パーク職員です。(完結)   作:ハヤモ

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不定期更新中。 駄文続き。 矛盾あるかも。

ジャイペンとの会話。 パイセンは、どこまで知っているんだろう。 どこまでが本当なんだろう。


パイセンの戯言。 或いは助言。

 

 

「…………なーんてな。 そんな事があるとでも?」

 

 

ジャイペンに核を突かれた拍子に、思わず認めるかの様な発言をしてしまった。

お陰でジャイペンに喜ばれ、カコを動揺させてしまう。

取り敢えず、茶を濁して元の平穏を取り戻そうとテキトー言ったが、

 

 

「誤魔化さなくて良いぞー。 なに、安心しろ。 お前の素性をバラしたりしないさ」

 

「ッ!」

 

 

コレはダメですね。 ダメなのです。

預言の話を知っている様子から、手紙の事をも知っているのだろう。

であれば。 手紙に書いてない内容も知っていると見るべきか。 そして、その内容が漏れたら都合が悪い事も。

だけど、どこで時間軸が異なる、世界が異なるヒトだと言えたのだろう。

 

 

「最初は変わったヒトだと思ってたんだがなー。 未来を予測するならともかく知っているなんて、フツーじゃ有り得ない。 大方 妄想の類だと思った。 研究員も、初めは そう言っていた」

 

 

だが、と指……手羽を指してきて、

 

 

「まだ研究所しか知らない情報すら書いてあったら、な?」

 

 

ニッと。 俺を追い詰めるように語りを続けるジャイペン。

…………確かに。 俺は、まだ公開されていない情報を書いた。 開発段階のラッキービーストの事等をな。

だけど、それだけで《この世界のヒトか?》という疑問には到達出来ないハズ。 未公開の情報が書いてあったから、多少の信憑性は持つだろうが、情報漏れの可能性だってあるんだ。 時間軸は関係ない。 なにより未来まで分からん。

俺は反論した。 見た目幼女相手だが、油断ならん。 俺の平穏を乱すなよ……。

 

 

「予知夢みたいなモンだ。 たぶん、こういうのが開発されているんじゃないかなっていう、曖昧なもの。 未来もそう。 皆やジャイペンの言う通り、妄想さ」

 

「カコ博士の両親を助けたのも……今じゃ昔の出来事だろうけど、当時は知っていたから? サンドスターの影響かなぁ?」

 

 

そこまで知ってんのかよ。 漏れどころは、予想出来るけどさ。

チラリとカコを見る。 表情は不安そうだ。 信じたいのに信じられない感情で、葛藤(かっとう)しているかのよう。

たぶん、カコがジャイペンに話したんだろう。 今とは真逆に、嬉しそうに。

話さなければ、知らず平和に過ごせた保証はない。 ジャイペンに限らず、いつかは誰かが核心に迫る。 だから責める気はない。 悪いのは俺なんだ。

 

 

「予知は……そうかもな。 サンドスターの影響かも。 だけど曖昧だったよ。 ジタバタしてたら、偶然救えたんだ。 でも、だからってさ…………時間軸は兎も角、別世界のヒトだってならなくない?」

 

 

恐怖か怒りか。 声が震えていた。 見た目幼女相手に、なんちゅービビり。

いんや、認めよう。 怖いんだって。 心の中まで見透かされたような、そのハイライトのない目が。 純粋で無垢そうな見た目の、同時に優しそうで残酷な言葉が。

 

 

「そうだなー」

 

 

態度を変えて、此方の言い分を認め、背を向ける。 して引き下がるような事を言うジャイペン。

論破したか、危機を脱したと油断した刹那、

 

 

「という事みたいだよー、カコ博士?」

 

 

と見せかけてからの、クルリとターン。 再びのハイライトの無い瞳は……今度はカコに向けられた。

それは逃げられないぞ、と言ってるかのよう。 傍から見えるその暗さに、吸い込まれそうな錯覚さえある。

俺はまたも余計な情報を言ってしまったらしい。

……逆か。 ナニかの情報を引き出された。 そしてそれに気付くのが、遅かった。 俺って本当にバカ。

 

 

「ど、どういう事だよ」

 

 

それは具体的に分からない故に。 此方の劣勢を、敗北を認めた、相手のペースに持っていかれるしかない発言しか、俺には出来なかった。

それに答えてくれるように、カコは口を開く。 俺程じゃないにせよ、僅かに震えた声で。 馴染みの俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。

 

 

「予知の話は……ジャパリパーク、()()()()()()()()()()()だって考えられた。 でも、島の外では確認されてない」

 

 

…………あ。

しまった……! 当時、サンドスターは関係ないじゃん……!

マジかよ、カマかけられた……!

カコの両親を救ったのは昔話、それも本土での出来事。 ジャパリパークはおろか、サンドスターはない。

だって、島の外でサンドスターは当時から今現在に至るまで確認されていない。 この世界では。

完全にやらかしました俺。 後悔先に立たず。

 

 

「これでサンドスターによる未来予測って考えは、消えたねー。 島の外にサンドスターは今んとこ無いんだろ? 超常物質で なんでも とはいかないかもね」

 

 

ぐっ……。 だが曖昧だと言ってきた以上、逃げ道はある。 いつもみたいにジタバタしてみよう、悪足掻きすれば何とかなる。 たぶん。

 

 

「あー、でもさ。 サンドスターは未知の物質だし。 外界に影響を与えている可能性もなくはないじゃん。 外界にも火山はある、微量ながら出てる可能性だって……それと本来俺に備わっていた能力って可能性は?」

 

「まあ、ゼロじゃないんじゃないかなー。 なにせ 《分からない》んだ。 いろいろ 妄想は出来るだろうね。 元から超能力者だとか微量ながらあるかも知れないサンドスターとか」

 

「……そうだろ?」

 

 

苦し紛れ。 証拠皆無。 明らかに俺が動揺して、隠しているのは見え見えだ。

確実な証拠がないのを良い事に、こんな態度をしているだけ。

もう認めているかのようなモノなのに、俺は尚も隠そうとする。

それは保身であり、今までの日常が恋しいのもあり、特別扱いが嫌なのもあるし、フレンズや……カコ達と不仲になりそうで怖いから。

こうやって、隠している態度そのものが、不信感を持たせるものなのに。 パークを救いたくて行動したのに。

曖昧なモノを信じて欲しいクセに、曖昧に誤魔化そうとする。 俺って醜く卑怯だ。

 

 

「あんじゅ」

 

 

カコの、幼馴染の声が身体の芯まで響く。 それもどこか、責めてるように感じて……俺はビクッとしてしまう。

壊れたブリキ人形のように。 首をギギギとそちらへ動かした。

この時の、俺の顔はどうだったのか分からない。 恐怖やら不安やら怒りがぐちゃぐちゃになってる酷い顔の自信はある。

だけど確実に分かったのは、

 

 

「素直に話して。 知ってることを。 手紙に書けなかったことを。 私は、それで嫌いにならない」

 

 

カコの表情。 視界が歪んでいたが、どういう表情だったのか───この先も忘れる事はない。 胸をキツく締め付けられる思いだ。

 

 

「小さい時から、側にいてくれて───」

 

「分かった、話すから」

 

 

涙は見たくない。

だから続く前に、カコの気持ちが全部吐露(とろ)する前に、俺は両手を上げて降参。 白状する事にした。

ジャイペンがどういう意図で、この手の話を仕掛けたのか分からん。 後で聞かねばならない。 フレンズだから純粋な好奇心からか……或いは何かの布石か。

フレンズらしからぬ、高度なやり取りだった。 見た目もあってギャップが酷い。 身体能力のみならず、頭でも彼女に勝てる気がしない。

なに、遅かれ早かれ、どこかで言わねばと思っていたんだ。 それが早まっただけの事。

皆が俺の事を信じて助けてくれたんだ。 今度は俺が皆を信じなくてどうするよ。

 

 

「信じてくれないかもだが」

 

 

だから口を開く。 ちょっと重いけど。

 

 

ジャパリパークの無い世界から来た転生者だよ」

 

 

そう言った。 普通のヒトが聞いたら、頭オカシイと思われるワードで。

一瞬静寂に支配される空間。 ジャイペンもカコも、目を見開き驚いている。 ジャイペンは予想していたのか、同時に口角を上げて楽しそうにしているけど。

両者、噛み砕いて飲み込むのに時間がかかっているのは共通していた。

さて……ココで俺は構わず話を続ける事にするが、俺にとって、ココが創作物の世界だったトコから来たとは言わない。 衝撃過ぎるから。 カミサマのフレンズだって、驚愕するかも知れない話故に。 でも嘘は言ってない。

して、未来を知る理由もそれとなく言う。 突っ込まれる前に。

 

 

「───転生する時に、あー、なんだ。 この世界の記憶みたいのが頭にあってさ。 曖昧に漠然としたものなんだけど……事件が起きてパークがヤベェ的な。 そんな感じ」

 

 

自分でもナニ言ってるか分からん。 白状のつもりが誤魔化しながら、目を泳がせながら話しているじゃん。

自分が嫌になる。 信じてくれる大切なヒトを目の前にして、こんなんで。

誰も傷つけたくないから? 違うな、保身に走っているだけだ。 というか……今、カコを傷つけてる。

元凶のジャイペンを責める気はない。 元凶の元凶は俺だから。 隠していたのも俺だ。 必要ないからと心で言い訳していたのだ。

これでヒーロー気取り。 笑えてくるね。 寧ろ笑えよ。

 

 

「それは本当なのね?」

 

 

我に帰ってきたカコの眼差しで俺氏、泣きそう。 ジャイペン助けて。 あ、ジャイペンは敵ぽいからダメか。 今も悪魔的な笑みを浮かべてるし。

 

 

「う、嘘じゃないぞ」

 

「分かった。 でも、全部じゃない」

 

 

うっ……。 さすが馴染み。 見透かしているな。 赤点頭で天才に挑む気はないので、引き下がれる時に引き下がろう。

 

 

「……ああ」

 

「話せない訳を聞いても?」

 

 

グイグイくるね。 怖い、怖いよぉ。 これがカミサマのフレンズで、対峙していたらチビってるまである、まだ会った事ないけど。

 

 

「禁則事項だよ、パンドラの箱だよ」

 

 

いつか話す。 いつかは不明。 下手すると来ないまである、来なくて良いです。

ただ今ではない。 ジャイペンもいることである。 研究所内であるし、誰か聞いてる可能性だってある。

時渡りについてなら、カミサマのフレンズか、のちに来る園長にでも聞いて。 或いは図書館。 それは無理があるか。

取り敢えず、何処かの電気街の物語みたいに、大惨事な世界大戦みたいなのが起きたら困るので言わない。 パークどころか世界がヤバい。 バタフライ効果とか、恐ろしいぞ……。

 

 

「…………分かった。 あんじゅは、何かをまだ知っている。 それだけで、今はじゅうぶん」

 

「すまん」

 

 

引き下がるカコ。 好感度下がったかもね、ギャルゲーしてるつもりはないけど。

俺は対して情けなく謝るだけ。 何が正解なんだろうね。

 

 

「なあ、あんじゅ」

 

 

ジャイペン……キミは悪くないんだが、俺も お前に対する好感度が下がったぞ。

その悪びれもない態度に、俺は軽くイラッとするのが その証拠。 そんな自分にも嫌悪感を抱きつつ、返答する。

 

 

「なんだよ?」

 

「まあまあ……悪かったって」

 

 

片手羽を上下に振るロリババ。 ぜってー悪いと思ってないだろ、未だ笑顔だもん。

 

 

「私にもいつか、話してくれよー。 あんじゅの世界を。 どうして終わったのかを」

 

 

そりゃあ……そう言うのは、絶滅種として興味があるのかい?

俺という終わりと始まり。 しょーもない物語を聞かせてもツマラナイと思うがね。

彼女たちEXフレンズにとっては、けもの としての物語は終わったかもだが、()()()()()()()()()()は始まっている。

俺としては、そっちの方が興味あるんだけどな。 知りたいのはコッチだよ。

いや……それはフェアじゃないという事か。 彼女もまた、俺の持つ好奇心と同じようなモノを持って聞いてきたのだ。

だからといって、許せる訳では……それをいっちゃうと、彼女も同じ想いなのだろうか。 それは分からないが……もしそうなら、これはナニかの警告……?

 

 

「あんじゅ」

 

 

ここで もう一度、真顔で言われて、

 

 

「フレンズになろうとしてくれるのは嬉しいけどさー、こういう時は難しいよな」

 

 

やはり、ナニか含みがあったか。

 

 

「じゃー、私の本心を述べさせて貰おうかなー。 ちょっと試してみたくてさ、回りくどい言い方をしてた。 ごめん。 それでね、ちょっぴり、ちょーっぴりストレートに言わせて貰うとね……ヒトとフレンズ。 お互い悩むだろうが、絶滅しない道を、()()()()を私は望んでいる。 あんじゅの知る未来のパークやフレンズも……きっと、そうなんじゃないかな」

 

 

笑顔で言われたよ。

俺もそうでありたいと願う。 だからこそ、今を頑張ってる……つもりだ。

だけどよ。 それを言いたいが為にカコと俺をかき回したのか?

違うな、これとは別の意図だろう。

 

 

「だからさ、パークの危機とやらに立ち向かうなら応援させて貰うよ。 でも、その為にはさ……友だちを信用して頼るところから始めるのも、ひとつだと思うよー」

 

 

さいですか。

余計なお世話だ、と言いたいが。 まあ、そうなんだろうとも思う。 礼は言わねばな。

 

 

「ジャイペン先輩に言われると、()()な。 ありがとう」

 

「だろー?」

 

 

しっしっしっ、と笑う。 カコと俺も薄ら笑いで返しておく。 真っ暗な雰囲気は、取り敢えず脱したか。

それを察してか、ジャイペンはクルリとターン。 背を見せて歩き始めた。 離れていく背はシブい。

そのシブさとは逆に、俺の事をどこまで知っているのかという疑問もある。 単に適当に遊び半分で別世界のヒトの話をしたのか、核心に迫っていたのか。

なんつーか……謎が多い小さな背中なのに、今はデカく感じるよ。 風格っつーか、ね。

でもねジャイペン。 もうちょいケアしても良いのよ。

 

 

「まっ、後は若い2人に任せて! 末永くお幸せになぁー!」

 

「なっ……!?」「えっ!?」

 

 

そう叫ぶと、ダッシュで逃げていくジャイペン。 ケアどころか爆弾投下してきやがったぞヤツ! お見合いじゃねーんだぞ!?

シブいと思った俺が馬鹿でした。 今じゃ ただの畜生のガキだよ!

カコを見る。 顔が茹で上がり、オーバーヒートを起こしそうになっている。 いかん。 俺が何とかしなければ。

 

 

「愛を囁く前に、俺の昔話をするからさ……安心して、な?」

 

 

ナニを安心するのか分からんが。 取り敢えず言葉を並べてみたのだけれど、

 

 

「まず、その、お付き合いから!? あ、変な意味じゃなくてね! 最初はどうするんだっけ!? お母さんは、えっと……まず胃袋を掴む……!?」

 

 

パニックだった。 どこからかメスを取り出し、刃先が照明で、キラーンと輝く。

カコさん落ち着こうぜ、ロリババ畜生に惑わされ過ぎだよ。 胃袋って摘出的な意味じゃないよ。 スプラッターヤメテ。

ジャイペンも こうなるのが分かっていたのかね。 恐ろしい子!

 

 

落ち着こうか?

 

 

俺はカコの平常心を取り戻す事に忙しく、互いに素性の事だとか未来や過去の事は頭から離れた。

落ち着いてみれば、それも先輩の策略だったのかも知れない。 改めて偏見や偏在は良くないと感じたよ。

それから。 友だちをもう少し意識しようと思った。 帰ったら、その……ニホンオオカミの頭を撫でたい気分だな。

 




あーかいぶ:(当作品設定等)
転生者
生まれ変わった者。 輪廻。 当作品含め、多くの創作物では、死んだ者の身体や精神が別の次元、世界に飛ばされた設定が多い。 この場合、前世の記憶を引き継いでたりする。

杏樹のメモ:
物語によっては、世界を「知っている」ので、ハッピーエンドに向けて主人公が努力する。 その逆もある。
都合の良い、何らかの人外の超常力を所持して世界を蹂躙し、無秩序な暴力装置と化す場合もある。
日頃の鬱憤や妄想を具現化したらこう、という形を見れる事で、楽しい気持ちや嬉しい気持ちになれる事もあれば、ありふれてきたジャンルでもあり、飽きや無秩序や妄想に反感を抱く場合も。
だけど、こうして「世界」に来てしまうと悩んでしまう。 特に都合の良い能力がないとな。 それこそ、フレンズのようなチカラが欲しいと思う。
今世で前世を繰り返したくはない。 友だちを、笑顔を失いたくない。

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