西念幽子ちゃんと鉄溶龍子ちゃんの小説   作:春宮 祭典

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第3話 激突

大会が始まってもうすぐ30分。店長のおじさんが店内放送を使って佳境を迎えた大会を盛り上げる。

 

「さあお集まりの皆さん、今回の大会はいつもと違う!Aブロックから勝ち上がってきた謎のサイキックファントム使い、西念幽子ちゃん!」

 

明らかに音量調節をミスった爆音に押され、スタジアムの前に出る。久々の決勝戦。最近は連勝すら縁遠かったから、場違い感というか、ちょっと緊張してる。うん。

 

「対するは!Bブロックから勝ち上がってきたドラグーンF使いの鉄溶龍子ちゃん!奇しくも、マイナーベイ使い同士の決勝戦だァーッ!」

 

鉄溶さんが私の前に出る。テツトカシさんって、発音すると顎がカクカクする。

私と鉄溶さんの視線が交錯する。そして、どちらともなく、対戦前の握手。

 

「アタシが勝つよ」

 

自信満々、勝利を微塵も疑っていない目。私だって負けてはいない。今日のファントムはそれだけやれる子だ。

 

「いいえ、勝つのは私です」

 

握手を少し強引に解くと、挑発と受け取ったのか、鉄溶さんは「上等…」と口角を釣りあげる。

 

サイキックファントムを組み上げる。未だに私の目には、紫色のオーラを纏っているように見える。でも油断はしない。私が超Zベイを破って来たように、鉄溶さんもGTベイを破って来たのだから。

 

「二人とも準備はいいかな?」

 

スタジアムに向き直った私たちに店員さんが声をかける。私が頷くと、鉄溶さんも同じように頷いた。

 

「じゃあ……決勝戦を開始します!セット!3、2、1、GO…シュートッ!!」

 

「消し飛べッ!」

「砕け散れェッ!!」

 

紫色のオーラが赤と青に弾ける。と同時に、対面からは青色の閃光が迸った。

 

「ッ!?」

「行っけェドラグーン!!」

 

確信した。調子がいいのは私だけじゃない!

 

ドラグーンは着地すると、一気に溝を使って加速し、ファントムを刈り取らんと接近する!

 

初撃を横から貰うのは最悪。だけど!

 

ファントムの横から突き刺さらんとするドラグーン。だが、ファントムは自らをスタジアムの壁に当てて方向を変えることでドラグーンを真正面から迎え撃った!

弾かれる両者。ロックの進みは壁にぶつかった分、ファントムの方が不利か。

 

2度、3度。逆回転同士のバトル特有の激しいぶつかり合い。お互いに回転力が落ちてきた所で、ファントムは真ん中に陣取り、守りの体勢に入った。

 

当たらなければ当たらないほど、スピンフィニッシュでの勝利を引き寄せ、万が一弾かれて真ん中から脱しても、戻ってくる勢いでぶつかり、カウンターバーストを狙える。

 

真ん中に舞い込んだドラグーンがファントムと小刻みにぶつかり、カリカリという音が響く。こうなれば持久力の高いファントムが有利。

 

「勝てるっ…!」

「まだだッ!」

 

小刻みな当たり方をしていたドラグーンが不意に、真ん中から離れた。そして、緩慢な動作でスタジアムの坂を下り、ファントムに一撃を加えた。

 

弱々しい、回転が終わる最後の一撃はしかし、ファントムのロックにトドメを刺した。

ファントムのドライバーが外れ、上部分が着地。その衝撃でレイヤーとディスクがあ分離。低速バーストだ。

 

そしてトドメを刺したドラグーンはそれを見届けるようにその回転を終了。

 

「勝っ………たァー!!」

「優勝、鉄溶龍子ちゃん!」

 

折れそうになる膝を机を支えにして何とか踏ん張る。全身から力の抜けるようなこの感覚。どんなに望んでも「次」が与えられない、行き場のない、複雑な絶望感。

 

これが負けるって、悔しいって感覚なんだ。

 

だけど、沸々と湧き上がる、自分でもびっくりする程の熱い感情。目の前の優勝者を見上げると、さらにその不思議な気持ちが高まる。

 

「西念さんだっけ?強かったよ」

 

そして、優勝者に労われた瞬間、その気持ちは沸点に達する。

 

「次は……」

 

負け惜しみと取られるかもしれない。でも絶対に言わずにはいられない。言わないと気が済まない。なら、もう言ってしまえ。

 

「次は負けないから」

 

ファントムを回収し、鞄を抱えて堂々と店を出る。

この時、私は「敗者」から「挑戦者」へと生まれ変わった。




余談になりますが、Twitterの方で #西念幽子一日一ネタ というものをこれまた勝手にひっそりとやっております。一日ひとつずつ増えていくので気が向いたら目を通していただけると幸いです。
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