パーク職員です。(完結)   作:ハヤモ

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不定期更新中。 駄文。 疑問や違和感あるかも……。

残業、日曜出もある、ツライさんの日々……。

段々と不安になるパークの未来。 そして、解決する為に杏樹は行動するのだけれど……。


カミングアウト

 

火山から噴出する奇跡、サンドスターと生命の反物質と仮定するサンドスター・ロウ……セルリアンを構成するセルリウム、対するアンチ・セルリウムフィルター。

《例の異変》であると妄想している大事件にて、犠牲になるかも知れないセーバルと四神。

 

それより先に来るもの。 近々起きるかも知れない、セルリアンによるパーク・セントラル事件。

 

起き得る危機に警告を出すべく、この件を研究所宛の手紙を出した。 カコやミライ、他の面子にもそれとなくメールを送った。

荒唐無稽。 唾棄されると想像するのは安易だが、何もしないよりマシだ。

別に何か起きてから「警告したのに、何もしなかったオマイらが悪い」と責任を担がせるつもりはない。

どうして良いのか分からないから、俺はヒト任せにしているに過ぎない。 そも、ヒトの手に負えないかも分からない。

 

だけどもし、もしだ。

 

誰か一考の余地有りと判断し、アクションを起こすキッカケになるのではないか。

それらが連鎖して早めに動けば、パークの危機は回避出来るかも分からない。

 

 

「他に出来る事は……何かないのか?」

 

 

思わず呟く程には、勝手に追い込まれる俺。 具体的な解決の手立ては無いのかよと。

世の中、文句や訴えは多くとも解決案が一向に出ないケースは少なくない。 もっと言えば行動に移すヒトは もっと少ない。 俺も その1人だ。

理由は色々あるだろうが、俺の場合は結局は楽がしたいのだ。 パークを楽して守りたい。 その為にはどうすれば良いのだろう。

 

楽という言葉とは、どうにも現代社会でサボり……悪と考えるヒトがいる気がするが、俺は そうは思わん。

楽したいという気持ちがあるからこそ、人類は様々な効率の良い道具や運用方法を模索、実行してきた。 楽の為に苦労をしてきたのだ。

そりゃ、悪い部分もあるだろうが、同時に今の文明が出来た要因のひとつでもあろう。 行動する原動力のひとつともなる。

 

まあ、その。 チーター宅の俺のように、何も生み出さずゴロゴロして無益で終わるパターンもあるが。

それはそれ。 今は今。 して、今は自室のベッドの上でゴロゴロしているまである。 大丈夫。 俺がいなくても世界は回る。 あ、この考えだと やっている事を否定する。 撤回しよう。

 

 

「うぅ……1番はカコと、管理センターの小動物かな」

 

 

頼りになるは、やはり2人。 パークでのポジションでは、それなりの地位に座っているだろうからだ。 発言力も高いだろう。

 

後はミライか。 調査隊長だからね。 発言力もそうだが、行動力はありそうだ。

現場で言えば、森林警備員がいるけれど、その……かのマッチョマンは脳筋ぽいから。 微妙である。 メールはしたけれど。

 

 

「開発すればな」

 

 

フィルターをヒトが作れれば。 サーバルや四神が犠牲にならない。 作れれば、だけど。

サンドスターや けものプラズムによる奇跡をヒトが生み出す。 それこそ、困難じゃないだろうか。

いや……分からんか。 SSプリンターという、3Dプリンターみたいのが あるのだ。

 

 

「───想像する事は、実現出来る」

 

 

人類史に残る偉いヒトが、それっぽい事を言ったとか。 ならば、可能性はあるというもの。 希望は捨ててはならない。

悪く言えば……絶望を受け入れるのは難しい。

 

 

「ふぅ」

 

 

いつまでもゴロついているワケにはいくまい。 仕事は休みだけど、部屋にいても良い事はない。

 

俺は立ち上がる。 取り敢えず散策しよう。 ニホンオオカミは寮のパリピと遊びに行ってしまった。 その為にぼっちでの行動。 別に寂しくないもん。 いつもの事だもん。

気楽で良いね。 好きに時間を使える。 自由だ。 自由万歳。 ぐすん。

 

さて、行き先だが。 パーク・セントラルはどうか。 男ひとり、アトラクション園内をフラつくのは悲壮感漂う気がせんでも無いが、フレンズや子供の笑顔は励みになる。 輝きだ。

ふむ。 ひょっとしたら、この気持ち……セルリアンもソレで釣られるのか。 いや、違うか。 ヤツらに意思はないハズだ。 きっと。

 

ガチャリと、玄関の扉を開ける。 また今日も始まってしまう。

 

否。 始めるのだ。

 

進め。 俺とパークの為に───!

 

 

 

「あれ」

 

 

目の前にヒトがいた。 馴染みある綺麗な顔だった。 胸も大きい。 エロい。

というか幼馴染のカコだった。

 

 

「お、おおお、おはよう あんじゅ!?」

 

 

服のセンスは相変わらずである。

しかしな。 この光景、前にも無かったかな。

 

 

「デジャブ?」

 

 

カコは顔を赤く染めたまま、首を横に振った。 やはりナニか。 またナニかと間違えたのか。

 

 

「中に入って」

 

 

取り敢えず室内へ誘う。 今回はパリピが騒がなかった。 ニホンオオカミと出払っていたからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───また連絡も寄越さずに」

 

 

カコをベッドに腰掛けさせて、お茶を出しつつも言う。 タイミングが合わなければ すれ違いの可能性があった。

いや、良いんだけどね。

こうして会えたんだ。 俺も本気で注意しているワケじゃない。 嬉しくて口角が上がるまである。 我がルームへウェルカムようこそ。

 

 

「ごめん」

 

「研究に忙しかったんだ?」

 

「うん」

 

 

出した茶をチビチビと飲むカコ。 可愛い。 まだほんのり赤い頬も合わさって尚良し。

 

 

「その」

 

「うん?」

 

 

しおらしい。 モゴモゴ言葉を発する姿も良いよね。見ていて楽しい。 可愛いものもあるよ。

 

 

「さっきのは?」

 

 

湯呑みを口に付けながら、上目遣いで聞いてくるカコ。

ふっ。 えっちい方向に考えたのかな? そんなカコも可愛い。 からかってやろう。 カラカルじゃないが。

 

 

「どんなこと?」

 

「えっ!? えっと……しょーどうぶつとか、か、か、かかか開発とか!」

 

 

あらら。 赤くなって可愛い。 そしてエロい方向かな?

だとすれば、思っていたより汚れていて悲しくもあるが、同時に楽しくもある。 もう少し からかってやろう。

 

 

「ナニ想像してんのぉ? サンドスターの奇跡で起きるヒト化現象や応用技術の話だよ」

 

「え……ええ。 モチロン!」

 

 

慌てる姿もグッド。 もう少し堪能していたいが、カコが訪れた理由も知りたい。

送ったメールの件だろうか。 だとしたら真面目に話合わねばならない。 この辺にしておこう。

 

 

「それで。 来た理由も、そんなトコ?」

 

「あ、うん。 送ってくれた手紙とメールの件。 それから……大晦日の前後。 謝りたくて」

 

「ああ、気にしないで。 過ぎた事だから」

 

 

大晦日前後。 イタリアオオカミに追いかけ回された恐怖の鬼ごっこの事だ。

セルリアンより尚恐ろしい怪異とも言えたが、生き延びた。 過去は良い。 未来を考えよう。

 

 

「手紙とメールの件を話そう。 取り敢えず、見てくれたんだね」

 

「うん。 火山から噴出する物質についてと、将来起こり得る危険について」

 

 

良かった。 無事に研究所に手紙は届いたか。 そして見てくれた。

では次。 気になるのが感想だ。 どうだろうか、反応次第では厳しいぞ。

 

 

「それで、その。 どう思った?」

 

 

恐る恐る聞いてみる。 今度は、俺が上目遣いになる番だった。

野郎がやってもキモいな。 鏡があったら、リバースしそうである。 しちゃうんかよ。

 

 

「正直に言って荒唐無稽」

 

「グハァッ!?」

 

 

馴染みからキリッと言われた! 言葉のナイフが心を滅多刺しにしてくる!

 

 

「ご、ごめん あんじゅ! で、でもね。 信じてないワケじゃない」

 

「ほんと?」

 

 

アワワと慌てるカコに言われて、少し立ち直る。 希望が潰えたワケじゃなさげ。

 

 

「サンドスターという未知の物質が起こす現象に、既成概念を捨てて向き合わないといけないから。 絶滅種のフレンズ化もそう。 ニホンオオカミにサーベルタイガー。 資料からして特有のものであり……個人として疑う事が出来ない。 リウキウのシーサーは、特定を先送りにしていたけれど……そうだと考えている」

 

 

えーと。 つまり、カコは信じてくれているのかな。 もうちょい分かりやすく頼む。

 

 

「信じてくれる?」

 

「一考の余地有り」

 

 

なんか微妙なラインですねソレ。 大丈夫なんでしょーか。

 

 

「研究所の仲間は、信じていないヒトもいるけれど……所長と私。 それと何人かは考えてくれている」

 

「そうなんだ……誰もいないよりマシかな」

 

 

大体は期待通り、或いはそれ以上の反応。 所長とカコが仲間になったならば心強い。

問題は、今後の展開か。

 

 

「それで、その。 どう対応していく?」

 

「その前に」

 

 

対してカコ。 俺の目をジッと見て、1枚の便箋を見せてきた。 俺の送った手紙だ。

そして言うのだ。 俺でも理解出来る、ごもっともな質問を。

 

 

「どうやって、この情報を知ったの?」

 

「うっ」

 

 

だよな。 そうくるよな。

だというのに。 俺は答えを用意していないという。 完全にヒト任せにしている所為だ。

 

 

「今日は所長に言われたのもあって、あんじゅに会いに来たのもある」

 

「ああ、確認の話……かな」

 

「そう。 公開していない研究所の情報、或いはそれ以上の情報を あんじゅ が何故知っているのか」

 

「ごめん。 カコ、疑われた?」

 

「大丈夫。 皆、疑ってない」

 

「よかった」

 

 

ホッと胸をなで下ろす。 全く、俺とした事が。 カコを守るだなんだと格好つけようとしてる癖に、逆に危険に晒してどうする。

取り敢えず、馴染みのカコが疑われてなくて良かった。 所内では信用されているんだろうな。 羨ましい。

 

 

「それで……答えてくれる?」

 

 

そして再度、問い詰められる。 真剣な表情で。

 

ここで上手くやらないと、取り合ってくれないかも知れない。

 

 

「わかった」

 

 

頭をかきつつ、力なく呟いた。

頭が悪いものだから、上手い言葉が見つからない。 なら正直に言おう。

 

 

「俺は、パークの未来を知っている」

 

 

今度は俺が信用される番だ。

いや、その前に。

 

自分自身を信用するところから、始めないとならないな。

 




あーかいぶ:(当作品設定等)
アンチ・セルリウムフィルター
未来のパークにて、火口に張られていたフィルター。 放出されるセルリウムの大部分を浄化する……とか。
四神とセーバルの犠牲の上で形成されたという。 この手のモノをヒトが創り出せるのか不明。

杏樹のメモ:
よく分からない話のひとつだ。 アニメにて、火山にあった大きな結晶……そして かばんちゃんが張り直したフィルター。
どの様な経緯で、あの目に見える形になったのだろう。 誰かの犠牲でそうなったのならば、俺はソレを止められるだろうか。

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