カコとの再会。 そして、何気ない日常のヒトコマ。
馴染みのカコは、ジャパリパーク動物研究所の副所長だ。
副所長の地位が、どんなモノか全然分からんけど、きっと凄い。 上から2番目くらいじゃないか?
幼馴染として、共に過ごしてきたぶん、なんというか……嬉しい。
カコの研究、功績。
一部しか知らないけれど、それらは大変なものだと知っている。
1番分かりやすく、皆の目に触れるのものだと……サンドスターによる、絶滅種のフレンズ化。
アニメだと、トキ。 名前だけなら、ジャイアントペンギン。
絶滅種がフレンズとして見られる奇跡。
それを起こしたサンドスターと、カコ含む研究員の みんなは……スゴい。
仕組みや、どんな発想、実験や過程を経て生まれたのだろうか。
様々な妄想をする余地があり、これもまた楽しい。
しかし、貴重な化石を使用した実験……許可を得るまで様々な苦労があったのではないか?
多少なりとも国内、海外の研究所や各機関との摩擦。
道徳的な問題も、あったかも。
何にせよ、実現した。 この結果は更なる技術の進歩を
一方で、謎は深まる。
一部の研究員は、この結果に頭を抱えたんじゃないか?
眼に光がないのもだが、1番は「生きた」動物が変化したもの という考え方が歪んだコトか。
この辺で、
フレンズは、動物か「だったもの」に当たると生まれると。
それはPPPの会話で、あったかな。
ヒトは、この辺で気付いてきたという事か。
ところが、シーサーのフレンズのように「神さま」のフレンズが確認された事は大いに混乱したコトだろう。
フレンズ。
物理的に、カタチあるものに「限らない」から。
亜種のように、フレンズ化の区分が しばしば曖昧なのも謎であるが「限らない」件の謎はレベルが違う。
研究員たちも最後は笑顔で「分かんないや!」となったかな。
だけど 研究は、止まる事を知らない。
そして、
そして別物質、セルリウムの件も。
故に研究員たち……カコは日々忙しい。
そうそう会えない。
メール越しのやり取りも不定期で、返信が中々得られない事も珍しくない。
「うぅ……カコ、元気かなぁ」
自室のベッドの上。 俺は転がりながらも、スマホを見ては嘆いた。
せっかくの休みなのに、会えないとかツライさん。
思えば島に来てから、1度も会ってない。
オトナとは、中々時間が取れない。 休みの日があっても、疲れて遠出する気が起きなかったりするものだ。
それでも幼き頃を思い出して、共に何処かへ行きたい日もある。
あの輝きの日々は、あの日にしかないものだけれど、俺以外に覚えているヒトがいるならば……気持ちを共有する事は出来る。
そうして、胸を渦巻く
自己満足と言われても仕方ない話だが、未来を
カコの両親は存命しているものの、カコは絶滅種や他の研究をしているワケで。
この事から、俺が知っている未来が来る可能性がある。
カコはセントラル事件で、セルリアンに襲われる。 そして、意識不明に。
挙句に女王事件に発展。 パークは危機に陥る。 それは避けたい。
俺がなるべく側にいる事で、それが解決するかは分からないのだけれど……。
「俺、臨時職員だしなぁ。 研究所で働くのは無理か」
これである。 様々な場所に派遣されている俺だが、カコのいる研究所には入った事がない。
そも、俺は無関係者。 入れない。 「カコの馴染みです」は通用しないだろう。
特殊な場所だろうからなぁ。 俺みたいなヤツは入れないだろうな。
これでは、カコの側にいてやれない。
「でも、会いたいなぁ」
カコの笑顔を、側で見たい。 守りたい。
けれど叶わない。
ひょっとしたら、もう会えない気さえしてきた。 メールの返信も延々に無いのでは?
「カコ……カコ」
過去に囚われ、未来を嘆く男。 我ながら女々しいけど、仕方ないじゃん。
妙案が浮かばないんだもの。 どうしたら、平和的に会えるだろうか。
「うぅ。 カコ……くっ」
嘆きながら、ベッドの上でゴロゴロ転がるも、状況が改善される事はない。
「ふぅ」
溜息を出しても仕方ないな。
管理センターにでも行って、公表されているデータでも閲覧しよう。
所詮、パンピーである。 権限なく、出来る事は限られるのよ。 ぺっ!
「さて行くか」
起き上がり、玄関へ。 部屋に籠っても発展はない。
ガチャリ、と何時もの開閉音。 新たな1日が始まる音。
それは希望か絶望か───。
……………………。
目の前を見る。 独り言で名を呼んだ、その馴染みの女性が立っていた。
茶色の縞々な、けもの の尻尾を思わす髪飾りを頭に付けて、青紫っぽい髪の毛を後ろで纏めている。
服装は豊満な胸で押し上げられた紫シャツ。 ズボンは黒一色。
言っちゃ悪いが胸以外、その、おばさんっぽいというか地味。
だけど、表情は明るい。 明るいを通り越して、赤らめて俯いている。
ふむ。
「久し振り、カコ」
取り敢えず、挨拶をした。
慌てては いけない。
「お、お、おおおはよう!? 」
察した。
「続きは中で しようか?」
「え、ええ、えええっと!? その、あの!」
「落ち着こうか」
だから冷静を装って、部屋の中に迎え入れようとする。
コレはコレでまずい気がするんだけど、内心テンパってたんだ。 よくやったと褒めて欲しいね。
だからさ。 同じ寮に住むヒトたちよ。
一斉に玄関から出てコチラを見ながら……イイ笑顔で携帯取り出してるから、想像つくけどさ。
管理センターに通報するのやめて。 お願い。
「落ち着いた?」
「うん」
周囲の誤解を身振り手振りで必死に解き、カコを自室のベッドに座らせて数分。
やっと、状況整理の時間がやってきた。
ウチの寮のヒトたちは、祭りが好きで困る。 起こすのも好きだから尚更だ。
フレンズが職員のヘルプで来ただけでも、みんな騒ぐし。
俺は違うぞ。 心の中で騒いでる。 迷惑はかけてないんだ。 たぶん。
「全く。 ウチのご近所さんにも困ったものだ、ははは……はぁ」
隣に座りつつ乾いた笑いを起こして、カコの顔を向く。 カコも乾いた笑みで返してくれた。
…………なんか虚しい。
久し振りに会ったのだから、喜んで良い筈なのに。
取り敢えず会話、会話しなきゃ。
会いたがっていたのに、いざ会うと言葉が浮かばない。
状況が状況だからね。 突然過ぎたから。
えーと、まず普通の日常っぽい会話から仕事等の話にシフトしていく感じに話そう。
「白衣は その、着てないんだ?」
「外に出る時は着てない」
「だよな。 うん」
しょうもなさそうな話を振って、カコの様子を見つつ、 話を続ける。
「今日は……どうした? 連絡なかったけれど」
「実験が中止になって。 時間が出来て、その。 会いたくなったから。 ごめんなさい。 連絡を入れるべきだったけれど忘れた」
「そうか。 いやはや、連絡忘れとは珍しい」
「何を話そうか悩んで。 そっちばかりに気を取られた」
「へ、へぇ?」
して、俺と同じように会話に困っているのかい。
状況は、何となく分かった。 けれども部屋は静寂な空間に。
気不味い。 何を話せば良いんだよ。
こうなると、どうでも良い生活音がよく聞こえるものだ。
違う部屋や近所から聞こえる掃除機の音や洗濯機の音。 ヒトのくぐもった声。
本来、集中するべき対象から意識をずらす。 場合によっては作業妨害のソレも、今では妙にありがたい。
寮の外から聞こえるヒトの声。 飼い犬の鳴き声。 珍しくも何ともない日常が、今日も世界を回している。
何気なく窓を見やれば、綺麗な青空と白い雲。
時々、鳥のフレンズと思われる影が横切って行く。
ミライやカコだったら、あのシルエットだけで答えられるのかな。
聞いてみるか。
「なぁ」「ねえ」
被った。 譲ろう。
「どうした」「先に」
また被った。 今世でも、あと何度繰り返すのか分からない、進展がないけど平和なやり取りだ。
「ははっ」「ふふっ」
それが何だか 可笑しくて、カコと共に つい顔が綻んでしまう。
それは乾いたものではなく、本物の笑い。 負の感情を全て払拭する明るい表情。
いつか、遠い昔に置いてきた、嘘偽りの無い純粋さ。
何だろう。 悩んでいたのが馬鹿らしくなってきたな。 うん。
カコに会えた。 素敵な笑顔を見れた。 幻じゃなくて、確かに存在するものだと再認識出来た。
それで良い。 満足だ。
前世の経験もあって、オトナの笑顔は嘘偽りで塗り固めた仮面だと思い、疑心暗鬼になる時があった。 信じられなかった。
今なら信じられる。 その純粋さと輝きの存在を。
「うんうん! 満足だ!」
「そうなの?」
「うん。 カコに会えて、笑顔になれて。 昔を少し思い出せた。 ありがとう」
「へんなの」
莞爾として答えると、微笑するカコ。
そうそう。 カコには笑顔が似合う。
「……その方が素敵だよ」
ボソリ、と。 小さく呟いた。
今世で小さい時、両親を助けて本当に良かったと思う。 曇った顔は見たくないからね。
だからさ。 これからも、守りたいんだ。
パークも、みんなも、カコも。
「何か言った?」
「なにも……いや。 そうだな」
「言って欲しい。 杏樹の言葉が聞きたい」
ちょっと悪戯っぽく、して甘えた声。 プラス上目遣いとか……天然でやってるなら、恐ろしい子!
いや、実は聞こえてたでしょ。
そう思うと恥ずかしくなって……だけど、誤魔化すように、だけど嘘じゃない言葉を述べていく。
「カコ」
「うん?」
「これからも、どうか よろしくね」
俺なりの、照れ隠しの抵抗。
そして、嘘じゃない言葉。これもまた、恥ずかしいい。 だけど、言っておかなきゃ。
この島に来て、初めて再会して。 まだ言っていなかった事だもの。
そんな唐突な言葉を受けたカコ。
一瞬、キョトンとして。
求めているものと違ったからか、一瞬ムスッとしつつも……直ぐに「杏樹らしい」と微笑んで、
「うん。 杏樹、これからも よろしくね」
そう、返してくれた。
オトナになってから、こういう事を言うのは 恥ずかしいけれど。
でも、言って良かったと思えた。
これからも。
過去は幻でなくなり、今に繋がると感じられる。
未来は明るく、孤独じゃない。 怖がる事はないんだ。
「じゃ、どっかに出掛ける? それとも部屋で話す?」
共に歩むカコに提案。 なんだろう。 ワクワクしてくるね!
「その前に。 これ」
熱くなる俺に反して、冷静に対応される俺。
カコはポケットから、自分のスマホをスッと出して……俺に画面を見せてきた。 管理センターからの連絡だった。
「私の安否を確認する内容なのと、その、杏樹に出頭命令が」
「誰だ通報したヤツううぅ!?」
思わず叫んだ。
どうやら、最初の熱の向け先は、ご近所さんになりそうである。
あーかいぶ(当作品設定等)
カコ
ジャパリパーク動物研究所の副所長。 たくさんいるパークスタッフ(職員)のひとり。
絶滅種の研究等を行なっている。 パークに絶滅種がフレンズとして存在するのは、カコの おかげだとか。
杏樹のメモ:
幼馴染。 幼い頃に、カコの両親を救った。 今度は起こるかも知れない襲撃事件から守らねば。 馴染みの悲しい顔は見たくないからね。
しかし、大きくなったなぁ。 背も胸も。