小さい頃から、男の子がするような遊びが好きだった。
幼稚園の頃は、おままごと中に隙を見て抜け出して、男の子の秘密基地ごっこに合流しに行くような子だった。
だからなのかな、すっかり女の子になってしまった高校生の私が中古のホビー店でベイブレードを買ったのは。
私の名前は西念幽子。個人的には珍しい苗字だと思う。さいねん。
サイキックファントムをこよなく愛するブレーダーの端くれ。
趣味は、近所のショップで開催される大会に参加する事。昔は準決勝まで行けたりもしたんだけど、今は全然。1勝出来ればいい方。
ベイブレードも新しいものに移り変わって、私のサイキックファントムはどんどん勝率を落として行った。
「それでも、やっぱり大会は辞められませんよね」
ぽつり、と呟いてお店の中に入る。いつもは閑散としてるショップも、今日は小学生から高校生まで数十人が詰め掛けて大盛況だ。
大会に出るのは私を含めて20人ほど。
このお店の大会は1on1。小さい子でも参加しやすいようにという店主の意向らしい。
クジでトーナメントが決まり、私は指定のスタジアムの前へ。
目の前に来たのは中学生位の男の子。その手には超Zヴァルキリー。
うへぇ、今回は1回戦負けかな。まあやるだけやってみよう。
「よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いしますっ」
男の子は緊張しているみたいだ。まあ、女性ブレーダーって珍しいし、何となく気持ちはわかる。
ライトランチャーにファントムをセットする。素直にスピンフィニッシュ狙いでもいいんだけど、ダッシュ系のドライバーって持久力もあるからなぁ……うん?
「……気のせい?」
今、ファントムが紫色に光ってたような……
いや、気のせいじゃない。私の目には確かにファントムが紫色のオーラを放っているように見える!
いけるかもしれない。根拠はないけど、今のファントムなら……
「二人とも、準備はいいかな?」
審判役の店員さんが来て、いよいよバトルが始まる。
うん、気分が乗ってきた。そうだ、友達の弟君と遊ぶ時にだけやってるアレ、せっかくだしやってみようかな?
「3、2、1、GO…シュートッ!」
「消し飛べッ!!」
掛け声と共にベイを射出した瞬間、ファントムに宿っていた紫色の光が、赤と青の光に、そして私の右手の左手に乗り移って迸る。
ファントムはスタジアムに着地すると僅かに跳ね、そして加速溝に向かおうとするヴァルキリーを強襲した!
懇親のスマッシュ攻撃を受けたヴァルキリーは乗りかけた加速溝から外れて軌道が変わり、スタジアムの外へと落ちていった。
「おお……」
「すげえ、ファントムで?」
若干ざわめくギャラリー。そして私のファントムは、勝利を誇示するようにスタジアムを回り続けている。
「勝っ、た?」
「勝者、西念幽子ちゃん!」
店員さんの宣言。ああそうだ。私はこの瞬間が最高に気持ちいいから、この遊びを辞められないんだ。
行ける。今日の私とファントムなら、大会の優勝も見えてくる。
そう思いながら、私は周囲のギャラリーに合流し、行われる次の試合に目を向ける。
「うぉおおおっ!!」
刹那聞こえた、ギャラリーの歓声、プラスチックと金属が散らばる音。ベイブレードバーストの醍醐味、バースト勝ちが起こったのだ。
バラバラになった方のレイヤーは、ブシンアシュラ。先日発売されたばかりのGTレイヤー。そしてそれをバーストさせたのは……
「…うそ、ドラグーンF!?」
「いよっしゃああ!!」
私の驚きと同時に、勝利の雄叫びが上がる。恐らくはドラグーンの使い手であろう、青髪の女の子。
二連続の番狂わせに湧くギャラリー、興奮する店員さん。
そんな中で、青髪の子と目が合った。
彼女はトーナメントの逆側。もし決勝まで残れたら、ぶつかるのはこの子とになるだろうと、私はそう確信した。