パーク職員です。(完結)   作:ハヤモ

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不定期更新中。 長め、駄文続き。

世界一、怖いもの知らずとしてギネスにも載った けもの のフレンズと、蜂の巣の場所を教えてくれる けもの のフレンズと出会います。

ヒトや社会は難しい……。


熱血少女とハチミツと。

ヒトとフレンズが共存しているとも言える第1世代。

 

その光景は、都市部で多く見られる。 漫画版でいうと、コアラがコンビニでバイトしていたり、リカオンとマーゲイがケーキ屋で働いていたりするのが、その例だろうか。

 

見た目は可憐な女の子って感じだし、普通にヒトと意思の疎通が出来るから、大きな壁が無いように感じられる。

 

だがしかし。 体力測定の時のように、身体能力の差や知識の違い、純粋故の問題がある。 パップとか……いや、パップは忘れよう。

 

とにかく。 職員は、その差による問題に対処しなければならない。 ヒトとフレンズの健康と治安向上に努めるのだ。

 

して、菜々風に言えば、ヒトと けもの の架け橋……は、大袈裟かもだが、これからも友だちの関係を続けたいと思う。

 

 

「大変だ! 都市部でフレンズが喧嘩してるらしいぞ!」

 

 

だから、この話にも対処しなければ。

 

姿形、十人十色。 キタキツネが最初、ワガママガールであったように、皆が皆、言う事を聞いてくれるフレンドリーな子ばかりではない。

 

だが選り好みするのは、違うだろう。

そんな事をしたらさ。 落ち着いた後、互いに傷付くと思うから。

 

───それは、避けたい。

 

 

「俺、行ってきます」

 

 

だから俺は、直ぐに現場に向かう事にしたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラァ! 何とか言ったらどうなんだ!」

 

 

あー、こちら杏樹臨時職員です。 都市部の道路脇、現場に到着しました。

 

ヤンキーな、だけど可愛げを感じられる女の子の怒声が聞こえ、その音源を囲うように歩道で人集りが出来ております。

 

正直怖いんですけど。 帰りたいんですけど。 なんで引き受けちゃったんだろうと今頃後悔してますよ、ええ。

 

でも仕事なんで。 勇気を出すんだ。

 

逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ。

 

 

「というわけで、キタキツネ先生! お願いします!」

 

「なんで私なのよ!?」

 

 

こんな時は、最近は言う事を聞いてくれるキタキツネに任せよう!

 

 

「突然呼び出しておいて、喧嘩を止めてくれなんて。 あんじゅ ひとりで やってよ」

 

 

あれ。 言う事を聞いてくれないわ。

 

 

「プレミアム肉まんをやるから、何とかしてくれ!」

 

「イヤよ。 喧嘩なんて、私、やった事も止めた事もないんだし」

 

 

えぇ……担当者の菜々と言い合いになってたりしないの? けもの の時、親兄弟と経験ないの? そういうの、喧嘩のウチに……入らないのか。

 

今回は拳が交じりそうな雰囲気だし。 レンジャーを呼べば良かったか、してヒト前で殴り合いになって、呼んだ俺が怒られる、また俺かよ参ったね。

 

 

「でもさ、今のキタキツネは歴代最強かも知れないから、安心して止めてくれ」

 

「意味分かんないんだけど」

 

「頼むよ。 頼れるの、キタキツネしかいないんだ」

 

「うぅ……仕方ないわね」

 

 

手を合わせて懇願すると、しぶしぶといった様子で引き受けてくれた。

根は良い子だからね、キタキツネ。 特に最近は、目に見えてそう感じる気がする。 気がするだけだが。

 

 

「はいはい、道を開けて」

 

 

図々しくも、堂々と臆する事なくヒト払いをして前に進むキタキツネ。 今日ほど頼りになると感じた事はない、たぶん。

 

 

「じゃ、俺は背後からついて行くから」

 

 

して、女の子の背をビクビクとついて行くシャバ僧。 俺だよ。

 

 

「さっきからダンマリか!」

 

 

前方から再びの怒声。

 

ヒェッ。 俺は関係ないのに、怒られている気分。

 

そんな俺に反して、キタキツネは臆する事なく声主に声をかけた。 つ よ い。

 

 

「ちょっとアンタ。 何のフレンズか知らないけど、喧嘩なら止めなさい」

 

「あ? 誰だよ、お前」

 

「キタキツネよ。 して、背後のコイツは あんじゅってヒト」

 

 

おい、俺の名前を出すんじゃない。 それと前に出すなよ、ヤンキーの前に出たらショック死しちゃうかも知れないでしょ!

 

 

「ど、どど、どうも。 杏樹ッス。 焼きそばパンでもコロッケパンでも買ってくるパシリなんで見逃して下さい、後、喧嘩もヤメテ下さいお願いします」

 

 

先手必勝。 90度のお辞儀技を繰り出す俺。

これでダメなら、更なる技を繰り出すしかない。 その名も土下座である、プライドなんて捨てちゃうゾ。

 

 

「やきそば? ころっけ? ぱしりってなんだよ。 ハチミツの一種か?」

 

 

あれ。 都市部に住んでいれば知っていそうな単語を知らんのか、このヤンキー。

パシリはともかく……焼きそばやコロッケを知らんとは、食ったパンの枚数を覚えてないという感じでもあるまい。

 

チラッと前を見る。 喧嘩相手は知らんけど、せめてフレンズは確認しなければ……。

 

 

「あれ、キミは」

 

 

小さな丸耳に、普通ぽくもモフりたくなる尻尾。 赤いネクタイに、グレーのカーディガンを着た学生ルックなスタイル。

背の赤いマントと、鼻の絆創膏が印象的な女の子……って。

 

 

「ラーテル?」

 

 

怖いもの知らずという けもの、ラーテルのフレンズであった。

 

 

「そうだぜ! ワタシはラーテル、世界一の怖いもの知らずだ!」

 

「なによ、知り合い?」

 

「いや、会うのは初めてだよ」

 

 

いやはや、まさかラーテルと会えるとは。 いちおう、漫画版でチラッとモブとして出ていた気がするけど。

 

出会えた奇跡に感謝……して、良い状況じゃないよな。

 

 

「その、ラーテルさん。 キミは誰と喧嘩していたんだ」

 

「目の前にいるヤツさ」

 

 

目の前? 野次馬と、キタキツネと俺と……俺かよ、ドッペルゲンガーでもいたんかね、ヤベェよヤベェよ。

 

 

「他に いないじゃない、逃げたんじゃないの?」

 

「いるじゃないか」

 

「どこよ」

 

「さっきから睨んでくる、コイツだぜ!」

 

 

そう言って、指をさすラーテル。 目線で追うと、直ぐ隣で路駐している無人の車があった。

 

 

「このデカブツ、睨みつけてくるばかりで微動だにしないし、モノも言わないんだ!」

 

「えぇ」「アンタねぇ」

 

 

憤慨するラーテルには悪いが、そりゃそうだろう。

 

車は乗り物である。 最近の車は分からんが、喋りもしなけゃ、ヒトの操作や指示ナシに動いたりしない。 トランスフォームもしない。

 

 

「そりゃ車だ、いきもの じゃないよ」

 

「だけど睨みつけてくるぜ!」

 

「目に見えるのはライトだよ」

 

「らいと?」

 

「なんと言えば良いか。 ヒトの使う道具だ、だから睨みつけるとか、ないです」

 

 

文明を知らぬフレンズに、説明するのは大変である。

 

ラーテルがどこまでの知識を持って、この都市部にやってきたのか分からない。

普通、ある程度の知識が無いと危ないから教育されるのだけれど……迷子か?

 

 

「そうか、ヒトの道具か! 道理で喋らないハズだ!」

 

 

豪快に笑うラーテルさん。

 

納得したようで、何よりです。

最近のは喋るモノもあるけれど、言うと面倒なんで黙っておこう。 気になる方は、検索シテネ。

 

 

「ところで都市部……あー、ココにはどうやって来たんだい?」

 

 

邪なムードが霧散したので、質問コーナーに変えていく。 周りも興味が失せたのか、散り散りに。

 

キタキツネは、なんだかんだ残ってくれるらしい。 嬉しいね、なんかあったら守ってくれ頼む。

 

 

「相棒のノドグロミツオシエに教えてもらったんだ!」

 

「そうなのか」

 

 

渋る事なく、元気良く答えてくれるラーテルさん。

 

ああ、ラーテルって、鳥のミツオシエと共生関係にあるんだっけ。

 

地上棲のラーテルは、蜂の巣を見つけ辛くても、空飛ぶミツオシエは見つけられるとかなんとか?

 

だけど、ミツオシエは蜜蝋等を食べたくても蜂の巣を壊す力を持たない。 だから、ラーテルに巣の場所を教えて壊して貰う。

結果、ラーテルは蜂蜜を食べられるし、ミツオシエはおこぼれを貰える。

 

その共生関係はフレンズ化しても、続いているのだろう。 仲良しなのは良き事かな。

 

だけどさ、疑問があるんだよね。

 

 

「なあ、なんでミツオシエは都市部を教えたんだ?」

 

 

コレである、都市部に蜂の巣でもあったのだろうか。 だとしたら、それはそれで問題だぞ。

 

 

「相棒が言うには、ココに大量のハチミツがあるからだぜ!」

 

「はい?」

 

 

うん、嫌な予感がしてきたよ。 冷蔵庫にある大量の肉まんみたいなオチじゃないの、それ。

 

 

「いちおう聞くけど、場所って知ってるの?」

 

「ああ! あそこだ!」

 

 

そう言って、道路を挟んだ対岸を指さすラーテル。 そこには たくさんの主婦とフレンズで賑わう……大安売りの のぼりを出している建物が。

 

本土でも馴染みある、その光景と建物は……。

 

 

「スーパーかよ!?」

 

 

ヒトのお店、スーパーマーケットであった。

 

 

「ある日、相棒は1枚の紙を持ってきた! ワタシには読めなかったが、それにはハチミツの 在りかが描いてあったという! それがあそこだって話だ!」

 

「それ、チラシじゃね? スーパーの大安売りの広告じゃね?」

 

 

やっぱりそんなオチだった。 たぶん、ミツオシエは落ちているチラシでも見つけて、ハチミツの単語に釣られたんだろう。 そしてラーテルを使っていると。

 

この世代、サーバルや他の子もだが……文字の読み書きが出来る子は珍しくない様に感じられる。

だから、ミツオシエがチラシを読めたとしても別段、変だとは思わない。 こういった件があると厄介だと思うけど。

 

だが、話はコレで終わらない。

 

 

「相棒は言った! 道中、多くの敵が待ち構え、並大抵では辿り着けないと! だからワタシに助けて欲しいと! ならばワタシが道を切り開くと伝えたんだ! その隙に相棒がハチミツを手に入れる さんだん だ!」

 

「客を跳ね飛ばす事は、ダメダヨ」

 

「どんな危険でも、勇気とこの装備で乗り切るさ!」

 

「キミの存在が危険ダヨ」

 

 

ボス風に注意しておく。

 

ここでいう敵や危険……主婦やそのパワーのコトかもだが、フレンズのパワーは更に危険であるからな。

このままだとモノを売るってレベルじゃねぇナニかが発生してしまう、それはダメダヨ。

 

 

「邪魔するモノは倒すっ!」

 

「ヒトの話、少しは聞いて!?」

 

 

あかん。 注意しても聞いてくれないよ。

超次元スポーツならぬ、超次元ショッピングとか見たくないです。 見たくない? いや、どっちだよ。

 

 

「キタキツネ、代わりに買ってきてくれ」

 

「なんでソコで私なのよ!?」

 

 

ジッと我慢の子であった、キタキツネに丸投げを試みたがダメだった。

だって説得とか俺には無理そうなんだもの、特にラーテルみたいな脳筋はアカン。

 

 

「あんじゅ が行けば良いでしょ」

 

「あんな危険地帯に行けるか。 圧死してしまうわ!」

 

「飛び越えれば良いじゃない」

 

「俺は無理だ、てか入口の隙間が広くないからキタキツネやラーテルでも無理だろ。 ガラスにぶつかるぞ」

 

「ワタシなら飛び越えない! まっすぐ突き進む!」

 

「ラーテル、ちょっと落ち着こうか」

 

 

互いにテンパって、ロクな解決案が出てこない。 今にもラーテルは車道に飛び出して轢かれる雰囲気であり、早々に解決しなければ。

 

 

「うん? 飛ぶって言えば」

 

 

失念していたことが。

 

 

「ミツオシエは、どこだい?」

 

 

そう、ミツオシエの存在だ。

この件はミツオシエが元凶と思われるが、当の本人が見当たらない。

 

 

「相棒なら、あそこだ」

 

 

指さした先、スーパーの建物の上。 小がらな女の子の姿が。 頭部に畳んだ羽根と思われる膨らみが見え、お尻から尾羽を生やしており、フレンズだと分かる。

端に座り、足をパタパタと動かしながら下の様子を見ているときた。

 

そんなミツオシエ。 ラーテルとは異なるが、どことなく制服ぽい黒の服を着用。

だけど赤のチェック柄のスカートを履いているから、明るい印象を与えて来る。

可愛いじゃないか、下から見たらパンツ見えないかな、いやナニ考えてんだろ俺。

 

 

「あの子が、ノドグロミツオシエか」

 

「アイツ、何してるの?」

 

「ワタシが道を創るのを待っているんだぜ!」

 

「いや、道を創ったら おまわりさん 来ちゃうから」

 

 

摩天楼もあるビルの隙間を車がびゅんびゅん飛び交うジャパリパーク都市部。

本土と然程変わらない都市機能が働いており、多くのヒトとフレンズ、参入する営利団体や外国のヒトもいる、綺麗で文明的な見た目に反して国や企業の欲と闇が見え隠れする雰囲気があるこの場所。

全てをパーク職員が管理運営するのはキツ過ぎるし、法的な絡みも出てくる。 となれば国家の犬がいる、そんなワンコ達の世話になりたくないッス。

 

 

「誰が来ようと、邪魔するならブッ飛ばす!」

 

 

ラーテル、国家権力相手に大立ち回り。 見たいようで見たくないです。

 

こうなったら、フレンズの純粋な心を利用するか。 他の子や心境を考えるとスゴい嫌な言い方だが……言おう。

 

 

「ラーテル」

 

「ん?」

 

 

俺は、深刻そうな眼差しを向けつつ、彼女に言う。

 

ココは被害妄想を相手に押し付ける。 前世と本土での経験で鍛えられたネガティヴ思考だ、稀に役立つから馬鹿にするなよ。

 

 

「このまま突撃するとね、ミツオシエが傷付くかも知れない」

 

「なにっ!?」

 

 

大切な相棒が傷付くと聞くや、声を荒げるラーテル。 よしよし喰いついた、さすが貪欲な……は、関係ないな。

 

 

「話から察するに、ハチミツを手に入れるのはミツオシエだよね」

 

「そうだぜ! 最後まで絶対に守り抜くから、問題ないぜ!」

 

「ああ、手にするだけなら問題ないだろうね。 いや、客を跳ね飛ばすなら問題あるけど」

 

 

ラーテルの勢いとパワーがどれほどか知らんが、ミツオシエがハチミツを手にするのは出来るだろう。 その際に起きる道中の問題は取り敢えず置いておく。

 

 

「でもね。 ミツオシエが、ちゃんとヒトの社会を理解していれば……そのまま外には出ない」

 

「なんでだ?」

 

「キタキツネ、教えてあげなさい。 コンビニかどっかで、菜々に教えてもらっただろう?」

 

「へっ!? えーと」

 

 

再びヒマしている、キタキツネに抜き打ちテスト。 俺は見てないが恐らく漫画版の通り、菜々に何かしら教えて貰っているハズ。

 

 

「おかねを払う……じゃなくて?」

 

 

不安げな小声で、上目遣いで解答するキタキツネ。 可愛い、して正解だゾ。

 

 

「その通り。 ちゃんと覚えていて偉いぞ」

 

「へへっ」

 

 

キタキツネの頭をひと撫ですれば、純粋な笑顔を向けてきた。

ヒトの女の子ならキモいと唾棄される行為も、フレンズならこの笑顔。 あ〜癒されるわぁ。

 

 

「……こほん。 ヒトのお店の多くは、欲しいものを お金を払って手に入れるんだよ」

 

「よく分からないぞ! 分かるように説明してくれよ!」

 

「ミツオシエが、お金を持ってないんじゃない?」

 

 

全然分からんラーテルに対し、キタキツネはそういう。 ふむ、その可能性もゼロではないが……。

 

 

「まあ、その可能性もあるな」

 

「ハチミツを持って、そのまま外に出れば良いじゃないか!」

 

「それ泥棒よ」

 

 

キタキツネ。 キミも昔は やってたからね。 掘り返すつもりはないけど。

 

 

「たぶんだけど。 ミツオシエがヒトの社会を理解しているなら、お金を持ってるんじゃないかな」

 

「なら問題ないじゃないか」

 

「いや、ココからだよラーテル」

 

 

俺は ずずい、とラーテルに詰め寄る。 メンチ切ってるワケじゃないよ?

 

ただ熱血少女に分かるように、イメージする喧嘩流儀というか不良用語的なのを使って、そんな風に話そうと思ってね。

 

 

「ヒトのお店ではね、欲しいものとお金を持ってレジと呼ばれる場所にいる店員さんのトコに行くんだよ。 下さいな、とね」

 

「ああ」

 

「だが手に入れるにはな、タイマンしなきゃならない!」

 

「そうなのか!?」

 

 

タイマンの意味が分かって、驚いているのか知らないが、取り敢えず話を進める。

 

 

「今見えてる敵なんて、氷山の一角。 奥に行くほど敵で溢れているが、そんなのは障害物競走の障害のソレでしかない! だがどうしても避けられない、それが最後のタイマンだ……!」

 

「そんなコトが……危ない目に合わすワケにはいかない! ワタシが代わりに!」

 

「いや、これは お金を持っている子の役割なんだ。 ツラいだろうけど、ミツオシエに頑張って貰おう……そう、例え傷付き、ラーテルとお別れする事になっても」

 

「そんな、ワタシの為に……!」

 

 

がっくし、と項垂れるラーテル。 怖いもの知らずでも、友が傷付くのは嫌なのだろう。

フレンズは良い子だとしみじみ思うよ。

 

一方、キタキツネはジト目で見てくる。 キミも良い子だよ、言いたいコトもあるだろうけど。

 

 

「あんじゅ、大袈裟(おおげさ)に言ってない?」

 

「分かりやすく言っているのだ、文句あるならミツオシエに言いなさい」

 

「納得出来ないんだけど」

 

 

ラーテルが突撃を止めてくれれば良いです、ハイ。

 

 

「うぅ……だが、相棒が待っているんだ。 何とかしたい! いや、してみせる!」

 

 

あかん、やっぱ突撃するかも知れない。 穏便に済ましたい身としては……自らが動かねばならないか。

 

 

「よし、分かった。 俺が代わりにハチミツを手に入れる、それで解決だ」

 

「いや、ワタシが行くぜ。 相棒を見捨てるワケにはいかないんだ!」

 

「じゃあ、その相棒に話をしてくる。 キミは相棒と共にスーパーの外で待っていて欲しい」

 

 

職員としては教育しなきゃならんが、そのうち来るであろう担当者に任せる。

今はハチミツを手に入れるのだ、話が長引いて商品が無くなる可能性もあるし、ミツオシエが痺れを切らせてナニかやらかすかも分からん。 なにより、俺が面倒臭い。

 

ラーテルの返答を待たずに、俺はサッサとスーパーの方に駆ける。

手前の片側二車線道路は それなりに大きい、フレンズの前で悪い例は見せられないから、ちゃんと横断歩道を渡りました。

 

……いやほら、これで通報されて おまわりが来たら笑えないでしょ? 横切る勇気が無かったワケじゃないよ?

 

 

「おーい、ノドグロミツオシエさんとやら!」

 

 

スーパーの前まで来ると、客の群れから横にズレたトコから、上のミツオシエに向けて声を掛ける。

 

残念ながらパンツは見えなかった、いや、見るつもりはないんだけど。

 

声を出した事で多少周りの視線が向けられたが、直ぐに視点はスーパーに戻ったようだ。 ウチの寮だったら通報されてるな。 女の子のパンツを見ようと下から覗き込んでいるヤツがいると。

 

 

「うん? 誰ですか?」

 

 

一方で、ミツオシエは可愛い声を出して反応してくれた。

 

良かった、無視されたら地味に辛かったゾ。 古傷が抉れるまである、そしたら泣いちゃうトコだよ。

今は嬉し涙の方が出そう。 俺ってホント、涙腺ユルいよね。

 

 

「やあやあ! 我はパーク職員の杏樹である! お主の相棒、ラーテル殿との事で話に参った!」

 

「うわっ、なんか変なヒトがいますね」

 

「おい、否定出来ないけど言うのやめて。 ツラいから」

 

 

ガラスのハートが傷付く事を言うんじゃないよ。 ちょっと反応してくれたのが嬉しくて調子に乗った俺も悪かったけど!

 

 

「取り敢えず降りてくれないかい? 話難いんだよ」

 

「仕方ないですねぇ」

 

 

そう言うと彼女は立ち上がり、頭部の羽根を広げて……ふわりと空中に浮かんだと思ったら、ゆっくりと降りて来た。

 

 

「おお」

 

 

その際、彼女の周りに発生する虹色の光……けものプラズムだっけ?

 

それが神秘的で……思わず声が出てしまう。 トキが空を飛んでいる時も出ていたが、あの時はゆっくり見る余裕がなかったからな。

こうしてみると見惚れてしまうよ。

 

 

「───綺麗だ

 

「へ?」

 

「いや、何でもない」

 

 

いかん、声に漏れた。 通報は勘弁な。

 

 

「ラーテルから、大体の話は聞かせてもらったよ。 露払いをさせようって腹かい、腹黒ちゃん」

 

「ハラグロじゃなくて、ノドグロです───べ、別に悪い事してませんよ! お金だって担当者に貰って用意したんですし、ラーテルさんには か弱い私の代わりに先頭を歩いてもらうだけです!」

 

「ヒトを弾かせる気でしょ。 ダメだよ、危ないから」

 

「うっ。 いやでも、ほら! ヒト同士押しあってるじゃないですか。 あんな感じですよ!」

 

 

客の群れを指さすミツオシエ。 確かに押し合っている。 まあ、こういうのを見て「やっても良い」と認識しちゃったのかなぁ。

 

でもそれをフレンズがやると、アウトなんだよなぁ。 加減すれば平気だろうけど。

 

 

「ラーテルの性格からして、同じレベルで加減してくれる保証がない。 ヒトは脆いんだ、ちょっとしたことでケガもするし、強くない」

 

 

───それから。

皆が優しいワケじゃないんだよ。

 

 

「───私だって」

 

「ああ、個人差はあるだろう。 だから、キミはラーテルを頼った。 頼ること自体は間違いじゃないと思うよ。 でも、今回はちょっと容認出来ないかな」

 

 

偉そうな事を言っている自覚はある。 して、コレが正解とは思っていない。

 

でも、この子には俺と同じ道を歩ませたくないんだ。 嫌われ無視される のけもの がいるならば、それは俺だけで良い。

 

 

「だから代わりに、俺が行く。 お金はキミの担当者に請求するから気にするな」

 

「えっ、でもあの数相手に……奥まで進めますか?」

 

「ステルス性の高さもある、役立つか分からんが」

 

 

前世や学生時代では、あまりの高さからか名前を覚えてくれたヒトは僅かだ。 カコやミライ、菜々や教師には覚えられたようだが。

 

あれ、コレって人混みじゃ役に立たないんじゃね? 特に今回。

 

 

「まあ、なるようになる」

 

「分かりました、なにもせずに戦利品をいただけるなら良いです。 てなワケで、ガンバっちゃってくださ〜いっ」

 

「ちったぁ、遠慮(えんりょ)した発言してくんね?」

 

 

ストレートに言ってくるので、思わずイラッときてしまった。 良くも悪くもピュアなんだろう、ピュアなら許せるワケじゃないが。

 

 

「勝手に助けてくれるんだもん」

 

「今回だけだぞ」

 

 

後は彼女たち担当者の仕事だ、俺の仕事じゃない。 ただ今回は、そう、今回は放置したら危険だと思ったから助けるのだ。

 

 

「てなワケで。 キタキツネ先生! 先頭お願いします!」

 

「やらないわよ!」

 

 

再び隣まで来てジッと我慢の子であった、キタキツネに頼んだがダメだった。

 

うーん。 相棒と言うには、まだ教育が足りないかな?

 




あーかいぶ:(当作品設定等)
ラーテル
ネコ目イタチ科ラーテル属
背面の体毛は主に灰色で、境は白く縁取られる。 頭部から背面、尾にかけては白い体毛で覆われる。
皮膚は分厚く、特に頭部から背にかけての部位は柔軟な装甲となっており、生態的にもこれを最大の武器としている けもの。
今回のフレンズの姿に、丸耳があるように見られるが けもの のラーテルには耳介がないようだ。
コブラ等の蛇が持つ神経毒に対して強い耐性を持ち、咬まれても一時的に動けなくなるだけで、しばらくすると活動を再開するみたい。

杏樹のメモ:
ライオンやコブラ、ヒトさえも恐れず立ち向かうよう。 世界一、怖いもの知らずの けもの らしい。 ハチミツを巡り、ミツオシエとは共生関係にある。
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