パーク職員です。(完結)   作:ハヤモ

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不定期更新中。 オリジナル。 作中で登場する組織や、説明に不備があるかも……。

悩む杏樹。 そして、気になる あの子の影が。
ついでに、欲求不満な模様。


EXの刺客「気になる! 気になる!」

ヒトは、多くの けもの を目の当たりにしてきた。 その身体能力の高さや美しさに惹かれ、崇め、憧れ、一部は仲良くなり……一部は絶滅に追いやった。

多くの言葉が生まれ、記録が残り、道具や乗り物が生まれて、それに けもの の名をつけて……多くの悲しみと喜びも生まれた。 伝説や感動を与えることもあった。 中には地球というクレイドル(ゆりかご)を飛び出した子もいる。 けもの は偉大である。 いや、名を冠したヒトの道具類であったとしても。

今やジャパリパークという、けもの がアニマルガールとなり、会話が出来る奇跡の島が出来たこの世界だが、これからもきっと、ヒトと けもの は、そうなのかも知れない。

 

だけど。 ヒトによって保全状況が深刻な けもの は多くいる。 これからも、とは現状維持という意味ではなく……或いはそうであっても維持する為の努力はしなければならないのだろう。

 

で、なければ。 EX(Extinct)は、増えていき……生態系は崩壊、後世の子らに見せる事が出来なくなるだけでなく、ヒトも影響を受けて……EXの仲間入りになる日が来るかも知れない。

 

だが、パークの奇跡……サンドスターにより、絶滅種がフレンズとして復活するのが分かった今。 その悲観も少しは和らいだ気がする。 少しだが。

TV等で流れるニュースにて、この事が報じられた際、パーク園内や世間では様々な意見が飛び交った。

何か悪い実験が行われるんじゃねえかとか、ヒトの都合で絶滅させられたり復活させられたりして可哀想だとか、それは紛い物だとか道徳に反するとか、フレンズ化ならば、復讐されんじゃね怖〜いとか。

逆に、また見ることができるとか、研究出来るとか。 何にせよ、それら意見も大分好き勝手な憶測や話である。

 

俺? 世間どうこうより、カコの心境が心配だ。 絶滅種が復活出来るのは、カコの研究成果であるからね。

カコを責めるヤツの話は聞かないが、もしいるなら ちょっと違くねと思う。 せめて俺だけでも味方でいたい。 守らねば。

 

さて。 そんな感じに絶滅種の話を続けているが。 ケモフレでの描写や、ゲーム等で出て来る保全状況……レッドリスト作成に関わる国際自然保護連合(IUCN)の建物がパークに建設されたのは、知らない話であった。

俺は事務局の職員ではないし、委員会に所属している科学者等ラボラトリー・スタッフは知らない。 カコは、分からないけど。

取り敢えず、直接の関わり合いが無いとみている。 そう。 直接は。

 

またレッドリストの話であれば国連だけでなく、日本の環境省が作成するものもあるが、やはり ソッチのお役人さんとは直接の関わり合いは無い。

 

 

「ココが、そうか」

 

 

ジャパリパーク都市部。 多くの雑居ビルに混じり、明らかに他とは違う建造物……鎮座する豪華で綺麗なビルディングの前に俺はいた。

目的があるワケじゃない。 ただ、目立つから気になって間近で見てみようと思っただけ。

 

大衆に見える、道路側には複数の長い棒が生える。 見上げれば天辺に付けられた旗がパタパタと風で靡いている。

描かれるは、複数のロゴや国旗。 それが並列し、陽の明かりで輝いていた。 その中には、光栄と言って良いのか、パークロゴの「」の字も混ざる。

 

 

「俺の知らないジャパリパークってか」

 

 

今更なんだが、パークは思っていたより複雑だ。 だけど、下っ端職員の俺からしたら雲の上の話。 関係ない。

労働時間を迎える度、奴隷社会を嘆き権利や利益、自由を求める割には上の苦労は知らない。 俺も大分勝手である。 だが、どうしようもない気がする。 俺には権限も能力もない。 いや、言い訳か。 だけど嘘じゃない。

 

 

窮屈(きゅうくつ)な世界を続けて良いものか?」

 

 

そんな、ヒトがいるジャパリパーク。 アニメのように、ヒトが消える方が良い気もする。

フレンズだけがいる、のけもの のいない世界。 それは誰も傷付かない、皆がずっと笑い合えるユートピア……は言い過ぎか。 でもソッチの方が幸せじゃないのか?

ヒトが取捨選択し、歩む道。 パーク撤退もその道のひとつ。

だが逆にだ。 未来にて異変が発生するのを知っていれば、それらはヒトが未然に防げるものか。 或いは解決出来るものなのか。 それは分からない。

 

 

「電話、してみっか」

 

 

スマホを取り出し、電話帳にあるカコにコールする。 研究に没頭している時は繋がらないが、偶に繋がる。 相手に迷惑だろうけど、俺はカコが心配、いや、俺の不安を拭えればと。

渦巻くモヤを払うキッカケになれば良い。 何より俺が寂しい。 なんと女々しい男なんざましょ。

Pururururu……Pururururu…………と、電話が鳴る。 この間の期待と不安。 かける言葉を脳内で考えようとしていたとき。

 

 

『もしもし、どうしたの?』

 

 

あ。 繋がった。 我が馴染みの可愛い声が耳元で聞こえてくる。 やべ、言葉考えてない。

取り敢えず、適当に……。

 

 

「あー、いや。 声が聴きたくなってさ」

 

『ふふっ、変なの』

 

 

そう。 変なんです。 あ、元からかって、やかましいわ。

 

 

「色々と、その。 大変だと思うから……体とか大丈夫かなぁって」

 

『大丈夫、ありがとう。 あんじゅは?』

 

「俺は大丈夫だよ」

 

『そっか。 良かった』

 

 

大丈夫と言い合い、取り敢えず互いの無事を確認する。 この手は鸚鵡返しのソレなので、実は互いに無理している可能性があるのだが、今は置いておく。

 

暫しの間。 気不味いようで、心地良い。 後方で走り抜けていく車の音、知らないヒトやフレンズが歩く音。 そよ風は心を落ち着かせてくれる。

カコと共有する、ちょっとした時間。 電話越しでも嬉しい。 嗚呼、また共に過ごしたい。 その手に触れたい。 そんな俺ってキモい。

 

 

『えっと……お願いがあるの』

 

 

先に口を開いたのは、カコだった。

はて。 お願いとは。 珍しい。 何だろうか、俺に出来る事なら良いけど。

 

 

「怖いのは嫌だよ」

 

『だ、大丈夫』

 

 

一瞬の言葉の詰まりも、俺にとっては恐怖の対象だよ。

 

 

『職員は、アニマルガールのヘルプで担当以外の子の面倒を見る事があるでしょ?』

 

「ああ」

 

『その逆。 職員を補助する為に、アニマルガールが来るのは知ってる?』

 

「知ってるよ」

 

 

この話、似た光景は漫画版でも見られるかな。 菜々がチーターのヘルプの為に家に訪れる回や、ミライのヘルプで来たタヌキとか。

 

 

『それでね、あんじゅの活躍を聞いて大変だろうって……研究所のヒトがいて。 ヘルプを寮に送りたいんだって』

 

「それは、嬉しい話だな」

 

『あんじゅが良ければ、今日にでも寮に向かわせたいんだけど』

 

 

嬉しい。 表面上は。

だがな。 この手にはナニか裏がある。 馬鹿正直に受け入れられない。 そのヘルプ、どんな子なんだ?

 

 

「フレンズ?」

 

『そう。 ニホンオオカミ

 

ファッ!?

 

 

思わず変な声が出たよ。

そりゃそうだ。 ニホンオオカミ……その名の通り日本にいたオオカミなのだが、ヒトの所為もあって絶滅したという。

だがパークにてフレンズとして復活。 そんな子が、ウチに来るだって?

 

 

「嬉しいけど、絶滅種じゃないか。 フレンズ化していようと稀少な研究相手だろ。 そんな子を臨時職員に回して良いのか?」

 

『うん。 (むし)ろ回したい、みたい』

 

 

ここで、一度電話が切れたと思ったら。 向こうでドッタンバッタン大騒ぎをする音が。

微かに「ニホンオオカミ」とか「それ、らめぇ!」とか「気になっても、触るなぁ!」とか聞こえてくる。

 

うん。 何となく回そうとする理由が分かった。

 

 

『お待たせ』

 

「ああ。 こんな事言いたくないんだが、厄介払いだな?」

 

『本音は、そう。 でも表での生活をさせての変化や動作、成長を見たいというのもある』

 

「そりゃあ、どっちがヘルプなのか分からん話だな」

 

『……研究所に届けられた剥製の毛にサンドスターを当てたら、ニホンオオカミのアニマルガールが生まれたの。 とてもヒト懐っこくて、快活で好奇心旺盛。 ニホンオオカミの記録は少ないけれど、ジッと観察するクセ等が見られる。 それから、何日か経ったのだけど、その、元気過ぎて研究所の皆が困ってる』

 

 

毛とはいえ、稀少なものをわざわざ本土から遠く離れたパークまで持ってくるとは。

連日のパークニュースや国連の建物を見るに、サンドスターやフレンズの存在は凄まじいのだろうな。 して、毛は上野にある科学博物館からだろうか。

何にせよ、色々あったのだろう。 ご苦労さまである。

 

 

「あー、うん。 分かった。 コッチに送って良いよ。 改善しなくても文句は受け付けないが、それで良いなら」

 

『ごめん。 ありがとう』

 

「いや、俺もニホンオオカミのこと見たいからさ」

 

『じゃあ、寮の部屋まで送り届けるから。 部屋にいるようにしてね。 寮母さんには許可を得ているから大丈夫。 何かあったら、私に連絡を』

 

「分かった」

 

『うん。 じゃあ、また後で』

 

「ああ、またな」

 

 

ツーツーツー、と。 ふむ。 切れたか。

こりゃ面倒な事になりそうである。 俺のパートナーとなるフレンズの予感がして、嬉しくもあるが。

しかし、ニホンオオカミか。 フレンズの姿は可愛い子だと記憶にある。 オオカミというかワンコの印象が強い。 前世で剥製を見た事があるけれど、小柄な犬って感じであった。

 

 

「ふっふっふっ。 調教しがいがあるかもな」

 

 

おっと。 管理センターに通報されないようにしなければ。

そう、るんるんと帰路につく俺。 楽しみだなぁ、早く会いたい。

 

 

「あれ」

 

 

ふと思う。 寮のヒトの目も気にしなければならないが、ニホンオオカミも気にしなければならない。 いや、気にしちゃマズいか?

 

 

「女の子と同居って、なるんじゃね?」

 

 

なんか、不安になってきたぞ。

取り敢えずベッド下のエロ本を隠すか。 好奇心旺盛で、エロ本が見つかり「ナニコレー!」と笑顔で広げて見せられたら……軽く死ねる。 下手すると職員ライフの危機なのだ。

 

 

「ヤベェ……落ち着け。 相手はオオカミ。 女の子だと意識しちゃダメだ。 平常心、平常心だ」

 

 

先程の余裕はどこへやら。 気になり始めたらアワワワワ状態になりつつある。 悲しいかな、チェリーには余裕がない。

 

 

ソウか。 俺もオオカミになれば良いノかもな、そうだ。 そのままツガイにナレば絶滅種も寂しくは……って、気を確かにモテ!

 

 

我、杏樹臨時職員。 内に秘める、或いは下半身的な意味で、ある意味ピンチな状況に陥りそうです……。

 




あーかいぶ:(当作品設定等)
国際自然保護連合(IUCN)
(International Union for Conservation of Nature)
本部はスイスのグラン。
世界的な協力関係のもと設立された、国家、政府機関、非政府機関で構成される国際的な自然保護ネットワーク。
"自然を尊び、保全する公正な世界"を目指し、"自然が持つ本来の姿とその多様性を保護しつつ、自然資源の構成かつ持続可能な利用を確保するため、世界中のあらゆる社会に影響を及ぼし、勇気づけ、支援していくこと"を使命とする。
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