パーク職員です。(完結)   作:ハヤモ

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不定期更新中。 駄文。
まだパークには行けず。 幼少期が続きます。 あかん。 タイトル詐欺になるぅ。

漫画版主人公とアプリの主人公ぽいヒトとの出会い。


将来の飼育員さんと園長さん?

超常物質サンドスターにより生まれる特殊動物、アニマルガール。 またはフレンズ。

元の動物の特徴を引き継いだ女の子の姿をしている不思議な、いきもの。

 

けものフレンズ世界の、要といえる存在である。

 

そのフレンズには世代がある。

アニメにも、ペンギンアイドルユニットなPPPの話やロッジでの話で少し触れられている部分があるから、知っているヒトは多いと思う。

 

親とその子ども、的な意味ではない。

先輩、後輩といった感じというのか。

 

フレンズは何らかの理由でヒトの形態を維持出来なくなると元の姿……動物に戻る。 死ぬワケじゃない。

ただし。 戻った子が再びフレンズになるというのは聞かない話だそうで。

 

その代わり。 別個体がサンドスターに当たると、フレンズになる。 この時、世代交代となり第2世代、第3世代となる。

記憶は受け継がれない。 ただ、アニメサーバルがロッジで言っていた事や記録映像を見て泣いていた事から、稀に同種のフレンズが生まれたり曖昧な記憶や感覚は残るのかも知れない。

 

サンドスターの事は、全然分からん。

 

アニメでもよく分かってないとか言っていたのだ、俺はもっと分からない。

絶滅動物がパークでフレンズとして存在しているのも、そのお陰なのだろうが……分からん。

絶滅種がパークでフレンズとして存在出来るのは、カコ博士のお陰らしい。 馴染みとしては鼻が高い。 いや、現在は、まだ幼子だけど。

 

仕組み? 知らん。

 

俺の中では、化石をパークに持ち込んでサンドスター当てたらポンと生まれるんじゃないかというイメージ。

 

実際は、知らん!

 

知らん知らんばかりで、話がズレていくが世代交代前、第1世代と呼ばれるフレンズ、その時のパークの状況が気になるヒトがいると思う。

アニメじゃ、ヒトの造った建造物等は遺跡と呼ばれ、一部除いて荒廃した感じであったからね。

 

それを見れるのは、漫画版。

して、あの世界は第1世代だとか。

 

漫画版はパークが通常運営されている。 そこに主人公の菜々ちゃんが、新人職員としてやってきて、立派な飼育員になる為に頑張る話。

肩書きは「試験解放区 特殊動物 飼育員」だったか。 長い。

担当フレンズはサーバルとキタキツネ。 サーバルはアニメと性格は、そんなに違わないけれど、キタキツネの性格はかなり違う。

世代が違うと、性格も異なるようだ。 見た目は、ほぼ一緒なのだけれど。 今は割愛。

 

そんな主人公の菜々ちゃん。 パークに行くまで会う事はないと思っていた時期が、俺にもありました。

 

 

「わたし、なな! おともだちに、なろうよ!」

 

 

桜舞い散る公園にて。

 

同様のピンク色の髪の毛。 名前共々春の陽気を感じさせる笑顔を向けて、手を差し伸ばして来る女の子が。

 

うん。 菜々ちゃんだ。 同名の別人の可能性もあるけど。

カコの従姉妹だとか、なんか言われていた気がするが定かではない。

 

まさか、漫画版主人公の菜々ちゃんにも会えるとは。

 

俺は再び感動して涙を流した。

 

嗚呼。 今日も青空が綺麗だ。 そして歪んで見える。

 

俺は幸せ者だよ。 よよよ。

 

頰を伝う雫。 雨にしては、しょっぱくて……温かい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええ!? なんで泣くの!? 泣かないで!」

 

「ごめん。 目にゴミがはいったの。 もう大丈夫」

 

 

ウソである。 幼女に泣かされたのだ。 おお、泣いてしまうとは情けない。

 

俺は片腕で涙を拭いつつ、差し出された手を取った。 ハンドシェイク。

おお。 振り回されつつも温かい。 この感覚、いつ振りか。

 

再び流れそうになる涙に耐えつつ、俺は菜々ちゃんに挨拶をする。

 

 

「よろしく! おれの名前、あんじゅ」

 

「うんうん! よろしくね!」

 

 

ニコニコと接してくる菜々ちゃん。 お天道様みたいに、とても明るい子だ。 こちらも明るくなって笑顔にしてくれる。

 

その明るさは、大人になって職員になっても振舞ってくれるだろう。

冬場でも半ズボンで過ごして風邪引いてたり、妙な発言でチーターに「変わってる」と言われるシーンもあったが、ミライやカコ程ではない。

 

あ、ディスってないよ?

個性豊かなのは良いことだ。 うん。

 

 

「あんじゅは他に、ともだちいないの?」

 

 

ディスられた。

 

 

「え、えと……いるよ」

 

「でも、あんじゅと、わたしだけだよ」

 

 

おいこらやめろ。 幼女の身で可愛そうな視線を向けないで。 心に響くんだよ。 ガラスのハートが傷付くんだよ。

 

いや、分かる。 分かるよ。 俺ひとりで公園にいるから、そう言ってきたんだと。

 

だから正直に答えていく。

 

 

「ともだちは、今日はいないの。 ひとりで探検ちゅう」

 

 

ドヤッ。 ウソじゃないよ。

 

そう。 ひとりで家の周囲を探索していたのだ。

カコを連れ回すには、体力的に厳しいだろうから、ひとりなのだ。 パーティ編成を考えての冒険である。

 

実のところ、気になる事があっての事だ。 具体的には、神社を探している。

 

アプリ版主人公が昔、神社で狐の世話をしていたらしいのだ。

ひょっとしたら、会えるかなと思っての探索。 そう都合良く見つかるとは思えないけど。

 

 

「そうなんだ」

 

「うん。 それでね、この近くに神社はあるかな?」

 

「あるよー!」

 

 

あるそうです。

とはいえ。 都合良く目的が達成されるとは思えない。 神社は日本中にあるし。

本土にて、カコにミライ、菜々ちゃんにも出会えただけでも奇跡なのに、アプリ版主人公……後の女王事件解決に貢献し、園長と呼ばれる者にまで会えるとは思えない。

 

それでも、俺の妄想脳は期待をしてしまう。 これ、イケるんじゃねと。

 

 

「あんない、して欲しいな」

 

「いいよ! こっち!」

 

 

元気よく駆け出す菜々ちゃん。 元気なのは良い事だ。

 

追い掛けるべく、足を動かした。

 

決して強制じゃない、ワクワクした走りは久し振りだ。 足取りも軽い。

 

前から受ける風が心地良い。

 

別に園長さんに会えなくても良いか。 この瞬間を感じさせてくれた菜々ちゃんに感謝。

 

自然と笑顔になる。

 

俺は忘れていた幼き爽快感と疾走感を、今世で味わえたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ココが、じんじゃ!」

 

 

菜々ちゃんは元気いっぱい、俺は息も絶え絶えになった頃。

 

辿り着いたは、古びた神社。 森の木々に囲まれていて、石垣や木造の壁や柱はボロボロだ。

 

カコを連れてくるには、やはり厳しい距離と場所。

 

でも、ココは美しいと思う。

 

溢れ日が、決して小さくない境内と鳥居にシャワーとなって降り注ぐ。

町の喧騒はココまでは届かず、草木が擦れる音が、走って興奮した心を落ち着かせる。

 

 

「…………良い、ところだね」

 

「うん。 でも、あまり来ないの」

 

 

まあ、そうだろう。 森の中にあるし、結構遠い。 森の中にある道もボロボロで整備されている様子がない。

 

けもの道、と言われても仕方ないレベルだった。

 

 

「ありがとう。 わざわざ俺のために」

 

「ううん! わたしも楽しかった!」

 

 

へへへ、と笑う菜々ちゃん。 嗚呼、心から癒されるよ。

ぜひ、大人になって職員になっても、そのままの君でいてくれたまえ。

 

そんな菜々ちゃんに再度、質問する俺。 遠慮するべきだろうけど、笑顔を向けられると話しやすく感じちゃってね。

 

固い表情をするヒトって、そういうのが嫌だからか。 理由のひとつかも知れない。

 

 

「ココには、前にも来てるの?」

 

「うーんとね。 2回くらい?」

 

 

首を傾げて唸る。 記憶は曖昧な様子。

けれど、俺には貴重な情報。 そうでなくても、話していると楽しい。

 

 

「キツネさんとか、他に男の子か女の子を見なかった?」

 

「うーん。 他の子は見たことないよ。 あっ。 キツネさんか分からないけれど、しろい けものさん なら見たかも」

 

 

おお。 有力な情報を得たぞ。

 

そのしろい けものさん は、たぶんキツネさんである。 パークのオイナリサマかも。

 

主人公がお世話をしていたという事は、この森か神社に住んでいると思われる。

ココまで来たのだ。 会えないだろうか。

 

そんな気持ちを察したのか。 菜々ちゃんが声をかけてくれた。 エスパーかい?

 

 

「いっしょに探す?」

 

「良いの?」

 

「いいの! わたしもね、会いたくてココに来たんだから!」

 

 

あら。 利害一致かい?

 

漫画やなんかで、菜々ちゃんがこういう所に行ったという描写はない。

俺の影響なのだろうか。 それとも、描かれていないだけで、行った事はあるとか?

 

考えても仕方ない。 今は一緒に探そう。

 

 

「軒下、えーと……屋根の下とか、神社のしたがわのスキマを見てみようか」

 

「うん!」

 

 

さすがに、森の中に入る勇気はない。 入って帰れなくなったら大変だ。

変な騒ぎを起こして、バタフライ効果的に「パークの危機なのだー!」状態になるのは避けたい。

 

いや。 既にやってるのかも知れない。

 

 

「あれ。 ヤバいのでは?」

 

 

急に怖くなってきた。 心境の変化の具合によっては、森の静けさとは不気味だ。

目の前で「うんしょうんしょ」と汚れるのも厭わず、社の下側を一生懸命に捜索している菜々ちゃんの光景も、恐ろしく感じてくる。

 

考え過ぎかも知れない。 転生者なのだから、寧ろこういうのが醍醐味だろ楽しめと。

でも、それで誰かが不幸になる可能性を考える。 未来は分からない。 あくまで、俺の被害妄想だ。

 

やめよう。

 

俺の目的は、園長に会うのではない。 パーク職員になる事だ。 そこを忘れてはならない。

 

 

「いなさそうだし、そろそろ帰「いたよ、あんじゅー!」見つけたの!?」

 

 

菜々ちゃんが嬉しそうな声を上げた。

手遅れだった。 森に響く声が、俺を不安にさせる。 自分勝手だとは自覚している。 そも、探そうと言ったのは俺である。

 

 

「え、えーとね。 あまり大きな声はダメだよ。 けものさん、怖がっちゃうから」

 

 

俺もな。 既に怖い。 主に未来が。

 

 

「ごめん。 でも、ほら、こっち来て見て。 あそこにいるの」

 

 

社の下を覗き込みつつ、手招きしてくる菜々ちゃん。 これは……見て良いのだろうか。

 

うーん。 どうする。 見たところで問題ないと思うが。

正直にいえば、見たい。 白い狐って、神聖な感じがする。 中々、森で見れるものじゃないだろう。

 

 

「うん。 いま、行くね」

 

 

見よう。 大丈夫。 考え過ぎだ。

 

そう自身に言い聞かせて、そちらへ向かう。 そう。 見るくらいなら。

 

そんな時だ。 俺を責めるような声が飛んできたのは。

 

 

「き、キツネさんをいじめるなっ!」

 

 

驚きと共に、声のする方を振り向く。

 

そこに立っていたのは、菜々ちゃんくらいの、ひとりの男の子だった。

勇気を振り絞っているのか、小刻みに震えてる。

手には、小さなパン。 キツネさんにあげるごはんかな。

 

 

「…………園長かな?」

 

 

無意識か恐怖からか。

 

俺の声に応える者はいない。 ただただ、森の静けさの中へと吸い込まれていくだけとなった。




あーかいぶ:(当作品設定等)
試験解放区
研究・飼育を行う動物管理区域、ジャパリパーク・サファリに区分する特別行政区画。
フレンズがヒトと共に生活する上で、どの様な支障や影響があるか、問題点や利点を調べる場です。
また区画内にパーク職員の寮、管理センター、研究所が存在します。
他にも、ジャパリパーク以外の営利企業が多く参入しており、おおよそ本土の都市機能と変わらない光景が広がります。

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