このファランの騎士に祝福を   作:カチカチチーズ

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(最新話)



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一抹の不安は言葉無く

 

 

 

 

 

 ファランの不死隊、深淵の監視者。

 そう、呼ばれている不死人である俺は当然のことだが、対人戦の経験は充分ある。何せ、俺にダークリングが生じ、不死人となってしまって学院や家からも追放されたのだから行く当てもなく兄弟らに拾われるまで一人放浪していた。その過程で不死人である俺に対して襲い掛かる人間や道中で野盗に襲われるという事が何度もあった。

 襲われているのに、どうして無抵抗である必要があるのか。魔術などを利用してそういった対人戦を熟していき、不死隊となってからは不死隊としての役目を行うために邪魔となる障害を排除してきた。もちろん、この排除というのはそういう事だ。

 俺たちは俺たちに武器を向けてきた相手を赦すほどお人好しではなかった。

 

 という事もあり、対人戦にはそれなりに慣れていると自負しているわけだが……

 

 

「ふむ」

 

「ん?どうしたのパーシヴァル?」

 

「いや……」

 

 

 何か俺の溢した声で心配してくれたのか、先導するクリスが振り向き声をかけてきた。俺はその心配な声に気にするな、と返そうとしたがやや言葉に詰まってしまう。

 何故なら、彼女の声自体はいつも通りの彼女らしいというべきか、やや軽い声音だがそれを口にした彼女の目の奥にはやはり、クリスというよりも我が女神の優しさが垣間見えた。どうやらクリスとしてはともかく女神としては心配なのだろう。

 恐らく、その心配は今回の依頼というかクエストが原因だろう。

 

 

「…………あの、さ、私らで行ってこようか?今回の依頼」

 

 

 返答が歯切れも悪くそして、詰まってしまったからだろう。表情はいつも通りであったクリスだが、少しずつそれも心配そうなモノへと変わっていき、思わず俺も布の下にある口を噤んでしまう。これはいささか不味い。

 

 

「いや、違う。確かに心配事がありはするのは間違いない。だが、それはクリスがそう心配することではない、安心してほしい」

 

 

 そう、彼女に答えながら俺は今どうして、このような状況になっているのか、そもそも今回のクエストを受けた経緯を思い返していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ファランの不死隊であり、女神エリスの騎士であるパーシヴァルは朝も早いうちに利用している部屋を後にし、開いたばかりの冒険者ギルドにていつも一党で利用しているクエストボードからやや外れたテーブル席に着き、ウェイトレスに朝食として軽食を注文して、テーブルの上に布を広げその上に先日調達した投擲用の短剣を一振りずつ並べていく。

 縦三列、横約十六本ずつならべたそれらを一瞥してから、手元に用意していた麻紐を引いて並べられた短剣から一本一本手に取ってはしっかりと刃が固定されているかを確認して確認を終えればその柄に麻紐を巻いていく。

 魔術を習得しているとはいえ、基本的にパーシヴァルは前衛だ。守りはダクネスに任せてはいるが彼女は基本的に空振りだ。となれば、攻撃役は自ずとパーシヴァルかクリスとなる。だが、クリスはあくまでシーフであり生粋の前衛ではない。

 故に血濡れとなるのは必然パーシヴァルであり、そうなった時に投擲をしようとしても自分の指が血濡れではうまく投擲どころか、引き抜く事すら危ういだろう。そう、嘗ての経験もあってパーシヴァルはこうして投擲用の短剣ないしナイフを調達すればこうして、空いた時間を利用ししっかりと使いやすいように整えていた。

 その際に短剣がしっかりとしているかを確認するのは、別段このアクセルの街の鍛冶屋を信頼していないというわけではない。単に不死隊として動いていた時の名残というもので、当時は既に何度か使ったものを回収した所謂中古品や粗悪品を仕入れ真っ当な品と同等の値で売りつけるといった商人がいたわけで、その頃の名残でしかない。むしろ、こちらに来てまだ数回しか足を運んでいないが、パーシヴァルは鍛冶屋の親方の腕を信頼している。

 だが、それはそれ、これはこれ、という奴で自分が使いやすいように多少の工夫を挟むというモノだ。

 そうして、並べられた短剣全てに麻紐を巻き、綻びがないことも確認したパーシヴァルがそれらを片付け始め

 

 

「おっはよう、パーシヴァル!」

 

 

 た、頃合いにそんな元気のいい声をあげながらパーシヴァルの対面の席にクリスが座り、それと同時に注文を持ってきたウェイトレスに同じものを注文していく彼女をパーシヴァルは口もとの布をずらしながら挨拶を返す。

 

 

「いやあ、それにしてもいつ見ても準備にしっかりしてるよね」

 

「当然だ。大なり小なり、命に関わるからな。こういう隅をつついているかもしれないが、生存力を高めるのならやったほうがいい。まあ、お前に言った所で荷物を増やして速度が落ちるなんてことが起きたら事だが」

 

「いやいや、流石にそんなちょっとやそっとじゃ変わらないよ。でもまあ、流石にキミみたいにこうたくさん持ち歩かないけど……」

 

 

 そうか。

 そう、クリスの苦笑交じりの言葉に、軽く笑いつつ頼んだサンドウィッチを摘まみ口にしていく。片手で食事をしつつ空いている手で短剣を片付けていき、ふと視線を正面のクリスからずらせば、クリスも視線が動いたのを気になったか、パーシヴァルの視線の先へと振り返りつつ見てみれば、そこには今来たのだろう親友であるダクネスの姿があり、彼女も二人に気が付いたか挨拶がわりに軽く手を挙げてやや早歩き気味で、パーシヴァルらのテーブルへと合流した。

 

 

「おはよう、クリス、パーシヴァル。二人とも早いな」

 

「おはよう、ダクネス」

 

「ああ、少し早くに起きたのでな」

 

 

 互いに挨拶を交わしてクリスの隣にダクネスが座り、ちょうど運ばれてきた朝食にクリスが口をつけ始め、ウェイトレスに確認されたダクネスはどうやら既に朝食を取っているようで断っていく、そんな様を見つつ先に朝食を食べ終えたパーシヴァルが視線を一度二人に向けてから話を切り出していく。

 

 

「それで、今日はどうする」

 

「私は既に予定も終わっているからな。問題ない」

 

「んー、私も大丈夫かな。そろそろキャベツの時期だけども、稼げるところで稼いでおきたいし」

 

 

 となれば、話は早い。

 先に食事を終えた、パーシヴァルが席を外してクエストボードへと向かい、その間にクリスはサンドウィッチを食べつつダクネスと近況について話していく。

 それもほどほどに話し終え、クリスの食事も終わったころ合いでパーシヴァルがボードより戻ってきた為に一党は貼られていたクエストについて情報を共有していく。

 

 

「ええっと、オークにマンティコア、あといつものジャイアントトード」

 

「ほう、ゴブリンの群れと野盗か」

 

「ああ、他にも幾つかあったが、まあどれもこれも普通なモノばかりだ」

 

 

 パーシヴァルから伝えられたクエストの内容に各々の反応を示しつつ、クリスとパーシヴァルは同タイミングでその視線をダクネスへと向けた。案の定、ダクネスの表情は思案するようでありながらもその口端が僅かににやけており、先ほど口にしたクエストの目標からして何やら如何わしい彼女らしいことを考えているのが既に二人には看破されているが、二人は口に出さず、クリスはやれやれとため息を吐き、パーシヴァルは口の布を直し始めていた。

 そうしている間にひとまずの妄想から戻ったのか、なにやら鼻息をならす勢いでダクネスが

 

 

「やはり、ここは野盗だろう。既に被害も出ているらしい。騎士としてこの様な狼藉は見過ごせない!」

 

「(それっぽい理由だ……でもまあ、ダクネスも騎士としての誇りはあるだろうし)」

 

「まあ、そうだな」

 

 

 ダクネスの力説にクリスはらしいな、と胸中で考えてパーシヴァルは女神の騎士として、騎士という事を出されればそれに賛成するしかなく、おのずと流れはこの野盗についてのクエストを受注するモノになっていた。

 そうして、改めて一党がボードの前でクエストについて確認を始めれば、そこに記載されていたのはあくまで今回の野盗退治は野盗を捕らえ役場に突き出すというモノ。人数はやや多いがしかし、この三人であれば決して難しいものではない。何より、パーシヴァルの実力を良く知っているクリスは問題ないだろうと判断して─────

 

 

「…………」

 

 

 マスクと布、そして立たせた襟のせいで基本的に表情を伺う事の難しいパーシヴァルのそのマスクから覗く瞳が僅かに揺れたのを見て、クリス、エリスは何か形容しがたい不安感が自分の中に滲みだしたのを感じていた。

 

 

 

 

 

 

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