パーク職員です。(完結)   作:ハヤモ

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管理センターへの帰還

園長とミライ、サーバルらは、セントラル病院へ。 ミライが気絶しているので、ジャパリバスの運転は園長がやったと思われる。

園長、バス運転出来るのかね。 免許持ってるのかしら。 客もいないし大丈夫だと思うが。

 

まあ、事故ってもフレンズ相手なら、なんとかなるだろう。

アニメサーバルちゃんは、バスに軽く撥ねられてもピンピンしていたし。

バスが大破しても、歩いていける。 ここから病院までは遠くない。 後は任せたぞ園長。

 

さて。 一方で俺らは、しばらく けもキャッスル内で待機。

後続のアプリ版メンバーが来る。 園長達の行き先と顛末を教えなければならない。

 

カラカル、トキ、トムソンガゼルのルル、シロサイ、ギンギツネら。

 

その辺は正史の通りだろう。

 

ただ展開は正史……とは言えない。 あまりに誤差が生じている。

痛いのがセーバル。 フレンズ化していないのだ。 セーバルがフレンズ化しないと、例の異変が深刻化するかも知れない。

 

 

「考えると俺、余計な事をしたなぁ」

 

 

セントラル事件に、首を突っ込まなければ良かった。

 

後悔先に立たず。

でもカコがセルリアンにチョメチョメさせるのは許せないじゃん?

 

 

「杏樹は良くやってるよー?」

 

 

ジャイペンがフォロー。

見れば、神殿ぽいデザインな柱に背を預けながらこちらを見ている。

 

パイセンの風格が、ありますねぇ!

ボーイッシュで背が高ければ、絵になったな。 でも目の前には幼女体系のパイセン。 そこはマイナスポイント。

 

それと、離れた所で城内探索をしているニホもマイナス。 可愛いけど。

あの、シリアスムードの君は何処。 今はタダの好奇心旺盛ワンコだよ。

 

あいや、今は良い。 パイセンと話しているからな。

 

 

「そうか?」

 

「そうそう。 カコ博士を助けたし、悪事を知れたじゃん?」

 

 

悪事ねぇ。

アレはヒトによって、意見が分かれる。

 

 

「アレは面倒事だ」

 

「何とか しようとしているじゃん」

 

「何もしてない。 ヒトに任せて、後は連中任せさ」

 

 

世間に任せて、悪か善かを叫ばせる。

紛糾した事態になるかも知れない。

 

俺的には悪だ。

だが他のヒトにとっては、善かも知れない。

多数決で決めさせようと画策中なワケ。 ヒトの悪い癖。 褒められない。

 

 

「それでもさ。 見過ごすのはマズいと感じたから、動こうとしてる」

 

「まぁな」

 

「それだけで価値あると思うよー。 ただ言われた仕事をこなすんじゃなく、パークの為に考えてるんだって分かる」

 

 

価値ねぇ。

自身では、あまり無いと感じているが。

 

楯突く行為をしているからな。

仕事も不真面目だし。

 

その点、無価値どころかマイナス評価だ。

そのくせ、良い様に使われている。 だからかな。 この件で泡を吹けば良いと考えるのは。

 

 

「価値は知らん。 でもパークが好きだから」

 

「うんうん。 ありがとう!」

 

「礼を言われる事は、何もしてない」

 

 

とか言ったが。

礼を言われるのは、恥ずかしいな。

 

目を逸らして、遠くのニホを見る。

玉座の匂いを嗅いだり、座ったりしている。 ナニしてんだか。 微笑ましくもある。

 

 

「でさ、杏樹」

 

「うん?」

 

「この事件もアレも、未来予知出来ての行動?」

 

 

パイセン……詮索されるのは、良い気はしないぞ。

 

礼を言われた喜びから一転。

冷めていく心と共に言葉を放つ。

 

 

「カコが襲われるのは予想出来た。 だから助けられた。 でも、俺の輝きを奪ったセルリアンの行動は分からなかったよ」

 

「ほぅ。 杏樹が関与して変化した事は分からないと?」

 

「ああ、それは予想出来ない」

 

「資料の件も?」

 

「そう。 でもアレは……解決出来たつもりだった。 でも現実にはこうさ。 上手くいかないもんだな」

 

 

変に隠しても面倒なので、テキトーに話す。

パイセンなら、日常会話からアレコレの情報を盗み出すだろうし。

 

だったら、勘の良いガキになって嫌いになるより、多少のネタバレをした方が大人しくなる。 相談相手にもなる。

 

 

「俺に未来予知出来るチカラなんて無いよ。 正直、無能だ。 期待するな」

 

「そんな卑下しないでおくれよ。 みんなで協力すれば良いんだし」

 

「そうだな。 でもパイセン」

 

「なんだい?」

 

「無理すんなよ」

 

 

パイセンなら《やる》かも知れない。 故の不安から掛けた言葉。

 

するとキョトンとした後、笑われた。

笑わなくて良いだろ……。

 

 

「しっしっしっ! 大丈夫だって! 心配し過ぎだなぁ!」

 

「真面目に心配してやってんだぞコッチは」

 

「うんうん、分かってる分かってる! うん、ありがとう杏樹。 やっぱり君は優しいヒトだ!」

 

 

そう言って、また笑う。

全く。 今度は別の意味で恥ずかしくなってきたぞ。

 

 

「あんじゅ! 誰か来るよ!」

 

 

探索ワンコが、吠えた。

ケモ耳……聞き耳を立てている。 顔と共に出入り口方面だ。

 

 

「なんにんもいる! 音の感覚から、たぶんフレンズ! 羽音……? 鳥の子もいるかも!」

 

 

聞き分けられる系?

俺はミライやカコの様に けものに詳しくないから分からないが……凄いな。

 

 

「後続メンバーだ。 園長の行き先とココで起きた事を伝えたら、俺らは管理センターに行こう」

 

「おっけー!」「わかった!」

 

 

ふたりとも元気だな。

元気出してぇな俺もなぁ。

 

 

「サーバルー!」「ガイドさーん!」「セーバルは ご無事?」「オイナリサマッ!」

 

 

騒がしくなって参りました。

女三人寄れば姦しい。 いや、3人以上いる。

 

カラカル、トキ、トムソンガゼルのルル、シロサイ、ギンギツネ。

他のメンバーはいない。 アライさんやフェネックも他の子と共に、どこかのエリアにいるのだろう。

 

 

「あれ? みんなは?」

 

 

可愛い声を出すのは、小柄な子。 トムソンガゼルのフレンズ、ルルだ。 オレンジぽい色を基色に腹部は白く、アクセントのように黒い流線のような模様が混ざる毛皮……服を着ている。

やや曲がりくねった槍を手に持つ。 元の けもの の持つツノだ。 そこは形状違えどシロサイも持っているな。

 

サーベルタイガーがサーベルを所持していたように、元の けもの を思わす武器を持つ子もいる。

それらはフレンズ化した際に共に具現化したものである。 決してヒトが彼女らに渡した得物ではない。

サンドスターは、本当に謎だらけ。

 

 

「可愛いな」

 

 

声に出ちゃったよ。 でも可愛い。 他の子も可愛いけど。

 

なんとなく幼い。 妹属性がありそう。 実際、アプリ版でそんな話があった気がする。

 

 

「失礼ですが、アナタは どちら様でしょうか」

 

 

シロサイも可愛いよ。 美しさもある。

その中世の騎士を思わす鎧、重そうですね。

それと手に持つスピア。 サイのツノを思わす湾曲した形。

 

くっ殺。 いや、そんな描写は無かったかもだが。

 

 

「俺は杏樹。 パーク臨時職員で、見ての通りヒトだ」

 

 

見ての通り、女の子になっちゃってるけどな!

 

 

「え? あんじゅなの?」

 

「あんじゅ?」

 

 

あれ。 カラカルとトキが反応したわ。

そういや会った事があるフレンズが、アプリ版メンバーにいましたね……。

 

でも同一個体か?

確認の為にトキの目を見る。 絶滅種特有の、光の無い目……じゃなぁい!

 

世代交代をしていなければ、もしそうなら……ちょっと嬉しいかも。 俺の記憶を持つってだけで嬉しい。 嬉しくない?

 

 

「菜々ちゃんの歓迎会に来てくれた?」

 

「ポイ捨て禁止の時の?」

 

 

おおっ!

これは同一個体ですねぇ!

 

 

「俺を覚えてくれていたか!」

 

「ええ。 でも、男のヒトだったハズだけど」

 

「姿形、面影が無いわね」

 

 

同じような反応が来たよ。

仕方ない。 誰でもそうなるんや。 俺もそうでした。

 

 

「セルリアンに喰われて、女になったんだよ」

 

「喰べられた!?」

 

「まぁ! 良くご無事で……いえ。 無事ではないにせよ、気を落とさないで」

 

 

カラカルとシロサイが声を上げる。

そうだよなぁ。 喰われる体験は、ヒトも けものも忌避したい。

ヒトの場合、ひどい方で昏睡状態。 目覚めるか分からない。 フレンズなら思い出が消えて、けものに戻る。

攻撃によっては、最悪 命に関わるだろう。 とにかく、ヤバい体験を俺はしたのだと改めて思う。 自慢したい。 でも無いチ●コをイジられそうで怖いから、やめよ。

 

 

「それは……災難だったわね。 でも、女の子になるなんて。 セルリアンといい、サンドスターは謎だらけね」

 

 

警戒していたギンギツネが、声を掛けてくれた。

 

うん。 そうなの。 災難だよ。

そのセルリアン倒したんだけど、身体戻らないし。 それに君が仕えるオイナリサマも巻き込んでしまって……。

 

あ、話さないとな。 ここに残った目的を忘れるところだった。

園長メンバーに会えた喜びを、もう少し味わいたいが時間が勿体無い。 俺の仕事もある。

 

 

「まぁ俺の事は良いんだ。 それよりサーバル達の件だが」

 

「ええ。 聞かせてくれると嬉しい」

 

 

落ち着いた声のトキ。

性格変わった?

 

アプリ、アニメ側に近付いている?

同一個体なのにな。 事件の影響でオトナっぽくなった?

 

 

「ココのセルリアンを倒した後、セントラル病院に向かったよ」

 

「誰かケガしたの?」

 

 

心配する一同。

他を気遣える優しさを感じる。

 

俺の事じゃないのに、嬉しくなるね。

優しい世界。

 

 

「一緒にいたフレンズがね。 オイナリサマとか」

 

「オイナリサマ!?」

 

 

ギンギツネが声を荒げた。

慕っている様だからな。 言えば、こうなるのは予想出来た。

 

でも隠す話じゃない。

寧ろ言わねば。 遅かれ早かれ会うワケだし、大切なフレンズだから。

 

 

「大丈夫だよ。 気を失っただけ」

 

 

重体ではない事を言う。 少しは安心するように。

 

するとニホが前に出てきた。 申し訳なさそうな、悲しそうな顔で。

 

しゅんと、垂れ耳。

尻尾も下がりに下がる。

 

 

「私が───」

 

「ニホ」

 

 

だから止めた。

 

手で、待てを掛ける。

ニホ。 お前は悪くないよ、と。

 

 

「セルリアンに操られていたんだ」

 

 

事実だ。

でも言わなくて良い事なら、言わない選択肢もある。

 

 

「そんな事が?」

 

「ああ。 でも、セルリアンを倒したら気を失ってね。 それで病院に向かったよ」

 

 

ニホが体当たりしたとかは言わなくて良い。 フレンズ同士だ。 ギクシャクする可能性は避けたい。

 

俺も、もう少し言い方があっただろうけど。

自分、不器用ですから。

 

 

「君たちも病院に向かうと良い。 園ちょ……不思議なお守りを持ったヒトと、サーバル、それとセーバルがいる」

 

「セーバルも無事なのね!」

 

「同じく気絶中だろうけどな」

 

「消えずに済んだのね……良かった」

 

 

安心する皆。

存在が消える危険性があったからね。

 

シーサーの塩のチカラで輝きを取り戻すにせよ、親玉に輝きを奪われるにせよ。

 

 

「とにかく、行ってあげて。 きっと待ってるから」

 

「そうね! 直ぐ向かうわ!」

 

「ありがとう、あんじゅ」

 

「また会おうね! きっとだよ!」

 

「あんじゅ様。 平和になったら、ゆっくり お喋り致しましょう」

 

「あ、言い忘れていたわ。 雪山の時はごめんなさい。 そして、ありがとう」

 

 

ドッタンバッタン大騒ぎしながら、城を後にする園長メンバー。

しかし最後の礼。 カラカルだな。 雪山の件を忘れていなかった。

それだけで、うん。 嬉しいね やっぱ。

 

短いやり取り。 また会えるだろうか。

 

 

「俺たちも行こう」

 

 

ジッとしていたジャイペン、少し悲しげなニホに声を掛ける。

 

すまんね。 でも、仕事中。

そして、また……悪足掻き中だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電車に乗り込み、管理センターへ。

道中、車窓から都市部を再度観察。

 

セルリアンが1匹も見当たらない。 何処かに隠れているだけかも知れないが……親玉を倒した影響だろうか。

 

 

「ニホ、ジャイペン。 セルリアン見えるか?」

 

「見えないよ」

 

「見えないねぇ」

 

 

ふたりにも訪ねたが、やはり見えないか。

セルリアンもサンドスター同様、謎だ。 謎しかない。

 

奴らを解明出来れば、人類にとって有益な情報を得られるかも知れないのだが……。

とか考える俺やヒトこそ、セルリアンなのかもな。 実験の件やヒトのコト言えないや。

 

 

「なら都合が良い。 再建も楽になりそうだ」

 

「またヒトが戻って来るの?」

 

「きっと、そうなる」

 

 

ニホが嬉しそうに、尻尾を振る。

そう。 ヒトが戻る。 それが良い事なのか分からない。

 

いない世界の方が、それこそ都合が良い。

でもフレンズは、そうは思わないのかもな。

 

 

「問題は、これからなんだよなぁ」

 

「資料の件かい?」

 

「目先はソレだね。 後は未来かな」

 

 

例の異変とかね。

後は俺の知らない事。

 

ウロボロスのフレンズといい、ヒトが起こす事件といい。

裏世界に足を突っ込んでいる。 もう避けて通れなさそう。 ツライさん。

 

 

「それらも、管理センターに丸投げ出来たらしちゃうけどな」

 

「しっしっしっ! あんじゅは悪いヤツだなぁ」

 

「さっきは良いヤツって言ってなかった?」

 

「そうだっけ?」

 

「あんじゅは、良いヒトだよ!」

 

「うんうん。 分かってるよニホ」

 

 

笑うジャイペンとニホ。

恥ずかしいな、全く。 悪いヒトで良いよ。

 

 

「あー、ほら。 もうすぐ管理センターだよ」

 

 

窓から見える、大きなビルを指差す。

パークを管轄するビル。 あの人工物の中は、どんなドロドロした情報が隠れているのやら。

 

でも。 そんな中にも味方はいる。

いなきゃ困る。 これからの事もある。

 

 

「小動物に資料の件を言おう。 きっと、味方になってくれる」

 

 

裏切られたら、俺の立場が危うくなりそう。

ウロボロスに永遠の抱擁を受けてしまうのも困る。 色んな意味でイッてしまうかも知れない。

 

でも、まあ。

楽観視している俺もいる。

 

フレンズもいる。 何とかなるさ。


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