【完結】精霊とか知らないけど、たぶん全員抱いたぜ [士道 age21]   作:くろわっさん

15 / 16
長く間を開けてすいません。ちょっとGWしてました。

クライマックスです。今回も独自設定マシマシなのでそれだけご容赦ください!



第15話 ガイアが俺にもっと輝けと囁いている

 ―――ツラい。苦しい。哀しい。

 

 もう何も要らない、もう何も欲しくない。もう何も……喪いたくない。

 

 だから壊そう。何も無くさないようにワタシが壊そう。そうすればもう、喪うことなんてないのだから。

 

 私の大切なシドー。もう離れて欲しくないから……壊れて。

 

 

 

 

† † †

 

 

 

 魔王と化した十香は宙に浮かび、漆黒の大剣を構えていた。士道と距離を一気にとれたため、自由に空を舞うことが出来るようになったのだ。

 

 魔王は水平に剣を引き絞り、その刃に闇よりも深い漆黒の力を溜めていく。そしてその力が解放された。

 

「消えろ、シドー…!」

 

 剣を振り抜くと刃先から極大の漆黒の波動と斬撃が飛び出し、狙い定めていた士道を含めて周囲一帯を消し去っていく。

 終焉の剣で全てを薙ぎ払い消し去る。そこに残るモノは何一つとしてない。これこそが魔王本来の闘い方だ。

 

 魔王が自らが抉りとった地面を見下ろしながら、ため息を吐く。その瞳には哀しみが宿ったままで、空虚な感情が胸を支配していた。

 

 相手は霊力を持つとはいえ人間。先の一撃は避けられる筈もなく、防いだ形跡もない。

 

「終わったか……さて、次は―――」

「何が終わったって?」

「―――なんだと!?」

 

 後ろからかけられた声に驚愕しながら魔王が振り返る。そこには宙に浮かぶ彼女と同じ視線の高さにいる士道の姿があった。

 

疾風(かぜ)をまとった男こそ夏の女神に愛される」

 

 まともに解説するつもりはないのだろう。しかし、事実として士道はバサバサとジャケットをはためかせながら吹き荒れる疾風に乗って宙に浮かんでいるのだ。

 

 何故、どうして、どうやって、といった疑問が魔王の中に浮かぶ。だが即座に魔王は次の行動に移る。

 討ち果たせていないのであれば、幾度となく刻んでしまえばいい。それが魔王の考えだ。

 

「貫くッ!!」

 

 魔王は身の丈よりも遥かに長い大剣を振り上げながら真っ直ぐと伸ばして、突きを放った。地上では剣が地を摺る為に出来なかったが、互いが宙に浮いているからこそ出来る早業だ。

 

 士道から魔王に向かって、その突きを押し返さんばかりの突風が吹く。

 吹き乱れた突風に一瞬だけ眼を細めながらも一直線に進む大剣。その速さは地上での比ではない。

 そして大剣の切っ先が士道の胴を捉えて、そのまま漆黒の牙が腹を食い破った。

 

 だが手応えがない。確かになにかを貫いた感触はあったのに、士道の腹からは血すら流れず声も上げずに貫かれているのだ。

 魔王は一息に突き刺さった剣を捻ると、士道の身体が甲高い音をあげながら粉々に砕け散った。

 

「―――氷だと!?」

 

 魔王が士道だと思って貫いたのは、彼の形に姿を変えていた氷塊だったのだ。魔法のような現象に驚く魔王だったが、背後から感じる疾風に気が付き、素早く後ろを振り向く。

 そこにはしてやったりといった顔の士道が、傷ひとつない姿で控えていた。

 

「次々と…! 小癪な!」

 

 魔王は片手で剣を握ると、空いた方の掌から漆黒の波動を数発打ち出す。士道はそれらを右へ左へと難なく躱していくが、それこそが彼女の狙いだった。

 魔王は波動を陽動にして一気に距離を詰めており、剣を振り下ろしていた。

 

 士道は煌めきを纏った両腕を交差して大剣を迎え撃つ。煌めきと刃が凌ぎを削り、低く鈍い音を発てて大剣が大きく弾かれた。

 魔王は剣を弾かれた反動に乗せて、一回転して下から切り上げる。士道は四肢に煌めきを纏わせ、蹴りあげることでまたも弾いた。

 

 一撃一振りが致命の一打になる筈の魔王の剣撃は、卓越した士道の徒手空拳の一打によって防がれる。

 

 魔王が剣を振るい、士道が弾く。また剣を振り、弾く。二合三合と縦横無尽に繰り返される打ち合いは徐々に速度を上げていく。必死の形相で大剣を振り回す魔王に対し、士道は鼻歌を口ずさみながら応戦していた。

 

 ―――この速さについてこれるのか…! いや、速いだけじゃない。コイツ、段々と膂力が上がっているのではないか…? 

 

 魔王の考えを肯定するように、少しずつ力負けをして弾かれる剣の衝撃が強まっていく。

 

 そして幾度目か解らない衝突で、遂に魔王は漆黒の大剣ごと弾き飛ばされてしまった。

 素早く体勢を立て直して士道の方を向くと、追撃するでもなく、彼は指鉄砲を構えて彼女に狙いを定めていた。

 

BANG(バンッ)!!」

「何を……ッ!?」

 

 士道がスカしたかけ声で指鉄砲を撃つと、その指先からは何も出ていないように見えるが、魔王に異変が起きた。まるで時間が止まったかのように、身体が動かなくなったのだ。

 

 彼女が何が起きたかを理解するよりも早く、士道が煌めく拳を振りかぶりながら疾風に乗って急接近していく。

 回避も防御も不可能。魔王は動かない身体にイラつきながらも、士道の拳を受け止める覚悟を決めた。だが、煌めきの矛先は彼女の急所である顔でも胴で鳩尾もなく、固く握り締めた漆黒の大剣だった。

 

 振り抜かれた拳が剣の腹を殴り付けると、鈍く大きな音を発てる大剣と共に、魔王は地面に向かって吹き飛ばされていく。

 殴られた瞬間に身体に自由が戻り、彼女は勢いに負けながらも両の脚でしっかりと地面を捉えて着地した。

 

 激しい衝撃に地は砕けて陥没し、大きな砂埃が周囲に舞った。

 

 魔王は砂埃に包まれながらも、しっかりと大剣を構えて士道の襲撃に備える。その全身からはあの全てを消し去る漆黒のオーラが滲み出ていた。

 

 そして、一迅の疾風が吹き込み砂埃が一気に晴れていく。

 

 敵意を剥き出しにしながら見上げる少女。それを見下ろしながら不敵な笑みを浮かべる漢。奇しくも出会った時とは真逆の構図でふたりは対峙した。

 

「何者なんだ、貴様は……」

 

 剣を掲げ切っ先を突きつけながら魔王が訊ねる。訊ねるというよりはぼやきに近いだろう。

 

十香(わたし)の記憶には貴様のそんな姿は無かった。ああ、そうだ十香(わたし)から託されたモノには…! 貴様のこと考えれば考えるほど胸の奥が痛む。傷もないのに痛むんだ……」

 

 吐き出される言葉と共に、魔王の身体からは漆黒が溢れてくる。彼女の苦しみを表すかのようにどんどんとその濃さと量を増して、留まることを知らずに湧き出てくるのだ。

 

「貴様を(ころ)せば楽に為れるだろうか。なあ?」

 

 

 

 

† † †

 

 

 

「ホントに何が起きてんのよ!」

 

 琴里はモニターから飛び込んでくる自身の想定など遥かに超えた情報の数々に叫ばずにはいられなかった。

 

 士道が喧嘩が得意なのも理解できる。霊力を持っているのもの辛うじて理解しよう。だが繰り出される不思議な技の数々、あれは全くもって理解できない。というのが琴里の考えだった。

 

 だが想定外の状況は士道のことのみに留まらない。それもその筈、十香を攻略するために作戦が始まったのだから、当然起こる問題は十香からも出てくるのだ。

 

「十香ちゃんの霊力、マイナス方向に更に増大していきます!」

「天使だけでなく十香にも力が逆流して…! 不味い、このままじゃ十香自身の力で十香が壊れるわよ!!」

 

 鳴り響く計器から得られる情報は全て最悪のものばかり。このままでは人類最初の精霊討伐が、精霊を護る為のラタトスクの手で行われてしまう。琴里は焦っていた。

 

「このまま霊力が増大したまま、十香が倒れるようなことがあれば……暴走した力がこの辺り一帯を消し去ってしまうだろう。それこそ天宮市が地図から消える事態に為りかねない」

「それじゃあ…地下のシェルターの人々は…?」

「通常の空間震とは比べ物にならない規模の破壊の力だ。地表ごとまるまる消滅してしまうだろう…」

「そんな…! ユーラシア大空災に次ぐ被害になるじゃないですか! 止める手立てはないんですか!?」

「ああなってしまった以上、どんなに優秀な魔術師でも彼女を討つことは出来ない。どうにかできる問題ではないよ……私達にはね」

 

 淡々と告げられる解析官である令音の予測に、フラクシナスの乗組員たちは言葉を失った。

 司令官の琴里ですらこの状況を打破できる方法を思案するが、有効な手段は浮かばない。奥の手である自らの力を解放しても、十香に届かず掻き消される光景しか思い浮かばなかった。

 

 だが令音は沈黙する一同に向かって言葉を続ける。

 

「信じるんだ。シンなら必ず、彼女を止められる」

 

 短く簡潔な言葉だったが、皆の心に深く突き刺さる言葉。そこに籠められた意味とこれまでの彼の起こした出来事がその言葉の重みを増していく。

 そして誰もそれを疑うことなく、彼を信じて自分の職務を果たすため行動を始める。

 

 この街と戦艦フラクシナス、そしてひとりの少女の命運がひとりの伊達ワルに託された。

 

 

 

 

† † †

 

 

 

「消えてしまえ…! 全て! 全てすべて消えてしまえばいい、貴様も! 世界も!!」

 

 魔王の叫びが響き渡り、両手で握り締めた終焉の剣からは止めどない黒き光が溢れだしてその力を高めていく。身体からも流れるその光は、彼女が纏う霊装すらも端から少しずつ消し去っていた。

 

 何者にも止めることの出来ない破壊と消滅の力が満ち溢れて迸る。

 

 そんな終焉が迫る中、宙に舞う漢はここまで重かった口を開く。

 

「なあ、もういいだろ十香。お前は十分暴れたし、俺に勝てないってことも解ったろ? だから…来いよ」

 

 士道はいつものように尊大な態度を崩さず、彼女に手を差しのべた。目の前の魔王、そして心の底に眠るもうひとりに向かって手を差しのべたのだ。

 

「今更遅いのだ! 見ろ、私はもう止まれない! この剣が、この黒き光が全てを破壊するッ!! もう私にも制御することは出来ん。私は…十香(わたし)は…! 世界を壊すしかあるまい!!!」

 

 吐き捨てるように彼女は叫んだ。全身を覆う黒い光は彼女自身を蝕んでいき、やがてその身を滅ぼす。そのことを彼女は理解していたのだ。

 

 その上で、更に彼女は力を解放していく。

 

 そんな彼女に士道はニヒルに笑いかけながら一言だけ説いかけた。

 

「知ってたか? 黒には幸福の光も宿ってるんだぜ」

 

 全てを壊すだけだと思っていた彼女の力を士道は許していた。彼女自身すらそんなことを微塵にも思わなかったことを、いとも簡単に許容したのだ。

 

 その言葉に十香の心が揺れる。

 

 瞬間、士道の煌めきが全身を包み込み、彼の姿が光に消えた。

 

 

 

 

† † †

 

 

 

「あの煌めきはなんなの!?」

「士道くんの霊力が増大していきます! …まだ増えてる…!」

 

 警報と共に士道の霊力が異常な数値を示している。だが琴里の視線の先はその計器ではなく、士道たちの姿を捉えていたカメラの映像だった。

 

 士道から放たれる煌めきは周囲へと広がっていき、辺りを包み込んでいたのだ。

 

「この光はいったい…」

「十香ちゃんの霊波に変化が! これは……士道くんの霊波が十香ちゃんの霊波を侵食してるのか!?」

「そんなことってありえるの…?」

 

 精霊について全てを知っているわけではななかったが、目の前の光景に思わず呆けてしまう琴里。だか直後に中津川に「司令!」と大声で呼び掛けられることで一気に現実に引き戻された。

 

「今度は何!?」

「解析AIが反応…! 選択肢、出ます!!」

「今このタイミングでぇ!?」

 

 剰りにも予想外すぎるタイミングでのAIの行動に、琴里は驚きながらもしっかりとツッコミをいれていく。

 

 フラクシナスに搭載された超高性能AIが、精霊を攻略するための台詞または行動を選択肢としてモニターに表示する機能。それが今、発揮された。

 

 

 ①十香の心を照らす為、誰よりも何よりも光り輝く

 ②もうすぐ夜になるので、一番目立つように輝く

 ③特に理由はないが、とりあえず輝く

 

 

「選択肢全部輝くって!? ―――ハッ!?」

 

 AIの意味不明な選択肢にツッコむ琴里だか、別のモニターに映される士道に眼を向けると、そこには輝いているとしか言い様のない士道の姿があった。

 

 動揺と驚愕に染まる一同を他所に、ひとり冷静な令音は静かに呟いた。

 

「さあ、シン。君の輝きを彼女にも教えてあげるんだ」

 

 

 

 

† † †

 

 

 

 黒に染まり魔王と為った十香が終焉の剣を掲げ、目の前の漢を滅ぼさんと極限を突破した力をその刃に籠める。

 

 もう止まれない。その言葉通り彼女は止まることなく、高く掲げた大剣を真っ直ぐと振り下ろした。

 

「シドォォォオオオ―――ッッ!!!」

 

 張り裂けそうな雄叫びと共に、終焉の剣から全てを消し去る極大の波動が放たれる。周囲の煌めきを消し去りながら一本の黒光が走った。

 

 逃げ場のないほどに大きく広がった漆黒が、宙に浮かぶ士道へと迫りくる。だが士道はニヤリと笑い一言だけ呟いた。

 

「ガイアが俺にもっと輝けと囁いている」

 

 煌めきが全身から勢いよく迸り、眩い程の輝きを纏い士道は迫る波動に対して避けることなく突撃する。

 士道の纏う輝きが漆黒の波動と弾け散っていき、一面の闇を掻き分けながら一直線に彼女へと突き進む。

 

 弾けた黒と辺りの煌めきが混じり合い、夜空にかかるオーロラの如く幻想的なグラデーションを生み出していた。

 

 制御しきれぬ己の剣を力の限り握りしめる彼女。その視界いっぱいには自らが放つ黒しか映らない。だがその黒の中から光輝く腕が伸びてくる。一本、二本と伸びた腕が終焉の剣を挟み込むように捉え―――

 

「邪魔だ…!!」

 

 ―――そのまま真っ二つにへし折った。

 

 大剣が折れたと同時に剣から走っていた漆黒が霧散していき、彼女の身体は直ぐ様煌めきに包まれる。煌めきが身を焦がしていた漆黒すらも食い付くし、軋んでいた身体が楽になって彼女は脱力した。

 

「終焉の剣を折るとは…私の敗けか……」

 

 彼女がスッと手の力を抜くと、半ばから折れた大剣が地面に落ちてカランと乾いた音を発てた。

 

「さあ、お前の勝ちだ。殺すがいい、シドー。お前も……私を殺しに来たのだろう?」

 

 彼女は哀愁を漂わす口ぶりで、いつの日かのように士道に問う。

 破壊しか出来ない自分が、ただのひとりも壊せなかった。その帰結はそれしかないと。

 

 士道が大きく息を吐くと、周囲の煌めきが収まりいつの間にか沈みかけていた夕陽が二人を照らし始める。

 

 士道はやれやれといった調子で頭を掻きながら、軽く笑って再び彼女へと手を差しのべた。

 

「邪魔だったから折ってやっただけだぜ。さあ、来いよ」

「なっ…それはどういう―――」

 

 動揺する彼女の言葉は途中で遮られる。なぜなら彼女が話を続ける途中で、士道がさっと近寄り彼女の身体を優しく抱き締めたからだ。

 

「来ないからこっちから行ってやったぜ。感謝しな」

「何を……何をしているんだ…」

「さっき言ったろ、何処までもクレバーに抱き締めてやるってな」

 

 突然の抱擁に意味が解らず彼女は身体を強張らせて固まっていた。

 士道の匂いが、体温が、鼓動が伝わる。それらを感じる度、胸の奥が震えていく。未知の快感が胸を打ち、鼓動と共に高まっていく。

 

 ―――こんなモノは知らない。こんな気持ちは知らなかった。なのに、この心地好さはいったいなんだ? ……あぁ、私を喚んでいる。十香(わたし)が、喚んでいる……

 

「シ…ドー……」

 

 胸の鼓動に押し出されるように、彼女の瞳から一筋の涙が流れ落ちた。

 強張っていた身体が解れて、彼女は士道に身体を預ける。そして耳元へぐっと唇を近寄らせて囁くのだ。

 

十香(わたし)を、任せたぞ…」

 

 それは彼女から士道へと送る、別れの言葉だった。

 

「いつかお前も俺に惚れさせてやる」

 

 士道の大胆な返事を聞くと、彼女は軽く鼻で笑った後に満足げな顔で眼を閉じた。

 

 途端に彼女が纏っていた霊装が漆黒の衣裳(ドレス)から、紫の鎧衣裳(ドレスアーマー)に変わっていく。

 ゆっくりと眼を開くと、先程まで鋭かった目付きがまるで子犬のような潤んだ瞳に為っていた。

 

「シドー?」

 

 潤んだままの瞳で士道の顔をじっと見上げながら()()がその名前を呼ぶ。

 

「ああ、俺だ」

「シドー…! シドーシドーシドーシドー! シドォ……」

 

 十香は大粒の涙をボロボロと流しながら士道を抱き締めて、その胸に顔を擦り付けながら何度も名前を呼んだ。

 

 何度も何度も、確かめるように名前を呼ぶ。士道も名前を呼ばれる度に返事代わりに優しく十香の頭を撫でていく。

 

 暫くそうしてから十香は再び顔を上げる。その顔は涙でぐしゃぐしゃに為っていたが、満面の笑みを浮かべていた。

 

「シドー、本当に生きているのだな? 幻ではあるまいな! 本物のシドーなのだな!?」

「当然、俺は俺。これが人間を超越した先にある奇跡の世界だ」

「ああ、その意味のわからない台詞…! まさしくシドーだ!」

 

 士道の支離滅裂な言動。それこそが彼が彼である何よりの証拠であると十香は判断した。まさかそう捉える者が現れるとは誰も思わなかっただろう。

 

「なあ、シドー。もっと強く…もう二度と私を離さないでくれ……」

「ああ、もう逃がさないぜ?」

「うむ…シドー、もっと…えっと、そう。くればーに、抱き締めて?」

 

 士道の腕の中で上目遣いで小首を傾げながら、十香は彼にお願いをした。士道の口からは返事はなく、その変わりに十香の背中に彼の両腕がそっと回される。

 

 士道は何処までもクレバーに十香を抱き締めた。

 

 沈みかけの夕陽に照らされて伸びる影は二人でひとつ。戦いの余波で崩壊した丘の上だったが、そんなことを構うことなくふたりだけの世界が生まれる。

 

 顔と顔が近づく。吐息と吐息がぶつかる。心と心が繋がる。そして唇と唇が近付いていく。

 

 

 

 ―――長かった少女の孤独が今、終わりを告げた。

 

 

 

 




終盤にありがちなてんこ盛り設定でお腹いっぱい。反転十香ちゃんが完全にオリキャラになってしまってすまない…

次回、最終回。よろしくお願いします!


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。