純愛の名の下に   作:あすとらの

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人力儚いBOT、薫様。

え?そんなBOTない?

ぶっちゃけ似たようなもんやろ(小並感)

前半はいつもの薫様、中盤から後半にかけては真面目な薫様となっています。


瀬田薫の迷妄(表)

前略、月島まりな様。

 

ほんの10年前は無一文で天涯孤独だった私ですが、何の因果か今は友達のうち100%が異性でこざいます。ええそうです、出会った当初は可愛げのない子供だった私も、人並みの感情で人並みの生活をする子供になれました。

 

世の中には、異性と上手く喋れないと仰るセンチなティーンエイジャーもいらっしゃるらしいです。正直私にはそれが分かりませんが、それも人並みでしょう。

 

が、しかし。

 

「京!京!ああんもう、一緒に星を見ましょう!ねえ〜京〜!」

「けーくん!今ならハロハピのみんなも一緒だよぉ〜!」

「ルイーザ・メイ・オルコット曰く、雲の向こうはいつも青空なのさ。というわけで京君、共に青天の霹靂を五感で感じようじゃないか」

 

神の悪戯かは存じあげませんが、友達の友達はおかしな人ばかりです。

 

 

 

 

 

 

友達を選ぶ、というのは贅沢である。既に友達100人できるかなのうち四分の1を達成している京が話すと凄まじい嫌味に聞こえるが、これは紛れもなく彼自身の思想である。

 

一緒にいて楽しい楽しくない含め、相性はあるだろう。だがそれは、改善しない言い訳にはならない。結局のところ人間関係の良し悪しなど、本人達がどれほど努力をして、それをどれほど積み重ねたかによるのだ。友達を選ぶなんて贅沢がまかり通るのは、自分の友達として相応しい人間ではないなどという、エゴなのだ。

 

が、しかし。

 

「やあ」

「……………」

 

限度というものが、万事には存在するのだ。

 

「おおっと、閉めないでおくれ。なに、恥ずかしがることはない。共に宇宙の星々の脈動を感じようじゃないか」

「……………」

 

瀬田薫。友人、と呼べるかどうか、この際それは隅に置いておくとして、京としては、一対一で会話をするという環境においては彼女が一番()()

遠目から見れば、知的な雰囲気漂う王子様系の格好いい女性。しかしこうして近くで会話をすれば、話すことはとんちんかんそのもの。偉人の名言は使い所や意味を間違えるわ、好んで読む哲学者の意味を理解出来ていないわ、ナルシストなせいでそれに自覚がないわ。常識人の皮を被ったバカ、ハロハピ三馬鹿の一柱である。

 

「そんなに照れなくていいじゃないか。私は尊き友人と迷える子猫のためなら、こうして自ら出向くこともやぶさかではないんだよ?」

「それは光栄でございますが。同じバンドの面々はどうしたのです?」

「ああ、彼女達かい?こころとはぐみは快諾してくれたのだが、どうにも花音と美咲はシャイでね」

「………あっ、そう、ですか」

 

とにかくこの瀬田薫という女性は、ナルシズムに染まってしまっているが、その自信はまったくの空想というわけではないのが、またきまりが悪い。彼女は演劇分野においては天才的で、そこもファンが集まる理由なのだ。顔だけではない。

 

「話を戻そう。どうだい?参加してみたくはないかい?」

「……………そうですね」

「その返事が聞けてよかった。時間は追って伝える。それでは、さらば」

 

そうして颯爽と去っていく彼女は、去り際も完璧だったとしか言えない。

 

「………天体観測の話ですよね?」

 

やたら表現が詩的だったせいで、本筋からズレかけたことに首を傾げた。誘うなら普通に誘えよというのは、まあ野暮である。彼女にとってはあれが普通なのだから。

 

 

 

 

「京!もう、遅いわ!」

「けーくんったら朝型さんなのかな?」

「いいじゃないか。人生とは自分を見つけることではない。人生とは自分を創り出すことだと、かのバーナード・ショーも話している」

 

来たはいいが、何ともカオスだ。女性が3人寄れば姦しいとは言ったが、この組み合わせは京にとっては荷が重い。ハロー、ハッピーワールドの緩衝材こと奥沢美咲か松原花音が欲しいところだが、無い物ねだりは愚者しかしない。

 

「今日は雲がなくてよかったわね」

「そうですね」

「元気がないわね」

「今何時か分かってますか?夜の11時ですよ?明日学校なんですよ?貴女達、マジで何してるんです?」

 

こころは少し憂うようにして、彼女らしくない重々しい口調で告げる。

 

「あたしはあんまり貴方の事をよく知らないから、お話して仲良くなりましょ?今回は、あたしの好きな事に付き合ってほしいの」

 

誘いという名目でごり押しされ、日付けの変わり目を臨む時間帯に呼び出され、突然仲良くなりたいと言われ、趣味に付き合えと言われる。それでも恨めないのは、彼女の人柄なのだろうか。

 

「ねえ京、あれは何?」

「獅子座」

「ねえねえけーくん、あれは?」

「乙女座です」

「京、あれは?」

「うしかい座………いやちょっとタイム」

 

興奮した様子で変わる変わる望遠鏡を眺める3人に対して、京は光度や色彩、一等星の配置で予測をする。が、しかし、本人はまったく楽しめない。当然だ。図鑑で得た事を実際にやっているに過ぎない。だが、それの何にハマったのかは知らないが、テンションが下がる様子がまったくない。

 

(わからない)

 

ツボがまったくわからない。置いてけぼりになったような感覚だ。

 

「少し休みます」

「疲れたの?」

「ええ、少し。あとは皆さんでお楽しみください」

「私が付き添おう」

「いえ、構いません」

「私が構うんだ。二人は楽しんでいてくれたまえ」

「そう?だったら薫に任せようかしら」

「薫くん、よろしくね」

 

離れてもいいなら、ますます連れて来た理由がわからない。別に電話でもよかったじゃないかと愚痴をこぼしながら、少し離れた位置にあるチェアに腰掛ける。テーブルを挟んで向こう側には薫が座った。

 

「すまないね。彼女は見ての通りお転婆だから、こうして人を振り回してしまうんだ」

「それは分かっています。誘いに乗ったのは私ですから。ただ………本当に疲れてるだけです」

「フフフ。そうか。君は優しいんだな」

 

足を組んで頬杖をつき、優雅な様子で紅茶を………加糖のそれを飲む薫は、視線を合わせずに京と話す。彼もまた、はしゃぐ二人を遠目で見ながら話していた。

 

「優しい………そうでしょうか」

「そうさ。行かない言い訳なんていくらでもあるだろうに、しっかり誘いには乗るんだな」

「………まあ、はい。そうですね。そういう風になるんでしょうか」

 

彼にはどうしても分からない。それほどまでに天真爛漫で人を惹きつける魅力に溢れた彼女が、バンドというものにこだわる理由が。こころは不自由などない筈なのに、普通の友達というものにこだわる理由が。その真意が知りたかった。金持ちの道楽なのか?それとも彼女自身が心の底から願っているのか?

 

「私も、友人がほしかったので」

 

しかしそうは言わなかった。

 

「………そうか」

 

しかし、そのシンプルな答えを考えるようにして、やや萎んだ声が薫から出る。

 

「私はね、どこまでも純真無垢な彼女が、好奇心だけでどこまで突き進むのかが知りたい。打算だとか、そういったものを度外視できる彼女がどんな物語を紡いでいくのか。そこに興味があるんだ」

 

視線を感じたと思い彼女の方を向くと、薫はジッと京の方を見ていた。彼が彼女の方を向くと、ちょうど目が合った。

 

「悪趣味ですね」

「そうかい?そそられるじゃないか」

「私はただ、人付き合いをしているだけです」

「そうか。それは私ともかな?」

「………何故、そのような事を聞くのです?」

「いや、君とは他人の気がしなくてね。お互いに、自分の感情に正直だ。そうだろう?」

 

薫がどうして満面の笑みを浮かべるのか。それもまたわからなかった。

 

「白鷺さんの話では、貴女は変わってしまったとの事ですが」

「………京君は、滑稽だと笑うか?」

「いいえ」

「では私には、何が足りないのかな?」

 

白鷺千聖の名前を出すと、彼女は悲しげに笑った。自嘲も含まれているのだろう、滑稽だという言葉を彼女から聞くのはこれが初めてだった。お悩み相談なんてガラじゃないが、といくらか乗り気ではい気持ちを消して、話すべきを話した。

 

「………貴女は聡明で、優しい人です。だからこそ思考という枷のせいでそうならざるを得なかった。人には後ろめたい過去くらいあります。それを引きずるばかりでは前に進めない。貴女に足りないものは、()()()です」

 

慰めるでもない。そんな優しさのようなものではなく、京は求められたのみを答える。彼女はフッと、吹っ切れたように笑った。

 

「いや、柄にもない。美咲が、お悩み相談するなら京に限ると強く推していたものだから、つい私もやる気になってしまったよ」

「軽いノリでそういうムードに引っ張るの、やめてもらっていいですか」

「悪かった、悪かった。そんなに起こらないでおくれ。友人として、ちょっとした相談みたいなものじゃないか」

「………まあ、はい。それじゃあそれでいいです」

 

なんだか馬鹿みたいだ、と頭を抱える。彼女もまたどこか荒唐無稽に見えて、本質的には人をからかうタイプなのかもしれない。

 

「でもよかった。悩んでいるのは本当だからね、こころやはぐみでは、ああいった答えは得られなかっただろう」

「彼女達と比べられるのは心外ですが………嬉しいです」

「そう、お礼は素直に受け取らなければね。そうだ、お返しと言ってはなんだが、君の悩みも教えてくれたまえ。私が解決してあげよう」

「偉人の格言でどうにかするおつもりですか?」

「ふふふ。まあ、話してみなさい」

 

イエスともノーとも言わないのか。胡散臭い占い師にでも引っかかったような、そんな心境だった。

 

「………最近の悩みですか。Roseliaの面々の強襲が増えた事以外は、特にこれといったものはありませんが」

「………強襲?」

 

そこは素直に訪ねてくれたではいかないのか、と不思議に思う薫だが、しかし。そういえば、と省みると、確かに今井リサをはじめとする保護者組は年々過激になっている感が否めない。

 

「私には理解しがたいのですが、それが彼女にとっての趣味と言いましょうか、やりたいことと言いましょうか。そういったものと同列のような気がしてならないのです」

「それはまた、随分と贅沢な悩みじゃないか。好かれるのはいい事だ。嫌われるよりずっとね」

「そんな事はわかってます。が、私とて同じ学生という身分です。彼女達におんぶに抱っことなれば、それがズルズルと引き伸ばされてしまう感じがして」

 

そして危惧しているのは、それが常習化してしまうこと。薫も、悩みは贅沢だと言ったものの、確かにこれは深刻だと思い直す。彼の望みならば受け入れてしまうだろう。そういう意味でも、甘いのだ。いずれそれが常態化すれば行き着く先は………

 

「………考えただけでも恐ろしいな」

「でしょう?」

 

それはそれで、保護者にとっては望むところなのだろうが、彼はそれを受け入れるには些か常識的過ぎた。

 

「どうでしょう。このお悩み、解決出来ますか?」

 

解決出来るものならしてみせろ、という挑戦的な言葉である。そうとなれば、受けて立たなければならないというもの。

 

どう答えるべきだろうか。受け入れた方がいい?一言言って突っぱねるべき?いや、そうであってはならない。彼も思いつかないような、斜め上から回答を与えなくてはからないのだ。彼がやったのとはまた別なように。そして、天啓のように閃いた。

 

「ありがとう、とただ一言言えばいいさ」

「……………?……………??」

 

彼は結構顔にでる。難題にぶち当たるとそれが顕著だ。

 

「答えを持ってきてくれたまえ。期待しているよ。シェイクスピア曰く、楽しんでやる苦労は苦痛を癒すのだ」

 

遠くで、こころとはぐみが京と薫を呼ぶ声が聞こえた。




筆者が趣味で読んでるweb小説でも、中々の確率で偉人の名言が引用されたりしてますが、実際結構意味違ってるのがあります。何でそんなに使いたがるんでしょうね?教えて偉い人。
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