パーク職員です。(完結)   作:ハヤモ

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不定期更新中。 リアル事情で、暫く更新出来なくなる可能性。

駄文。 呆気なく終わりへ向かうようで、謎だらけ。


ハーレム潰しと、ウロボロス。

対峙する目がハートのフレンズ。

足を組み、傍観する変態セルリアン。

足下に倒れたままの、ハート目セーバル。

ぐるぐる目で気絶中のミライ。

 

ツッコミどころは あるが、戦闘状態だ。 卑猥物を消す意味でも、パークを平和にする意味でも、安全を確保する意味でも早く終わってくれ。 マジで。

 

 

「フレンズと戦いたくはない! でも、みんなやるよ!」

 

「うみゃー! 親玉を倒せば、きっとみんな正気に戻る! 信じて戦うよ!」

 

「おう! ニホ、ジャイペン! 園長の指示に従うんだ!」

 

「わかった!」「おっけおっけー!」

 

 

気合いを入れる面々。

へ? 俺はナニするかって?

 

そうだなぁ……ミライみたいにサポートやアドバイスが出来れば良いのだが。

けもの に対する知識は無いしなぁ。 戦闘面でもアドバイス出来る事はない。

 

せめて応援しよ。 奇跡の島なんで、そういう事でもフレンズを強くするかも知れないし。

 

 

「頑張れみんな! 俺はナニも無いしナニも出来ないが、応援するから!」

 

「ありがとう あんじゅ! 雪山で助けてくれた事! 奈々ちゃんの歓迎会に来てくれた事! 応援してくれる感謝を込めて戦うよー!」

 

 

サーバルの振り返っての笑顔が眩しい!

サーバルはやっぱ……聖獣やな!

 

 

「うん! あんじゅの事は、私が守るよ!」

 

 

ニホ。 あまり俺に拘らなくて良いんやで?

嬉しいけどね。

 

 

「私もだけど、PPPも応援してくれよー?」

 

 

パイセン、後輩達の事を想っている。

掴みどころがなくて、ナニ考えてるのか分からんのが怖いが、良いヤツに変わりないのだ。 フレンズだし。

 

 

「良し! 今度はコッチの番だよ!」

 

 

園長が指示の声を上げていく!

 

 

「サーバル! フレンズを飛び越えて、親玉を直接叩いて!」

 

「わかったよ!」

 

「ファッ!?」

 

 

サーバル、フレンズと戦闘を避けるように大きく跳躍!

効果発動! ネコの大ジャンプ!

いきなりダイレクトアタックを指示する園長!

 

ズルくね?

園長なのに、そんな事しちゃうん?

 

いや。 良いのか。

今回、正々堂々戦わなきゃいけない理由ってないもんな。 ルール無用のマジ戦だ。

今まで相手にして来たのは駆除しなきゃならないセルリアンだったろうし、フレンズ同士でのチカラ比べで正々堂々戦わなきゃいけなかったのだろう。

だけど今回は、ハッキリ親玉がいる。 その配下に置かれているフレンズに罪は無い。 戦わなくて済むなら、その方が良い。

それに親玉を倒せば正気に戻るかも知れない。 ならそのタマ潰すよね。 今、タマがあったらタマヒュンで内股になってたわ。 なんなら棒すら無い。 毛も無い。 スジがあるだけで綺麗なツルツルだ。

股間が寂しい。 なんならスースーするまである。

 

 

「ニギャッ!?」

 

 

サーバル、見事な大ジャンプをした直後、空中で見えない壁に当たり跳ね返ってきてしまった。

 

ドジもここまで来たか……いや、冗談だ。

オイナリサマの結界だ。

 

 

「な、なんだ!?」

 

 

園長が驚く。

そりゃ、ナニも無いハズの空中に壁があるとは思うまい。

冒険の過程で数多の奇跡を目撃している園長だろうが、結界の経験は無いか。

 

 

「結界だな。 オイナリサマを怯ませれば消えると思う」

 

「そうなんだ? ありがとう」

 

「参考程度に留めてくれ。 本当かは分からないから」

 

「ううん。 目標が出来た!」

 

 

俺がアプリ版ストーリーの記憶を参考に、アドバイスモドキを送ると礼を言われた。 屈託のない笑顔で。

 

恥ずかしいな。 俺ナニもしてないし。

ヒトによってはドキッとくるとこ。 そして雌堕ちEND。

うん。 そんなのお断りだ。 男に戻りたい。

 

 

「オイナリサマ、みんな。 ごめんね」

 

 

園長が謝り。 そして直ぐに指示の声を飛ばしていく!

 

 

「サーバル、サーベルタイガーを足止め! ジャイアントはマンモスを! ニホンオオカミはオイナリサマに体当たり!」

 

「分かったよ!」「おっけー!」「いっくよー!」

 

 

滑らかに、個々に簡単に言う。

それでいて、要領を得て それぞれ動くフレンズ。

 

これも園長、お守りの為せるチカラか。 ジャイペンとニホとは初対面なのに。 俺には無理だな。

先ずサーバルとサーベルとセーバルがこの場にいる時点で、言い間違える自信がある。 名前が似てるんだよ。 ひと文字しか違う。

 

 

「うみゃあ!」

 

 

サーバル、サーベルにジャンプして飛び付いた! ハート目サーベルは、上空からの攻撃に対応出来ず押し倒される! 百合かな?

 

アニメ冒頭のシーンみたいだ。 状況は平和的じゃないが。

 

 

「すもうっていうんだよね、こういうッ……の!」

 

 

ジャイペンは体当たりするように、ハート目マンモスに抱き着く。

やっぱ百合じゃないか……冗談だ。

 

コレはアニメ終盤、大型セルリアンに抱きついていたフレンズを思い出すなぁ。

やっていたのはコツメカワウソとアライさんだったかな。 PPPたちペンギンじゃなかったと思う。 PPPはペチペチペチ叩いていたな。

略してPPP。 いや、冗談だ。 パイセンにバレたらチョップされそう。

 

それと大きさは互いにフレンズサイズ。

元けものサイズを考えると、ジャイアント同士だが……。

 

 

「うおおっ!?」

 

「ジャイアントッ!?」

 

 

ジャイペン、マンモスに軽く放り投げられて戻って来てしまった。

 

 

「パワーに差があるか……!」

 

 

そりゃそうか!

デカいつっても、元けものを考えれば、体格差もありパワーが違う!

 

元ジャイペンは大凡ヒトサイズ……!

対して元マンモスはゾウサイズ!

 

両者フレンズ化したのもあり、ヒトのパワーを軽々と越えているのに違いはないだろう。

サーバルが漫画版で大岩を持ち上げたように。

 

だが、ジャイペンとマンモスを比べてしまうと……差が出てしまう。 単純にパワー負けしたのだ。

海といった水辺なら、ジャイペンが有利だったかも知れない。 だが、ここは城内……陸地。 完全に陸地暮らしだっただろうマンモスが有利か。

 

 

「いてて……チカラが湧いてくるから勝てるかも〜って思ったけど。 やっぱマンモスは強いなぁ」

 

 

ジャイペンが、腰をさすりながらボヤく。

 

チカラが湧いてくる。

園長のお守りのチカラだろうな。

だが、それでも敵わないか。 マンモス強い。

 

 

「大丈夫!?」

 

「大の大丈夫! ちょっとビックリしたけどね!」

 

 

マンモスに勝てる子っているのかね。

もっとデカいシロナガスクジラとか?

 

 

「うみゃあ!?」

 

「サーバルッ!?」

 

 

今度はサーバルの悲鳴が。

ジャイペン同様、放り投げられて戻ってきた。

 

しかし、そこはネコの子。

空中で体勢を立て直し、綺麗に着地。

スゲェ。 曲芸を見た気分。 ヒトの姿だからかも知れない。

 

 

「サーベルタイガーって子! チカラが強いよ!」

 

「サーベルタイガーは、動きが そんなに速くなかったと、なんかで見聞きした気がする。 その代わりパワーがあるのだろう」

 

 

俺が曖昧な、間違いかも知れない知識を皆に言う。

 

いや、ほら。

サーベルの攻撃、目に見えなかったし。

 

絶滅種なのもあるからね……研究者や見解、予想が変わっていく事もあるだろうし……。

 

後武器の件は今、口に出さないでおく。

サーベルタイガーの名前の由来となっている、大きなサーベル状の牙。

見た目は凶悪だが、実は強度がなかったとか。 その為、自衛目的や狩でイキナリは使用しない。 身体のパワーで自衛行動、動きが比較的鈍重な大型動物を抑え、トドメを刺す時に使われたのではという話を見聞きしたような……?

 

それを目の前の、フレンズ化した彼女は初撃で容赦なく使用した。 自衛ではない。 トドメを刺しに来る……つまり、フレンズでありながらフレンズを傷付けにきている。

フレンズはヒトの妄想が具現化している部分もあるから事実と違うかもだが……こんなの、サーバル達に言ったら、それこそ傷付けそうだ。 ただでさえ相手にするだけでもツライさんだろうに。

 

俺も内心ツライさん。 研究所で会った時の会話もあるからね……。

 

だが、抑えてくれた時間。

それは無駄ではない。

 

 

「ごめんッ!」

 

 

うーがおー!

という感じで、だけど謝りながら突っ込んだニホ。

 

ふたりが抑えてくれた僅かな時間。

その時間で無防備なオイナリサマに体当たり。

 

オイナリサマは、自身には結界を張ってなかったのか。 そのままダイレクトアタックをモロに受け、後方に吹き飛んで行く。 漫画みたいに。

 

やべぇ。 普通のヒトの体当たりなら、あんなに吹きとばねぇよ。

改めてフレンズのパワーがやべぇと思う。

それとオイナリサマ……こんな目になってしまうなんて。 他の子もだけど、正気に戻った時のケアが大変そう。

 

 

「サーバルッ!」

 

「わかった!」

 

 

すかさず園長が声を出す。

さすがのサーバルも、何をすれば良いのか分かる。 元気に、短い返事。

 

 

「今度こそ!」

 

 

もういちど大ジャンプ!

決して低くない天井、その ぶつかるギリギリまで飛び上がる!

そして、親玉の直上目掛けて落下!

 

 

「セーバルの仇ッ!」

 

 

いや。 セーバル大丈夫だと思うよ。

ハート目でビクビク痙攣しているだけだと思うよ。 ナニされたかは知らないし、知りたくないが。

 

親玉。 サーバルを目で追いかけはする。

しかし避ける事もなく、そのまま腕の白く輝く光を受け止めた。 甘んじて。

 

 

「うみゃあ!」

 

 

気合いのひと振り。

一閃は黒い身体を引き裂いて、直ぐに虹色の光となって四散する。

悲鳴もナニもない。 親玉にしては、あまりに呆気なく、一瞬で終わった。 セルハーモニーも過剰進化も無い。 拍子抜けである。

 

 

「た、倒した?」

 

「たぶん」

 

 

園長が疑問の声を上げたから、俺は曖昧に肯定した。

アレが俺なら……そんなもんだろうと。

他力本願。 そんでもって、自身はナニもしない。 直ぐに諦めて、直ぐにやられる弱い存在だ。 その点、他のセルリアンより弱くても何ら不思議じゃない。

 

 

「偽りの王だ。 カコなら未だしも、そんな器じゃないんだよ」

 

 

それは相手に対して、何より自分自身に対しての言葉。

 

 

「杏樹さん?」

 

「気にするな。 独り言さ」

 

 

園長が心配そうに声を掛けてくれる。 優しい。 でも、変に慰められると余計惨めな気持ちになるから……冷たくあしらう。

才能なんて無い。 俺には、何も。

それを理解してか否か。 ヤツは他者を利用こそすれ、悪足掻きなんてしなかった。

その点、俺はヤツ以下だな。 認めたくない未来が来そうな事に、子どもの様にワガママを言いジタバタしている。

 

でも見習う気はない。

改善する気もない。

 

セルリアンだからじゃない。 俺だから。

俺は俺なりに、ワガママを振りまく。

 

 

「よーし! 取り敢えずハーレムは潰した! 後は囚われのフレンズが正気に戻れば万事良し!」

 

「急に晴れ晴れしたね!?」

 

 

当たり前だよなぁ?

 

ハーレム潰し。

fooo! 気持ちいぃ!

 

あれ。 涙が出るや。 早起きしたからかな?

 

そういえば、俺の身体は女の子のままだ。

やはりか、輝きを奪ったセルリアンを倒しても元に戻る保証は無いらしい。

悲しいなぁ……でも、今は今を何とかしよう。

 

 

「俺の事は良い。 それより、フレンズの容態は?」

 

「気を失ってるみたい。 目を覚ますと良いんだけど」

 

 

園長とサーバル、ジャイペンとニホは、今まで対峙していたフレンズ……セーバル、サーベルタイガー、マンモス、オイナリサマ……あと、気絶しっぱなしのミライの側に近寄って顔を覗き込む。

 

俺も釣られて見やれば、安らかに目を閉じていた。

皆からは規則正しい呼吸音が聞こえるので、大丈夫だろう。 医者じゃないから、詳しく分からんが。

 

 

「いちおう、病院に運ぼう。 最寄りはセントラル病院だが……封鎖しているか」

 

「だからといって、このままにしておくのは、心配だよ」

 

「だな。 小動物に聞いてみる」

 

「小動物?」

 

「管理センターの、背の低い女性管理職員だよ。 今、俺のオペレーターをやってくれている」

 

 

無線を弄り、小動物を呼び出す。

気を失ったフレンズを、セントラル病院に送って大丈夫か聞いてみよう。

 

それがダメなら、どうすれば良いか指示を仰ぐ。 俺の今後の行動もある。

 

 

「小動物聞こえるか?」

 

 

無線に呼び掛けるも、ノイズが返ってくる。

はて。 どうしたのか。 前までなら、直ぐに返ってきたのに。

 

 

「おーい」

 

『はいはい、お待たせしました』

 

 

あ、良かった。 小動物の声が来た。

少し心配したぞ。 俺の独断的な行動で、変なのに巻き込まれたかと。

 

 

『アナタの無線記録やら行動記録やらの対応に追われてましてね』

 

 

あ……。

変な事に巻き込まれてる様なモンだね。

 

大変申し訳ない。

でも、対応って事は期待して良い系?

 

 

「すまん。 でも《何とか》なりそう?」

 

『何とかしましたよ。 ですが、あまり無茶しないで欲しいですね』

 

 

何とか、してくれたらしい。

さすが小動物。 頼りになる。

でも、謝ろう。 迷惑掛けてるし。

 

 

「ウッス。 マジ、サーセンした」

 

『反省の色ゼロですね』

 

 

そんな事ないよー。

でも、これからもどうぞ よろしくね!

 

 

『それで、ご用件は?』

 

「セントラルの結界が無くなって、ミライ班が中の親玉を倒した」

 

『おお、それは朗報です。 ですが、ミライ班からの連絡が無いのですが……ミライ隊長に報告するよう、言ってくれませんか?』

 

「あー、戦闘中に気絶してね。 今すぐは難しい」

 

 

顛末はボカして報告。

いや、だって……ねぇ?

 

俺の下ネタで気絶しましたなんて言えない。 最悪、そんなアホな理由で俺が罰せられる。

ミライも、変な記録を残して欲しくないだろう。

 

別に嘘は言ってないしぃ?

ヒトはね、こうやって事実を隠すんだね。 もっと酷いパターンもある。

だから、これくらい許せ。

 

 

『そうでしたか。 ミライ隊長や、皆さんは無事なのですか?』

 

「それなんだが、セルリアンに操られていたフレンズがいてね。 その子らが気絶している。 ミライ含めて、病院に運びたいんだが」

 

『それは……! 少しお待ちを』

 

 

無線越しに、カタカタとタイプ音。 何かを調べてくれているらしい。

 

暫くして、再び通信。

 

 

『セントラル病院に運んで下さい』

 

「閉鎖していると聞いたが」

 

『医療班を向かわせます』

 

「分かった」

 

『済んだら、管理センターに帰還して下さい。 例の資料をちゃんと持って、です』

 

「大丈夫だ。 無くしてない」

 

『なら良し。 何か他にありますか?』

 

「ない。 あったら、また連絡する」

 

『了解しました。 では、無事に帰って来て下さいね。 お待ちしています』

 

 

会話のキャッチボールを終える。

やはり、小動物は頼りになるな。 帰ったら、やはり資料の件を話すか。

 

大丈夫な事を祈る。 彼女は、良いヒトのハズだ。

 

俺は考えながら、園長とサーバルに指示を出す。 越権行為だが、今はミライが気絶中。

無線による指示を受けた身だし、ココは声を出させていただく。

 

 

「園長、サーバル。 皆をセントラル病院に運んでくれ。 医療班が来るそうだ」

 

「分かった!」「杏樹さんは?」

 

「ニホとジャイペンと一緒に、園長の仲間が来るまで休んだら管理センターに行く。 ほら、園長の仲間が すれ違っても心配かけないように、誰かが行き先を教えなきゃ」

 

「ありがとう」

 

「礼を言われる事はしてないさ。 また どこかで会おう」

 

「うん!」「気をつけて!」

 

 

そう言って、園長はオイナリサマを抱えて、サーバルは器用にマンモス、サーベルタイガー、セーバルを抱えて城外へと素早く運んでいく。

特にサーバルは相変わらずスゴい。 華奢な身体のどこに、女の子3人を同時に持って走れるチカラがあるのか。

 

 

「お悩み解決、とはいかないが……セントラル事件は幕を閉じたか」

 

 

そう呟いて、近くの柱にもたれかかる。

大して運動してないが、精神的に疲れたな。

 

これからの事を思うと、荷が重い。

まだ仕事は残っている。

 

 

「あんじゅ」「あんじゅちゃん」

 

「うん?」

 

 

不意に、ニホとジャイペンが声を出す。

今までジッと我慢の子だったから、存在を少し忘れていたぞ。

 

あいや、すまん。 戦闘中はありがとう。 ふたりがいなかったら、やられてたよ。

 

 

「だ、だれ……あの子?」

 

「え? 他に誰かいたか?」

 

 

ふたりが腕をあげる方向に、釣られて見やる。

 

 

「なっ!?」

 

 

そこには玉座に座る、女の子。

真紅に包まれたシスターの服。 蛇のような、ドラゴンの様な長く紅い尾は、玉座の周りを1周して、円を描いていた。

 

記憶に無いフレンズだ。

似た姿なら、四神のセイリュウに似ているが、セイリュウは青色。 目の前の彼女は真逆の赤……それも強烈な、真紅。

服装も大きく違う。 宗教的な服だ。 協会のシスターを思わす。 現に、彼女の両手は前に組まれていて、余計にそう感じずにはいられない。

 

フードを被るし、尻尾的にも蛇の子か?

 

 

「俺も、分からん……ニホ?」

 

 

ニホを再度見ると、時間が止まったようにピタリと、腕を上げたまま動かない。

なんなら瞬きすらしていない。 それは隣のジャイペンも同じだった。

気が付けば、城の内装は全て紅い世界に包まれ、それしか色を知らないと言わんばかりだ。 目に悪い。 どこぞの吸血鬼の城だというのか。

 

 

「なっ……なっ、なんだよ!? 何が起きてる!?」

 

 

再び、答えを求めるように玉座の彼女を見る。

 

彼女の背後には、空間がねじ曲がったんじゃないかと思わんばかりに、背景だったものが円を描いてグルグルと回る。

ついでに俺の目や頭まで回りそうだ。 混乱するという意味で。

 

あまりに異様な空間。 あまりに突然過ぎる謎現象。 理解出来ない世界。

 

前世の記憶を辿っても、こんなシナリオは無い。

 

なんだ? なんなのだ?

 

 

「ふふっ。 面と向かうのは、これで初めてね」

 

「へっ?」

 

 

高貴で気高い、透き通った……美しい声が耳に入る。 さも、直接脳内に響くかの様な、甘美な声。

 

その声は間違いなく、玉座に座るフレンズから発せられていた。

 

妖艶な笑みを浮かべ、俺の事を見ている。

もはや、真紅の世界で動いているのは彼女と俺だけだ。

 

 

「我の名はウロボロス。 会えて嬉しいわ」

 

 

俺は思った。

面倒事だわこれ コンチクショウと。


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