日本の有名なUMAと出会います。
ナワバリから出ないフレンズであったキタキツネだが、都市部での影響だろうか。
最近は自ら都市部に来る事もあれば、住んでいる森の中も探検している。
ネコジャラシを持って、るんるんと森を歩く姿を想像すると可愛い。 可愛くない?
知的好奇心、冒険心は分からんでもない。 その心は人生を豊かにするものだ。
そこには新たな出会いや発見がある。 オトナになると「ふーん。 だから、で?」な些細な事も、フレンズや小さな子からすると、キラキラと輝くモノであり魅力があるのだ。
だがしかし。 子から提供される一部の情報は、オトナも興味を引くものだったりするワケで。
「森の洞窟で、ツチノコを見たわ」
この、キタキツネの話が始まりであった。
他に似た報告もなく信憑性は低い。
一応は管理センターに報告されたものの、未確認動物……日本の有名なUMA、ツチノコなのか疑う者は多く「見間違い」「勘違い」等の意見で終わりかけていた。
ところが、その手の話に食いついた一部の研究員が管理センターに「調査だ」と主張した為に、仕方ないにゃあ……と調査員が派遣される運びとなる。
誰が行くって? 俺だよ。
直接お前が調べに行けよと思うのだが、そこは貴重な研究員や管理センタースタッフ。
セルリアンに襲われたり、自然災害等に見舞われる危険を考えれば、臨時職員という名の奴隷が行かせ易いという判断だな。
本職側……ミライたち調査隊は派遣されない。 所詮は代えの利く下級職員で間に合うし、都合が良いという事さ。
同時に期待されていないまである、カタチだけの調査に俺は命を賭けるのだ。 泣いても、良いよね?
このままでは、ヤバい。 死ぬ。 何より心細い。 そう思ったチキンな俺は助けを求めた。 具体的には、管理センターの小動物に。
彼女なら、誰か助っ人を派遣してくれる……そんな期待を込めて。
「明日の朝、貴方の寮に向かわせます」
モノは言ってみるものである。 助けが来るそうな、これで少しはマシになる。
「貴方の友人だという方をピックアップしましたよ」
しかも、わざわざ付き合いやすいように、俺の友人を選んでくれたという。 有能やん。
フレンズだろうか。 みんな可愛いからなぁ、デート気分で仕事が出来るかも!
そう楽観していた時期が、俺にもありました。
翌朝。 ベッドから顔を横にした際、ピクピクした肉塊が見えて一気に目が覚めたね。
「おはよう! 久し振りに会えて嬉しいぞ!」
朝起きたら、ポージングを取ったマッチョがそこにいたのだから。
「あああああああああああああ!!?」
なんだよ怖いよフザケンナ管理センターの嫌がらせか小動物めチクショウ!?
そのマッチョは、知り合いであった。 パーク・レンジャーの隊長である。 開園前に知り合ったヒトだ、友人かは分からん。
別の意味で死ぬかと思ったわ。 して、デートなんてとんでもないです。
ツチノコを早く見つけないと。 でなきゃ、夜の森を再び彷徨う事になりそうだ……。
いつかの時のように、ジープに詰められて森の側まで揺らされ、途中下車からの森入り。
いつかの実体験を再度なぞっているので目を腐らせていた。
側から見たら、絶滅種のフレンズの目である自信があるね。
漫画版では、こんな調査の話は無い。 俺の影響なんだろうが、ちっとも良くない変化だよ。
ツチノコの話自体は、漫画版であるんだけどね。 故に彼女が、第1世代が存在するのも知っている。
この世代。 アニメと違い、遺跡の調査はしていない。 そも、遺跡自体、この世代か運営中の間に造られた建造物が後の未来における遺跡であろうから、その意味では遺跡自体、今の時代のパークに恐らく無い。
では、何をしているのか。 それは自身の容姿を見たヒトが驚くものだから、自身の姿は怖いのだと思い、人の目に付かぬよう、洞窟でひっそりとサバイバルな生活をしているのだ。
少し寂しさを感じさせる子であるが、迷子になって、洞窟にやって来たキタキツネと出会い、会話をし、外に出る事にする。
今は、その辺の段階だろう。 ということは、洞窟に居ない可能性がある。
それでも洞窟に行かねばならない。 下手に動き回るより、住処で待ち伏せた方が良い。
その為にも報告をしてくれたキタキツネと合流、協力を仰ぐ。 場所を教えて貰わないとならん。
「キタキツネッ!! キタキツネは何処だ! 返事をしてくれ!」
大声を森に響す隊長さん。 都市部でやったら間違いなく通報モノである、して俺も捕まる、同伴者はツライさん。
「いやー、真面目に探さなくて良いんじゃないスか。 ツチノコってUMAですよ」
「何を言う。 UMAだからこそ、探す楽しみが増すというもの!」
「気持ちは分かりますがね」
分からないモノを探す、宝探しのようなワクワクは、まあ、俺にもあるけどさ。
そういや俺より昔の世代、ツチノコブームというのがあったそうだ、多額の懸賞金が賭けられたとか。
「もしいたら、捕獲です?」
「しない。 友になる」
あら、優しい。 金という俗な単語を浮かべた俺とは大違いだよ、キタキツネも最初は似た考えだったが。
「拳で語り合えば、言葉や壁は乗り越えられるっ!」
ダメだった、脳筋思考だった。
「フレンズ化しているなら、普通に話し合いましょうよ!? 言葉、通じるんですから!」
「むっ、そうか! 拳以外に語る方法がある……パークは良いところだな!」
今まで拳で語り合ってたんか。 いや冗談だろう、オカピと殴り合ったと思えないし。
「しかし、キタキツネが出てこんな。 本当にこの辺なのか?」
「え、まあ……ナワバリはこの辺なんですが。 最近は都市部にも出掛けているから、なんとも」
「ふむ、最悪は自力で探さねばならんか」
「いやぁ、それは避けたいですね」
「気合いで乗り越えるんだ!」
「無理ッス」
気合いで乗り越えられなかったでしょ、開園前のとき。 忘れたワケじゃないよな?
「キタキツネの協力が得られないなら、諦めて帰りましょうよ。 管理センターには『何の成果も得られませんでしたぁ!』と報告しても許されますよ、UMAだし」
「案ずるな、こんな事もあろうかと用意していたモノがある」
隊長のいう「案ずるな」は案ずるんだよ、ロクなアイディアじゃないよ。
そうして懐から出したるは、ザルと肉まんである、やりたい事を察せるのが悲しいなぁ……。
「ザルくないですかね」
ザルだけに。
「いや、これはザルだ!」
そう言ってるじゃん、意味は違うかもだけど。
「俺はコレを使ったナイスなアイディアを考えたのだ!」
「あー、はい。 お任せします」
「ふっ! 見ているが良い!」
そう言うと、その辺に落ちていた木の枝を拾って紐を付け、ザルが斜めに浮く様に突っ張り棒に。
「これで、茂みに隠れて……キタキツネが来たところで紐を引く、するとキタキツネが捕まる。 どうだ、良い考えだろ」
「ザルの大きさからして、捕まらないでしょう。 それにキタキツネは そこまでおバカじゃないかと」
「やってみなきゃ分からない!」
見ていても聞いていても「えぇ」なんだけど、ツッコミを入れるのも疲れるのでお任せするわ。
「アンタたち、何してるのよ」
「うおっ!?」
茂みに隠れようと踵を返した刹那、突如として声がかかったのでビビったわ、見やればキタキツネだ。
「ふっ! キタキツネを捕まえようとしておるのだ」
「隊長、目の前のフレンズがそうッス」
「ナニ!? いつの間にいたのか、やりおるな!」
「大きな声を出し続けられても困るから来たのよ、感謝しなさい」
「おお! 感謝するぞ!」
「へ、変なヤツね」
隊長のハイテンションに引くキタキツネ。 その気持ち分かるよ、逃げたいよね? 逃げたくない?
「それで? 私を捕まえて、どうするつもりなの?」
ジト目で知り合いである俺を見てくるキタキツネ。 酷いことするつもりはないよ、ホントダヨ?
「ツチノコを見た洞窟に案内して欲しいんだよ」
「イヤよ、面倒臭い」
「案内してくれるなら、そのザルの下にある肉まんをやろう」
「仕方ないわね、案内してあげる」
チョロくないですかね、悪いオトナにお菓子を貰ってホイホイ拐われそうで心配。
「ふふん、良いヒトね♪」
「お前なぁ」
笑顔で、先程の評価とは逆な事を言うキツネサマ。 して、地面に直置きの肉まんに手を伸ばす、なんか悲しいなぁ。
「今だぁ!」
「ひゃっ!?」
して、案の定というべきか。 紐を引いてザルを倒す隊長、こども ですかアンタ。
ところが、そこは身体能力が高いキタキツネ。 肉まんを持ったまま素早くバックステップ、ざるは空を切る。
運動、反射能力も高いんだろう。 思えば漫画版にて奈々と一緒に崖から落ちた時、空中で奈々をお姫様抱っこ。 最後は着地が決まっていたな。
何気に第1世代のキタキツネって強いんじゃない?
ひょっとすると歴代最強なのかも知れん、だから何だよな話だが。
「ちょっと何するのよ!?」
「罠が勿体なくてな、つい悪戯心が!」
「あー、はいはいツチノコ探しに行きましょう」
だが捜索とコレは関係ない。 越権ながら仕切らせていただくわ、このまま喧嘩されては日が暮れるんで。
「さっそく洞窟に案内してくれ」
「むー、仕方ないわね。 肉まん貰った事だし」
「1キロで言うことを聞くんじゃないのか」
「なに? もっとあるなら貰うわよ」
「無いんで、今ので勘弁してくれ」
余計な事を言ってしまったが、案内はしてくれるらしい。 良かった。
キタキツネを先頭に歩く俺ら。 背を見て思うのは、良い子になりつつある、という事かな。
あと稲穂のような尻尾、モフりたい。
ホントにさ……パークは、このまま何事も無ければ良いのに。
「ここよ」
辿り着いたは森の中の洞窟。 意外と近かったんだけど。 いや、助かるから良いが。
「じゃ、後は頑張ってね」
「キタキツネは?」
「案内しか頼まれてないもの、それしかやらないわよ」
わお。 それ、ヒトの社会で言えたらどれだけ良いだろう。
取り敢えず、この件に関わった管理センターと研究員に言ってくれると嬉しいな。
して、俺は呼び出されて怒られる未来になるんだろう、怒られちゃうのかい。
「じゅうぶん助かった! ありがとう! 後は我々職員でやるから、大丈夫だぞ!」
「ありがとうなキタキツネ。 菜々によろしくな」
「ええ。 今度、部屋に遊びに行くから肉まんでも置いておいてよ」
「不法侵入と泥棒はやめろ」
去り行くキタキツネに軽く礼と手を振りつつ、洞窟に向き直る。
大口の中は漆黒に包まれ、先は見えない。 怖い一方、ワクワクするね。
「ふっ! ここからが本番だぞ!」
「まあ、そうっすね」
「今度こそザルを成功させる!」
ザル? もう成功しているじゃん、別の意味で。
「捕まえないんでしょ?」
「おっと、そうだった! ならば拳で語る!」
「やめましょうね」
懐中電灯を装備、奥に進みつつ隊長にツッコミを入れる。 真面目に聞いてると疲れるので、もう適当に流しているけれど。
「ツチノコさん、いませんかー!」
声が響かせてみる。 それは闇の中へと吸い込まれていくが、聞こえただろうか?
どこかヒンヤリとした空間は、不気味で寂しさを孕ませる。
この中に、長らくツチノコはいたのだろうか……可愛そうと思うのは、俺の勝手になるが……ううむ、会ったら友だちになりたい。
「出掛けているのかも知れん」
「そうですね、1度入り口に戻りましょうか」
そう言いつつ振り返ったら……懐中電灯に照らされたフードの女の子がぬわん、と照らされて
「うおおおお!?」
思わず声が出てしまったよ!
「眩しいモノを向けるな」
「お、おう」
フードの女の子は淡々と訴える。 お陰で冷静になれたので、素直に電灯を逸らした。
下にライトを向けると、ひょろりとした尻尾が見える。 ああ、この子もフレンズなんだなって分かるよ。
「ふむ、君がツチノコ君かね」
「お前も眩しいモノを向けるな」
隊長……俺の真似をしているのはワザとなんですかね?
「すまん」
「大丈夫───ツチノコだ、驚かないんだな?」
「いんや、驚いたぞ!」
「そうは、見えなかったけど。 隣のツレはともかく」
「UMAのフレンズとも会えるとは……出会えた奇跡に感謝する! はっはっはっ!」
「……なんだこのヒト」
「気にしないで、そういうヒトだから」
豪快な笑いを洞窟に響かせる、憂鬱とは無縁そうな笑顔が羨ましいね。
「色んなのがいるんだな」
「うん、まあね。 ヒトも けもの も、皆違うさ」
みんな違って、みんな良い、という見方もあるけれど、仲良くなれないヤツとは無理しない方が良い。
フレンズとヒトは違うのだ、前世と本土で俺をイジメた連中、マジ赦さん。
「ところで、名前を呼んだと言うことは わざわざ会いに来てくれたのか?」
「うむ! 管理センターに頼まれてな!」
「管理センター?」
あれ、管理センターを知らないのか。 いや、無理もないのか、ツチノコは周囲とのコンタクトを避けてきたのだから。
「パークの いろんな事を管理しているヒトや建物の事だよ。 ソコに頼まれたんだ」
「なんでまた」
「キタキツネ……キツネの子の話でね。 ツチノコはヒト、日本からしたら有名なのに未確認動物で珍しいから」
「───ああ、それで」
ブツブツと言うツチノコ。 漫画版であった、キタキツネがツチノコを捕まえようとした件を思い出しているのだろう、たぶん。
「なんにせよ、出会えて良かった。 友だちになってくれないか?」
レアな友だちがいるとか、ステータス高まらない? 興奮しない? お友だち価格も高いですよ、そんな俺は俗ぽい。
「俺からも頼む!」
隊長も、そんなレア度にあやかりたいのかな?
「唐突だな」
「駄目か?」
「駄目じゃないが」
「よし、決まり。 仲良くしよう」
「勝手なヤツらだ……良いけどな」
ふっ、と薄笑いを浮かべるツチノコ。 嫌われてはないようで安心する。
「では、隊長。 管理センターに報告を」
「いや、それは止めよう」
え? なんでよ、我々の成果じゃん、大金ゲットで有名になれるかもなチャンスよ?
「ツチノコ君、これから君はどうするんだ?」
「これまた唐突に……そうだな。 外に出て、いろんなモノを見て聞こうと思う」
「ふむ。 ならば、なるべく ありのままの世界を、パークを見せたいと思う。 職員としても、個人としても」
なんだかシリアスな感じになってきたんだけど。
アレだ、報告すればパークは大なり小なり騒ぎになってしまう。 そうなれば、ツチノコは捕獲対象になったり、アイドル風にキャーキャー騒がれてしまうだろう。
そうなれば、パークをゆっくり見れなくなるだけでなく友だちも作れない。 作れても、それはきっと、利益不利益等を考えたニセモノだ。
1度ウワサが広まれば、群れの圧が押し寄せるだろう、それはツライさん。
俺は、そのツラさを少しばかり理解しているつもりだ、モチロン前世とか本土での経験である。
ヤツらめ。 ゆ・る・ざ・ん"!!
今回の隊長の言葉、ギャグは良いとして俺には重い。 過去の経験だけでなく、俗っぽく穢れている俺が浮き彫りになった気分で、ツライさん。 反省不可避。
「───分かるな、杏樹君」
「……ッ」
両肩に、ぽんと乗せられる大きな手。 力強くも温かくて、責めているようで赦してくれる……慈悲深い、そんな手だ。
───何気に、名前を呼んでくれたのは初めてな気がする。 思い出せないけど。
ただの脳筋じゃない。 隊長の器の片鱗が、ココにあるのかも知れない。
「……はい。 俺も、同意見です」
「うむ、聞けて安心したよ」
そう言うと、いちどポンッと俺の肩を叩いて高らかに笑う隊長。
嗚呼。
馬鹿にしていた部分があったが、馬鹿だったのは俺の方だったかな。
1歩間違えれば、自身の発言や行動が誰かを苦しませる。
この世界で、パークではその辺が無縁になるだなんて、妄想だ。 欲を出し過ぎれば、ヒトだけでなくフレンズも傷付ける。 気を付けないとならない。
一方的に被害者だと思うのもまた、妄想なのだ。 無意識に加害者になっている……ひょっとしたら、既にやらかしているのかもな。
そう考えたら、急に怖くなってきたよ。
やはり、人間関係は面倒だ。
その後。
ツチノコは発見されなかったと嘘の報告ひとつで、この件は片付いた。
UMAだ、本気で探そうとは思っていないのだろう。 管理センターは、これ以上は言ってこなかった。
サンドスターって神さまのフレンズやUMAも生み出すのか、スゴいねー(棒)で幕を閉じたかな?
いや、本気で探すにしても調査員不足かな。
ただ、パークにいる以上は……そのうち発見されるのかも知れない。
だとしても、俺は シツコイ干渉はしないようにしようと思う。
ツチノコの為、パークの為。
ヒトにもフレンズにも、どこかで線引きは必要なんだ、きっと。
「杏樹君、お・は・よ・う!」
再び朝からポージングを取るマッチョを見て、余計にそう思う。
お前のモーニングコール(電話じゃなくダイレクト)は、いらん!
あーかいぶ:(当作品設定等)
ツチノコ
日本の有名なUMA(未確認動物)。 胴が太いヘビと形容される。
ツチノコという呼び名は、もともとは京都府などで用いられていた方言であったらしい。
他にもバチヘビ、ツチンボ、ツチヘビなどの呼称があるそう。