パーク職員です。(完結)   作:ハヤモ

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不定期更新中。 駄文。
上手く進まないですが、事件解決、復興、例の異変に暗部の話等を進めていきたいです。 でも途中で挫折しそう……。


相談しよう。

揺れ動く電車。 静かに座る俺と、両側に座るフレンズ。

互いに何も言わない。

レール走行音と時々流れる自動アナウンスが、静寂過ぎない世界をつくる。

 

だからといって、気まずさやザワつきが無くなる事はない。

ニホとジャイペンも、ここまで話してこない。 どう対応して良いのか分からないのだろう。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

分かるよ、それ。 ヒトにもあるから。

 

だが、原因は俺なんだ。 研究所で……今、手に持っている資料を見て……叫んでしまったから。

 

いや、だって……ねぇ?

 

アレは叫ぶでしょ。

セルリウムで故人再現計画とか。

カコの両親を救えば、そんなもんは消えると思っていただけにショックだよ?

結局はさ。 個人レベルを止めたところで、誰かがやるだけなのは分かったよ。

セルリウムの特性を知れば、誰かが遅かれ早かれやる事だったのだ。 きっと。

誰にでも大切な思い出やヒトはいる。 失ったモノを取り戻したいと願うのは珍しくもなんともない。 ありふれていると言える。

俺もそうだ。 酷い前世だったが、良い思い出がゼロだったワケじゃない。 それをもういちど欲しいかといえば、欲しいものだ。

 

だがセルリウム。 セルリウムだぞ。

危険な行為だ。 俺は研究職員じゃないから、詳しくは分からない。 だが、あの物質を利用しようとしたら……ロクな事が起きない。

俺の妄想は当たるんだ。 馬鹿にするなよ。

 

こんな気不味い空気の打開策。

パークマニュアルに載ってない?

俺は不真面目だから、あまり読んだ事無いけど。

 

無理矢理、日常会話をしてみるか?

そうすれば、ふたりも資料の件には触れてこないだろう。 うん。 そうしよう。

 

 

「な、なぁジャイペン」

 

「うん? どうしたの?」

 

 

ヤダ、パイセン。 いつもの明るい顔。

いや。 明るい裏では色々考察中か。

 

そう思うとさ、パイセンが危険な事に突っ込まないか不安になる。

もういっそ、ネタバレしようか。 そうすれば俺も楽になる。 ついでにナニか、突破口が開けるかも知れないしさ。

 

い、いや……やめよう。 危険だ。

これはヒトの問題。 巻き込むのは、良くない。

 

 

「あー、その……そうだ。 PPP(ペパプ)の皆とは会えたか?」

 

「会えた会えた! いやー、ありがとうね可愛い後輩を教えてくれて! なんか会ったらさ、いろいろと慕ってくれて! 嬉しかったよ!」

 

 

普通に、日常会話をしてくれるパイセン。

気を使われたか?

 

まあ、しかし……その。 なんだ。

初対面でイキナリ慕ってくれたの?

絶滅種だからか、風格があるからか。 かしこさもあるか。

 

 

「プリンセス……ロイヤルペンギンのフレンズの子なんだけど、新しくメンバー入りしたって事で! 私に出来る範囲でサポートしてあげてるんだ!」

 

「そうなんだ。 すごいなジャイペン」

 

「しっしっしっ! そう言われると、照れるなぁ!」

 

 

ジャイペンが所外に出たのって、この事件がキッカケだよな?

という事は、2日……いや、1日かそこらで会いに行って、仲良くなって、しかもプリンセスのサポートしてんの? ヤバぁない?

 

そんな明るい会話に触発されたか。

ニホが話しかけて来た。 良いぞ。 この調子で会話をし、資料は忘れろ。

 

 

「ねぇ、さっき叫んでどうしたの? 紙に何か書いてあったの?」

 

 

直球ストレートで来たんだけど!?

ヤバい。 どう打ち返そう。

 

パイセンを見る。 困ったような顔をしている。 が、助けてくれそうにない。

あわよくば、答えを聞こうとしているなパイセン。 くそぅ! くそぅ!

 

 

「……遠吠えだよ。 思わずしちゃって。 ニホ、今度一緒にする?」

 

 

誤魔化す! カット出来るか!?

頭がぽわーんとしてそうな駄犬だ。 何とかなるだろう!

 

 

「誤魔化さないでよ」

 

 

無理でしたー!

てか、ニホ。 今まで見たことない顔してるんだけど。 ハイライトの無いツリ目で無表情で見つめてくるんだけど。 ヤダナニソレ怖い!

 

 

「ねぇ、気になるよ。 私を群れから……仲間外れにしないで」

 

「仲間外れになんか、してないぞ」

 

「嘘。 今までは、そういう時が多かった。 構ってくれなかった。 勝手にどこかに行ったりした」

 

 

うっ……!

確かに。 思い出すと、そういう時が多かった気がしてきた。

もっと一緒にいるべきだった。 すまない、ニホ。 でも。 それでも。

 

 

「ごめんよ、ニホ。 でも……この話だけは、ニホには……いや。 パイセンにも出来ないんだ」

 

「なんで? なんでよ?」

 

 

怖い! ハイライトの無い目に吸い込まれそうだ! 正直チビりそう!

女の子が電車で失禁! 好きなヒトは好きそうなシチュ。 でもしない。 しそうになる寸前で耐えられた!

 

俺は声を震わせながら。 でもハッキリと答えていく。

 

 

「これは、ヒトの問題なんだ。 フレンズを巻き込みたくない」

 

「ねぇあんじゅ。 私は、その問題から守りたい。 きっと、その事はあんじゅにとって怖い事だったんだよね。 だから叫んじゃったんだよね?」

 

 

かしこい。

やはりオオカミ故にか。 普段の駄犬ムードはどこに消えた。 今まではかしこいのを隠してたとでもいうのか。

 

そして……身近なフレンズだからこそ、フレンドだからこそ。

打ち明けたい気持ちになる。 甘えたい。 言えればどんなに楽か。

でも、やはり……くそっ。

 

 

「まぁ、な」

 

「私だけじゃない。 きっと、あんじゅの ともだちは、あんじゅを守りたいって思うよ。 だから……言うだけでも良いんじゃないかな」

 

「私も、ニホに賛成だな! ひとりで抱えても解決しないよ?」

 

 

ここでジャイペンからの追い討ち。

くっ。 言うしかないのか?

 

でもフレンズに言うのは……。

 

 

「パークには、私がいる。 皆がいる。 フレンズがたくさんいる」

 

「ニホ?」

 

 

突然に。 ニホは笑顔で語りかける。

優しく。 母親が子に言うように。 優しく、優しく。

 

光の無い目。 だけど優しさを感じる目に。

瞳に映る俺───今は女の子の姿だけど───を包み込んでいる。

 

 

「だからね。 もう頑張らなくて良いんだよ、辛かったら、言って良いんだよ」

 

 

ギュッと抱きしめた。

冷たくて、寒さと寂しさで震える身体を暖めてくれた。

耐えて溜めてきた涙が、大粒の雨となってニホを濡らす。

 

止めなくちゃ。 だけど、優しい温もりに耐えられない。 止めどなく、涙が出てくる。

 

 

「……ニホ」

 

 

もう良い。 全てが赦された気持ちだ。

俺は思わず、突然の出来事だが……嬉しさでニホを抱き返してしまう。

 

思えば同居しているのに、こんな事はした事がない。 初めてだ。

 

抱きしめ返したのが合図のように。

ニホは耳元で、優しい言葉を言った。

 

 

「───」

 

 

パークに、改めて受け入れられた。

そんな温かな気持ち。

 

醜態を晒す中、パイセンも温かな目で見守ってくれていた。

 

これさ……後で黒歴史になりそう。

でも、今だけは泣いて良いよね?

 

結構、ダークサイドな部分に触れてツライさんなんだよ俺。 豆腐メンタルなんで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───そんな事が」

 

「そうなんだ」

 

 

ジャイペンとニホは真剣に、資料の事を聴いてくれた。

フレンズに話して解決するかは分からない。 だけど、気は楽になった。

 

今後、どうすれば良いのかなんて分からない。

 

なんだったら放置しようか?

 

事件収拾なら、パークのどこかで行動中のミライ班……園長たちに任せれば良い。

暗部に下手にツッコミを入れれば、輝きを奪われるより恐ろしい目に遭うかも知れない。

ならば。 大人しく上の指示に従ってりゃ良い。 パーク職員として職務を遂行するのみ。

 

いや……それが本当にパークの為か?

それは、ヒトの為でフレンズの皆の為じゃないのでは?

 

疑問に思えば、またどうすれば良いのかと考えてのループにはまる。

 

マジでどうすりゃ良いんだ?

アイディア求む、フレンズよ。

 

 

「ならさ、カコ博士や皆を仲間に引き入れよう!」

 

 

パイセンが言う。

それが出来れば良いんだが。

 

 

「群れを作るんだね! 楽しそう!」

 

「サークル作る感覚で言うな」

 

 

ニホよ。 いつもの口調で言うが、遊びじゃないんやで。

 

ヒトを仲間にしようとするのは、リスクが高いんだよ。

声かけして、仲間に入ったつもりをされての裏切りパターンとか。

ヒトはね。 平気で裏切るからね。 なんなら殺すまである。

 

 

「あー、フレンズを引き入れるのは?」

 

「それでも良いと思うよ。 でもさ、ヒトの問題なんだよね?」

 

「そうだな」

 

「それも動物研究所ときた。 おいそれと立ち入れない場所で悪事が起きる。 なら内通者がいた方が良くない?」

 

 

パイセン……本当にフレンズですか?

言い回しが知恵ある者だよ。 キレ者だよ。

 

 

「パイセンさ」

 

「うん?」

 

 

だから、気になっている事を聞こう。

 

 

「実はオッサン入ってたりしない?」

 

「ヒドいなぁ!? 私はご覧の通り、ピチピチのフレンズさ!」

 

「ピチピチとか死語じゃね?」

 

「なんなら、もっともっと遥か前を生きてたかもね。 あんじゅちゃんは、《どれくらい前》かなぁ?」

 

「あ、いや……すまん。 本題に戻ろう」

 

 

しっしっしっ、と笑われる。

いかん。 からかわれた。 ナニ言っても勝てそうにないな。 パイセンをからかうのは止しておこう。

 

電車のリズミカルな音を聞きながら、話を続ける。

 

 

「カコに相談するよ。 最も身近で信用出来る、ラボラトリースタッフだからな」

 

「うんうん。 それと、管理センターは?」

 

「管理センターは小動物……今、俺をサポートしてくれているヒトに言う。 無線越しだと記録に残るから、直接会って話す」

 

 

カコも小動物も不安だが。

頼りになりそうな一方、上にいる分 暗部に絡んでいる可能性がある。

だが話さなければ進展はない。 裏切られるにしろ協力してくれるにしろ。

 

あっ。 そうだ。

 

ミライと園長に話すのは?

 

裏の無いヒト……かは分からない。 だが、そこらのヒトより絶対良い。

 

 

「ミライと園長にも話そうかな」

 

「えんちょー?」「園長って誰かな?」

 

 

ニホとパイセンが首を傾げた。

ああ、うん。 知らないのも仕方ない。 なんなら俺もよく分からない。

幼少の頃に会った男の子が、園長かも知れない。 だからなんだよって話だが。

 

俺の知っている知識でいうなら、このセントラル事件の、アプリ版主人公だ。

園長という呼び名は親玉を倒した後、フレンズが親しみ等を込めて言い始めた呼び名だったかな。 たぶん。

 

別に今言っても、対して悪影響は無いだろう。 彼の持つ『お守り』の話をしたワケじゃないし。

 

 

「今、ミライと一緒に行動している お客さん……いや。 職員、かな」

 

 

パークの為に動いているから、お客さんじゃないか。 そう思って『職員』と言い直した。

かばんちゃんの物語の影響もある。

 

 

「ほぅ。 特殊なヒトなのかな?」

 

 

さすがパイセン。 鋭い疑問。

閉園状態のパークに、突如としてサバンナに現れた記憶喪失のヒトだ。 特殊なパーク製のお守りを持つまである。

 

 

「特殊だな。 まだ会った事はないが」

 

「それなのに信用出来ると考えるのは、やっぱり あんじゅの記憶的に オッケーな感じ?」

 

「確証は無い。 でも、そこらのパリピより断然マシだな」

 

「そっかそっか! そうしたら、信じてみると良いよ。 私も信じる」

 

「あんじゅが信じるなら、私も信じる!」

 

 

笑顔で言う お二方。

何の確証も無しに、そう言うとは。

 

フレンズらしいというか、純粋無垢というか。 パイセンは微妙だが。

 

 

「信じてダメでも、私が守るから」

 

「結果は、一緒に背負うよ? 言い出しっぺは格好悪いじゃん?」

 

 

ふたりは言う。 グダグダする俺を押す様に。

いやはや……泣いて、ここまで言われて、やらないのも格好悪いよな?

 

仕方ない。 やろう。

ヒト……信じてみても、良いじゃないか。

 

 

「分かった、言ってみよう。 ただし」

 

 

キョトンとするジャイペンとニホ。

ナニ、別に大した条件を付けるワケじゃ……いや大した条件を付けるか。

 

 

「この事件を解決しながらな」

 

「へ?」「それは、どういうコト?」

 

 

疑問に思うよな。

この事件、資料の件とおそらく関係ないし。

放置しても園長らが解決するし。

 

だが、そうだとしても利用出来るものは利用する。

 

 

「これから、偶然を装い保安調査隊ミライ班に合流。 共に事件解決に行動しながら、こちらの話も合わせてする」

 

 

ヒトが少ない現パーク。

セルリアンが跋扈し、情報が遮られているからこそ……事件を隠れ蓑に重要人物らに接近するのだ。

 

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