パーク職員です。(完結)   作:ハヤモ

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不定期更新中。 駄文。 矛盾あるかも。

ミライと共に。 不安はいろいろ。


ミライと不安要素

俺の来たジャパリパークは、複数の大中小の島々からなる。 全て含めると広大で、領海を含めると かなりのもの。

 

海底火山を含め、ヒトが把握している地は余りに少ない。

施工が進められている、安全が確認された場所は、一見広範囲に及んでいるが、全体から見たらごく一部。

 

アプリ版をも参考にするならば、オーロラが見えるような極寒の地もあればマグマが噴き出るような灼熱の火山地帯もあり、命に関わる場所もある。 危険だ。

 

他にもサバンナ、ジャングル、砂漠に湖畔。 森や山脈。

 

自然界に存在する様々な気候と地形が集まっているといっても、過言ではない。

 

それら多種多様な環境が、何故パークに密集しているのか。 広大とはいえ、気候の差が激し過ぎる。 その理由は、なにか。

 

ふわっとした説明で良いなら、アレの名前は必ず出る。

 

超常物質、サンドスター。

 

アニマルガールを生み出すだけではなく、サンドスターは地形や気温、湿度にも影響を与えていると言われる、島特有の謎物質。

アニメでも、空から見た光景にて、ちほー の境目は目視で大凡分かったな。

どういう理屈で、境が出来るのか。 砂漠の進行を木々で食い止めるイメージ……とは、違うだろうし。

 

それが奇跡にせよなんにせよ、特異性を確認したヒトたち。 ワクワクの探究心と冒険心を躍らせたのは、想像に難しくない。

 

動物園の段取りをしている一方、調査だなんだと多くのヒトが尽力しているのが証拠だ。 カコやミライとかな。

 

 

「わたしたちは、指定された場所に向かいます。 そこで行うのは、サンドスターと呼称された未知の物質のサンプル採集です」

 

「本土の研修で、説明は受けたよ。 サンドスターは……謎だよな」

 

 

移り行く緑の光景と、心地良い風を受けながら。

 

予定の話と返事をしつつ。

ミライが運転するモスグリーンカラーのジープは、不整地を小さな砂埃を立てて走り抜けた。

 

 

へ? ジャパリバスじゃないの?

 

 

と、妄想を裏切る乗り物の登場に、最初は首を傾げたが、落ち着いて考えれば当たり前かとも思う。

アレは観光用だ。 調査には向かない。 成る程、合点がいくというもの。

 

俺の妄想脳は既知の情報に従事したがる。

転生者ならでは、といえば聞こえは良いが、惑わされてはならない。 気を付けねば。

起こり得る様々な状況に対処出来なくなりそうだから。

 

というワケで。 今を集中しなきゃ。

 

任務内容を説明するミライの横顔を見る。

凛としているというか。 頼りあるお姉さんの雰囲気を醸し出す。

 

純粋な子どものように、けものさんを見て、はしゃいでいる時があるとは想像出来ない。

 

甘えたい。

 

…………冗談。 野郎に甘えられても、迷惑千万だろう。 フレンズなら大歓喜だろうけど。

 

 

「確かに、疑問に思っている方は多いです。 ましてや、サンドスターの影響によって変身したという《けもの さんの特徴を持った女の子》の報告は皆、首を傾げてました」

 

 

流れから、アニマルガールの話をするミライ。 言ってることに反して、ちょっと嬉しそうな顔。

 

既にフレンズは発見されているようだ。

まだ、フレンズと言われないのは、日が浅いからか。

 

心の中では「フレンズに、やっと会えそうだぜヒャッハー!」と嬉々としてドッタンバッタン大騒ぎ中なんだけどね。

 

だが理性でグッと抑える。 心のミライさんは制御しないと。 でなきゃ引かれる。

 

 

「資料で見たよ。 島に来た けものさん が、昨日までは普通だったのに、翌日に見に行ったら、ヒトの姿になってたんだっけ?」

 

「はい。 飼育員さんが発見して……特殊動物、《アニマルガール》と呼称する事に。 陸地の他にも、島周辺での目撃が相次いでいます」

 

 

ふむ。

船旅の途中では、見なかった。 パーク近海でもそれらしき けものさんは、確認出来ず。

 

 

「俺も見たかったなぁ」

 

「大丈夫。 きっと、会えますよ」

 

 

ふふっ、と前を向きつつ微笑んだ。 ちょっとドキッとしちゃったじゃない。

 

いかん。 焦点をフレンズに戻そう。 気になるのはソッチだ。

 

島周辺、というと。

野生の海鳥、イルカやクジラの事だろうか。

 

クジラ……迫力がありそうだ。

気になる! 気になる!

 

数多くいるフレンズの中には現存する、個体としては地球最大の動物種と言われるシロナガスクジラがいたな。

 

彼女の場合は偶然パーク近辺に来たところ、海底火山から噴き出るサンドスターに当たって、フレンズになったのではないだろうか。

 

けもの の姿をヒトが連れて来るには、無理があると思うし。 重量は80トンを超えたか。 体長30メートル以上の記録もあるとかないとか。

 

いや、分からんけどね。 俺が知らんだけで、なんとかしてヒトが連れて来た可能性も否定しきれない。

分布域の違いの件もある。 東シナ海にはいなかったんじゃ?

 

まあ取り敢えず。

 

何が言いたいかというと、フレンズは皆が皆、ヒトによって連れてこられた けものさんではない……ということ。 たぶん。

 

ああ、また脱線した。 今を集中だ、集中。

 

 

「その、なんだ。 フレンズとは意思の疎通が出来ると聞いたよ。 嬉しい話だ」

 

「フレンズ?」

 

 

疑問符が飛んできた。

しまった。 まだフレンズ呼びはしていないというのに。 誤魔化さなきゃマズいか?

 

 

「ともだち になれたら、良いなーって事でフレンズ。 ごめん。 忘れて」

 

「いえいえ! 良い響きじゃないですか! フレンズ! 私もそう呼びます!」

 

 

嬉しそうな声にて返されちゃったよ。 あかん。 これ、大丈夫か。

 

いや。 名前くらい良いか。 俺が言わなくても、そのうち言い始めただろう。

 

 

「あっ。 もうすぐ目的地です! フレンズさんの場所は、後程ご案内します!」

 

 

ミライの明るい言葉で、現実に戻される。 フレンズ……早速言うのね。

 

まあ良いか。

今は今だ。 改めて集中である。

 

これもまた、パークライフさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホットスポットはパーク敷地内に、多数点在する。

 

危険とは、常に隣り合わせと思った方が良い。 流石に来客用のエリアは安全が確保されているが、将来の件も含めると、不安でいっぱい。

 

中には回避出来ない道もあるだろう。

 

だが、安全に煩い世の中。 明らかに危険な場所に、軽装2人で行って来いとはなるまい。

 

などと考えていた俺は、甘かったのか。

 

 

「すまん。 ココ、どこ?」

 

「火口付近です!」

 

 

キラキラとした粒子が、目の前の大穴から青空に昇る光景を目の前に。

 

ミライは笑顔を輝かして答えてくれた。 うん。 ありがとう。 回避は出来ない道か。

 

 

「途中下車からの登山が始まったと思ったら、まさかの火山という」

 

 

疲れた。 結構、登ったと思う。 標高は知らんが、島全体を見渡せるんじゃないだろうか。

 

一方で、ミライは疲労の表情ひとつ見せず、笑顔である。 何気に強いですね……。

 

 

「今は落ち着いてます。 大丈夫ですよ」

 

 

今は、な。

 

この火山。 アニメの火山と同一かは分からない。 でも、将来的にはヤバくなる気がする。

 

サンドスター・ロウがどうとか、セルリウムがどうとかならなきゃ良いが。

園長に四神やセーバル。 フィルターに、かばんちゃんの冒険。 前世の中途半端な知識が脳裏をよぎる。

 

だが、俺にはどうする事も出来ないんじゃないだろうか。 特に今、騒いでやれる事はない。

 

 

「ところで。 目の前のキラキラは、サンドスターかい?」

 

 

大穴……火口から噴き出る粒子群を指差して聞いてみた。

答えは知っているつもりでも、不安を和らげようとしての会話だった。 俺は弱いと思う。

 

 

「そうです。 とても綺麗な光景ですよね!」

 

「うん。 して、採取かい?」

 

「いえ……はい。 土壌や岩にもサンドスターは含まれてますから、其方を持ち帰るのです」

 

 

そういうと、足下に転がる手頃な小石や砂を手に取り始める。 結構、簡単そうだった。

 

だけど安心した。 火口ギリギリに近寄って手を突っ込む作業だったら、ゾッとするからね。 万が一落ちたらと思うとさ。

安全帯があって、掛けられる場所があれば多少はマシだろうけど。

 

いや……それでも不安がある。 やはり、今後についてだ。

 

 

「あの、さ。 サンドスター以外にも、別粒子が含まれてたりする?」

 

 

それを口にする弱さ。 そして、自分ではどうしようもない無力さを晒してしまう。

 

 

「と、いいますと?」

 

 

質問の意図が分からず、聞き返される。 そうなるよな。

 

 

「その。 サンドスターに反する物質とか」

 

「うーん? 調査段階から脱しません。 これを研究所に持って行って、詳しく調べて貰わないと」

 

 

そうだよな。 まだまだよく分かっていないのだ。 未来のパーク閉鎖段階でも、分からずじまいだったのだろうし。

 

分かっていれば……そういった悲劇も起きないか。 あくまで可能性だが。

 

 

「そんじゃ、ちゃんと持ち帰らないとな」

 

「はい!」

 

 

そう言って、踵を返そうとして。

 

気付いたことが、ひとつ。

 

 

「俺、必要なくね?」

 

 

これである。 補佐って、なんだろう。

 

 

「そんな事ないですよ! 一緒にいてくれるだけで嬉しいですし!」

 

 

アワワと、言ってくれるミライ。

 

嬉しいけどね。 なんか、実務的なのがなかったというか、ただの登山で終わったというか。

 

まあ、良いか。 危険な目に遭ったワケじゃない。

 

 

「ありがとう」

 

 

礼を述べておく。 深い意味はない。

 

ミライから「はい」と柔らかに返されると、一緒に下山する事になった。 十分らしい。

 

平和が1番だ。 願わくば、ずっと続きますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後直ぐだ。 オバケの報告……セルリアンが確認されたのは。

 

そういえば、アニマルガールと同時期に確認され始めたんだったか?

 

なんにせよ、この世界にも、俺以外に のけもの はいるって事だ。

 




あーかいぶ:(当作品設定等)
クジラとイルカ。 生物分類上の違いはない。 体長のちがいでクジラ(ホエール)だったり、イルカ(ドルフィン)と呼んでいる。
体長3メートル以上をクジラと呼んだり、それ以下をイルカと呼んでいたりするみたいだけど、明確な線引きはされていないそう。
シャチも、仲間。 でも、やはり明確な線引きはないそうな。

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