉上ェェェェ!? それはない!! それはない!! さらっととんでもない方向に話進めないで!! 女性ファーストにもほどがある!!」

 

 と新八がツッコムと桂が手を上げて抗議する。

 

「そうだそうだ!! 真選組の阿呆共はモザイクでも構わんが、俺はライダー俳優みたくカッコよく編集してくれ!!」

「桂テメェ!! いけしゃあしゃあと勝手な願望を!!」

 

 土方が桂にガンを飛ばすと近藤は涙を流しながら手を上げる。

 

「せめてェ!! せめてモザイクは止めてくれ!! 100歩譲ってもゴリラは許すから!!」

「ならウ〇コで」と神楽。

「ッッッ!?」

 

 近藤がショックを受け、神楽がポンと掌に拳を叩く。

 

「なら全員ライダーに編集するってのはどうアルか? 2と言う名の悪をやっつけると言う点ではピッタリの配役ネ」

「いや、それはどうなの!? 絵面的にも主旨的にも!!」

 

 と新八がツッコミ入れると近藤が語気を強めに。

 

「いやだがそれも良いかもしれん!! 俺は動画サイトで他作品のキャラクターさんたちが2を批判しているところを見て勇気と元気と笑顔と多くの考えを貰ったぞ!」

「いや僕らが2をぶっ飛ばしたいと言う思いから撮った映像でしょうが!! 編集して顔を変えるどころか全部ライダーさんになったら怒った僕らの立つ瀬ないじゃん!! テーマどこいった!?」

 

 すると次に土方が話し出す。

 

「そもそも話だが作り手の思いが詰まったのが作品でありキャラだろ? だったらライダーでも一応は問題ねェんじゃねェか? 普通に俺らが作り手となりライダーに思いが込められて、形になったのが作品ってなるワケだしな。結局のところ俺らの間では2は作品ではあっても、けもフレとして認めねェってだけの話に落ち着いてあの映像作品が生まれたのが今回の顛末だしな。つまりアンチ創作も俺らの思いが込められた作品ではあるはずなんだよ。アレ? 俺ら今、何の話してんだっけ?」

「そもそも動画サイトで他作品のキャラが感想言うなんてモノは昔からではないか!」

 

 と桂が強く言えば土方が言葉を返す。

 

「いやだから問題点はそこじゃねェだろ。そういう是非は考えても言い合ってもキリがねェから。そもそも作者の代弁みたいな作品なんて昔からあるらしいぞ。1期でもなんとなく作り手の思いや伝えたい事はは感じ取れたぞ? そもそも作品やキャラを思いの代弁者にするのが問題じゃなくてだな、2が公式ヘイトな上に同じ作品を同じ作品でヘイトして1期監督もヘイトしているように見えた上で思い出ぶち壊した上にクソつまらないから批判いっぱいなんであって……あれ? そもそも俺らってなにを問題にしてたんだっけ?」

 

 次に近藤が腕を組みながら強く言う。

 

「なるほど!! つまり2は公式ヘイト創作になってしまったから批判だらけになっただけの話なのだな! そして俺たちみんな2と同じアンチになっただけの話だったんだな!! そして俺らはなんの話をしてるんだっけ!」

「近藤さん違う違う違う!! 正当な評価をしている人たちもアンチで一括りになっちまうからそれ!! アンチどうこうはそもそも線引き分からんから無暗に決めん方が良い!! つうか問題はそこじゃなくてだな!!」

 

 次に土方が右手をブンブン振りながら強く言う。

 

「元々2のヘイトと2次創作のアンチは別物だと俺は思うぞ!! アレは完全に嫌がらせにしか見えないアンチと言うかヘイトだぞ!! そして2次創作系のアンチは原作つうか作品の何が悪いとか気に入らないとか間違っているか吟味して意見を表現して載せてるだけだ!! ちゃんと良い部分と悪い部分を精査してるとこだっていっぱいあんだよ!! ようは畑違いってだけだ!! まぁ、2は良い部分がほとんどねェもんだから否定一色になってんだけど!! そして俺は何を言ってんだ!! だんだん話がズレてワケわかんなくなってきたぞ!! なんでアンチヘイト談義してんだ!?」

 

 すると次に新八が言葉を掛ける。

 

「そもそもアンチヘイトになってるどうこうが問題じゃないと思いますよ。ようは公式作品が1期ファンと言うかけもフレ好きが楽しめそうだと思えるように宣伝した上にパッと見はけもフレで、実は最終回まで見たらただのヘイト創作だったと思える物を公共の電波で流しちゃったのが問題であって中身がそもそもアレなモンだから批判殺到なワケでして……あれ? 公式作品だから悪いんだっけ? そもそも作品自体が酷いからダメだったんだっけ? 1期ファンとしてダメだと思ったから怒ったんだっけ?」

 

 首を捻らせる新八に続いて桂が力強く告げる。

 

「そもそも貴様ら悪意悪意言うが作品作りにとって悪意もまった立派な起爆剤になることを知らんなのか!! かの有名なマンガの神様もありあまる嫉妬をバネに最高の作品を作った逸話が残っているのだぞ!!」

「言われてみれば確かに!!」と近藤。「作者のマイナスな感情が作品に投影されているパターンだって良くあるではないか!! 決して悪意が作品を悪くするとは限らん!!」

「でも2は絶対そのパターンには当て嵌まりませんよ!!」

 

 と新八が強く言う。

 

「ネガティブな感情を利用して作品を昇華させようとした形跡が見当たりません!! 見て取れるのは吐き気を催す邪悪でした!!」

 

 次に妙が力強く告げる。

 

「作品批判の筋がまとまらないと言うなら発想を変えるのよ!! 作品批判ではなくキャラ批判なら良いんじゃないかしら! キュルルは真性の外道かサイコパスなのだし! 批判したってアンチしたって問題ない筈よ!!」

「いやキュルルも作品に踊らされた一人であると考えたら責める対象にするのは違くありません!? 元々2の作り出した世界観をぶっ壊そうと作った創作ですよ!? そもそもけもフレ好きな僕らが一人のキャラを受け入れないと言うのも……」

 

 と新八が弱々しく言うと土方が強く言葉を掛ける。

 

「そもそも公式がアレを完成品て言うならキュルルの行動は立派な責める対象だろうが! 世紀末ヒャッハー共を責めんなって言ってるようなもんだぞ! 俺はキュルルぶっ飛ばす二次創作は許す!」

「そもそもアレは完成品なのか!? 未完成品にしか見えなかったぞ!?」と近藤は眉間に皺を寄せながら言う。「そもそも作り手によってキャラが変わる子なのだぞ! マンガ版ちゃんは良い子らしいしな!  ならキュルルを責めるのはお門違いなのでは!?」

「マンガとアニメは別物ネ!」

 

 と神楽が強く主張する。

 

「アニメのキュルルはマジモンのクソ野郎アル! 私はそこは断固として譲らないネ! イエイヌへの仕打ちは忘れないアル!」

 

 次々から次に言葉が飛び出し、議論がどんどんエスカレートする。

 

「そもそもあんなしっちゃかめっちゃかな物語を一つのストーリーとして成立させてよいのか!? 最後は全部投げっぱなしエンドだぞ!」

「そう言うのは打ち切りマンガじゃお馴染みですよ! でもああ言うのも一つの作品です!」

「私はアレを商業作品として扱うこと自体が許せないわ!! 人を楽しませる要素が限りなくゼロの物は商品としての価値ゼロじゃない!!」

「いや姉上! どんなに醜い結晶体でも作品は作品なんじゃないんですか!? 確かに僕もアレはアニメと言う商業作品としてはどうなのとは思ったけども!!」

「なるほど!! お妙さんの言う通りだ!! 商業作品と言う観点から見ればクソゲーやクソ映画がいかに多くの被害者を生んできたか推して知るべし!! 俺だって給料をどれだけけもフレに貢いだことか――!!」

「俺だってそうだッ!! お昼代や攘夷資金を節約して貢いだんだぞ!! お布教だってした!! 俺の細やかな金が全てアレに変わったと思うと涙しか出ん!!」

「いやあんた攘夷しろよ!! 寧ろ部下たち涙目じゃねェか!!」

「おい話が二転三転し過ぎだ!! キリねェんだよ!! 今までの一致団結どうした! なんで最後の最後までこんなグダグダ悩まなくちゃならねェんだよ!! もっと単純な話だったろうが!!」

「そもそも答えがない問答をしたって不毛なだけだ!!」

「そもそもこの問答を不毛なんて言ったら僕ら今までの苦悩はなんだったんですか!!」

「グダグダ女々しい奴らネ!! だからこそ今回の創作に踏み切ったことを忘れたアルか!!」

「リーダーの言う通りだ!! だからこそ単純明快に次は皆で一致団結してえどちほーを変えようではないか!! 俺たちの戦いはこれからだ!!」

「桂ァァ!! どさくさに紛れて俺らをテロリストの仲間に入れんじゃねェーッ!!」

「お妙さんと俺のハネムーンはこれからだ!!」

「黙れゴリラァァァ!! おめェをアンチすんぞコラァ!!」

「クッソッ!! なんて不毛なやり取りなんだ!! 答えが見えてこねェ!!」

 

 銀時と源外以外のメンバーが答えが見つからないどころかあっちこっちに話題が飛び始め、問答を繰り返しわちゃわちゃ騒いでいると天然パーマの男は気だるげな声で告げる。

 

「なんかもういいや。考えんの疲れた」

 

 銀時の言葉を皮切りに全員の論争が一旦停止し、銀髪天然パーマはテーブルの上にディスクカセットを置く。

 

「俺は別に二次創作してる作家でもプロのクリエイターでもねェから、関係ねェし。体使ってとにかく怒りを発散できちゃったみてェだから」

「……じゃあ、投稿はしないんですか?」

 

 と新八が聞くと銀時は肩を揉みながら気だるげに言う。

 

「ぶっちゃけ留飲が下がった今じゃ、投稿して評価とか感想とか気にすんのもメンドーだしな。どうでもいいわ、俺。二次創作作家じゃなくて俺は侍で万事屋で銀さんだし。つうか、あーだこーだ言って結局のところ1期が良作で2は最低最悪のけものフレンズでもないナニカって俺たちの考えは揺るがねェしな」

 

 銀髪天然パーマの言葉にその場にいる面々は顔を見合わせ、銀時は立ち上がりながら肩を揉む。

 

「今後同じような事がないことを願いながら、好きな事――まぁ、ジャンプ見んのに力使うわ、俺」

 

 続くように新八、神楽、桂、妙、近藤、土方も立ち上がり始める。

 

「僕も撮り溜めしたわたてん見ようと思います」

「私はヅラが進めたケムリクサ見るネ」

「ヅラじゃない桂だ。俺はドロロとケムリクサにけものフレンズRにしよう。今から楽しみだ」

「私はかぐや様。ラブコメって結構好きなのよね」

「お妙さん。なら折角ですし俺とラブコメしません?」

「あら? 私はラブ米派ですけど、ストーカーは好きじゃありませんよ?」

「なんの捻りもなく拒否られた!?」

「俺はとりあえず、マガジン派として五等分をチャックしとくか」

 

 と言って最後に土方が立ち上がる。

 

「…………」

 

 座ったままであった源外は立ち上がる彼らを見てから、土方へと顔を向ける。

 

「なんだかんだ勢いで忘れてたけどよ、お前さん良いのか? 一応俺は指名手配されてんだけど?」

 

 源外は昔江戸で騒ぎを起こしたことがあり、その時から指名手配されているのである。源外の言葉を聞いて土方はチラリと彼に視線を向けてから再び歩き出す。

 

「あんたは今回の映像制作の一番の功労者だ。今日までは俺も近藤さんも見逃す」

 

 そして土方は小さく、ありがとよ、と言葉を漏らして歩いて行くのだった。

 

「そうかい……」

 

 よっこらしょと言って源外もまた歩き出すのだった。

 ため息を吐き、銀時は歩いてくが途中で足を止めてディスクケースを片そうとする新八をチラリと見てから背を向けたまま声を掛ける。

 

「なぁ、新八……」

「はい? なんですか?」

 

 新八は手を止め、銀時は振り向かないまま言葉を告げる。

 

「もし、2のことなんか気にせずによ……もう一度けものフレンズを楽しめる日が来たら……今度は何が好きか……語り合おうぜ……」

 

 銀時はそのまま、歩き出す。

 そして新八は、

 

「…………はい」

 

 小さい声でしっかりと頷き、そのままケースを棚へと仕舞う。

 そして歩いて行く銀時たちの後を追いかける。

 各々は好きな物、楽しみにしている物、軽く穏やかな会話をしながら歩いて行くのだった……。

 

 

 ちょこっと後日談

 ある時、けもフレ炎上を眺めていた沖田は土方に『ある情報』を教える。

 

「土方さ~ん。実はおもしれェ事にけものフレンズ2って実は1期から2000年前後って設定が~――」

「やめろ」

 

 土方は低い声で告げ、沖田は言葉を止める。

 

「それ以上なにも言うな」

 

 と言ってから、

 

「あ た ま が お か し く な る」

 

 土方凄まじくドスの効いた声を出し、沖田の元を去って行くのだった。

 その日を境に土方の前で『けもフレの話はしない』と言う暗黙の了解が真選組の隊士たちの間で決まったそうな。




 はい。今回で最終回となります。
 最後はとにかく私がこの小説を書いて思った怒りや苦悩やら葛藤をとにかく全部載せてみました。
 それでは最後に思った事を書き連ねようと思います。
あの作品が二次創作なら私はそもそも見ても途中で切ってただろうし、怒りも感じず、批判すらしていたかも怪しいです。そもそも見る機会すらなかったと思います。
 でもあんなに宣伝した上で公共の電波に乗って放映されてるんですから、見ようと思っちゃたんですよね。それにPVを見て別世界線のけものフレンズかな? と思ったからたぶん1期とは別物で見れるなって感じでした。1期の続きじゃなくても新しいけものフレンズと言う作品がどうなるのか知りたくて見ようと思ったので。

 優しい世界だなー、良いなー、癒されるなー、面白いなー、くらいの感覚で1期を見て2期もそれに及ばなくてもそれに近い作品ではないかと予想してはいたんです。
 そしてもし2期が出来るなら旅の続きが見たかったとも思っていました。

 1話~7話まで違和感を感じながら見ていました。

 ついに8話まで見たらもう『けものフレンズ』としてはもう見れなくて、『こりゃダメだなー。ファンが憤慨してるだろうなー』と思いながらけものフレンズではない一つの作品とし見るようなそんな良く分からない心境になっていました。
 そして9話を通ってからまさか自分が怒らされると思わず、この二次小説を作りながら怒りと共にもうプロと言う存在がどれだけ酷い作品を作り上げているか眺めているような感覚でいました。
 11話ではもうプロが作った言うには思えないほどアレな物を見せられ、12話を見て考察して解釈してマジで1期の好きを全否定された気持ちになって吐き気と体調不良と食欲不振を催すレベルでした。お金と人員かけて1期全否定と受け取られるような作品をプロが公式で作ってしまうとか本当に酷い有様だったと思います。二次創作ならどれだけダメージが少なかっただろうと妄想したこともありました。
 もうここまできたら続編に期待するべきか? とも考えましたがそもそも今の状態で続編が作られる可能性は大分低いと思っています。
 ただ良かったと思える事も少なからずあり、今回の2の大炎上に伴って動画サイトでは多くのけもフレ2を批判する動画も散文されましたが、その中には『外側』で色々と考察する動画あったのでそれが中々良い考察を含んでおり、勉強になった事もあります。
 
 それでは、これにて『けもフレ2を見た万事屋+α』最終回です。
 今まで多くの感想を送っていただきありがとうございました。
 並びにこれまで多くの孤児脱字報告を下さった方、本当にありがとうございます。

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