パーク職員です。(完結)   作:ハヤモ

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不定期更新中。 駄文。 違和感や間違いがあるかも……。

リアルがシンドイっす……。

答えが分からない疑問や不安。 それでも相談出来るヒトがいるのは嬉しい。


疑問や不安、相談と。

 

聞き齧りの情報で行動する。 根拠や確証もナシに動く危険性は 如何程か。

 

ひとつの考察や妄想の参考になるとしても、いきなり走ったら転倒する。 その前に道を間違えるかも知れない。

それはアライさんの様な、微笑ましい光景とは限らない。 特にヒトの世界では。

 

 

───ジャパリパークを何処まで知っている?

 

 

所長の言葉。 まるで踏み込んではいけない世界があるかのよう。

ジャパリパークは のほほん とした陽光の世界。 ヒトがいる世界でも、そう思っていた俺は考えを改めざるを得ない。

ヒトがいる以上、闇はあると。 特にパークは様々な国や営利団体が絡むのだ。 笑顔と陽気の裏には欲が渦巻いているのだろう。

 

 

「手紙の内容以外は、知らないです。 それらも曖昧な知識として頭にあるだけですし」

 

 

ハッキリと、そして曖昧に言う。 俺は明るい世界しか知らないと。

でなきゃ俺は、輝きを消される。 そんな気さえしたから。

 

 

「なら良いんだ」

 

 

そう言って手を離してくれる所長。 そしてニコリと微笑んで、

 

 

「後の事はカコ博士に頼んでいる。 皆と仲良くしてくれると嬉しい」

 

「……はい。 失礼します」

 

 

逃げる様に所長室を後にした。

久し振りに、笑顔が怖いと思った。

 

セルリアンより、ヒトの方が恐ろしいよ。

 

せめて今後の事件に絡む敵では無い事を、俺は切に願った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんの話?」

 

 

外に出ると、カコに尋ねられた。 何時の間に白衣の格好だ。 似合ってる。 私服はアレだけど。

 

 

「いんや。 挨拶をしただけさ」

 

 

笑顔に努めて、そう返す。 カコは副所長だけれど暗部を知らないかも知れないから。

 

変な事を言って不安にさせるのは避けたい。 俺だってパークの闇は知らない。 触らぬ神に祟りなし的な。

フレンズは触りたいけれどね。 四神とかシーサーとかオイナリサマとか。 おっと祟られる。

 

なんて罰当たりな俺。 いや、罰当たりなのは、彼女らの美人でエロいアニマル・ガールのボディである。 俺は悪くないもん。

 

 

「なんかイヤラシイ顔してる」

 

 

怪訝な顔をしないでくれ。 俺だって男だもん、エロい事を考えもするさ。

 

所長の話の後で、マヌケな妄想が出来る。 なんて悲しい性。

 

 

「男の会話さ」

 

「フケツ」

 

「グハッ!?」

 

 

馴染みが、俺のガラスのハートにダイレクトアタック!

 

そんなカコに反抗が。 俺じゃない。 所長室から扉越しに曇った声が。

 

 

『カコ博士。 杏樹君の案内を頼むよ』

 

「は、はいっ!? ゴメンあんじゅ、行こう!」

 

 

慌てて、カツカツと歩き始めるカコ。 あら可愛い。

 

大きくなっても、心は純情というか。 幼いというか……微笑ましい後姿。

 

 

「うん。 よろしくな、カコ博士?」

 

 

振り返って睨みつけられた。 赤くなりながらも、頰を膨らませて。

 

やっぱり幼馴染は可愛いねぇ。

俺はくつくつと内心でほくそ笑む。

 

 

 

 

………………。

 

 

 

 

 

清潔な、病院の廊下を思わす通路を共に歩いていく。 時々すれ違う研究員に会釈しつつ、実験室とやらに通された。

 

フラスコやメスシリンダー。 顕微鏡(けんびきょう)にペトリ皿。

シーケンサーや質量分析計と思われる機械……それから拳銃の様な小型の電動ドリル。 たぶん、細胞の核やタンパク質を取り出すため、試料をすりつぶすのに使うヤツかな?

後は、プレパレーターの道具らしきもの。 エアーチゼルだっけ? 後は小さな集塵機(しゅうじんき)のホースのようなもの。

うん。 全然分からん。

 

俺は詳しくないから、何故同じ部屋にコレらがあるのかとか分からない。

何にせよ、動かし方や使い方、仕組みも分からない。 俺が使う事なんて、ないんだろうけど。

 

 

「座って」

 

 

作業台に並んで置かれた簡易な丸椅子に座らされた。 カコも同じように、お向かいに座る。

 

はて。 よく見ると作業台は銀色の巨大なトレーに見える。 まさか解剖台?

そこから導き出される答えは───。

 

 

良からぬプレイを強要させる気か!

 

「ち、違うっ!」

 

 

またも赤くなって首を横に振る。 揶揄って遊ぶのは楽しいね。

 

けれど真面目な話、解剖や投薬対象になるのは勘弁な。 俺は実験体じゃない。

 

 

「じゃあナニか。 お部屋デートかい?」

 

 

実験室で デート。 一緒に投薬し合い、解剖する。 うん、ただのホラーに聞こえる。

 

 

「……真面目に話そう?」

 

「すまん」

 

 

頰を染めながら咎められても、怖くも何ともないが謝った。 このまま遊んでいては、何しに研究所に来たのか分からない。

 

 

「えーと。 何から始める?」

 

 

取り敢えず言葉を発してみる。 元凶の俺が聞くのも変だけど、ココはカコの なわばり なのだ。

 

郷に入れば郷に従え。 様子を見よう。

 

 

「未来の話から」

 

「ミライ? ヨダレ振り撒く調査隊長の?」

 

「パークの未来の話」

 

 

またもふざけてしまったが、カコは普通にスルー。 スキル高いですね。 さすが研究員。 違うか。

 

 

「特に火山の話は無視出来ない」

 

 

ソコをスルーしない。 さすが研究員。 違うか。

 

 

「サンドスター・ロウやセルリウムの噴出があるのは把握している。 けれど、パークを閉鎖するには至らない規模」

 

「今は、ね。 将来は分からないんだ」

 

 

かばんちゃんの世代。 遠い未来。 或いはその手前の時代を考える。

 

ヒトが……職員が島から消えてしまった あの世界。 退去せざるを得ない事情が、事件があったのだ。

 

妄想の域を出ないが、火山の噴火と噴出物の影響かと考えている。

カコが言っていた物質だ。 サンドスター・ロウにセルリウム。 今は平気でも、早急にフィルターを張るべきだ。 ()()()()、だが。

 

それと……気になる事がある。 アニメのミライの記録的に、フィルターの存在をヒトは知っていた気がするのだが。

ソレがあっても尚、()()()退()()()()()()()()()()()という事だろうか。 退去理由は火山だけじゃないのかも。

 

けれど分からん。 全然分からん。

 

 

「あんじゅ?」

 

「あ、ああ」

 

 

話すべきだ。 手紙には書き忘れたが。

 

 

「前世……じゃなくて、予知夢の記憶的にはフィルターを張ってもダメかも知れない」

 

「別の何かがある?」

 

「それは分からない。 でも、言っておきたくて……解決策は分からない、ごめん」

 

「ううん。 ありがとう」

 

 

そう言って、メモ書きをしていくカコ。 言わないよりマシだろうて。

 

この何気ない事が未来を救うかも知れないのだから。

 

 

「火山の調査は、予定を早めて詳細に行うつもりなの。 調査員も増員された」

 

「ありがたい話だ」

 

「うん。 管理センターに ()()()がいて。 助けてくれた」

 

 

友だち? 管理センターに友だちがいるのか。 てっきり、俺やミライ以外は……失礼。 そんな事もあるか。

 

これ以上は止めよう。 自分の心も抉られちゃう。

 

 

「結果待ち?」

 

「うん。 その間も、フィルターの開発や研究を皆で進める。 半信半疑の仲間もいるけれど、パークを愛して……守ろうとしてくれている」

 

「そっか……良かった」

 

 

俺は莞爾として頷いた。 カコが良き仲間に囲まれていると感じたからだ。

 

勿論、こんな俺を多少でも信じてくれているのも嬉しい。 暗部にズプズプ沈みたくはないけれど。

 

 

「他の研究は後回しになる。 ガイドロボットの開発に携わっている仲間も、こっちにまわるから」

 

「えっ」

 

 

なん……だと。

 

ガイドロボットって、アレやん。 恐らく あの量産型な青いヤツ。

ポケットのあるタヌキ的なのじゃ、ないです。

 

 

ラッキービーストの事か?」

 

「うん」

 

 

おぅ……ゴメンよ、ラッキーさん。

俺の所為でキミの開発は遅れそうだよ。

 

ラッキービースト。

青色と水色で構成された、足元くらいの大きさな案内ロボット。 アニメにて登場。 パークに沢山いる様子から量産型。

ケモ耳と縞々尻尾が生える。 足は白く、二足歩行。 腹部にはレンズ。 知っているヒトは多いだろう。 かばんちゃんと一緒に冒険していた個体がいたのだから。

 

ポンコツだの無能だの、言われた面はあれど、実際には高性能なロボットだと思う。

会話する為にインタフェイスとして喋る事が出来るワケで。 その逆に、聞き取る能力もスゴいと思うの。

 

他にも検索機能に、手は無いけど車の運転機能もある。 除草機能や施設のメンテナンスをするスキルも持つ。 施設の錆びや、観覧車のゴンドラが落ちた辺り、限度がある様だが。 映像の記録、投影による再生も可能。

フレンズの食事であるジャパリまんの配給も行なっていたな。 そういう理由かは知らないが、フレンズからはボスと呼ばれていた。

ガイドロボットというからには、地形や施設を把握している節がある他、けもの 等の特徴を説明出来る。 状況についていけないトラブルが起きるとフリーズしちゃうんだけど。

ただし。 大量のサンドスター・ロウを検出すると耳を赤く点滅させ、緊急事態としてハッキリとした口調で避難を促し、最寄りの避難先を教えてくれる。 フレンズとの会話等の干渉は生態系の維持を理由に控えているが、緊急の時は会話をする。

初期は防水機能が無かった様だが、後に付加された模様。 レンズだけの姿になっても喋れたり、バスのバッテリーが分かる辺り、本体はレンズなのかも知れない。

 

そんな……そんな 重要ポジションにいるロボットが開発されない。 いや、遅れる。

 

この所為で将来、どんな悪影響があるのか。

 

バスが大岩に衝突しない。

雪にタイヤが埋もれない。

フリーズ(物理)しない。

船が沈まない。

 

あれ。 良いんじゃね?

 

…………違う。 そうじゃない。 いや、全否定は出来ないかもだけど!

 

かばんちゃん世代で案内がいない、車の運転が出来ない、解説ナシとなると。 旅路は大きく異なる事になるだろう。

 

良きフレンズが いっぱい いるので、他の方法で 何とかなる気がするけれどね。

歩くのが大変だという距離があった様だけど、図書館の存在は知れ渡っている感じであったし。

 

 

「あれ?」

 

 

どうなのか。 俺が存在するジャパリパークだ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()がある。 それはどうなのだろうか。 許されるのか?

 

あの世界に憧れた癖に、まるで否定しているみたいじゃないか?

 

既に現時点で色々と影響があるだろう。 今更な悩みである。

 

だけれども。 あの世界を再現する為に、今の時代を放棄して良いものか?

ヒトは苦手だ。 いない方が良いと幾度となく思ってきた。 だけど、俺は多くの職員に……ヒトに助けられたのも事実なんだ。

 

やはり無視出来ない。 皆を助けたい。

例え、あの温かな世界が、輝きが生まれなくなったとしても。

 

あ、今の世界を救えるかは別の話な。 自信ないです。 ほぼ他力本願ですしおすし。

 

 

「どうしたの?」

 

「えっ?」

 

 

カコの声で、意識が実験室に戻された。

いかん。 また妄想の海に沈んでいたか。

 

 

「ラッキーがいないと、未来が危ない?」

 

「あぁいや……そこまでじゃな……ごめん。 曖昧なんだ」

 

「あんじゅ。 やらなきゃならない事は多いと思う。 だけど時間と人手が限られるなら優先順位をつけなくちゃ」

 

 

カコに諭された。 そうなんだよな。 優先するモノを考えよう。 難しい話じゃない。

 

そりゃラッキーの開発も必要だ。 だけど手を止めて貰ってでも、火山を抑えねば。

 

 

「そうだよな。 俺は、研究や開発のスキルは無いから役立たずだけど」

 

「そんな事ない。 貴重な意見をありがとう」

 

 

カコは優しいね。 気遣ってくれて。

 

でもさ、どうしよう。 このまま研究所に居ても迷惑なんじゃないか。

そんな考えを予想してか。 カコは微笑んで、

 

 

「皆と話すと良いよ。 フレンズもいる。 良い刺激になる」

 

 

それは……なんというか。 楽しそうだ。

でも心配だ。 俺、部外者だし。

 

 

「研究所を部外者が出歩いて良いの?」

 

「私も一緒」

 

「なら安心だ」

 

 

そう言ってスクッと立ち上がるカコ。 いつか見た、オドオドした影はない。

 

 

「案内、してあげる」

 

 

微笑みながら、手を差し伸ばされた。 断る理由は どこにもない。

 

小さく綺麗な手に軽く触れれば、しっかりと握りられた。 そのままグイッと引き上げられる。

 

温かくも力強い。 細い腕のどこに、そんなパワーがあるのだろうと疑う程に。

 

幼馴染も変わったという事か。

 

嬉しいような、寂しいような複雑な気持ち。

 

でも、暗い感情は湧かないな。

 

俺も釣られて微笑んだ。 周りが明るいのだ、俺が暗くなってどうするよ。

 

 

「おう。 ヨロシク頼む!」

 

 

だから俺も莞爾として受け入れる。 カコは、みんなは やはり「フレンズ」である。

 




あーかいぶ:(当作品設定等)
ラッキービースト
パークガイドロボット。 アニメでは、フレンズからはボスと呼ばれていた。 大きさは足元くらい。 少し丸っぽい。
青や水色を基色とした感じ。 ポンコツや無能と呼ばれる事もあれど、様々な機能からして、実は高性能だと思う。

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