パーク職員です。(完結)   作:ハヤモ

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不定期更新中。 駄文。
日々がシンドイ……俺もパークへ行きたい(泣)。

起こり得る事件へ考える中、チーターと出会います。 ですが、そんなに走る描写、ないです。


☆地上最速 短距離走者(スプリンター)の冬。

スマホを充電して復活すると、たくさんのヒトから連絡が来た。 それらは「あけおめ」メールでもあり、生存を喜ぶ声でもあった。

そして謝罪も含まれる。 仕事やセルリアン対策に追われて、直ぐに返信が出来なかったと。 今となっては仕方ないね、と思った。 寧ろ安心した。 嫌われてなかったようだから。 それが1番の朗報。 俺にとっては。

 

ちなみに。 レンジャーの隊長は無事。 病院に運ばれたそうだが、直ぐに快方に向かったという。 そして森へと帰ったんだと。 強いですね……。

イタリアオオカミは俺の妄想が当たったのか、捕縛されて正気に戻ったそうな。 次が無い事を願う。

 

さて。 正月も明けて。 上や派遣先で出会う職員達に、警備やセルリアンの危険性を日常会話っぽくアレンジしながら話を続ける中。

時間とは無慈悲にも、しかし平等に流れて行くもの。 此方の都合も御構い無しに仕事も与えられる。 ふぁっきゅー!

 

 

「それどころじゃないんだが」

 

 

時が経つにつれて、焦る気持ち。 それでも生きる為には働かざるを得ない。

いかんな。 落ち着け。 ポジティブに行こう。 派遣先がバラバラな分、いろんなヒトやフレンズに出会える。 そして注意を促せる。 そこから発展するかも知れないから。

 

 

「今度は、ヘルプに行けと仰るか」

 

 

そして今回。 都市部郊外側へ。 閑静な住宅街のような地区にある、カラフルで立派な一軒家へと足を向けた。

見た目は どう見てもヒトの「おうち」だが、住んでいるのはフレンズだ。

 

 

「ココが 女のハウスね」

 

 

ふざけつつ、インターホンを押す。 本土でも聞いたことのある「ピンポーン」という軽快な電子音が響いた。

第1世代。 野生的な巣ではなく、都市部側に出て来ているフレンズは、この様な住居に住んでいる子が珍しくないのだ。

 

 

「出来れば、ヒトやフレンズに沢山会える職場が良いんだが……いや。 例え1人でも大きく変わるかも知れん」

 

 

ブツブツ呟いていると。 ガチャリと玄関が開いた音が。 前を向くと、そこには……。

 

 

「来たわね、愚民(ぐみん)

 

「ファッ!?」

 

 

いきなり愚民呼ばわりしてきたフレンズが。

 

驚きと共に見やればロングヘアーで長身のスラッとした体格。 体型は高速で走るために進化した事を思わせる細くしなやかな体つき。 アニマルというよりアイドルみたい。

白色の半そでシャツにミニスカート。 スカート・アームカバー・ニーソックスなどにはヒョウ柄模様が。 お尻からは尻尾が生えており、走り時のバランスを取る役割を担っているのかな。

そんな彼女の名は……。

 

 

「チーターか!?」

 

 

かの地上最速の けもの、チーターだ。

 

多くのヒトは知っているだろう。 地上最速の けもので有名だからね。

そして、短距離走者でもある。 スタミナが持たずバテる。 長距離走は苦手という。

 

 

「ふふん。 私を知っているなら話は早いわ。 今から私の下僕におなり」

 

 

いやー、第1世代のチーターは濃いフレンズだね。 あ、初代じゃなくても濃いかな。

取り敢えず、なんだ。 漫画版でも出てきた通り女王サマキャラだな。

何処かのキツネサマみたいだ。 そういえば同じ金髪風である。 金髪美女は好きだけど、言っていることは好みじゃないね。 素朴な性格や明るい子が好き。 Sはちょっと……。

 

 

「SMプレイは味わいたくないんで、サヨナラ!」

 

「ちょっと待ちなさい!」

 

 

なので逃げる。 職務放棄じゃないよ。 というか放棄したくても相手はチーター。 逃げられないだろう。

ほら、背後を向けば……。

 

 

待てゴラァ!!

 

「うひょっ」

 

 

凄まじい速さで距離を詰めて来るチーター殿。 逃げられそうにない。

振り切るように違う道、右折してみた。 振り返ると、一瞬チーターが直進する姿で見えたと思ったら…………次には目線が合い、目の前にチーターがワープしたと思えば、そのまま押し倒された。 電光石火の早技。 刹那の出来事。

そういやチーターは、急激な加速度変化と進行方向を変える能力があるんだっけか?

だけど、如何にして方向制御や操縦性を実現しているのか、その仕組みは まだ明らかになっていないとか。

 

 

「ふ、ふふふ……チーターの私の手から逃れられたモノは いまだかつて いないのよ」

 

 

そう言って、耳元でハアハアしながら言ってくる。 息が荒い辺り、体力が無いのだと思わせる。 そして催眠音声の類かな。 耳に息が当たって擽ったい。

この辺、漫画版に近いな。 菜々もこうして捕まったのだろうか。

 

 

「そ、そりゃあ運が良かったね。 チーターって野生での狩り成功率的には」

 

あん?

 

「ナンデモナイデス、ハイ」

 

 

猛獣の眼光にも勝てなかったよ。 完全敗北である。 いや、身体は屈しても心まで支配出来ると思うなよ。 故に下僕にはならないです。

 

 

「あれ。 菜々は?」

 

 

ふと思う。 漫画版の通りなら、この立場は菜々(なな)だ。 俺じゃない。

そう声を上げると、チーターはキョトンとして首を傾げた。

 

 

「なんの話?」

 

「菜々っていう飼育員。 知らない?」

 

「知らないわ」

 

 

でた。 知らないジャパリパーク。 些細(ささい)な事だろうけど、時として知らないとは不安要素でもある。

いやいや、いかん。 ポジティブに考えろ。 俺の影響で変わっているんだなと思えば世界は明るい。 明るくない?

 

 

「とにかく。 来た以上は私の世話をするのよ。 あんたたち飼育係はフレンズの世話をするのが仕事でしょう?」

 

「臨時職員だよ。 本職じゃない」

 

「今は飼育係に違いないでしょ」

 

 

そう言われて、ズルズルと引き摺りお持ち帰りされちゃう俺。 酷い事する気でしょ! いや冗談さ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あったかい部屋だね」

 

 

そうして入れられた家。 暖かく、冬服を脱ぎたくなる室温である。

周りを見た。 綺麗に整理されている。 観葉植物が置かれ、オシャレな感じ。 野性味はなく、上品なお姉さんの部屋を妄想させるレイアウトとなっている。

 

 

「当然よ。 こんな寒い日に外に出たら死んでしまうでしょ」

 

 

そう言いながら、コタツに入るお姉さんなチーター。 普通に外に出てたよね。 生きてるよね。 けもの の頃は暑いトコに暮らしていた所為?

まあでも。 フレンズも気候に合わない所にいると寿命を縮める要因になるんだったかな。 強ち間違いではないか。

 

 

「わたし いま、冬眠中なの」

 

「冬眠?」

 

「冬が明けるまで、こうしてコタツの中で あたたかくしてゴロゴロしてる」

 

 

猫はコタツで丸くなるってか。 フレンズがやっても可愛いけど、ツッコミは入れておく。

 

 

「冬眠は食べ物が少ない冬を乗り切るための手段だから、これはただの惰眠な」

 

 

取り敢えず菜々が言っていた事を言ってみた。 チーターめ。 贅沢な越冬をしようとしている。 けもの だから大目に見るが、ヒトの姿形をしていると どうもね。

許されるなら俺もなぁ、惰眠を貪りたいなぁ。 出来ればずっと。

 

 

「私のリッチな冬眠生活のために、今日から あなたは 私に尽くすの。 わかった?」

 

「イヤな仕事だ」

 

 

なんたる女王サマか。 キタキツネと似ている。 俺は養ってもらうのは良いが、養うとか世話とか やりたくないです。

 

 

「買い物、炊事洗濯、掃除ほか、雑務の一切をやるのよ」

 

「少し手伝うだけだぞ」

 

 

一時的な仕事である。 とはいえ、コレを漫画版にて別にかまわないと言った菜々も強い。 キタキツネの面倒を見ている影響ぽいが。

 

 

「じゃあ、さっそく ここに書いてあるもの全部買ってきてちょうだい」

 

 

そう言って紙を渡してくるチーター。 漫画版の通りか。 彼女も文字の読み書きが出来る様子。 か し こ い。

 

そんな かしこい彼女が何を書いたのか。 気になって見てみれば……。

 

 

牛乳

豆乳

クッキー

ショートケーキ

ミルクチョコレート

ココナッツミルク

ラフランス

 

 

「えぇ」

 

 

どんな暮らし してるの。

 

思わず菜々と同じ事を思った。 全体的にお菓子系というか。 偏っている。

職員としては、小言のひとつは言わねばならないか。

 

 

「取り敢えず買ってくる」

 

 

そう言って、チーターの家をいちど出た。 ココは無難に漫画版の通りにやった方が……。

 

 

「い、いや。 コンビニは避けよう」

 

 

コアラのパップを避けるため、俺は何時ぞやのスーパーへと足を向ける。

平和な漫画版でも、避けたい事はあるのだ…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フレンズとヒトが生活する試験解放区。 その都市部にあるスーパー。

何時ぞやホワイトタイガーと出会った場所でもある。 それと外側でラーテルとミツオシエ。

 

今日はセールがない様子。 知り合いのフレンズも見当たらない。 比較的店内は空いている。

ふむ。 それは有難いんだが、皆元気だろうか。 ホワイトタイガー達とは ともだち と思っているが、ホイホイ会う間柄じゃない。

トラの子だし、ひっ付き合わない方が返って良いのかも知れないが……ちょっぴり寂しい。

 

 

「今度会えたら……ニホンオオカミを紹介するかな」

 

 

ブツブツ言いながらも買い物を続ける。 明るく社交的なニホンオオカミなら、皆と仲良くなれるだろう。

こうして友の輪が広がる。 良い事だ。 これが連鎖していき、けものフレンズとして……パークの危機に立ち向かうチカラになればと思う。 アニメのラストの方的に。

 

 

「……カコの側に、何とかして行けないだろうか?」

 

 

では、ヒトの世界の方。 ジャパリパークの研究所に勤務する大切なヒト……カコはどうだろう。 守る者はいるのだろうか。 心配だ。

俺が寄り添うにも、研究所はおいそれと入れる施設ではない。 臨時職員が入れる事があるとしたら、改修工事や荷運びや清掃の雑務の時かな。

だがしかし。 その仕事を待つのは、不確実である。 そもそも話が来るかも分からない。 その前に事件が起きては手遅れだ。

仮に仕事をする事になっても、一時的に研究所の敷地や内部に入れるだけ。 カコに会えるか分からないばかりか事件前に終了して外に出されたら、やはり同じ様なもの。

 

 

「ならば」

 

 

同じ立場なら。 研究員や専属のスタッフ、助手になるならどうか。 正規じゃなくて良い。 研究所にとって有益な存在だと示せれば、暫くは研究所内に留まれるかも知れない。 或いはアクセスの許可。 駄目でも話に耳を傾けてくれるようになるか。

サンドスターにセルリウム。 アニマルガールにセルリアンという未知の存在へのアプローチ。 既成概念を捨てねばならないパークにて、情報や知識は何であれ欲しいハズ。

では、そんな情報や知識を俺は持っているのかという話になるが……たぶん、ある。

 

 

「レポートか何かを書いて提出するか」

 

 

買い物を済ませ、チーター宅に戻りつつ、俺は今後の方針を固めた。 副所長の馴染みというコネや、ニホンオオカミという伝手もあるから……きっと大丈夫。

 

そうでなくても。 何とかなるさと思うしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきより暖かくない?」

 

 

戻れば、室温が上がっている。 運動した所為ではないだろう。

漫画版の通りなら……。

 

 

「あーさむさむ」

 

 

やはりか。 奥を見れば、コタツのチーターがストーブを5台も出していた。

それらはチーターの周りをグルリと囲んでいる。 ストーブ ハーレムである。

 

 

「ナニこれ。 どんだけ寒いのさ」

 

「うるさいわね」

 

 

不機嫌な表情で見てきやがる。 美人なので、それすらも絵になるが、職員としてならば指導をするべきだ。 菜々がやったように。

 

 

「まあ良いか」

 

 

だけどやらない。 サボれる時にサボ……じゃなくて休まなきゃ。

チーターの脇に買い物袋を置くと、反対側へ。 向かい合うようにコタツに入った。 温かい。 コタツさいこー。

 

 

「何してんの」

 

「一緒にぬくぬくしようかと」

 

「世話係が ぬくぬくしてちゃ困るわ。 家事をやって頂戴」

 

「だが断る」

 

「アンタ、ホントに職員?」

 

 

むっ。 俺を否定するかのような発言。 反抗しちゃうぞ。

 

 

「うるさい。 そも、生活リズムや健康の側面から見れば、本当は指導をしなきゃならない。 それをしないんだ。 感謝こそすれ、文句は受け付けん」

 

「あんた普通っぽい顔して、実はすっごい変わり者でしょ!」

 

 

変わり者です。 転生者ですらある。 強調すると本来存在しないレベルだろう。 凄いだろ。 拝めよ。 何も出来ないが。

 

 

「変わり者さ」

 

「否定しないのね」

 

「結果なら出てるからな。 管理センターや知り合いに聞いて調べれば、俺の痴態の数々が分かるだろう」

 

「悲しくなってきたわ」

 

 

そんな問題児が派遣されて来た件についてかな? 悪かったな。 俺も面倒事は勘弁だ。

 

 

「まあ、コレも何かの縁ってことで。 以後よろしく」

 

「まぁ、良いけどね。 よろしく……えーと、愚民?」

 

 

それも否定しない。 だけど名前で呼んで欲しいね。

 

 

杏樹(あんじゅ)だ」

 

「そう。 よろしく あんじゅ」

 

 

そう言って、コタツから片腕を出して「招き猫ぐー」で挨拶してくれた。 可愛い。

 

 

「可愛い名前ね」

 

「ふぇっ!?」

 

 

一瞬、チーターに心を読まれたと思って変な声が出てしまったよ。 恥ずかしい。

それが面白かったのか。 煽るような笑みを浮かべてくるチーター。 男に可愛いとか、それ、褒め言葉じゃなくない?

 

 

「ま、まあ。 女っぽい名前だとは思うけどさ。 もう慣れた」

 

「あらそう。 これから名前で呼んでも平気なのね?」

 

「もちろん。 ()()()からも呼ばれてるからな。 今更だよ」

 

「……そう」

 

 

今度は詰まらそうな顔をされた。 仕方ないね。 名前を呼ばれるのは幼少の頃よりずっとである。 慣れている。

それに嫌だと思ってない。 響も個人的には気に入っている。 偶に今のチーターみたいに揶揄われる事はあれど、俺の慣れた反応に飽きて続かない。 勝手に飽きて、どうぞ。

 

 

「──そろそろ行くね。 お邪魔しました」

 

「邪魔されたわ。 家事をやってくれなかったし」

 

「買い物したろ」

 

「それだけ じゃない」

 

「まあな」

 

 

ふっ、と互いに笑う。 言葉通りに嫌がっているワケじゃないのだと分かる。 この感じ、意外と好きかも知れない。

知り合いで、こういうやり取りをするのは あまりなかったからね。

 

 

「また来なさいよ。 あんじゅ」

 

 

玄関の戸を潜る時。 背後から そう聞こえたから、俺は振り返らず片手を軽く上げて返事をする。

つい口角が上がったが、きっとチーターにはお見通しなんだろうな。

 




あーかいぶ:(当作品設定等)
チーター
ネコ目ネコ科チーター属
黄褐色の地色に黒のスポットが入ったネコ科の一種。 黒斑の部分は地色よりも若干長い毛で構成されている。 はたして流体力学的な効果があるのか研究が進められている。
ロコモーションの特徴は、その速さ。 秒速29メートルという記録もある地上最速の哺乳類。

杏樹のメモ:
漫画版では、立派な家に住んでいる。 羨ましい。 足が速く、俺の経験ではあるが方向転換能力も高いようだ。 野生の けもの がどこまで能力が高いのかは分からないが……何にせよ、あのスプリント力を前にして、ヒトの純粋な走力のみで勝つのは無理だろう。

チーターのメモ
チーター回に出てきた、買い物リスト。 文字の読み書きが出来る事が考察出来る。
以下、記載されていたもの。

牛乳
豆乳
クッキー
ショートケーキ
ミルクチョコレート
ココナッツミルク
ラフランス

杏樹のメモ:
肉食獣のフレンズだが、お菓子等が目立つ。 いや、フレンズになったからこそか?
なんにせよ、偏ったリストだ。
漫画にて奈々は(どんな暮らししてるの……)と思っていた。 俺も思った。

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