パーク職員です。(完結)   作:ハヤモ

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不定期更新中。 駄文続き。

かの先輩との出会い。 他のフレンズとは、少し異なるみたいだけど、杏樹と仲良く出来るかな……?


先輩の名は。

白く清潔感溢れる研究所内。 昔と未来の狭間、そのふたつを今に繋いでいく重要施設。

そんなジャパリパーク動物研究所内を、カコに案内されてEXフレンズと出会っては笑顔とヒトの業の間で悩み、様々な想いを馳せていく。

浪漫と郷愁に似た何か。 好奇心と不安。 心配と希望。 それらを抱えて、俺やカコは歩き続ける。

かつて この星で生きた、彼女たちの物語をもういちど。 そして、俺たちヒトの物語を、この奇跡の島、ジャパリパークで共有出来たら……それは素敵な話だと思う。

不安や心配はある。 ヒトは彼女たちほど「フレンズ」じゃない。

それでも。 みんなの笑顔を───。

 

そんな想いの中、とうとう かの パイセンと出会う事になった。

PPPからは「ジャイアント先輩」と呼ばれて慕われていたという……アニメだとアライさんパートにて名前が出て来た、あのフレンズだ。

 

 

「よっ! 会うのは初めてだな!」

 

 

別の休憩スペースにて。 フランクに話しかけてきたのは幼女……じゃなくて、ペンギンのフレンズ。 その名も。

 

 

「ジャイペンじゃないか……!」

 

 

ジャイアントペンギン! 略してジャイペンだ!

マジか! 既にフレンズ化していたとはなぁ!

例によって目にハイライトが無いが、その憂さを感じさせない性格は、ヒトによっては話しやすい。 名前に反して、幼子に見える背丈だが……フレンズ化は条件含めて謎に満ちている。 それと頭に着けている旧式ヘッドホンには「PPP」の名が確認出来ない。 まだ関係を持っていないという事か?

可愛いから良いけど。 可愛いは正義。

 

 

「………………はっはっは! ジャイペンと呼ばれたのは初めてだよ!」

 

「そうなのか。 あ、いや、すまん。 いきなり失礼な事を言った」

 

「いいっていいって! そんな感じに、気楽に話そう!」

 

 

つい興奮してしまった。 対してジャイペンはケラケラと笑う。 守りたい、その笑顔。

いかんな。 そのうちミライさん状態になってしまう。 それは避けねば。

だがジャイペンかぁ。 後々の代まで、フレンズ化が解けない状態で生きていくのだろうか。 PPPとも関係を持っていくのかな。 現状、持ってなさそうだけど。

だけど この先は分からない。 彼女が外に出て、様々な事を見聞きし、感じ、想いを抱いていく。 そう考えると、実は知識が深そうなところとか、貫禄があるところとか納得がいくというもの。

貫禄はまあ、普通に古代に生きた化石ペンギンというのもあるだろうけども。

 

 

「改めて。 ジャイアントペンギンだ! よろしく!」

 

「俺は杏樹(あんじゅ)だ。 パーク臨時職員をやっている、よろしく」

 

 

はい握手。

ちょっと身体に対して大きく感じる、長袖に包まれた大きな手羽……じゃなくて手? を出されたので握る。 ふむ。 握手の概念を知っているのか。 勉強したのかな。 かしこい。

さて。 触れた感想と致しましては、服の下の骨格はヒトの手に感じる。 手羽……手先まで覆う長い袖は大きいが、内側は幼女サイズということか。 そこはフレンズと形容して良いのかな?

これが都市部だったら「はい事案」という事で逮捕されちゃう。 されちゃうのかよ悲しいなぁ。

 

 

「彼女もまた、マンモスやサーベルタイガーと同じ境遇」

 

「おっ! アイツらに会ったか」

 

 

カコの説明に、明るく反応するジャイペン。

マンモスとサーベルタイガーを知っているのかい。 いや、知らん方が変なのか。

所内を自由に動ける風だったからね。 フレンズ同士の接触もあるだろう。

たぶん、ジャイペンとマンモスの生きた時代は違うのだが、こうしてフレンズとして話せるのは、何というか不思議な感覚。

ニホンオオカミも、そうだったのだろうと思う。 好奇心が強過ぎて、所内に迷惑を掛けていた為に出されてしまったが……。

 

 

「ニホンオオカミは、元気かー?」

 

 

うおっ。 心を読んだかジャイペン?

丁度、彼女の事を考えていたタイミングで言われて驚いたぞ。

偶然かとも考えたが、ジャイペンのニヤニヤした顔を見ると……狙ってやったか。 それとも俺の顔が面白い?

 

 

「あ、ああ。 元気も元気。 元気過ぎて困るほどさ」

 

「そりゃ良かった。 でもさー、まよねぇず 事件とか大変だったろー?」

 

「ッ!」

 

 

なん……だと。

ナゼ知ってるん。 俺の悪夢のひとつである、マヨネーズ事件を……!

彼女も所内から出る事は、まだ出来ない筈。 となれば誰かから聞いた事になる。

秘匿する話じゃないのだろうけど、あまり情報は広げて欲しくないなぁ。 イタリアオオカミが俺に言った事のように、誤解の素になっていくからさ。 時間と伝達の間が空くほどに。

俺の驚愕に染まる顔を見て、しっしっしっ、と今度は大きめに笑われた。 やはり面白いらしい。 側から見れば幼女に いいようにされている図である。 俺ってザコい。

 

 

「カコ博士から聞いたんだ」

 

「カコォ!?」

 

 

報告相手が直接バラしてました。 いつか覚えてろよ。

 

 

「周知の事実。 私からじゃなくても、管理センターから広がってる」

 

「聞きたくなかったわ、その事実!?」

 

 

カコからは衝撃発言。 知りたくなかった。

管理センターは、俺を管理したいのかピエロにしたいのか、どっちなん?

前世同様、管理に うるさい昨今。 簡単にホイホイ情報を漏洩させて良いのでしょーか。 いや、良くない。 良くないと言って。

恥ずかしくて外に出られなくなっちゃうじゃん。 被害が出たら訴えてやるぅ。 そして敗訴する、負けちゃうんだよ。

 

 

「いやいやー、話には聞いてたけどさ。 あんじゅは面白いヤツだな!」

 

「面白くないッス」

 

 

しっしっしっ。 からかい上手のジャイペンさん。 笑顔に騙されそう。

全く。 礼儀正しい子の後だから、余計にインパクトが強い。 悪い子じゃないのは分かるんだけどね。

可愛いのも分かります。 あ、ロリコンじゃないです。ロリババの趣味もないです。

 

 

「というか話に聞いてたの?」

 

「カコ博士がよーく、話してくれたよー?」

 

「カコォ!?」

 

 

ジャイペンがニヤニヤしながら言うもんだから、俺はカコに向き直る。 俺は何度幼馴染にツッコミを入れれば良いのか。 いや、変な意味じゃなくてね。

そんな幼馴染は、目を逸らしつつ頰を染めて、

 

 

「だ、大丈夫。 問題ない。 変なコト、言ってない」

 

 

ナニそれフラグ? 今までの経験からして怪しいんだけど。 そも、情報を漏らすんじゃない。

 

 

「けぇきやさん*1 に通報されたり、オオカミ*2に襲われたと聞いたー。 外の生活は楽しそうだなぁ?」

 

「楽しくねぇよ!? 問題大アリだわ!?」

 

 

2人にツッコミを入れる羽目に。 自分にしては器用に出来た方である。 誰か褒めて。

そりゃ、元を辿れば俺が悪いんだけどさぁ。 ヒトの失敗をネタにされ続けてもねぇ?

それに、向こうだって非があったんだよ。 天秤にかけたら、悪いウェイトなら向こうに傾く。

なのに俺ばかり責めるんじゃない。 天誅を下したいのはコチラである。 男の職員というのもあるのかも知れないけど。 差別はんたーい!

 

 

「まあまあ。 そうカッカせずに」

 

「あんじゅ。 カルシウムを摂取した方が良い」

 

 

研究所でソレはネタなんですかねカコさん。 まあ、カコのギャグは良いとして……あ、顔が真顔なんで、ギャグではなさそうだね。 ギャグじゃないよ。

 

 

「分かったよ。 昔の出来事は美化出来るから良いけどな。 今じゃ思い出に近いし」

 

「…………思い出かー」

 

 

あれ。 ジャイペンが目を細めてしまった。 いかん、彼女には地雷だったか?

古代を生きた子にとっては、今でいう昔は帰りたくも帰れない、懐かしい故郷なのかも知れない。

俺の場合は……前世かな。 だが前世に戻りたいとは思わない。 今の方が楽しい。 それは俺個人の話になるが、彼女にも「楽しい」を感じて欲しい。

ヒトが跋扈しているパークだが決して。 この世界も捨てたものではないんだよ。

 

 

「恐竜も───」

 

PPP(ペパプ)って知ってる?」

 

 

話を遮るように、彼女の後輩……と言って良いのか分からんが、そのグループを口にする。

彼女と将来、関わりがあるフレンズといえば、有名どころでPPPだろうから。 きっと興味を持ってくれる。

 

 

「ぺぱぷ?」

 

 

知らんかったか。 研究所で、その手の話は聞かされなかったのだろう。

なに。 今教えてあげれば良いこと。 彼女にとっても、俺にとっても、これからなんだから。

 

 

penguins(ペンギンズ) performance(パフォーマンス) project(プロジェクト)の略」

 

 

ここまで言えば、彼女も分かる筈。 かしこそうだからな。 して、それは当たる事になる。

 

 

「ペンギンのアイドルグループか?」

 

「ご名答」

 

 

やはり かしこい。 いや、賢い。

元の けもの の知性は知らぬが、フレンズとしての彼女は、知りたい気持ちや考えるチカラがある様子。

俺にも、チカラがあれば赤点を回避してカコと大学に行けたかも……いや。 過ぎた事を悔やんでも仕方ない。

今を生きねば。 今も悪くない。 本土では高校止まりだったが、カコ達とはパークで再会出来たのだ。

他にもこうして、所内で様々な話とフレンズと出会えている。 素晴らしいじゃないか。 前向きに行かなきゃなと、俺は話を続けた。

 

 

「現生ペンギンによるアイドルグループ。 確か今のメンバーは、フンボルト、コウテイ、ジェンツー、イワトビ。 最近はロイヤルも入ったんだったかな」

 

 

菜々やミライからの情報を思い出しながら話を進める。 PPPライブは見に行った事がないのだが、菜々やミライからのメールで教えて貰った事がある。

とすれば、今のメンバーは漫画版の、単行本イラストの通りだろうか。 昔の記憶は曖昧だけど、たぶんそう。

アニメのマーゲイのセリフ的に、初代は4人だとか何だか言っていたような……俺の知らないパークになっているのだろうか。

それとも長い時間で情報が間違えているのか、ロイヤルの加入が記録に残されてないのか。 漫画版ではロイヤルは出なかった気がするし。

或いは記録に残したんだけど、紛失したか。 色々考察出来るが真相は闇の中。 ここが同一世界と見なして良いのかも分からない。 取り敢えず、今考えても仕方ない。

なお漫画版の通り、菜々はイワトビと知り合いである。 その幸運に あやかりたい。

して、漫画版の通り音痴を改善したいトキのアドバイザーとなっていたそう。

その後の秋の音楽祭に、トキはショウジョウトキと参加。 素敵なハーモニーを奏でたそうなのだが……ドャァなショウジョウトキが暴走したとかで、音響兵器によるテロ会場と化してしまったとか。

菜々とトキ達には悪いが……正直に思った。 いなくて良かったと。

 

 

「ほうほう。 私にとっては後輩にあたる子たちが色々やってるワケか。 それは気になるなー」

 

「だろ? ココを出たら、見に行くと良い」

 

 

微笑みと言える、柔らかな笑顔になるジャイペン。 さっきまでのイタズラっぽい笑みとは違うもの。

これで今と未来に希望を抱いてくれよな。 俺も少し抱いている。 というか抱かせてます。 他力本願です。

 

 

「そうだなぁ……その時はあんじゅ。 案内してくれよー」

 

「へ? ナンデ?」

 

 

アレ。 何だか面倒臭そうな話をしてきたぞ、この幼女。

 

 

「色々知ってるみたいだしなぁ、何か面白い話も聞けそうだし。 それに泊まるトコとかさ?」

 

 

通報待ったなし。 それは面白い話じゃないんですが。

あとジャイペン。 また悪戯っぽい小悪魔な笑みになってるね。 もうワザと言ってるよね?

 

 

「ムリッス。 管理センターとおまわりさんのお世話に なりたくないんで」

 

「あんじゅなら大丈夫だって! 過去を美化出来るんだから!」

 

「パークの犯罪史と黒歴史に載りたくないわ! 美しさのうの文字もないから!」

 

 

勘弁してくれ。 ニホンオオカミだけでも、「うわぁ」な時があるのに、揶揄い幼女まで絡んだら収集つかない。 頭がパッカーンしちゃうよ。

 

 

「もう遅い……かも」

 

 

カコが俯く。 諦観するの止めてください。 既に起きた事は仕方ないけど、この先増やしたくないという意味で、俺は言っているのよ。

 

 

「そんじゃー、未来の話になるけど」

 

 

心を再度読んだか知らんが、ここでジャイペンが切り返す。

 

 

「あんじゅ」

 

 

言われて顔を見た。 打って変わり、真顔。 ふむ……質問かな。 答えていこう。

 

 

「未来のパークを知ってるんだって?」

 

「曖昧に」

 

 

預言者の話も聞いていたか。 まあ、今頃驚かない。 ジャイペンとの会話から、そういう情報は取り込んでいると感じたから。

ここは素直に答えていこうかね。 なるべくだけど。

 

 

「フレンズとヒトの未来も?」

 

 

世代的な意味だろうか。 だがフレンズもたくさんいる。 俺が知ってるのは極々一部。

 

 

「……曖昧に」

 

 

そう答える。 正直に。

 

 

「もうひとつ質問いいかな?」

 

 

何だろう。 答えられるものかい?

 

 

お前、この時代の……いや、この世界のヒトか?

 

勘の良いガキ(フレンズ)は嫌いだよ

 

 

思わず口に出た。 それは認めたと同義なのにな。

カコは目を開いて絶句している。 一方でジャイペンはしっしっしっと、笑い始めた。

まるでナゾナゾに答えられた、無邪気な子供の様に。

…………まさか、フレンズに、このタイミングで暴かれようとは。 いや、ヒトとは違うフレンズだからこそ、その思考が出来たのか。

して認めたかの様な発言をした俺は悪いのだが。

ヒトから看破される事はないだろうと。 だからフレンズにも分からないだろうと考えた俺の思考……どこまでいっても甘いものだ。

それを痛感する。 して、今後の対応はどうしていこうか。

 

 

「あんじゅが…………この世界のヒトじゃない?」

 

 

ほら。 カコなんて、困惑している。

全く。 面倒事とは何故増えるのか。 俺も悪いのだと思いつつも、取り敢えず口を開かねばな。

それとジャイペン。 フレンズでありながら彼女は危険だ。 ヒトとは別のベクトル、チカラとは違う方向で。

 

*1
聞き齧り。 ケーキ屋、ケーキそのものが何かはまだ良くは分かってない

*2
ニホンオオカミが研究所にいたので そういう種がいるのは学んだ




あーかいぶ:(当作品設定等)
ジャイアントペンギン
ペンギン目ペンギン科
属名は「ずんぐりした潜水者」、種小名は「重たい」を意味するそう。
現在のコウテイペンギンよりも大柄であったと推測されている。 ヒトと同じくらいとか……だけど、フレンズ化した姿は のじゃロリな感じ。

杏樹のメモ:
フレンズの彼女は見た目が幼女みたいであったり、おどけたような性格に感じさせるも、結構考えや思考が深く感じる。 古代を生きた けもの だからだろうか。
元がどうだったのか知らないが……悪い子ではないだろう。 場合によっては心強い味方になりそう。 からかわれるのは、勘弁して欲しい時があるだろうけど。

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