パーク職員です。(完結)   作:ハヤモ

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不定期更新中。 世界トラの日ということで……。

あまりフレンズさん たちの魅力を引き出せてない感が否めず……でも、彼女達は可愛いと思うの。


とら!

UMAなツチノコのフレンズを森で見たり、EXフレンズの一部を研究所で見てきたが、絶滅はしてないものの、希少な けもの という子も地球上にいるワケで。

有名な けもの である、トラもそうである。 複数の種類がいる トラであるが、絶滅の危機に瀕している。 住処がなくなったり、あの特徴的な模様……虎斑の美しさを狙われてしまったり。 狩りの成功率の低さもあるだろうか。

そんな希少なトラであるが。 ジャパリパークに運ばれて、フレンズ化しているようだ。

フレンズの彼女の姿。 ホワイトタイガーと似ている。 白シャツにアカチェックのネクタイ・スカートといったライオンとおそろいの衣装に、トラ柄の長手袋・ニーソックスを着用。 それからおっぱい 大きい。

アニメ等で直接絡む事はなかったが、人気のある子なんじゃないだろうか。 こうして見ると可愛いし。

 

 

「ち、近づくな、このバカぁ……!」

 

「良いではないか良いではないか〜」

 

 

目の前には、カメラを持ちエロオヤジと化した記録保存チームの部長とトラのフレンズ。

様々な角度から撮ろうとし、トラは嫌がっている。

 

 

「嫌も嫌をも好きのうち。 本当は仲良くなりたいのだろう!?」

 

「そ、そりゃワタシだって……って! 近づくなって言ってんでしょ!」

 

 

部長に引っ掻き攻撃をしない辺り、相手が脆いヒトだからか優しさからか。

アプリ版では、ハグをしに来たサーバルに容赦無い引っ掻き攻撃を喰らわせていたようだけど。

いや、今は未来の話ではない。 目の前の今、現実を考えねば。

 

 

なんでこうなった

 

 

俺は天を仰いだ。 綺麗な深緑と溢れ日が美しい。 だけど見た光景は欲に塗れた醜い光景に思える。

なぜ、なぜ部長と共に森に来ているのだろうか。 なぜ、トラにセクハラ紛いの事をしているのか。

一歩間違えれば逮捕される光景に対して、俺は研究所から今に至るまでの経緯を振り返る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャパリパーク動物研究所内。 記録保存チームの部室……じゃなかった。 研究室を後にしようとしたら、部長のスマホに連絡が。

一瞥したと思えば、次には笑顔で言葉を解き放つ。 嫌な予感しかしない。

 

 

「トラのアニマルガールを、森で見たという報告があった! 行くぞ杏樹君!」

 

「断ります」

 

 

即答。 絶対に面倒なのでお断り申し上げる。

俺が研究所の中をプラプラしても何の役に立たないだろうが、だからって、外に行く理由にならない。

ぶっちゃけ、疲れるのは嫌です。 セルリアンを含む危ない目に会いたくないです。 トラには会いたいけど、デメリットの方が高そう故に。

 

 

「今を逃せば、次に会えないかも知れないぞ?」

 

 

ひとりで行ってくださいよ。 それともアレかい? ボッチは寂しい的な?

 

 

「いや、危なそうなんで」

 

「けものを、パークを愛する者として記録に残したくないか?」

 

 

くどい! どんだけ行きたいの。

 

 

「俺の仕事もあるんで」

 

「シーサーの写真を焼き増しして あげるから!」

 

「パークの為、直ぐに向かいましょう!」

 

 

仕方ないな。 パークの為だ、ひと肌脱ごうじゃないか。 なんならフレンズと脱ぎ合いっこしたい、そして逮捕されちゃう。

 

 

「…………あんじゅ」

 

 

カコの冷ややかな視線が刺さってツライさん。 いや、ほら。 俺も男だし。 それにパークの記録保存に貢献をしようかと。

 

 

「いや、ほら。 もし生まれたばかりのフレンズだったら、パークの説明とかした方が良いじゃん? セルリアンに襲われたら大変だし、ね?」

 

「そうね」

 

 

なんだろう。 スゴい言葉が冷たく感じる。 絶対零度までいかなくとも、永久凍土に俺を閉じ込めそうな冷たい雰囲気。 今、マンモスがいたらマフラーで温めてくれそう。

 

 

「はっはっはっ! 若いとは羨ましいなぁ」

 

 

部長。 アンタの所為です。 俺もホイホイ釣られたのが悪いけど。

 

 

「では行こうか! なに、そう遠くない。 写真を撮ったら直ぐ帰って来れる。 近くまで車で行くが運転は任せてくれ」

 

「ウッス」

 

 

そう言って、研究所を後にする俺と部長。 カコの冷ややかな視線を背後に受けながら。

仕方ない。 仕方ないのだ。 全てはエロい写真……じゃなかった。 パークの為、フレンズの為なのだ…………!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が悪いんじゃね?

 

 

回想から戻ってきて、第一声はコレだった。 非があるのを認めた時、俺の浅ましさを呪う羽目になるとは。 反省して、どうぞ。

 

 

「ちょっとアンタ! コイツの 友だちなら、何とかしなさい!」

 

 

俺の存在に気付いたトラさんが、助けを求めてきた。 不純な理由でココにいる身としては、せめての償いとならねばな。

 

 

「あー、その。 トラは本当に嫌がってますし、あまり やらない方が良いのでは?」

 

 

いい加減にしないと裂かれますよ。 フレンズとはいえ、その可能性はゼロではない。

俺は けもの に対する危険も加味して言ってみた。 部長は俺より長く生きている。 分かってくれる筈だ。

 

 

「……ふむ。 そうだな、すまない」

 

 

そう言って、カメラを構えるのを止めてくれた。 良かった。 俺とトラがホッとしたら、

 

 

「なら彼女を研究所に連れて行こうか」

 

「「いい加減にして」」

 

 

トラとハモった。 仕方ないね。 懲りてないんだもの。

 

 

「それ、拉致です。 誘拐です。 捕まります」

 

「ハッ! 私とした事が。 トラは希少種、連れて行く事は出来んな」

 

 

違う。 そうじゃない。 嫌がってる事を無理矢理というのが良くないの。

トラも思うトコがあるのか、厳しい口調で訴えてくる。 猛獣がやると、オーラが怖い。

 

 

「あのね、ひっ付き合うのも群れるのもワタシは嫌いなんだよ。 この機に覚えな!」

 

 

ウガーッと吼えるトラさん。 分かるよ、その気持ち。 互いに気を遣わなきゃならないからシンドイよな。 あ、ちょっと違うか。

 

 

「仕方ない。 トラの気持ちを尊重しよう。 だが簡単な教育はさせて貰おう」

 

「はぁ?」

 

「雰囲気からして、アニマルガールになったのは最近ではなさそうだが。 ココがジャパリパークなのは知っているな?」

 

「他の子に聞いたからね。 そんぐらい知ってるさ」

 

 

真面目な会話を始める部長。 最初からやれよ。 かくいう俺は何もしてないが。

 

 

「自身が何のフレンズかも?」

 

「トラだよ。 ベンガルトラ。 もう良いかい? 馴れ合うつもりはないんでね」

 

 

ふむ。 最低限の知識はあるように感じる。 ココがパークで 自身が何者か分かっている。 それだけで、普通のアニマルガールは良い気がする。

ところが部長。 話を終わらせずに、言葉を続けるのだ。

 

 

「そうかぁ。 私もそうだと思っていた。 というわけで写真を1枚だけ撮らせてくれ。 そうしたら立ち去ろう」

 

 

何がというわけなのだろう。 ミライの方が まだ良い気がしてきた。 部長は部長で欲が溢れてしまっている。

 

 

「だぁーもう! 分かった、分かったよ。 しゃしん とやらは 危なくないコトなんだろうね!?」

 

 

折れたトラさん。 なんかすいません。 文句は全部 部長が負いますんで。

 

 

「問題ない。 魂を抜かれる事も無ければ、何分も立ち尽くさないといけないものでもない」

 

 

そういって構え直す部長。 何百年前の話です、それ。 アンタ生まれてないよね。 何故、その話を今した。

 

 

「魂抜かれるとか、そんなおっかないモノはお断りだよ!」

 

 

ほら見ろ。 不安にさせたじゃないか。 臨戦態勢に入ってるよ。 拳握ってるよ。

トラは強いんだぞ。 ヤベェよヤベェよ。 誤解を解かねば!

 

 

「だ、大丈夫だよ! 根も葉もない噂が昔あったんだよっていう話だから!」

 

「そ、そうかい。 紛らわしいね」

 

 

ホントそう思います。 なんで そんな事をいうんでしょうね部長。

 

 

「さあ撮るぞー。 好きなポーズで!」

 

 

そう言えば、なんだかんだ付き合うトラさん。 不機嫌な顔ながら「うー! がおー!」のポーズをするとか……言動とは裏腹というかギャップ萌え。 可愛い。

 

 

「ハイ チーズサンドイッチ!」

 

 

かしゃり。 乾いたシャッター音が響けば、構えを解いてニコリと微笑む部長。

なんスかね、その掛け声。 冒険の先で何度か聞きそうな言い方だね。

 

 

「うむ。 良い写真が撮れた。 ほら」

 

 

そう言って、カメラの撮影データを俺とトラに見せてくる。 そこには不機嫌な顔をした、だけど可愛いポーズをしたトラさんが。

 

 

「小さなワタシが入ってる!?」

 

 

驚かれた。 カメラというか、機械類を知らんのだろう。

フレンズって、こういう反応をしてくれるから可愛くて面白い。

くっくっと笑いながら。 俺は簡単に教えてあげた。

 

 

「これは、その時の光景などを切り取って保存出来る道具なのさ。 実際に入ってるワケじゃないんだよ」

 

「よく分からないけど、ヒトの道具って凄いのね」

 

 

ずずいと俺の横に近寄って、じっくりと画像を見るトラさん。 ひっ付き合いたくないと言っていたが、今は忘れている模様。 腕に 胸が当たってきて、ドギマギするまである。

 

 

「ハッ!?」

 

 

それに気づいて、俺の顔を見て、慌てて離れていく。 うん。 可愛い。

 

 

「なに ニヤニヤしてんのよ! 気持ち悪い!」

 

 

うん。 落ち込むよね。

 

 

「若いって良いなぁ!」

 

 

まさか狙った? 狙ってやったの このヒト!?

 

 

「とにかく! これで終わり! さっさと どっか行って頂戴。 それから、木に引っ掻き傷を見つけたら、それ以上進まない事ね。 ワタシのナワバリなんだから」

 

 

そう言って、逆に自らが立ち去るトラさん。 可愛いトコが見え隠れして、可愛がりたくなっちゃうね。 裂かれる心配があるけど。

 

 

「杏樹君。 彼女と次に会う時があれば、もっと仲良くなりたいな」

 

「え? ええ」

 

「ああ見えて、本当は他の子とも仲良くしたいのだろう」

 

 

あら。 分かってらっしゃる。 トラとはいえ、彼女はフレンズ。 ボッチは……寂しいもんな。

ホワイトタイガーを紹介しよう。 トラ繋がりで。

 

 

「さて。 セルリアンに襲われる前に研究所に撤収。 杏樹君、時間を取ったね」

 

「いえ。大丈夫です」

 

 

フレンズに会えたのだ。 良しとしよう。 トラは希少である、出会えた奇跡に感謝しよう。

 

 

「ところで」

 

 

笑顔の部長。 嫌な予感。

 

 

マルタタイガーって知ってるかい? 約100年前に報告されたという、UMA的な幻の青虎を!」

 

「見かけたら報告します。 そんじゃ帰りましょう」

 

 

所内でも外部でも虎に会えたので、今日は もう良いですと踵を返した。 これ以上の面倒は勘弁な。

 




あーかいぶ:(当作品設定等)
トラ(ベンガルトラ)
ネコ目ネコ科ヒョウ属
群れを形成せず、繁殖期以外は単独で行動。 ネコ科だが泳ぐ事が出来る。 獲物に対して待ち伏せる事もあるが、主に徘徊して獲物を探すらしい。
狩りの成功率は低く、10、20回に1回成功する程度らしいよ。

杏樹のメモ:
今回出会ったトラは、本当は他の子とも仲良くなりたい様子。 だけど慣れてなかったり、元の けもの の特性からか突き放す言動が目立つように感じる。
でも根は良い子なのだろう。 なんだかんだ付き合ってくれたみたいだし。

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