パーク職員です。(完結)   作:ハヤモ

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時系列や違和感があるかも。 温かい目で見守ってくれると嬉しかったりします(チラッ


職員就職前(幼少期)
新たな人生。 幼馴染と将来の夢。


毎日、貼り付けた笑顔を必死に浮かべては内心で泣いていたんだよね。

存在を否定されて、泣きそうになって。

けれど身を守る為に心を殺して頷いて。

落ち込む事も泣くことも許されず、それでも一生懸命だったのを私は知ってるよ。

 

家に帰れば、枕を濡らす毎日だったよね。

朝日に怯える日々だったね。

 

そのくせ、相手を傷付けまいと未来も過去も受け入れてきた君は優しい人だ。

けれど君が傷付いていくのを見ているのは辛いよ。

悲しい事なんて知らないって笑うけど、無理しなくて良いんだよ。

 

 

「パークには、私がいる。 皆がいる。 フレンズがたくさんいる」

 

「だからね。 もう頑張らなくて良いんだよ」

 

「辛かったら、言って良いんだよ」

 

 

ギュッと君を抱きしめた。

冷たくて、寒さと寂しさで震える身体を暖めてあげる。

君が耐えて溜めてきた涙が、大粒の雨となって私を濡らすけど、構わない。

君がそれで暖まるなら、それで良い。

 

 

「ようこそ、ジャパリパークへ」

 

 

どこまでも拡がる青空の下。 島から聞こえる明るい喧騒、僅かに聞こえるさざなみの音の中。 私は君に笑顔で言う。

 

 

「けものがお好きですか?」って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街中に溢れる求人広告に限らないが、条件の良さそうな文面や名も知らぬ笑顔を載せている事は珍しくない。

 

勿論、正直に受け入れた訳じゃない。 現実は憎悪に満ちた厳しい世界。 そう自身に言い聞かせてはいた。 それは偽物。 有り得ないと。

実際は阿鼻叫喚の重労働環境で毎日、罵詈雑言を浴びせられるに決まっている。

 

だが、甘い誘惑は偽物だとしても「ひょっとしたら」と根拠の無い可能性に縋って手を伸ばしてしまう愚者がいるのは、確かだ。

 

俺だよ。 悪かったな。

 

そして都合の良い妄想は消え、悪い予想が的中。 当然の帰結だった。

 

その罪を償えとばかりに俺は仕事や人間関係に心身共に疲れ果て、気が付いたら死んでいた。

 

だが、ここにきても甘ちゃんの俺。 薄れ逝く意識の中、どこか楽観視をしていたのは否定しない。

 

人間、死ねばそれまでだとか楽になると言う。 天国に行けるとも言う。 本当にそうなのか分からない。 これから分かる。

だが、俺はまたしても、根拠のない可能性に縋ったのである。 やったぜ。 楽になれる、解放されたと。

 

ところが、そうは問屋が……いや、この場合は神が卸さない。 まさか死してなお、こんな目に遭わされようとは。

 

次に気が付いたとき。 知らぬ若き男女に見下ろされ、笑顔を向けられていたのである。

 

何事か。 疑問をぶつけようにも、バブバブとオギャー。 感情表現は笑うか泣くしかないという。

 

まさかの赤子リスタートだった。

 

うん。 単刀直入にいう。 俺は転生者になった。 なぜに。 why?

 

俺は天国で幸せになれるんじゃなかったのか。 それともココがそうなのか。 或いは地獄か。 そうか、そうですか。

 

周りを見れば、木製の格子に囲まれている。 牢だ。 俺は囚われたのだ。

冷静になってくれば、それは赤子用のベッドである。 いけない。 クールになれ。

 

よくある話や流れを参考にしよう。 転生者の話を読み漁る程に好きではないが、大まかな流れは異世界転生か。

だとしたら、ここがドラゴン飛び交うファンタジーな異世界なのか、厳しい戦時中の世界なのか。

 

そして、ただの一般人に世界を救えだの守れだのの使命を帯びさせられるのか。

いや。 そんな事するなら発展途上国の子ども達を救ってくれよ。 そうじゃなくても軍人や政治家とか、もっと適性ある人はいるだろとツッコミたい。

 

駄目だ。 わからん。 全然わからん。

 

赤子のままでは情報収集は限られる。 ここは耐えるのだ。

 

かくして俺は、若き男女に屈辱のおしゃぶりや哺乳瓶プレイを味合わされつつ、現代日本とさして変化を感じられないまま幼少を過ごした。

 

とある春の陽気の下。 桜満開、花弁が舞い散り。 歩いたり言葉を発せる頃。

 

外の景色やテレビやラジオからの情報からして、尖閣諸島の方に新たな島が出来て、もう上陸可能だとか以外は、やはり変哲も無い現代日本だわコレ畜生めと結論が固まりつつ、ガッカリし始めた時。

 

俺の住む住宅地の隣に幼馴染なる人物が出来た。 凄いおどおどしている女の子だ。

 

もうね。 幼馴染とか正直どうでも良い。 ラブコメ風に結婚相手とかロマンな事は考えない。

男としてどうなの、と思われても仕方ない。 グレた。 この世界に対して。 精々、今度こそ就職に失敗しないぞと考える程度。

 

だが、それもまた、馴染みの名前で裏切られる。

 

 

「あ、あの…………カコ…………わたしの、なまえ」

 

 

あー、うん。 カコちゃんねー。 よろしくねー。 俺、杏樹(あんじゅ)っていうの。 前世の名前忘れたのー。

 

そう適当に流そうとして……僅かに残った前世の知識が待てをかけた。

 

名前についてだ。 俺の、女っぽい新たな名前についてじゃない。

前世の……俺の名前についてでもない。

カコ。 目の前の、ロリっ子の名前だ。

 

 

「いや、まさか。 カコ博士か!?」

 

 

俺の甘ちゃん妄想脳は、カコという名前に反応を示す。 そう。 過去。 カコだ。

 

アニメで有名になった「けものフレンズ」の作品群、アプリに出てくる公式の「ヒト」である。

 

公式イラストは存在するけれど、アプリでは名前のみ登場。 ジャパリパーク動物研究所の副所長らしい。

 

人類、フレンズ共に害ある存在「セルリアン」絡みの大事件「女王事件」発生の際、セルリアンに襲われて意識不明。

 

作中に出てくる別の「ヒト」であるガイドの「ミライ」さんの話だと、パークの外、本土の病院に入院したんだかなんだか。

悲しくも、両親を幼い頃に失い、辛い想いをしてきたとか。

 

アプリ版は、動画等でしか知らない。 だから詳しくは分からない。

現状、カコの両親は存命しているし。 俺の影響なのか分からん。

だけれど、もしそうなら。 もし、俺の妄想通りならば。

 

この世界は「けものフレンズ」の世界。

 

新たな島の情報は、将来、舞台となる超巨大総合動物園「ジャパリパーク」が建設される。

 

裏切られ続けたが、馬鹿な俺は再度、信じる事にして……質問を投げてみる。

 

 

「カコちゃん。 けものは、おすき?」

 

 

───うんっ!

 

 

桜吹雪の中。

 

目の前の幼女は、笑顔満開でお返事をしてくれた。

 

嗚呼、と。 釣られて笑顔になった。

 

俺は初めて、妄想が現実になったのである。

 

 

「パーク職員に、俺はなる」




あーかいぶ:(当作品設定等)
ジャパリパーク
超巨大総合動物園。
世界中の動物を集める事、研究や種の保存を目的としています。
海底噴火により誕生した島を丸ごと敷地としてします。 調査、管理運営や施設建造等の為に多くのヒトが上陸しました。
当初は通常の動物展示等を予定していましたが、島特有の特殊動物が発見されてからは『彼女』達に合わせた施設や触れ合いを体験出来る様々な施設及び区域、研究施設が造られていきました。

特殊動物
ジャパリパークの島内にて確認されました。 島特有の物質『サンドスター』が動物に当たる事で生まれます。
決まってヒトの女性の姿をしており、元の動物の特徴や魅力を引き継いでいます。 この事から『アニマルガール』と命名されました。
生まれた時からヒトの言葉を話せる、理解する、二足歩行である、身体能力が高い、等の特徴があります(一部除く)。
ヒトに対しては友好的な者が多く、危険性は薄いです。
その事から来園者との会話や接触は許可されています。 その為か『フレンズ』と呼ぶヒトが多いです。

サンドスター
島特有の物質で、島内にある火山から噴き出ている様です。 目視ではキラキラと輝く粒子に見えます。 土壌等にも含まれているのが確認されています。
特殊動物を生み出した物質であり、環境や地形にも影響を与えていると考えられていますが、よく分かっていません。
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