パーク職員です。(完結)   作:ハヤモ

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駄文更新中。
ええ……な展開。 今までグダッた分のツケか……。


セルリアンの分際でハーレムとは生意気だ!

セントラル事件も、いよいよラスト。

セントラルの敷地ど真ん中。 聳え立つ城……今は魔王城な、けもキャッスルに突入だ!

 

内部の道にはレッドカーペット。

明かりはシャンデリアや蝋燭に見立てた電気照明が並ぶ。

普通に明かりが点いているから助かるが、逆にセルリアンに誘われてるようで怖い。

 

 

「というわけで。 俺を守ってくれ!」

 

 

サーバルとニホ、ジャイペンの背後に隠れながら進む俺。 ダサい。 ダサくて泣けてくる。

だってヒトだもの。

その点、園長やミライもそうだし。 他に仲間がいると安心するよねぇ。

だってヒト(ry。

 

 

「任せて! 自慢の爪で守ってあげる!」

 

「あんじゅは、私が守るよ!」

 

「しっしっしっ! あんじゅちゃんは か弱い女の子だもんな〜?」

 

 

おいこら最後のパイセン。 いつまでそのネタを使うんだ。 そろそろやめてくれ。 ガラスのハートが傷だらけだよ!

 

 

「ああ〜! ジャイアントペンギンさんと一緒に旅していただなんて、羨ましいですっ! ああ、ジャイアントペンギンさんはですね、3千万年以上前に───現生ペンギンさんでいちばん大きいコウテイペンギンさんより大きく、ヒトと同じくらいの大きさだったと───」

 

「ミライ。 緊張感を持って前進しよう?」

 

 

調査隊長にもツッコミたい。

ヨダレを振り撒き、ヘブン顔でセルリアンの根城でけも語りを響かせるな。

そもそも、先程のダークトークで見せた表情は何処へ消えた。 切り替え早くね?

 

 

「いやぁー! ミライさんは面白いヒトだなぁ!」

 

「ああ〜! 褒められました! 感激ですっ!」

 

「今のどの辺に感激した!?」

 

「あんじゅも面白いよー?」

 

「違うそうじゃない!」

 

 

俺が荒ぶると しっしっしっ、と笑うジャイペン。 からかうのが好きなのかしら。

可愛いから、結局許しちゃうんだけど。 その意味でも勝てそうにない。

 

 

「あんじゅさん。 この後、各地に向かってくれたフレンズが戻って来てくれる予定なんだ。 大丈夫だよ」

 

 

園長が微笑みながら言った。

安心させようとしてくれてると思うと、素直に嬉しい。

 

 

「そうか。 なら、来るまで待つのは?」

 

「本当は、そうするのが理想だろうけど……先に行ってしまったセーバルを止めなきゃいけないから」

 

 

セーバルの話になると、少し暗い表情になってしまった園長。 ミライも少し暗くなる。

反射する様にサーバルを見た。

表情は無言の背中越しには分からないが、少し猫背になっている気がする。

 

たぶん、もう手遅れの可能性を嫌でも感じているのだろう。

セーバルが結界に入って時間が経っているから。

でも、きっと大丈夫だと言いたい。 アプリ版ストーリー的には、奇跡が起きる。

でもそれをストレートには言えない。 下手な慰めも時に苦しめてしまう。

希望的観測に過ぎない発言も、傷付けるかも知れない。

不器用な俺だから上手く言えないが……何とか口を動かした。

 

 

「セーバルって子は会った事ないからさ、分からないけど………元はセルリアンかも知れないが………サーバルや皆の大切なともだちなんだろ。 大丈夫、信じよう。 その子もきっと、心の中でサーバルや皆を信じてると思うから」

 

 

なんかワケ分からない事を言ってしまった。

なんて無責任だ。 何の確証もなしにテキトーな事を言ってしまったよ。

 

だが。 そんな後悔している俺とは裏腹に、サーバルや皆から明るい返事がきた。

 

 

「うん。 モチロン! 私はセーバルを信じてる! そして ともだちとして、出来る事をするよ!」

 

「私、セーバルって子が気になる! だから、信じる! 信じて前に進んで、その先で ともだちになりたいな!」

 

「ともだちなら助けなくっちゃだな! 私も協力するよ?」

 

「そうだね。 僕は、僕にやれる事を全力でやるよ。 どんな強いセルリアンが待ち構えていようと、指揮を全力で執る! そして皆でセーバルを助けよう!」

 

「私も全力でサポートしますっ! 分析や戦局のモニタリング面、アドバイス頑張りますよ!」

 

 

互いを鼓舞するように声を出し、ポジティブな表情をしていく面々。

良かった……。 余計に悲しませる結果にならずに済んで。

 

 

「俺も……俺も、えーと、頑張るぞ!」

 

 

俺もナニが出来るか、出来る事を頑張ると言いたかったが……。

 

俺、ナニが出来るんだ?

ヤベェ。 俺、お荷物じゃん。

 

 

「あんじゅは皆を元気にしてくれるじゃん?」

 

 

パイセンのフォロー。

すまないパイセン。 ありがとう。

 

 

「はい! あんじゅさんは、皆を元気にしてくれます!」

 

「うん。 僕達の事を考えてくれてる、優しいヒトだ」

 

 

ミライと園長に褒められた。

なんか、うん。 恥ずかしい。

最終決戦直前に、俺はナニをしているのか。 いけない。 今に集中しないと。

 

 

「あ、あー。 ほら、あの大きな扉の先。 親玉がいそうだぞ! 気を引き締めよう!」

 

「そうだね。 よし、行こう」

 

「あそこは、けもキャッスルの1番奥の部屋。 玉座の間です!」

 

「セーバル、待っててね! 今行くから!」

 

「あんじゅを守って、気になる子を助ける!」

 

「私も、こう見えて戦えるんだよー?」

 

 

俺らは大きな扉を開く。

セーバルを助ける為に。 奇跡を起こす為に。

 

この先にはオイナリサマ、セーバル、そして誰の輝きを奪ったか分からんが、強い親玉セルリアンがいる。

だけど大丈夫だ。 園長と、お守りの奇跡、フレンズのチカラでハッピーエンドさ!

 

そう思っていた時期が、俺にもありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

扉を開ければ、距離を置いて低い階段。 その小山の上には豪華で立派な玉座。

その玉座には、真っ黒なヒトが足を組んで堂々と座っているときた。 王冠のような虹色の飾り、ツノ的なのが頭部にある。

このバーローで犯人的なヤツにデコレーションしたのが親玉セルリアンだろう。 記憶にある女王とは見た目が違うが、威圧感がある。

 

だけど。 ヒト影はソイツだけじゃなかったのだ。

 

 

「なっ!? フレンズ!?」

 

 

驚愕の声を上げてしまう。

周りにフレンズがいたのだから。

 

それに。

白に包まれたキツネのフレンズは……!

 

 

「オイナリサマまで!?」

 

 

親玉を囲むようにフレンズが。

なぜ敵であるセルリアンに寄り添ってる!?

 

研究所で出会ったマンモス、サーベルタイガーもいる。 セーバルも混ざっていた。

なんか、皆の目にセルリアンブルーのハートマークが浮かんでるのが気になるんですがそれは。

加えて親玉に抱き着くような姿勢を取り、ハーレムの図みたいなんだけど……。

 

なんでこうなった。

 

 

「みゃあっ!? フレンズ!? なんでここにいるの!?」

 

「マンモスにサーベルだ!」

 

「どこからどう見ても、あの子たちだね」

 

 

サーバルが驚く。

ニホとジャイペンも、知り合いのマンモスとサーベルに驚いている。

 

 

「ミライさん!」

 

「今、解析しました……セルリアンじゃありません。 フレンズです」

 

 

それにはツッコミを入れず、園長がミライに解析を頼み、結果を言う。 やっぱフレンズらしい。

なんて事だ。 いや、どう言う事なの……。

 

緑色をしたサーバルそっくりなセーバルもいるが、それよりもフレンズの存在がショッキングだよ。

 

 

「驚くのも 無理は ない」

 

 

ここで親玉が言葉を発する。

どこか、俺が男の時の声とそっくりだ。

 

女王も喋ったから、そこに驚きはしない。

 

それよりこの声。

コイツ……俺の輝きを……ムスコを奪ったセルリアンか!?

 

 

「この声、杏樹さんの!?」

 

「考えたくないが、俺の輝きから進化したセルリアンだ!」

 

 

まさかの事態である。

いや、逆に考えよう。 俺みたいなザコな輝きで踏ん反り返っているのだと。

ならば、ヤツは俺のチ●コ並みにザコだ。 園長らには容赦なく倒して貰おう。 周囲にいるフレンズを巻き込まないように。

 

アレ? なんでだろう。 涙が。

早起きしたからかな?

 

 

「パークの未来は 輝きは やがて消える。 しかし 我々 セルリアンなら 失った輝き を 保存し 再現 出来る 永遠に」

 

 

カコ……いや、女王が言っていた様な事を言い始める俺……じゃなくて、セルリアン。

 

セルリアンは、女王の記憶を参考にするらば、都合の良い情報のみを得て行動する。

 

パークの輝きが消えるのは悲しい。 だから永続させたい。 それは、心の何処かで願っていた事。

輝きを再現しようとするセルリアンは、そんな俺の想いや記憶を都合良く解釈したり、その部分のみを切り取って行動しているに過ぎない。

本当に俺を丸パクリしたなら、パークの皆を巻き込む事は望まない筈だからだ。

 

だから、コイツは……ニセモノだ。

セルリアンの行動原理が輝きをコピーしようとする事だとしても。 捻くれた、臆病な愛まではコピー出来なかった。

 

ご退場願おう。

 

 

「耳を傾ける必要はない」

 

「え?」「杏樹さん?」

 

「園長、ミライ。 コイツは多分弱い。 さっさと倒しておしまいなさい!」

 

 

謎の状況から平和的な解決法を模索しているだろう、ふたりに早く倒すよう促す。

童貞短小包茎早漏チ●コの擬人化とかいう、卑猥な存在を早く消したいんです。

 

だがしかし。

そんな俺の思考を知ってか知らずか、ヤツはとんでもない事を言い始める。

 

 

「王は 戦わぬ」

 

 

それが合図かの様に、周囲にいたフレンズがゾロゾロと前に。

 

まさか敵対する系!?

 

オイナリサマ、マンモス、サーベル。

セーバルも来た。 相変わらず漫画みたいに目をハートにして、ふらふらとした足取り。 操られているよう。

 

計4にん。 コッチのフレンズは3。

1人ぶん不利だ。

 

いや、それだけなら良かった。

園長の指揮があれば、それくらいのハンデ、なんて事はないだろうから。

問題は白いキツネのフレンズ……オイナリサマだ。

 

神サマ……正確には使者だったか?

普通のフレンズではない。 別格だ。

事件中では結界を張っていたりと、特殊な事をやっていた。 物理的な攻撃ではない方法を取られる危険性がある。

よくない事態だ。 そもそもフレンズとは戦いたくない。

 

 

「自分は戦わず、フレンズを盾にする気か!?」

 

 

とか抗議の声を上げてみるが、思えば俺もそうだった。 さすが俺。

 

 

「なんて事を……!」

 

 

ミライが悲痛な声を上げる。

すまないミライ! それが俺だ!

 

だけどミライ。 園長もだが、ヒトの事言えないからね? ポケ●ンみたいにフレンズを戦わせてきたでしょ?

ああ。 指揮をしていた分、俺より遥かにマシか。 やっぱ俺って悪いヒト。

 

 

「ど、どうして……みんな目を覚まして!」

 

「ヒドいよ! そんなの王さまだなんて認めない!」

 

「フレンズを友だちじゃなく、道具のように扱う……パイセンチョップで成敗してくれよう」

 

 

此方側のフレンズも吼えた!

パイセンは静かに闘志を燃やしている。 強そう。

 

 

「さーば、る」

 

「ッ!? セーバル!」

 

「セーバルさん!」

 

 

突如セーバルが声を出した!

辛うじて自由意志が残っているのか。 掠れた、弱々しい声だ。

だが、聞こえる。 皆の反応からして、同じようだ。

 

耳の良いセーバルは、直ぐに反応。

彼女がハートの目で、だけど必死に何かを伝えようとしているのを聞く!

 

 

「セルリ、あんッは……」

 

 

なんだ? この状態を上手く乗り越えるヒントか!?

 

 

「他の、ふれんず……イッてたよ」

 

 

エロく聞こえるが、聞き間違いだなうん!

 

 

「言ってた? 何を!?」

 

「ナニを……とっても」

 

 

ナニってトコ、おうむ返しだろう、うん!

俺の心が汚れてるからエロく聞こえるだけ!

 

 

「とっても?」

 

「てくにしゃん、らしい」

 

「ファッ!?」

 

 

え、ナニその情報!?

テクニシャン!?

エッチな響きにしか聞こえなかったよ!?

 

アレか!?

とても指揮能力が高いとか、なんかそんなニュアンスだろ!? そうだと言え!

 

しかし、力尽きたのか。

 

 

「キモチ……よかった♡」

 

 

ハートマークで、バタンと倒れるセーバル!

 

 

「セーバルウウウゥ!?」

 

「よくも! よくもセーバルを!」

 

「友だちになりたかったのに! セルリアンめ、許さないッ!」

 

「もっと言うとこ、ねーのかよ!?」

 

 

ここで困惑ではなく、セーバルの最期的なのを見て怒る園長とサーバル、あとニホ。

たぶん、セーバルの身体は消えてないから大丈夫だろうけど……。

 

ねぇ。 ツッコんでも良いのよ? 変な意味じゃなくてね?

 

対してミライは妄想したのか顔が赤い。

パイセンは闘志が四散してしまった。

 

 

「あー、うん。 あんじゅ。 セルリアンを倒そうか。 清い心で」

 

「意味が分かるパイセンは清くない系?」

 

「イヤだなぁ。 私はいつだって清いよ?」

 

 

嘘だ!!

つかみどころのない時が多いじゃん。 ナニ考えてるのか分からない。 実はエロ知識あるんじゃねーですかパイセン?

 

 

「だけど、フレンズを退けないと……皆、正気に戻って!」

 

「白いキツネのフレンズって、ギンギツネの言っていたオイナリサマだよね? とても強そうなのに、どうして……!」

 

 

園長とサーバルの問いに、無言の面々。

ハートの目を、ただコチラに向けるばかり。 ちょっと怖い。

 

代わりに声を出したのは、セルリアン。

感情のこもってない、淡々とした口調で言った。

 

 

「ヒトの身体を得た 獣を 雌堕ちさせ 侍らしたのだ」

 

 

予想した、最悪の事態だった。

 

 

「あ"あ"!? ●ねやセルリアンが」

 

「杏樹さんが、思わず過激な事を!?」

 

 

ミライよ、ヤツは俺以上にヤバい事を言いやがりましたけど?

 

畜生! とんでもない事を言いやがって!

もう確定じゃないですかねヤダー!

 

俺は怒りのままヤツに指をさして、怒声をあげる!

 

コレは言っておかねばならない!

俺からチ●コを奪い、フレンズを捕まえたかなんかして、それでヒトサマのチ●コピー品を使用し、あっはんうふふな事を俺たちが来るまで城で(自主規制)しまくってただと!?

 

こちとら暗部の話とか仕事で苦労してるってのに!

 

断じて許し難い!!

ゆ"る"さ"ん"!

 

 

「そもそもだ! 自分で言うのもなんだが、俺のチ●コは童貞で短小包茎早漏カ●パスだぞ! セッ●ス経験ゼロで、そんなんで美少女揃いなフレンズを満足させた挙句に言いなりにさせられるかってんだ!!」

 

「杏樹さーん!? お願いですから言葉を選んで下さーい!?」

 

 

ミライが茹でタコの様に真っ赤になりながらも、俺に物申してきた。

だが止めてくれるな。 俺に出来ず、セルリアンに出来るとか認めたくないのだよ。

 

 

「本能 の ウエートが 高い フレンズは 楽しめる」

 

「喋んなクズッ!」

 

 

親玉がほざく。

なんて羨ましい! モノホンよりニセモノが先に卒業とか許せねぇ!

 

変態セルリアンめ。 のけもの にしてやる!

 

 

「フレンズの輝き は良い。 パークの未来 手に入る」

 

「あの助平セルリアンのタマ取ったれ! タマあるのか知らんけど!」

 

「そうだけど、目の前のフレンズを何とかしないと!」

 

 

園長がもっともな事を言った。

そうだ。 卑猥物を消滅させるにも、目の前のフレンズを何とかしないと!

 

しかし、どうして良いか分からない!

セーバルはハート目で倒れたまま。

サーバル、ニホ、ジャイペンは目の前のフレンズと睨み合い……いや、相手はハート目だけど。

 

園長は突破口を模索中。

 

ミライは頭から湯気を出して倒れている。

 

うん。 ミライは俺が倒してしまったらしい。 変な意味ではない。 ヤる気は無かったと供述しており。

 

 

「ヤれ」

 

 

だが変態はヤる気か!

ごまごましていると、変態がとうとう指示らしき言葉を発した!

さすが俺のコピー! 待てない早漏!

 

刹那。

 

 

「避けてッ!」

 

「ッ!」

 

 

園長が叫び、言い終わるより早くサーバルが後方に大きく飛び跳ねた。

 

瞬間。

サーバルのいた場所に、白き一閃。

 

 

「な、なんだ!? 何が起きた!?」

 

 

戦闘経験皆無な俺は、狼狽えるしかない。

 

 

「ニホ、ジャイアントも下がって!」

 

 

園長が、俺のツレにも声を掛けた。

ニホとパイセン、遅れて反応。 急いで後方に下がり、腕を構える。

 

 

「サーベルを構えてる……いつの間に!?」

 

 

何が起きたのか。 常人ではおおよそ理解に苦しむ状況。

 

しかし、相手を見れば予想がついた。

 

サーベルタイガーが、帯刀しているサーベルで居合斬り(立合斬りと言った方が良いのか?)を解き放ったのだ。

その速度は目で追えるモノじゃなかった。 だけど、園長は察した。 スゴい。

サーベルもスゴかった。 たぶん園長の指示もあったが自分でも察したのだろう。

ネコ科のフレンズがする人外レベルに近いジャンプ……アニメで見たジャンプをして、攻撃を避けた。 さすがフレンズ。 とんでもない身体、察知能力だ。

 

園長も指揮を執り続けたからか、天性なのか。 はたまたお守りのチカラか。 的確な指示を出せているように感じる。

 

うん。 任せよう。

俺、役に立てそうにない!

 

 

「そ、そんな……サーベル! マンモスも! 私だよ! ニホンオオカミだよ! 分からないの!?」

 

 

ニホが悲痛の鳴声を上げた。

だけど、サーベルもマンモスも無言。 ハート目を向けてくるばかり。 怖い。

 

研究所で友だち だったろうからな。 その友だちが攻撃してきた事実がショックらしい。

 

アプリ版でいうと、セーバルが女王からの指示なのか、サーバルを攻撃したシーンってとこか。

その時はオイナリサマが簡易な結界を張って、サーバルを守った。

しかし、チカラがソレで弱まったのか。 女王を抑えていた結界が破れてしまい、セーバルが女王の下へと言ってしまうのだ。

まあ、その。 今回は俺の影響でシナリオが違うが。

 

俺は友だちが少ない。 ニホの気持ちは分からないが……カコに罵倒されたら悲しくなるだろう。

そして快感になる変態化しちゃいそう。

 

 

「研究所でふたりの ジャパリまんを盗み食いしたけどさぁ、それは ナイナイで仲直りしたじゃん?」

 

「パイセン、そんな事してたのかよ!?」

 

 

しょうもない話を聞いてしまった。 ロッジでのサーバルちゃんかよ。

 

 

「フレンズを何とかしなきゃダメかな……!」

 

「園長よ。 心苦しいだろうが、戦わないとダメかもな」

 

 

園長がフレンズを相手にするのを躊躇う。

四神等の神様や妖怪系。 キングコブラ、シロナガスクジラ等の格上フレンズとドンパチする事はあったかも知れない。

だけどそれらは、格闘試合的な形式だったハズ。 お互い本気で傷付けるモノではない。

 

ミライが気絶してなければ、ナニか良いアイディアが生まれたかも知れないが。

 

 

「そだねー。 セーバルが倒れたから、相手はオイナリサマ、サーベル、マンモスの さんにんだねぇ。 親玉は、まあ何とでもなるんじゃないかな?」

 

「まぁ、うん。 たぶんザコだけど、言われるとなんか落ち込むんでヤメテ」

 

「アレは杏樹ちゃんじゃないから、気にする事ないだろー?」

 

「……パイセン」

 

 

こんな状況なのに、励ましてくれる。

パイセンは先輩でジャイペンだな。 うん、自分でもナニ言ってるか分かんね。

 

 

「アレは杏樹君だしな!」

 

「シャーラップ! あの変態を俺とは認めねぇ!」

 

 

やはり、パイセンは先輩でジャイペンだった! 自分でもナニ(ry。

 

 

「過去の自分と向かい合うチャンスと思えば良いじゃん?」

 

 

いやナニ言うてんの。

あんなの俺じゃ……ああ。 フレンズとヤりたい気持ちはあったわ確かに。

 

認めたくないものだな、若さ故の過ちは。

 

 

「あのセルリアンは、あんじゅの よくぼう を再現してるんだと思う。 でも大丈夫だよ!」

 

「ニホ、励ましてくれるのか?」

 

「うん! 綺麗なあんじゅは、私が守る!」

 

「悪かったな、今まで汚い杏樹君でッ!?」

 

 

寓話じゃないんだぞ。

綺麗な杏樹ちゃんは返品します。 なので汚い杏樹君(主に下半身の棒)を返して下さい。

クーリングオフ!

 

 

「気を引き締めて! 来るよ!」

 

 

園長が喝を入れた。

慌てて敵側を見れば、マンモスが片足を上げて───。

 

 

「サーバル飛んで! 他は逃げて!」

 

 

園長の声に弾かれ、サーバルはその場で大ジャンプ。

ニホとジャイペンは更に後ろへ下がる。

 

そのタイミングで、マンモスが上げた足を勢い良く下ろした。

思いっきりのストンピング。

刹那。

 

 

ズドォンッ!!

 

 

「うおおおおお!?」「キャウンッ!?」「すごいねぇ!」

 

 

地震かと思う程の、城全体を揺るがす衝撃波。

 

まともに立ってられず、よろける俺とジャイペン。 転ぶニホ。

 

そんな中でも、敵を注視。

マンモスの足を中心に、床が陥没してクレーターが出来上がっている。

天井を見上げれば、シャンデリアは落ちるんじゃないかと思う程に激しく揺れ動き、パラパラと埃が降ってくる。

 

 

「やべぇよ。 フレンズやべぇよ」

 

 

再び恐れ慄く。

実際の、絶滅した けもの のマンモスが こんなにやべぇヤツかは知らない。

だがフレンズだ。 それも絶滅種の。

実際どうこう以上にヒトの想像、妄想が具現化している部分がある。

 

マンモスは巨像、強い的な想像が反映されているのだろうな。

 

虚像だ。 しかし危険だ。

もし全てのフレンズがヒトと敵対したら……考えたくない。

 

 

「所内での測定でも見たけどさ。 いつ見てもスゴいなー!」

 

「本当にスゴいね! 私が勝ったのは素早さくらいだし!」

 

 

フレンズは皆、スゴいさ。 そこに絶対の優越はない。 皆違って、皆良い。 ヒトと違い、良い子が多いし。

だから攻撃はしたくない。 しては、ならない。 優しい世界だから……。

 

いや。 違うな。

 

その理屈は、偏見は、時に狂信な態度は身を滅ぼす。 けものフレンズの世界なんだからこうあるべきだ、というのは そろそろ意識しなくて良い。 してたらまた喰われそう。

 

 

「埒を跨げ」

 

 

園長に、俺に言い聞かせるように呟く。

 

 

「へ?」

 

「へ、じゃない園長。 時には心を鬼にしないと いつか俺みたいに喰われるぞ。 戦うのが嫌なのは俺も他もそうだ。 だけどやるんだ。 せめて仲間が来るまで時間を稼げ」

 

 

残酷で、だけど現実を見る。

 

 

「パークを変態の好きにさせて良いのか?」

 

「そんなワケない!」

 

 

変態は否定しないのね。

いや、俺も否定出来ないけど。

 

 

「ナニ、大丈夫だ。 俺たちは 独りじゃないから。 特に園長は、パークで友だちが けものフレンズが、たくさん出来ただろうし」

 

 

とか格好つけた言葉を言うも、俺はナニもしないんだけど。 ヒトに任せる酷いヤツ。

でも残酷を言うつもりが、優しい言葉をまた探して言ってしまうんだよな。

 

 

「園長は強い。 勝つよ。 勝って、セーバルもパークも救う」

 

 

ハート目のオイナリサマが、忍者みたいに片手を前に構える。 忍法かな?

 

何にせよ、無力化しなくては。

その辺は園長に任せる。 イレギュラーなシナリオだが、苦難を乗り越えてきただろう彼だ。

 

パークの英雄。

見せてくれ。 君のチカラ、お守りのチカラを。


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