西念幽子ちゃんと鉄溶龍子ちゃんの小説   作:春宮 祭典

1 / 3
第1話 死霊と青龍の邂逅

小さい頃から、男の子がするような遊びが好きだった。

幼稚園の頃は、おままごと中に隙を見て抜け出して、男の子の秘密基地ごっこに合流しに行くような子だった。

 

だからなのかな、すっかり女の子になってしまった高校生の私が中古のホビー店でベイブレードを買ったのは。

 

私の名前は西念幽子。個人的には珍しい苗字だと思う。さいねん。

サイキックファントムをこよなく愛するブレーダーの端くれ。

 

趣味は、近所のショップで開催される大会に参加する事。昔は準決勝まで行けたりもしたんだけど、今は全然。1勝出来ればいい方。

 

ベイブレードも新しいものに移り変わって、私のサイキックファントムはどんどん勝率を落として行った。

 

「それでも、やっぱり大会は辞められませんよね」

 

ぽつり、と呟いてお店の中に入る。いつもは閑散としてるショップも、今日は小学生から高校生まで数十人が詰め掛けて大盛況だ。

大会に出るのは私を含めて20人ほど。

 

このお店の大会は1on1。小さい子でも参加しやすいようにという店主の意向らしい。

 

クジでトーナメントが決まり、私は指定のスタジアムの前へ。

目の前に来たのは中学生位の男の子。その手には超Zヴァルキリー。

 

うへぇ、今回は1回戦負けかな。まあやるだけやってみよう。

 

「よろしくお願いします」

「よ、よろしくお願いしますっ」

 

男の子は緊張しているみたいだ。まあ、女性ブレーダーって珍しいし、何となく気持ちはわかる。

 

ライトランチャーにファントムをセットする。素直にスピンフィニッシュ狙いでもいいんだけど、ダッシュ系のドライバーって持久力もあるからなぁ……うん?

 

「……気のせい?」

 

今、ファントムが紫色に光ってたような……

いや、気のせいじゃない。私の目には確かにファントムが紫色のオーラを放っているように見える!

 

いけるかもしれない。根拠はないけど、今のファントムなら……

 

「二人とも、準備はいいかな?」

 

審判役の店員さんが来て、いよいよバトルが始まる。

 

うん、気分が乗ってきた。そうだ、友達の弟君と遊ぶ時にだけやってるアレ、せっかくだしやってみようかな?

 

「3、2、1、GO…シュートッ!」

「消し飛べッ!!」

 

掛け声と共にベイを射出した瞬間、ファントムに宿っていた紫色の光が、赤と青の光に、そして私の右手の左手に乗り移って迸る。

 

ファントムはスタジアムに着地すると僅かに跳ね、そして加速溝に向かおうとするヴァルキリーを強襲した!

 

懇親のスマッシュ攻撃を受けたヴァルキリーは乗りかけた加速溝から外れて軌道が変わり、スタジアムの外へと落ちていった。

 

「おお……」

「すげえ、ファントムで?」

 

若干ざわめくギャラリー。そして私のファントムは、勝利を誇示するようにスタジアムを回り続けている。

 

「勝っ、た?」

「勝者、西念幽子ちゃん!」

 

店員さんの宣言。ああそうだ。私はこの瞬間が最高に気持ちいいから、この遊びを辞められないんだ。

 

行ける。今日の私とファントムなら、大会の優勝も見えてくる。

 

そう思いながら、私は周囲のギャラリーに合流し、行われる次の試合に目を向ける。

 

「うぉおおおっ!!」

 

刹那聞こえた、ギャラリーの歓声、プラスチックと金属が散らばる音。ベイブレードバーストの醍醐味、バースト勝ちが起こったのだ。

 

バラバラになった方のレイヤーは、ブシンアシュラ。先日発売されたばかりのGTレイヤー。そしてそれをバーストさせたのは……

 

「…うそ、ドラグーンF!?」

「いよっしゃああ!!」

 

私の驚きと同時に、勝利の雄叫びが上がる。恐らくはドラグーンの使い手であろう、青髪の女の子。

 

二連続の番狂わせに湧くギャラリー、興奮する店員さん。

 

そんな中で、青髪の子と目が合った。

 

彼女はトーナメントの逆側。もし決勝まで残れたら、ぶつかるのはこの子とになるだろうと、私はそう確信した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。