【完結】精霊とか知らないけど、たぶん全員抱いたぜ [士道 age21]   作:くろわっさん

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デートアライブもにわか、メンズナックルもパンピーレベル。どうして書き始めてしまったのか……

でも偉い人(影山ヒロノブ)は言いました。「頭空っぽのほうが夢詰め込める」と。




第2話 この俺と対等に話そうったって無理だぜ

 崩壊した街に対峙するふたり。片や一振りの大剣を持ち殺意を振り撒き、片や手ぶらで横柄な態度を振り撒く。

 

 

「何が放っておいてくれだ、ふざけるな」

「別にふざけてないぜ?」

「お前らが私を殺しに来るのだろう。こちらのことなど知らずに…」

 

 少女は騒ぎ立てながら切っ先を突き付け続ける。常人なら冷や汗が止まらないような状況であっても、士道はその飄々(ひょうひょう)とした態度を崩さなかった。

 少女は突き付けた剣を振り上げると、士道の真横すれすれに振り下ろした。大剣からは紫色の光が走り、なぞったかのように破壊の痕が刻まれる。

 

「この力を目にしても同じことが言えるか?」

「言えるぜ。俺は今、お前に用がない」

「ではお前は何故ここにいる?」

 

 恫喝染みた目の前の非日常をさらりと受け流し、士道は動揺することもなく答える。暖簾に腕押し状態なやり取りを終え、少女の顔が敵意から怪訝なものへと変わってから新たに尋ねた。

 士道が「俺は――」と答えようとした時、微かに聞こえる空気を裂く音。音に反応した少女は士道から目を離し、空を見上げる。

 

 そこには近未来的なボディースーツのようなものを身に纏い、重火器を携えた女性たちが鋼鉄(はがね)の翼を用いて飛来してきていた。その数はひとりやふたりではなく、統率の取れた軍団が突如として現れたのだ。

 

「来たか……お前のことは後回しにしてやろう」

 

 少女は士道に一旦見切りをつけるとフワリと浮き上がり、空飛ぶ軍団に向かって勢いよく飛んでいった。

 

「俺と出会えた女が舞い上がるのはいつものことだぜ」

 

 謎の力で少女たちが空を舞い、相対する不可解な光景を見ても自らの魅力に酔いしれているとしか思っていなかった。

 でも酔っているのは士道、君自身だ。

 

 

 士道が的外れなことを考えていた頃、空中では少女と女性たちの戦争(殺し合い)が巻き起こっていた。

 少女に向けて引き金が躊躇なく引かれ、自動小銃は雄叫びを上げながら弾丸を吐き出し、撒き散らかされた小型のミサイルが獲物を捉え一直線に飛んでいく。

 

 鉄と爆薬の脅威が圧倒的な物量を伴って少女に襲いかかる。

 

「こんなものは無駄と、何故学習しない」

 

 少女が左手を翳すと、紫の(にじ)む透明な障壁が銃弾の雨から少女を守り、勢いを無くした弾丸は地へと落ちる。

 少女が大剣を横凪ぎに振るうと空を裂く斬擊が飛び出し、立て続けに迫りきていたミサイルを切り裂く。裂けたミサイルは獲物に届かずその場で連鎖的に爆発を起こし、爆炎が辺りを包み込んだ。

 

「はあああああああ――――!!」

 

 半透明の緑色バリアが爆炎を押し退けて、光剣を構えた軍団員が叫び声を上げながら少女に迫る。鬼気迫る女を冷めた目で見ながら、少女は大剣で軽く光剣をいなすとすり抜けざまに背中に取り付けられた機械の翼を切り落としていった。

 

 翼を失った者はゆっくりと地面へと落下していった。仲間がやられたという事実に、軍団は少女に対しての殺意を更に強めていく。

 

 

 天空で繰り広げられる闘争を余所に、士道は逃げも隠れもせず悠々と、空間震によって荒れた街を歩いていた。だが士道が無関心でいようと彼の真上で行われているのは、硝煙と鉄塊が舞い、光線と斬擊が飛び交う無慈悲な戦争である。

 

「あ、――――」

 

 只の一発の流れ弾。標的を逸れたミサイルが士道の頭上から迫り―――彼は爆炎に包まれた。

 

 

 

 

† † †

 

 

 

 

『もう絶対離さない。もう絶対間違えない。もう一度知ってしまった温もり。■■■■■にだって絶対に渡さないから。全部私だけのモノだよ。だから―――』

 

 

 

 

† † †

 

 

 

「知らない天井だ……」

 

 士道が目を覚ますと目の前には無機質な天井と釣り下がる蛍光灯が光っていた。分かるのは自分がどこか知らないベッドに寝かされていたということだけだ。

 

「ようやくお目覚めかしら、士道。どんだけ惰眠を貪るつもりよ」

 

 聞き馴染みのある声に、士道は身体を起こしてそちらを向く。そこにいたのは彼の妹の琴里だった。

 普段と違い黒いリボンを着けた彼女は、今朝までとは雰囲気が違った。年不相応な程に幼かった言動は鳴りを潜め、鋭い目付きで刺々しく語気を強めて女傑のような話し方をしている。

 

「どうしたの士道?何か言いたいことがあるなら言いなさい?」

 

 琴里が兄に対して初めて見せる“強い私”。いつもキザで動じないお兄ちゃんが絶対に見せないような慌てふためく顔が見れる。と琴里は心の中で期待していた。

 

 そして士道(お兄ちゃん)は暫し硬直したのちに口を開く。

 

「琴里、ここは何処なんだ?用事があるからって言ったろ。お前と遊ぶのはその後にしてくれ、な?」

 

 兄はいつもと変わらず、クールで尚且つ優しい態度で語りかけてきた。残念ながら琴里の目論みは失敗に終わったようだ。

 

「あんた自分の―――」

 

 ――置かれている状況分かってるわけ?と問おうとした時に、急にドアが開かれ琴里は思わず言葉を止めてしまった。

 ドアを開けたのは薄紫がかった白のロングヘアーを頭の後ろで乱雑に纏めた二十代くらいの女性だ。黄土色の軍服に身を包み、目元には濃い隈が目立つが、それでも一目で美人だと解るくらい整った顔をしている。

 大人びた彼女には不釣り合いな、つぎはぎの熊のぬいぐるみを胸ポケットにいれており、異彩を放っていた。

 

 その女性を確認した途端に、士道の表情はこれまでに琴里が見たことの無いものに変わっていく。

 

「令音……」

「やあ、久しぶり。()()

「それは……昔の名前だ。今の俺は只の五河士道さ」

 

 表情に影を落とす士道。対して何処と無く嬉しそうな令音。対照的なふたりの表情はどちらも琴里が知らない顔だった。伏し目がちな士道がチラリと覗くように令音の顔を見る。令音はそれだけで、またも満足げな顔をしていた。

 

「隈…また濃くなってないか?」

「まあ……お陰さまでね」

 

 少しの溜めの後、含みを持たせた言い方をする令音。何か言いたげな士道は深く息を吐きだすと、ゆっくりとベッドから出て立ち上がった。

 

「人は過去には戻れない。この俺ですらな」

 

 

 この言葉が何を意味するのかは他人にはわからない。だが言葉を投げつけられた令音には真意が伝わったらしく、哀しみにも怒りにも見える形相を浮かべていた。

 

「私は…私はそんなこと認められない。認めていい筈がない。君はシンだ。私の―――」

 

 先程より少し声を大にして話す令音の言葉が遮られる。令音の唇には士道の人差し指が添えられていた。そして士道の瞳は少し潤んだ令音の瞳をじっと見つめている。

 

「過去を振り返るな。俺という未来だけ見つめていろ」

 

 士道の言に迷いは一切ない。尊大とも思える真っ直ぐな言葉が令音の胸を突き刺す。

 戸惑い、苦悩、複雑な感情が令音を揺さぶりその表情をコロコロと変える。そして最後は頬を紅潮させて士道から目を逸らしてしまう。

 そんな彼女の姿は誰の目から見てもトキメキを感じる乙女の姿だった。

 

 口を挟むまもなく、琴里は唖然としながらふたりのやり取りを眺めていた。

 お兄ちゃんを驚かせようとした筈なのにどうしてこうなった?琴里はそう思わずにはいられなかった。

 

 暫く硬直していた琴里だったが、ハッとして我に返り二人の関係を問いただそうと口を開こうと思ったその時だった。

 コンッコンッと小気味良いノックの音がドアから響く。

 

「失礼します司令!不肖、神無月入室致します!」

 

 軽快な声色で令をしながら入室してきたのは、金髪のロン毛をはためかせた背の高い美男子だった。琴里はなんだコイツか的な視線を神無月に送るが、彼は気にすることなく部屋の中ほどまで歩いてきた。

 

「変わりないようで何よりです、シン」

「カンナさん!御無沙汰してます。カンナさんも元気そうで」

「カンナ…?さん…??」

 

 にこやかな神無月の顔を見たと同時に、あの士道が姿勢を正してお辞儀をした。琴里はわけがわからず混乱している。

 

「アンタたち知り合いなの!?」

「ええまあ、彼がまだボーイだった頃に、少々と。実際会うのはドンペリの反逆(ドンペリベリオン)の日、以来ですから…一年ぶりくらいですかね」

「…ボーイ?ドンペリ?」

「カンナさんがいなきゃあの頃の俺はありませんでしたよ。ホント、あん時は世話になりっぱなしだったなぁ」

「ふふふ、今は神無月と呼んでくれて構いませんよ、シン」

「なら俺も士道って呼んで下さいよ」

「「ハハハ!」」

 

 乱立していく突拍子もない情報の数々に琴里の頭はパンク寸前だった。だが、なけなしの理性を振り絞り自分を置いて談笑する男どもに問いかけた。

 

「ハハハじゃないわよ!ちょっと待って。士道がボーイって何!?というか神無月にしろ令音にしろ、どうして士道とそんな親しげなのよ!」

 

 顔を真っ赤にしながら声を荒げる琴里。士道はやれやれといった調子で黙しているし、令音はそんな士道を横目で眺めていた。そんな中、神無月がここぞとばかりに琴里の前へと一歩進んで紳士的振る舞う。

 

「いえ司令。私が夜の街の、所謂オカマバーで働いていた頃に知り合った。それだけの話ですよ」

「夜の街…?オカマバーって!?アンタそんな経歴まであったの!?」

「ありましたとも!まあ今となっては良い思い出です。が、あくまでも司令と出会う前の話ですけどね!今は司令の一番の下僕が天職だと自負しております!!」

 

 ハリの有るいい声で神無月は言い切った。既に彼は地に手足を着けて四つん這いの姿勢で、琴里(ご主人様)からの叱咤(ご褒美)を心待ちにしている。

 琴里は冷めた目で足元にすり寄る神無月を全力で流す。神無月にはそれすらご褒美と化し、「あはぁ」と嬌声を垂れ流していた。

 

「それはどうでもいいわ。そんなことより!なんでそれが士道と繋がるのよ!?」

「それはシンが夜都神(ヤトガミ)と呼ばれた伝説のホストだったからだよ」

「は?」

「昔の話だ」

「琴里……まさか、妹なのに知らなかったのかい?」

 

 淡々と衝撃の事実を口にする令音に済まし顔の士道。止めの一撃を貰いどうあがいても理解できないので、そのうち琴里は考えるのをやめた。

 

「司令。司令!……ご主人様ぁ!!」

「ダメだ、どうやら頭がオーバーヒートしてしまっている」

「とにかくブリッジに行きましょう。士道くんの新しい仕事を説明するためにも!」

 

 機能を停止した琴里を神無月が引き摺りながら、一同は部屋を後にした。

 

 なお、琴里の受難は始まったばかりである。

 

 

 

 

† † †

 

 

 

 ブリッジと呼ばれる場所に辿り着く頃には琴里も頭を落ち着かせることが出来ていた。

 

 空中に投影されたモニターなどの近未来的な機器が立ち並び、半円状に配置された6つの座席にはそれぞれ人が腰かけて何やら作業をしている。

 そして一際目立つのは一段と高く設置された他よりも立派な座席だ。まさしくそこは艦橋(ブリッジ)であった。

 

 琴里はその艦長席ともいえる椅子に腰掛け、悠々と脚を組んでチュッパチャプスを口にする。そして改めて士道と対峙するのだ。

 内心は未だに落ち着かないが、ここは琴里にとってのホームグラウンド。言わば自分の領域だ。ここでなら遅れをとることなどないと、再び傲慢な態度で士道に話始めた。

 

「紹介するわ士道。ここにいるのは空中戦艦フラ―――」

「お久しぶりです、皆さん」

「―――クシナスの……ってまたぁ!!?」

 

 またもや琴里の予想を裏切り、士道は自らの部下である乗組員(クルー)たちと親しげに話始めた。「ここで何してるんですか」なんて当たり障りのない挨拶から始まり、気が付けば琴里の知らないことばかりを話している。

 

 士道が乗組員たちと簡単な話を終え、ブリッジをぐるりと一周してくる頃には琴里はゲンナリしきっていた。

 聴こえてくる話に耳を傾けていた結果分かったのは、士道は男性乗組員とは付き合いで相談相手によくなっていたらしく、女性乗組員とは接客で知り合ったようだった。

 無論、全てが琴里の知らない士道のホスト時代の出来事である。

 

 

「いかがしましたか、司令?」

 

 気持ち的に一回り小さくなった琴里に神無月が気を使って話しかける。琴里はため息をつきながらゆったりと士道を顎で指す。

 

「私の領域に持ち込んで、勢いのままにお兄ちゃんに仕事を引き受けてもらう計画が……」

 

 琴里の独り言のようなぼやきは、今日だけで自分の常識を大きく塗り替えられてしまったことに対する怨嗟のようだった。

 

 だがそんな妹の呟きをあの男はしっかりと聞き取っていた。

 

「この俺と対等に話そうったって無理だぜ」

 

 謎の自信に満ちた胸を張り、腕を組みながら士道は琴里に対して余裕の笑みを見せつける。

 あまりにも大人げない士道だったが、伊達ワルに目覚めた兄を嵌めようと企んだ琴里の完全敗北で、ある種の自業自得とも言える。

 

 それだけ五河士道という漢はオレ流を貫く者だったのだ。

 

「こんな……こんな筈じゃなかったのにぃ――――――!!!!」

 

 琴里の叫び声だけが空中戦艦フラクシナスの艦橋に木霊した。

 

 




デートアライブが今日、3月19日で八周年らしいです。今日知りました、とてもお目出度いですね!

てなわけで、次回もよろしくお願いします!

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