このファランの騎士に祝福を   作:カチカチチーズ

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身を窶せども人は人

 

 

 

 

 

 アクセルの街から馬車を使って一時間程度街道を進んだ場所にある牧場を介して伸びていく街道の中に森林の中を通るモノがある。

 その街道こそが、今回パーシヴァルらが受けた依頼の目的である野盗らが出没する街道なのだが、わざわざそこを通って野盗を探す、もしくは待ち構えるなどという作戦をパーシヴァルらは選ぶはずも無く、森林へと足を踏み入れた時点で当初の予定通りにクリスが自身の盗賊スキルの敵感知を潜伏と同時に発動しながら森林内部を軽く駆けていく。

 彼女の華奢な容姿と服装が相まって、少年と見られ侮られる事もある彼女であるが、クリスの盗賊としての技量や冒険者としての実力は高く、何人いるのか正確な数が分からない盗賊たちのホームとも言える森林内を一人で斥候として行動するのは普通ならば危険極まりない選択であるが、充分に問題なく目的が遂行出来るとダクネスとパーシヴァル両人が信頼し任せていた。

 それと同時にパーシヴァルとダクネスは街道に沿うように森林の外寄りを早歩きで進んでいく。

 

 

「───パーシヴァル」

 

「問題ない、今のところスキルの範囲内に野盗はいないな。恐らく、軒並み根城だろう」

 

「む、そうか……フフ、つまり、意気揚々と野盗達のアジトへと踏み込んだものの数の暴力によって、騎士の誇りも冒険者としての誇りも、そして乙女の純潔も不特定多数の男たちの欲望の手で蹂躙されて……ッ!!」

 

 

 パーシヴァルに対して、周囲の野盗たちないしモンスターの存在の有無を確認したダクネスは、パーシヴァルの返答を聞いて途端に妄想を始めた彼女をパーシヴァルは何も聞かなかった振りをしつつ、懐からこの辺りについての簡易的な地図を取り出して周囲の地形を確認していく。

 街道を挟んで東と西。

 既にクリスと共に調べた事前情報から、山が存在する西側、ただ森林と平原があるだけの東側の中で古びた洞窟があるという西側にこそ盗賊の根城があるとパーシヴァルとクリスは予想を立て分かれた上で盗賊を探すと決めていた。

 既にスキルの範囲の広さからして、パーシヴァルは街道付近に野盗が居ないことを看破し、地図を懐へと戻す代わりに次に取りだしたのは一つのピアス。

 小指ほどの大きさの結晶がはめ込まれたソレは魔道具の類であり、対であるピアスの位置が分かるというモノ。今回二手に一度分かれて行動するということからクリスが用意した代物だ。

 

 

「ふへへへ……っは!?パ、パーシヴァル……行くのか?行くんだな!?」

 

「…………」

 

 

 ピアスを取り出したパーシヴァルに気づいたのか、妄想で涎を垂らし始めていたダクネスは懐から出したハンカチで涎を拭いながら、しかし決してその表情は普段通りのモノに戻っていない。

 変わらず、頬は上気しているし、瞳はもう欲望が見え隠れしてしまっている。

 そんなダクネスの姿に、思わずパーシヴァルは目頭を抑えながら空を仰ぎ、どこか遠い目をしたと思えば直ぐに雑念を振り払い、ピアスを起動させる。

 軽くため息をつきつつ、ピアスを起動したパーシヴァルの姿にダクネスは軽く深呼吸を行ってから意識を切り替え、いつも通りの表情へと戻し

 

 

「パーシヴァル。罠はどうするつもりなんだ?」

 

「問題ない。クリスから、罠感知のスキルを習得している」

 

「なるほど、分かった。先導は任せた」

 

「ああ」

 

 

 短い返事にダクネスが頷いたのと同時にパーシヴァルがピアスの反応を頼りに森林を走り始め、それをダクネスが追従していく。

 街道沿いの浅い部分を外れたからか、途端に木々や草々が増えていきパーシヴァルとダクネスの視界を悪くし、地面もけもの道にもならずそして根ばかりの悪路へと変わっていくが、ダクネスは経験を積んでいる冒険者でありなおかつこの程度の悪路であれば適度に気持ち良くなっている可能性が無きにしも非ずであり、パーシヴァルに関してはこんな悪路などものともせず踏破していく。

 道中、パーシヴァルが発動しているスキル・罠感知により、野盗らが仕掛けている罠を即座に看破していく。

 

 

「ダクネス、前方に鳴子がある。足元に気をつけろ」

 

「ああ、了解した」

 

 

 ピアスの反応も近くなってきた頃合で感知した罠をダクネスに伝えパーシヴァルが罠である鳴子に繋がる縄を跳ぶように回避すれば、ダクネスもそれに続いて回避していく。

 ここで鳴らせば〜などという思考回路は今のダクネスにはない。スライムや触手などによる足止めトラップであればもしかすれば嬉々として作動させた可能性もあるが…………。

 と、そんな風なあくまで侵入者などの存在を知らせる用の罠を幾つか回避していくと、二人の視界に森林内部だと言うのに比較的開けた場所があるのを確認したと思えば、パーシヴァルはその速度を緩めてそのまま薮を抜けるなどということはせずに近くの木の影へと膝を着いて姿勢を低くする事で潜めば、ダクネスもそれに習うようにし、影からそちらへと視線を向ける中でパーシヴァルは一言、

 

 

「───クリス」

 

「特にこれといって出入りはないよ」

 

 

 名前を呼べば、すぐ近くの木の影からクリスの声が返ってくる。

 既にピアスの反応からすぐ近くにいるのが分かっていたからこその行動であり、すぐ横に移動してきたクリスは少し前からこの場にいて得た情報をパーシヴァルとダクネスに共有していく。

 三人の視線の先、森の中で開けたソコは件の古びた洞窟が口を開けており、その周囲には野盗たちが拵えたのだろう簡素な柵と、見張り番の様子が見て取れた。

 

 

「時々、見張り番と話しにくるのもいるけど、見た限りじゃあ六人か七人。中にあと何人かいるのは間違いないけど……正確な数は分からないかな」

 

「確か、襲われた商人によればだいたい十人より少し多い、らしいが……パーシヴァル、どう思う」

 

「…………数は、問題ない。少なくとも、洞窟内だ。そんなにいっぺんには来れないだろう。背後、つまりは洞窟の入り口と横穴からの襲撃に気をつければ、だが…………燻すか」

 

「「それはやめようか」」

 

 

 三人で最終確認をしていく中で、パーシヴァルの呟いた案を耳にしたダクネスとクリスが異口同音の即答で切り捨てつつも、三人の話し合いは続いていく。

 途中、クリスからの心配する様な様子を伺う様な視線をパーシヴァルは感じ取りながらもソレを意図的に無視し、自身の指先を投げナイフへと這わしていく。

 それをクリスとダクネスは見逃す事はないが、二人とも咎める事はなく、逆に何時でも動ける様に準備を整え始める。

 

 

「誘拐されたって、話は聞かないから人質とかは多分、ないはず。わかってると思うけど、しっかりと捕まえてギルドに突き出すまでが依頼だからね」

 

「肉か、んんッ、盾役は任せろ」

 

「分かっている…………やり過ぎないように、するとも」

 

 

 クリスの最終確認に、ダクネスは一瞬欲望がこぼれ落ちそうになりつつも直ぐにクルセイダーとして取り繕い、パーシヴァルは口元の布を軽く上げてから返事をする。

 最後に互いを一瞥して────

 

 

「あっ?」

 

「え、痛っ───」

 

 

 洞窟の見張り番であろう、二人組の男の膝と腿にナイフが深々と突き刺さり、二人の意識が完全にそちらへと向く。

 視覚がそれを認識し、悲鳴をあげるまでの刹那、藪の中から飛び出し加速したクリスが速やかに見張り番の二人を俯せに地面へと伸す。

 それを尻目に、パーシヴァルはナイフを投擲した手でそのまま独特な形状の短刀を引き抜く。ファランの大剣は洞窟内ではあまりに不向きであるのは当然であり、そもそも殺してはいけないのだから。

 

 

「(殺すな、か。…………そう、だな……ここは俺たちの世界ではないんだ)」

 

 

 瞳を濁らせながら、自分の胸中で僅かにピリつく様な感覚をパーシヴァルは覚えながら、野盗たちの巣窟へと足を踏み込んでいった。

 

 

 

 






 どうも、お待たせ致しました。
 仕事も忙しくなり、段々と執筆する機会が取れなくなってきた中、筆を半ば降りかけていた最中に、皆様の感想を見て残り火を燃やす事が出来ました。
 これからも頑張りたいと思います。

 
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