パーク職員です。(完結)   作:ハヤモ

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駄文更新。 此方の終わりが見えない……。


《ときわたり》の可能性と相談。

セントラル駅に途中下車。

管理センターが各駅停車運転にしていて良かったよ。 お陰で降りられた。

 

管理センターの小動物には、ミライ班への協力と言い訳しておいた。

無線記録に残るから、怪しまれるかもだが……大丈夫と願おう。

ほら、言っておかないと管理センターに中々来ない理由を問われそうだし。

 

逆にだ。 無線以外では、俺の情報は分からない。 小動物が言っていた「無線記録が残るから、不用意な発言はしないように」というのがヒントだ。

無線にさえ気を付ければ、俺の行動は分からない。

 

いやしかし。 意図は……バレるか?

資料を確保したと思ったら、妙な行動を取るワケだから。

 

小動物が、何とか誤魔化してくれる事を願う。 あのヒト、色々優秀そうだし。

味方なら、その辺を上手く取り計らってくれるハズ。 頼む!

 

録画や無線連絡機能のある、パーク中に配備されるラッキービーストがまだ稼働していないパークだ。

監視カメラでバレるかもだが、会話までは分かるまい。

 

ダメでも小動物が何とかする。 信じてるぞ小動物。 ご都合主義万歳。

 

そんなワケで。

セントラル内のベンチで待ち惚け。

青空が綺麗だなぁと。 パークが平和じゃないのが嘘のよう。

 

だが聳え立つ城を見れば、違和感がある。 よく目を凝らして見れば、薄い半透明な膜が。 それはドーム状に城を覆っている。

さっきも確認した、セルリアンの結界だ。 現代科学で解明出来ないのかね、アレ。

実はある程度分かってたりしないかな。 ミライのメガネでの解析で、セルリアンによるモノだと分かっていた気がするし。

 

 

「セントラルにいれば、ミライ達に会えるんだ?」

 

「ミライさん……気になるから、早く会いたいな」

 

 

隣に座るジャイペンが訪ねてきた。

ニホは単に会いたいだけって感じが。

来るか不安……というワケじゃなさそうだが、聞かれたなら答えよう。

 

 

「そのはずさ。 最終的には」

 

 

アプリ版……最終決戦の地だった筈だからね。 ここ、セントラルは。

 

正確には、中央に聳え立つ けもキャッスル内が決戦の場だ。

詳細は憶えていないが、各地にいる、結界を作り出しているセルリアンをフレンズが倒して結界を解く。

そんで、園長らが城内に突入。 オイナリサマに出会ったりセーバルがフレンズ化したり、色々あって最後は親玉を倒す。

それはまあ、園長らに任せたい。 戦闘指揮能力は園長らが高いだろうし、フレンズから信頼もされているだろうからね。 『お守り』という特別なモノもある。

ちょっと羨ましい。 嫉妬するすらある。

 

と、ここでニホが吠えた。 耳が良いのだ。 ナニか聞こえた模様。

 

 

「あんじゅ、何か音が近付いてくるよ! くるま みたい!」

 

「この状況でか。 なら、ミライ達だろう」

 

 

期待をして、遠くを見やる。 すると砂煙を上げながらジャパリバスが やってきた!

 

ジャパリバスといっても、かばんちゃんの乗っていたタイプではない。 ひとまわり以上大きい。 都バスのよう。

運転席部分はネコ科の動物……サーバルっぽいのとか、配色が共通しているように見える。 ただし、造形は ややリアル。

窓ガラスもしっかりあり、運転席は分離出来ない。 その代わり潜水モードがあるんだったか。 リウキウ地方辺りで、なったかな。

実はかばんちゃんの使用したバスも、そんなモードがあったりするのだろうか。 見た目は簡素的だったが。

 

まあ、何にせよ会えたから良い。

 

 

「おーい! 待ってたよよよ!」

 

 

アニメのカピバラさんの言い方風に声を出しつつ、手を振った。

いやはや。 こうして生でジャパリバスを見ると、謎の感動ですな。

 

 

「おー! アレがバスかぁ!」

 

「バスは見た事あったけど! あの形は初めて見たよ!」

 

 

ジャイペンとニホは、初めて見るバスに興奮している模様。

俺もだ。 ベクトルは違うけどな。 側で喜ぶフレンズがいるだけで、なんだか嬉しさ倍増って感じで好き。

 

運転席を見やると……ありゃミライか。 助手席には見知らぬ凡夫。 ふたりとも軽く手を振ってくれていた。

ふむ。 凡夫は園長だろう。 ここまで来て園長じゃなかったら、じゃあ誰だよオメーである。

 

やがて側に止まる。

先に降りたのはミライらヒトではなく、サーバルだった。 ぴょんと軽快にバスのステップから降りる。

 

 

「わぁ! フレンズが乗ってたんだね!」

 

「まあ、フレンズがいなきゃ戦えないし」

 

 

ニホが嬉しそうに言う。 新たな出会いを喜べるのは、素直に羨ましい。 俺なんて、警戒する。 心の壁を全開して拒絶すらする。

 

戦う件は……そのうち、ヒトだけでも戦える様になるのだろうか。 無理か。 武器を使えば模倣される危険性がある。

銃とか模倣されたらヤベェよヤベェよ。

 

それはそうと。

園長らの、アプリ版の主要メンバーと会えるかな。

知っている世代の子だと良いが。 まさか既に世代交代をしているのか?

奈々が主人公の漫画版とセントラル事件を解決するアプリ版の世代は多分違う。 もし、交代しているのなら……少し悲しいな。 俺の記憶は引き継いでないだろうから。

 

 

「うん?」

 

 

アレ?

メンバーは、サーバルだけ?

 

カラカルは?

トキは?

トムソンガゼルのルル、シロサイやギンギツネは?

 

アプリ版の主要メンバーがいない。

なんで?

 

 

「あんじゅ! 久しぶり!」

 

「おお。 《憶えている》のか」

 

「忘れないよー! ななちゃんの歓迎会にも来てくれたし! 雪山の時は助けてくれたし!」

 

 

疑問に答えてくれるかのように、サーバルが元気に駆けてきた。

どうやら俺の知っているサーバルの様だ。 良かった。 それだけで妙な安心感と喜びが湧いてくるね。

 

俺の影響なのだろうか。 世代交代は起きていないのか。 それが良い事か悪い事か分からない。 だが、思い出が消えていないのは素直に喜ばしい事。

 

え? 俺との大した思い出は無いって?

良いんだよ。 主人公格のフレンズが俺を知っているってだけでも。

ほら、有名人と知り合いみたいな。 そして語るべき事が……うん。 無いな。 悲しいぞおい。

 

ただ、聞きたい事がある。 出会い頭早々悪いが、聞こうか。

 

 

「あー、フレンズはサーバルだけか?」

 

「他のみんなはね。 結界を作っているセルリアンをパッカーンする為に動いていて、今はいないの」

 

 

ああ、そうだったか。

いや、なに。 おかしくはない話だった。

 

結界を解く為に、各地にメンバーが散っている状況なのだ。

時間が惜しいから、手分けして各地のセルリアンを倒している最中というところか。

 

 

「そうか。 ならば、信じて待とう」

 

 

時が来れば、結界は消えそうだな。

ナニも心配していないワケじゃないけど。 知っている様で知らないパークの状況下だ。

各地で獅子奮迅、奮闘中のフレンズが敗北する可能性がゼロじゃない。 だが信じる。 フレンズのチカラは奇跡を起こし、時として超えていくだろうから。

 

 

「じじょーを知ってるんだね?」

 

「まあな」

 

 

互いに妙な落ち着きを保って話せた。

サーバルも仲間を、フレンズを信じているのだろう。

 

話に区切りがつく。 と、待ってたのか。

ニホとジャイペンがサーバルに絡んだ。 うん。 フレンズ同士、仲良くやってくれ。 それは良い事だ。

 

 

「初めまして! 私、ニホンオオカミ! あなたは何のフレンズ!?」

 

「私はジャイアントペンギン! ジャイアントでも、ジャイペンでもパイセンでも。 好きな様に呼んでくれて良いよー!」

 

「私はサーバルキャットのサーバル! よろしくね!」

 

 

ワイワイガヤガヤ、と。

フレンズらしいというか。 非常事態下なのに、騒がしく話し合う子たち。 でも、微笑ましい可愛い子たちだ。

 

そんな光景にキモく微笑んでいる間に、探検服に身を包むミライと、首に丸いレンズ状のお守りを下げる凡夫な園長が側に来た。

おっといかん。 本題を進めなきゃな。

 

 

「ひょっとして杏樹さん?」

 

 

へ? なんで疑問系なのミライ。

まさか記憶が? サーバルは憶えていたのに、ショックなんですがそれは。

 

 

「杏樹だよ。 なんで疑問系なんだ」

 

「す、すいません! 女の子になってしまったと聞いてはいましたが、容姿は分からなかったので!」

 

「ああ」

 

「こんな事もあるんですね。 サンドスターといい、セルリウムといい、謎は深まるばかりです」

 

「そうだな」

 

 

そうだった。 今の俺、女の子だったわ。

疑問系だったのは仕方ないな、うん。 見た目もまるで違うからな。 早く男の子に戻りたーい(白目)。

 

 

「で、凡夫の君は?」

 

「ぼ、凡夫……初対面で初めて言われたよ」

 

「あ、杏樹さん! 失礼ですよー!?」

 

「野郎には容赦せん」

 

「ひどい!?」

 

 

互いに戯れる。

いや、なんかね。 小動物とは違うんだけど、からかいたくなるんだよ。 優しそうだし絡みやすそうな顔だし。

顔、大事……あれ? なんでだろう。 涙が出てくるや。 早起きしたからかな?

 

 

「こちらの方は、お客さんです!」

 

「客ぅ? ミライよ、言わせて貰おう。 この非常時に、それもサバンナのど真ん中にいて記憶喪失で謎のお守りを持つヒトが普通の来客者じゃないと思うんですがそれは」

 

「そ、それは! まあ、そうですけど!」

 

「普通なのは顔だけにしろ」

 

「お、お願いです杏樹さん……僕の心が沈んで行くので、この辺で止めてください」

 

 

凡夫……園長が地面に膝をついたので、やめてあげよう。

 

 

「冗談だ」

 

「う、嘘だ!? 割と本気で言ってた様に聞こえましたよ!?」

 

「被害妄想は良くないぞ園長よ」

 

「園長?」「杏樹さん?」

 

 

あ、やべ。 また口が滑った。

いや。 大した情報じゃないから良いか。

だが誤魔化そう。

 

 

「アレだよアレ。 凡夫の癖に、ヒトやフレンズ、パークの皆に好かれそうだったからな。 パークの為に頑張ってくれているみたいだし。 もう、お客さんじゃなくて職員で良くね?」

 

「職員かぁ。 平和になった後も、パークの為に頑張るヒトになれたら良いな」

 

「きっとなれますよ! 管理センターやフレンズからも信用されていますし!」

 

 

何とか誤魔化せたか。

全く。 もっと気を付けろ俺。 今世でも へましてどうするよ。

 

 

「ところで杏樹さん。 記憶の事や、お守りの事は聞かれていたのですか?」

 

 

既にへまをしていたようだ。

杏樹ちゃーん。 またやってしまったねぇ!?

 

 

「あ、ああ。 合流するにあたってな……情報を知っておこうと思ってね」

 

「管理センターには詳細を伝えましたからね……杏樹さんや、他の方が知っていてもおかしくはないのですが」

 

 

ここでジト目で見てくるミライ。

ナニその目。

君もニホみたいに気になるモノをジッと観察する癖があるのかい?

 

 

「な、なんだいミライ?」

 

「いえ……今後の話をしましょうか」

 

 

良かった……話を変えてくれた。

気を遣われたとも取れるが。 今は合わせよう。

 

 

「サーバルさんから聞かれたと思いますが今、各地のフレンズさんが結界を解く為に頑張ってくれています」

 

「ああ。 結界が解けたら、今のメンバーだけで先行するんだな?」

 

「はい。 セーバルさんが……あ、セーバルさんの事は聞いてますか?」

 

 

聞いているというか。

コレもだが。 俺は知っている。 重要なキーキャラだからな。 なんならパークの運命に関わってくるだろうフレンズだ。

 

だが、またも素直に知ってるなんて言うのも怪しまれるか。 既に手遅れかもだが。

確か、管理センターから捕獲依頼が出ているハズ。 その話に乗ろう。

 

 

「少しなら知ってる。 管理センターから捕獲依頼が出ていたからな。 特別な輝きを持っているんだよな?」

 

「はい。 サーバルさんの特別を持っていて、ソレを城の中にいるセルリアンの親玉に渡そうとしているらしいのですが……セーバルさんは既に城の中に入ってしまいました。 このままでは、セルリアンがより活性化。 パーク中の輝きが奪われてしまうかも知れないんです」

 

 

つまりパークの危機なのだーってヤツだ。

本当はミライ班がセーバルを城内に入る前に無力化してしまえば良かったんだが。

無力化……セーバルを滅する。 特別な輝きを取る方法は、既に園長達は知り得ているハズ。

それはリウキウ地方に行った時だろうな。 神様……シーサーのフレンズから渡された特別な塩をサーバルは持っている。 それをセーバルに掛ける事で特別な輝きを取る……だったか?

 

だが、特別な輝きを取るという事は。

その輝きでセーバルは存在しているなら。

輝きが無くなれば、セーバルは消える。

 

それはサーバル含むフレンズは望まない。

冒険の中で、一緒に楽しい事をしたりして……敵としてではなく、友だちとして見るようになったから。

セーバルも自我が芽生えていった。 だからたどたどしいけど会話をしたりした。 城内で別れを悟ったからか、自分が消えても想いを残す為に日記を書いた……だったかな。

 

パークを救うなら、セーバルを滅しなければならない。

 

でも、セーバルは大切な友だちだ!

 

サーバルも仲間も、選択するのに苦しんだ筈だ。

 

とても、とても。

今も苦しんで、だけど見えない場所で戦い続けている。

 

サーバルの親友、カラカルはサーバルが選んだ結果は皆で背負うと言っていたか。

罪をサーバルひとりに背負わせない為の、友だちの言葉。

 

オイナリサマの部下として動いていたギンギツネも、セーバルを滅するべきだとは言わず、選択はサーバルに任す。

心のどこかで、園長やお守りの奇跡を信じたい様な事も言っていたかな。

 

園長達とは別に、アライさんと行動していたフェネックも実は苦しんでいた。

パークを救うなら滅するのが確実だ。 だけど皆の事も好きだから……だったか?

そんな悩むフェネックに、アライさんは何もおかしくないと言い、今はアライさんについてくるのだーとイケメンな事を言っていた気がする。

 

アライさん、ドジっ子な面はあるが時々素晴らしい言葉を放ち、稀にナイスな仕事をこなすからスゴい。

結界のセルリアンを倒す際、活躍していた気がするし。

 

漫画版にもアライさんは出ていたが、この事件中の子も同じ子だろうか。

 

 

「杏樹さん? あんじゅさーん?」

 

「はっ!?」

 

 

ミライの言葉で我に返った。

あかん。 アプリ版の記憶を呼び起こしていたら、ミライの話の大半を聞き逃してしまった。

 

 

「大丈夫ですか? 時々辛そうな顔をしたり、微笑んだりして」

 

「え? 俺、そんな顔してた?」

 

「してましたよ?」

 

「す、すまん。 悲しいような嬉しいような、昔の記憶を思い出していた」

 

 

メッチャ恥ずかしい。

しっかりしろよ杏樹ちゃん。 今は非常時。 大切な話の最中だったやん!

転生前の、けもフレ世界の記憶が どこまでアテに出来るかも分からないというのに。

昔は昔。 今は今だ。 記憶がそのまま未来になるとは限らない。

 

 

「記憶、ですか?」

 

「杏樹さん。 あなたも、僕と同じく記憶が無いとか?」

 

「あるわ! 凡夫と一緒にするなよ!」

 

「ひどい!?」

 

 

ミライは兎も角、園長がナニかほざいたので吠えといた。

前世も今世の記憶も曖昧なトコはあるけど、本土の記憶が無いとかパークに来た経緯が分からないなんて事はない。

 

あっ、そうだ(唐突)。

 

園長のお守りの話をしよう。 それもまた謎だ。 俺の考察も聞かせる事で、ナニか思い出すかも分からない。

 

 

「園長。 君が首から下げてる、ボロボロなレンズ状の お守りだが」

 

「と、突然ですね。 何か知ってますか?」

 

 

園長め。 ずっと敬語で話すつもりか?

なんか話辛いから、やめてもらおう。 そんなに年の差を感じないし。

 

 

「敬語はもう良いわ凡夫! 俺と園長の仲だろォ〜!?」

 

「なんで、ここで肩に手を回すんですっ!? ああっ!? 当たってます! 当たってますから!」

 

「当ててんのよ」

 

 

園長の肩に細くしなやかな、白く美しいすべすべな腕を回し。

胸元で大きくたわわに実るハリ、弾力のあるボインを背中に押し付けた。 柔らかさ故にへしゃげる。 オマケで耳元に息を吹きかけた。 ビクッとした。 面白い。

園長も男だ。 赤くしてアタフタしている。 でも突き放そうとしない。 優しい。

 

すると、見ていたミライも顔を赤くして声を上げる。 行動が遅いな。

それでも保安調査隊長かい? あ、関係ないですかそうですか。

 

 

「あ、杏樹さん!? 女の子の身体を手に入れたからって、そういうのは良くないと思いますっ!」

 

「園長が降参すれば、直ぐ止めるさ。 降参しないなら、もっと過激な事をして差し上げよう。 あ、まさかソレを望んで降参しないのか?」

 

「分かりま、じゃなくて分かった! 分かったから絡むのやめてー!」

 

 

チッ。 降参したか。 つまらん!

まあ、言った通り解放してやる。 顔は赤いままだが、話が進まないのでからかうのはやめといた。

 

 

「で、君のお守りの話を聞いて考えたんだ。 それは単にフレンズを強化するだけじゃないと」

 

「い、今の状況から普通に話すんだね」

 

 

話しますよ。 時間が惜しい。

なんだか俺が言うな状態だが、気にせず続ける。

 

ミライも気になるのか、ツッコミはいれてこない。 時としてお邪魔虫になるニホ達も、離れた所でサーバルとずっと戯れている。

パークの危機、セーバルの危機なのに、この余裕よ。 主人公格の余裕か。 そのまま続けたまえ。

 

 

「パークのモノにしてはボロボロのレンズの枠。 パークは開園からそんなに時間が経っていないのに、その痛み様。 自然に痛むには早すぎる気がする」

 

「確かに。 パークは開園から、特別年月は経っていません」

 

 

ミライが同意してくれた。

園長は、うーんと考える。 じゃあナニかと言いたげだ。 よかろう。 俺の考えを聞きたまえ。

 

 

「だが、それはパーク製のようだし。 そしてお守りの記憶も、なんかその他の記憶も抜けて突如としてサバンナに現れた園長。 君は」

 

 

核心的な事を言おう。

荒唐無稽、迷探偵アミメキリン風! だが設定的なのを知っている転生者の知識を喰らえ!

 

 

「お守りのチカラでタイムリープ、時間跳躍を繰り返している! 《ときわたり》をしているんだよ! 記憶喪失はその後遺症だ! 園長、君は《ウロボロスの輪》に囚われている!」

 

 

どーん!

人差し指を立てて、園長に言い放った!

 

ドヤッ。

自分でも滅茶苦茶言うてるが、おおよそ正解だろう。 設定では過去の自分にお守りを渡してたんだったか?

だが俺の妄想も当たるんだ。 そも、俺がいるこの世界は知っているようで知らないけもフレ世界だ。 最後に信じられるのは自分自身よ。

 

園長とミライは、ぽかーんとして。

そしてハッと我に返る。 ナニかい。 俺の真似かい?

 

 

「い、いや。 スゴい話で。 理解するのに時間が掛かったよ」

 

「杏樹さん。 そんな、SFみたいな事を」

 

「ナニを言う。 全く的を得ていないワケじゃないだろう。 それに、常識が通用しない島だぞココは」

 

「そ、そうですけど」

 

 

狼狽える お二方。

信じられないだろう。 それが普通だ。 だが普通は通用しない島だ。

 

ウロボロスの輪。 この辺の言い回しとか…………格好良くね?

 

ああ、シーサーとか神様のフレンズがいるワケだけれど。 ウロボロスのフレンズっていないかな?

 

でもなんだろう。

ウロボロスの発言をした時、一瞬ゾワッとした。 格好良い感じの言い方に、俺の気持ちが高ぶっただけかもだが…………。

 

なんだ。 何故か悪寒みたいな感覚が。

 

この話はこの辺にしよう。

資料の話をしなきゃな。

 

 

「まあ、今の話は参考までにしといてくれ。 次に俺から君らに、相談したい事があるんだが」

 

「唐突に唐突を重ねてくるね」

 

「また絡まれたいか?」

 

「い、いや! 話を続けて!」

 

 

園長がツッコミを入れたので、絡み返す。

なんか俺、DQNかナニかみたい。

いやいや、気にせず進もう。 こんな時くらいしか話せないかもだし。

 

 

「この話は内密にして欲しい。 出来るか?」

 

「……パークを危険に晒すような事ですか?」

 

 

ミライが不安そうに尋ねてきた。

パークを愛する者だ。 ナニか怖い話だと思って、警戒をしているんだな。

園長も、パークを冒険して輝きを見て、触れて来たからか。 表情が固くなる。

 

確かに怖い話ではあるけどな。 コレはパークどうこうというより、ヒトの問題だ。

職員によって意見は異なる。 それは仕方ない。 だが、ミライと園長は味方だと願う。

 

 

「ある意味では。 この島で行われている、或いは行おうとしている実験の話だ」

 

「実験?」

 

「ああ。 ヒトの業だな」

 

「…………内密にします」

 

「僕も。 裏で何が起きているのか、知りたい」

 

「ありがとう。 早速コレを見てくれ」

 

 

ミライ、園長。 感謝する。

俺は多少クシャクシャになった、紙束を渡す。 セルリウム実験の計画書だ。

 

ミライは受け取り、園長が覗き込む。

しばらくすると、みるみる気難しい顔に。 仕方ないね。 倫理観に反するだろうから。

 

 

「これは……!」「故人の再現?」

 

「動物研究所にあった資料だ。 仕事でその資料を回収したんだが、書いてある事を黙認出来なくてな。 意見を聞きたい」

 

「大切なヒトに、もういちど会いたい……その気持ちは分かります。 きっと、みんなが思う事です。 ですが」

 

「やはり?」

 

「はい。 セルリウムは、やはり危険です。 パークを危険に晒す事にも繋がります。 それに、再現出来たとしても……それは……ホンモノではありませんから」

 

「そうか」

 

 

ホンモノではないから、か。

それでも会いたいと願っただろうヒトを、俺は知っている。

そのヒトの悲しみを俺は無くした。 だけど他のヒトの事は分からない。

その結果が、この計画書だ。 俺って転生者なのに、ホント無力だよなぁ……チ●コを失っちゃうし。

 

 

「僕も同じ意見だよ。 セルリウムの事は良く分からない。 だけど、上手く言えないけれど……きっと、再現したヒトも誰も、本当の幸せにはなれない───不幸にはさせたくない」

 

 

園長は曖昧に、だけど強い口調で言う。

いつか見た、真っ直ぐな目だった。

 

園長は、やはり強いな。 心が。 俺とは大違いだ。

 

 

「そう言ってくれて良かったよ」

 

「何か行動を起こすんですか?」

 

「管理センターの、信用出来そうなヒトに相談する。 それ以上は、まだ考えてない」

 

「私、直談判をしても良いですよ! こんな事……きっと、間違ってますから」

 

 

ミライが決意した様に言ってくれた。

だが、それでは解決しないだろう。 敵の規模も分からない。

少なくとも、所長絡みなら弱い勢力ではない。

 

 

「ありがとう。 だけど、派手に動くのは止めた方が良い。 権力者相手に個人が楯突いても歯が立たない。 下手すれば消される」

 

「そ、それは……怖いです」

 

 

一転。 弱気になるミライ。 美人が様々な表情をしてくれるのは、見ていて面白いが真面目に話そう。

 

 

「猶予がどれくらい残されているのか分からない。 だが、味方を増やしたい」

 

「たくさんのフレンズさんに、お話を?」

 

「なら僕も協力出来そうだね」

 

 

園長が発言。

信頼されている園長なら、フレンズをたくさん仲間に引き込めそうだけど。

フレンズだけでは、ヒトの問題は解決出来ないな。

 

目には目を。 ヒトにはヒトを。

フレンズにも協力して貰うが、ヒトのチカラが必要不可欠だ。

 

暴力じゃダメだ。

研究所を皆で襲撃しても研究や実験は他所でも出来る。

 

権力。

そんなの敵側にばかりあって、コッチには無いだろう。

 

 

「それもだが、ヒトの味方も増やす」

 

「で、でもリスクがあるのでは?」

 

 

ミライが現実的な事を言った!

なんかスゲェと思う反面、悲しくなった。 ミライもヒトなのねと。

俺の知らないところで、人間関係に悩んでいたのかも知れないな。

 

 

「頭を使うのです、頭を」

 

 

アニメのコノハ博士やミミちゃん助手風に言う。

 

そうです。 群れのチカラを見せるのです。

 

 

「世間を味方につけるんだ。 情報を噂レベルに薄めて島中に、外界に拡散させてやる」

 

 

いきなり濃い味出すと、叩かれるから薄味でな。

 

ミーム汚染させるのだ。 みんみ!

ああ、色々違うか……。

 

ヒトの群れのチカラ。

けもの の様な、優れた身体能力は無い。

 

だが知恵がある。

そして情報社会の嫌な現代に沿った事がな。

 

ヒトの多くは、ムカついてクソッタレな心なき悪質タンパク質の塊連中だ。

弱者を攻撃して つまらない人生に価値観を見出して楽しんだり、心冷える頭わるわるぅで自己中な情けないヒトも多い。

そのくせ群れで情報を共有しようとし、だけど自分で考えず、互いに虐められないよう内心ビクビク怯えながら協調しようとする。

共通の悪と正義を作り、息が詰まる空気を作り、少数派を排除し、ムカつく高給取りや権力者を正義を言い訳に皆でワイワイ祭りだわっしょいと偽善行動として御輿を潰して大正義万歳と両手を上げて歓喜する。

 

俺もそうだ。 無数のクズのひとりだ。

何も努力しない。 考えない。

そうすれば楽だから。

皆に合わせる。 合わせないと潰される。

出る杭は打たれるから。

 

でも今回、俺は大なり小なり出る杭だ。 潰される危険性がある。 でも、リスクは回避したい。 努力も成る可くしたくない。

 

ならば。

 

無数のクズを、さも自分達が考えたかのように錯覚させつつ、パークに仕向けよう。

 

偽善行動を取る、群れになれば自身は罰せられないという無責任な愚民の濁流を、パークの暗部に向けられればどうだ?

 

この計画が、ジワジワとネット等を通じて伝染病の様に、ヒトの群れに伝播したら?

 

直ぐに頭を出せばモグラ叩きよろしく、権力者に潰されるが、少しずつ、バレない程度に頭を出せば?

 

それもひとつやふたつじゃない。

無数の穴から無数のモグラがでたら?

 

それが時間と共に早く出て来て、叩く相手を集団で攻撃し始めたら?

 

マスゴミ含むメディア操作は、情報社会では無駄に近いだろう。 ネットの海で発生した津波は対応しきれない。 したつもりでも、いくらでも抜け道はあるだろう。

物理的な、口コミで伝わる件もある。

 

気づいた頃には対応なんて、無理ゲーと化すだろう。

 

権力者は失墜、ゲームオーバーだ。

 

そう簡単に、上手くはいかないかも知れない。 だが、俺もクズだ。 上手く考えられない。

そのくせ、権力者を攻撃したい。 すると面白い。 何故かこんな、クズで無知な考えが出てきたワケだ。

 

 

「俺の考えは、管理センターのヒトに言っておく。 今はパークの事件を解決しようか」

 

 

唖然とした、ミライと園長。

俺の頭わるわる加減にモノを言えないらしい。 仕方ないね。 自覚はあるよ。

 

取り敢えず、セントラルのけもキャッスルを指差した。 結界が丁度、消えたのである。

 


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