「ねぇ、本当に行くん?」
「ここまで来たんだから行かない選択肢はないでしょ」
「ちょっと有名な廃墟だからさ、ちょっと見ていこうよ」
ある夏の夜、人気のない山道を二人の女性が歩いていく。
その先にはネットで有名になった廃墟がある。
「去年はここの噂なんて無かったのに今年になっていきなり有名になるなんておかしいよ!」
「もしかして怖いの?」
「!・・・怖くなんて・・・」
「怖いならここで待ってる?それなら一人で行ってくるけど?」
そう言った瞬間、乗り気ではなかった一人の表情が固まる。
「それは嫌!一人にしないで!」
怖がっていた女性がもう一人に懇願するが、こうなることは計算していた。
「私達は行くから、一人になりたくなければ着いてくるしかないね」
「・・・もう、わかったよ」
「じゃあ早く行こ、ちょっと中見て帰るだけだし」
そう言って廃墟に向かうが、これが悪夢の始まりだった。
「なんか、いかにもなんか出てきそうだね」
「やっぱり帰ったほうが・・・」
そこには窓ガラスが割れ、所々に剥がれた壁や以前に来た人が書いたであろう『この先呪われ注意』等の落書きがある廃墟が奇妙なほど静かに鎮座していた。
「ここまで来たら中見てからにしよう、一階だけでも」
「・・・一階だけだからね」
諦めたように後ろについていくが、この時二人は廃墟の中から見られているとは全く気付いていなかった。
その頃、山の麓から四台の車が山頂へ向かって登っていく。
しかしそれは一般車の音ではなく周囲の空気を震わせるような音を出す改造車の集まりであった。
『今日はなんか式がいつも以上にざわつくんだがまた厄介者が侵入してるのか?』
『かもな・・・基本は調査だが状況によっては救助を優先、これを作戦Bとする』
『わかった』
『おいユウ!また当てただろ!』
『シュウがふらつくから当たっただけ!』
四台は無線でやり取りしているが、後にいる二人は所々リヤタイヤを故意的に滑らせるドリフトをして会話に混ざらない。
『ユウ、シュウ、お前らタイヤ残しとけよ?』
『タクさん、もうない・・・』
『俺も・・・』
『・・・リヤだけでも変えてから入ってこい』
『『了解!』』
一番先頭を走っているドライバーは深いため息をついてもう着くであろう目的地へ向かう。
その頃、建物内に入った三人は散乱した物や草などをよけながら先に進んでいた。
「予想以上に荒れてるね・・・」
「・・・廃墟だからね・・・」
「「・・・」」
二人とも怖さにより自然と無言になる。
「・・・何もなさそうだしもうそろそろ帰るか?・・・え?」
後を振り向くと後ろにいたはずのもう一人がいない。
「・・・あれ・・・え?」
その一人は無意識のまま歩いていた。
そして自我を取り戻した時には一人で真っ暗な廊下に一人で立っていた。
周りを見渡した時、廊下の奥から黒いなにかがズリッズリッと這ってくる。
「キャー!」
それの正体に気づいてしまった女性は思わず悲鳴を上げてしまう。
黒いものの正体とは全身黒焦げになった人間だったのだから・・・
そして廃墟内にいた全員と外にいた二人がその悲鳴を聞いた。
『全員!作戦Bに移行!』
『了解!』
『ユウとシュウは全車両のエンジンスタート!』
『了解!尚、二人ともタイヤ交換終了!』
『ケイ!現在地点と建物内の雑魚以外の対象は?』
『現在一階中央!霊体Aが二階に!予想レベルC!要救Aは一階西側、要救Bは二階中央!以上』
『要救A・Bはケイに任せる!対象に接触後連れて速やかに退避!霊体と要救Bは俺が何とかする!以上』
『了解!』
指令を出した男は建物内を把握しているように階段をすぐに上がり二階へ向かう。
だが、二階に上がる階段の所々が傷んで抜けているところもあり、上がるのにも一苦労である。
それでも何とか二階に上がるが、その場に踏み入れた瞬間に空気感が変わる。
「そこそこやべえなこれ・・・」
そう言いながらも男は歩みを止めずに歩いていく。
手当たり次第に各部屋を開けては確認をして進んでいき、廊下の角を曲がったところに地面に座り込んだ一人の女性を発見するが、すぐ前方に黒焦げになった人らしき物も見つけてしまった。
すぐさま状況を判断し、座り込んでいた女性を抱きかかえて元来た道を走って戻る。
「ケイ!要救B・霊体A双方発見!要救Bを連れて退散中!」
その少し前、一階を捜索していた男は前方に光を確認
「・・・人だな・・・大丈夫ですか?」
「・・・助けて・・・サチが・・・」
「二人で入ったんですか?」
「うん・・・」
「もう一人がサチさんを探しています」
『ケイ!要救B・霊体A双方発見!要救Bを連れて退散中!』
「了解!こちらも要求A発見!退散します!・・・さあ行きましょう」
そう言って手を引いていく。
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