やっと上陸。 そしてミライさんと合流します。
まだフレンズは出てこない……。
パークへ!
長く短いような本土での生活と研修を終え、船旅による酔いに耐えつつの道。
この苦痛もパークへ行けるのを思えば、なんて事はなかった。
その心を如実に再現するかのように、空は青く掴み所なく、吸い込まれそうな錯覚さえ感じさせる。
先程、渡ってきた母なる海からは、荒くも優しい波の音。 俺の新たな旅立ちに対して、祝福と激励をしてくれた。
その聖母に対して、リバースした不届き者がいたのは気のせいだ。 良いね?
「うおお……!」
上陸して先ず出迎えたるは、桟橋の境界にある、潜り抜けるアーチ。
センターには、アニメや漫画でも馴染みあるパークのロゴ。 「の」の文字に、けもの 耳を生やした様なデザイン。
職員の制服や、一部のフレンズの服にも描かれる。 ファンならば知らぬ者はいないだろう。
そして湾曲した部分に、カラフルに描かれた印象的な文字。
それは、これからの始まりを予感させるには十分過ぎる威力を誇っていた!
Welcome to JAPARI PARK!
おお。 聖地巡礼というレベルじゃねぇ。
就職だ。 あ、正規員じゃないか。
「いえええす!」
ともあれ。
小躍りしつつ、明るい未来を見る。
歩むべき道は目の前に。
遠方では山脈が見え、森が見え、奥には様々な ちほー があるのだろう。
「楽しみだなぁ」
未だ続く施設建設の為の機械音が島に響き、工事現場を象徴する紅白のタワークレーンが天へと伸びている。
全てがパークを形作る、或いは作っている重要な光景だ。
後半は、思いっきりけもフレ世界を否定するかのようなモノであったが、現時点では仕方あるまい。 まだオープン前なのだ。
まさかサンドスターのチカラで、城や遊園地、研究所や宿泊施設がポンポン生まれるワケじゃない。 インフラ等の基盤が、瞬時に整備される事もない。 ヒトのチカラが、工事が必要だ。
特に漫画版に出てきた都市部は、凄まじい。 ビル郡があって、道路があって車が走る。 コンビニだってある。 本当に動物園なんでしょーかと思うあの光景も、ヒトのチカラがあってこそ造れたもの。
アニメに出てきた「遺跡」も最初は、こんな感じから始まったのだろう。
アニメから入ると、優しい世界に文明は必要ないと思う時もあったが、その文明を利用しているヒトからしたら、不便極まりない。
そも、アニメのフレンズたちの主食となっていたジャパリマンを作っているのだって、たぶん工場かなんかの生産ラインあってこそ。
その意味では、フレンズたちも工業系の、文明の恩恵を受けている。 なかったら、逆にどうするのだろうか。
閑話休題。
前世と今世での、今までのストレスが……。
取り敢えず、多くの努力で生まれていく愛情や輝きが、肯定する本物が、未来に過去に、この島にあるということ。
俺も、そのひとつに組み込まれた。 これ程に喜ばしい事はあるか。 いや、ない。 社畜のフレンズではないが嬉しい。
夢への、第一歩。
俺は桟橋を駆け抜けて、アーチを抜け、ジャパリパーク本島へと足を踏み入れ───飛び跳ねた!
「パークにぃ、キタアァッ!」
思わず拳を天高く上げ、叫ばずにはいられない。 周囲の職員や作業員に笑われたり白い目で見られた。 だが許せ。
「ここまでの道のり……長かった!」
転生して、即パークスタートだったワケじゃなかったから。
カコの両親を救い、学生時代は前世同様に人間関係と勉学に苦しみ、なんとか高校に入ったは良いが、今度は卒業が危うかった。
なんとか卒業して、教員から貰ったパークの調査補佐の求人に応募。 受かって今に至る。
「カコたちは、元気かなぁ」
一方で、他の面々……カコやミライは先に上陸しているそうな。 同じタイミングにはなれなかったのは残念。
まあ俺、補佐だしな。 計画にも最初から参加していない。
馴染みのカコは、終始成績上位。 けもの の話も博学で、大学にも推薦されて行くほどに。 留年しそうだった俺とは真逆。
進学後、ジャパリパーク計画にも最初から参加要請されて、予想通りの展開に。 今は、島内の動物研究所にいるはず。
ミライも既に計画に参加していた……たぶん、港の近く。 調査隊長兼ガイドとして、今日から暫く世話になる。 この後、合流する予定。
歳的にはね、後輩ちゃんなんだけどね。 俺、頭悪くて彼女の配下なの。
いやいや気にしてないよ。 公式のヒトの有名人ですからね、ええ。 触れ合えると思えば……ごめん。 共に過ごしてきたぶん、少し落ち込む。
菜々は、正式オープンしてから上陸、就職する後発隊。 連絡は取れるが、まだパークにはいない。
でも先輩風は吹かせられない。 だって飼育員さん目指して勉強実技と努力している子だったんだもん。
漫画や幼少の のほほん な印象ばかり残っていたぶん、ショックが大きい。
ごめんね! ダメな先輩で!
「園長は……騒ぐほどでもないかぁ」
野郎は良いです。
アプリ的に、客として招待されたらしいから、職員ではないのだろう。
たぶん、この「の」の字入りの作業服や探検服ばかりのヒトが詰た船には乗っていない。 そも、幼少時代に1度会ってるくらいのレベル。
顔も覚えてない。 そのうち会える気もするけど。 具体的には事件が発生して、パークが休園になったタイミング辺りで。 俺の妄想は良く当たる。
「あっ! 杏樹さーん! こちらですよー!」
聞き慣れた声。
見やれば、人混みからズレた先。 手を上げるお姉さんの姿。
ガイドさんだ。 ネタバレするとミライだ。 他に誰がいるのか。 仮に違ったらガッカリする。
「おお……!」
先端はウォーター迷彩の探検服に身を包み、無線機と、腰前面に雑嚢にも使えると思われる箱を身につける。
探検帽子は、赤と青の羽根が装飾品として付いていた。
その隙間からは、綺麗なエメラルドグリーンの髪の毛。 陽の明かりを受けて、美しく艶を出し輝く。
後々の未来で髪の毛は、かばんちゃんに変身し、帽子は受け継がれる(?)のだろうか。
嗚呼。
アプリ動画や漫画、アニメでも見た格好のソレじゃないか。
見れた奇跡に感謝します。
俺はミライに駆け寄り、その姿をしかと両の眼で捉えたのであった。
「大丈夫ですか? 涙が出てますが」
「陽の明かりが目に染みたんだ。 気にしないで」
嘘である。 感涙したのだ。 この先も、また泣きそう。
「えーと……杏樹さん。 改めまして、おはようございます!」
挨拶をして、仕切り直し。 うむ。 挨拶は大切だ。 これをしなければ1日が始まった気がしない。
「おはようございます」
「今日は、お忙しい中……じゃなくて、調査補佐として参加してくれて、ありがとうございます!」
初めてで緊張してるのか。 言葉がたどたどしいというか。 だけど一生懸命さが伝わるというか。
これはこれで新鮮ではあるが、先輩として緊張をほぐしてあげよう。
「畏まる事はないよ。 学生の時みたいに、普通にしてくれて良いさ。 隊長なんだし、な」
最後は私怨が少し含まれて……ないよ? ホントだよ?
「そうですね。 わたしが、ビシッとしなくっちゃ!」
「そうそう。 というワケで、これからどうぞ、よろしくね」
「はい!」
拳を作って見せ「マカセテ」と明るくアピール。
良い返事。 先行きは明るいと感じさせる。
俺はうむうむ、と頷いて見せた。
「ところで。 隊長というからには他にも調査隊員がいるのかい?」
「いますが、班別行動で散り散りなんです」
「えーと。 我が班は?」
「わたしと、杏樹さんですよ」
笑顔で答えられた。 それ、大丈夫なんですかね?
俺、素人なんだけど。
まあ、うん。 大丈夫か。 ミライならば。
「あっ。 けもの さんたちは見ましたか? 既に島に来ているんですよ!」
「あ、いや……また後で案内して」
グヘヘ、と更なる笑顔になるミライ。 ヨダレを垂らして、だらしない事に。
う、うん……大丈夫だろう。 たぶん。
あーかいぶ:(当作品設定等)
ミライ
たくさんいるパークスタッフ(職員)のひとり。
作中では、後にガイドも担当する。 この話時点では、調査隊員としてのみ活動している模様。
杏樹のメモ:
高校までは同じで後輩だった。 メガネユーザーである。 そのメガネも、後でアプリ版のように解析機能等が付加されるのだろうな。
けもの 好きで、知識がある。 習性や特徴の情報を提供してくれるのはありがたい。
ただ、愛が溢れてヨダレが垂れるのは……状況によっては突っ込まさせて貰おう。