パーク職員です。(完結)   作:ハヤモ

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不定期更新中。 駄文。
カコと不仲に。 そのまま復興へ……。


ヒトの勝手と 少しの お別れ。

過ぎた事は仕方ない。

そんな言葉は甘えや妥協かと聞かれれば……疲れているから妥協と答える。 苦しみさえなければ良い。

人生を楽したいなら、何ひとつコントロール出来無いとスッパリ諦める事だ。

これくらいは妥協するべき。 そのラインが俺にはある。 皆にもある。

 

だけど、今まで経験したことの無い事だったら?

 

判断基準を経験から探して、それと比べる。 それがマシなのか、許されるのか。 脳内で判断して、答えを出す。

それは珍しくも なんともない思考。 これまた皆がする。 覗けないだけで、そう考えている。 これは偏見では無い筈だ。

 

もし、全てが許されないと怒り暴れるヤツは世の全てが思い通りになる、コントロール出来ると思い上がっているヤツだ。 駄々をこねるガキ同然だ。

俺は違う。 多くは違う。 当たり前だと。 受け入れる他ないと。 その怒りや行為に巻き込まれる理不尽も仕方ないのかも知れないと。

 

そう、考えて生きてきたが……。

 

 

 

 

けもの にされるのは、流石に理不尽だろ。

 

 

 

 

俺は犯人を睨んだ。 暴れやしないが咎める事くらいはする。 そんな俺だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんで? この耳と尻尾は?」

 

 

生やされたまま、はいそうですかとはいくまい。

カコが隠そうとした素ぶりをした節からも、拍車をかける。 説明を求める権利が俺にはあるのだ。

 

耳を怒りの ぴこぴこ。 尻尾を不機嫌のフリフリ。 それが自然と出る不思議を感じつつ、俺は問う。

 

 

「生えた」

 

「見たし触ったから分かる。 なんで生えた?」

 

「部屋の中にサンドスター粒子を放出させた状態で、杏樹を先に入らせた。 そしたら生えた」

 

 

あー。 言われると、そうだった。

カコに先に入室するように言われて、疑問を持たずにホイホイ入室。 それで暗転したんだ。

 

 

「予想出来た?」

 

「想定外」

 

「なあ、カコ。 言わせて欲しい。 何で こんな 事を?」

 

「…………杏樹が女体化したのは、サンドスターとセルリウム、輝きを奪われた所為だと思われる。 その状態でサンドスターを受けたらどうなるのか、実験した」

 

 

実験。 それが酷く冷たい言葉に感じだのは、今までなかった。

学生の理科の授業で行った実験のような……アレじゃない。 冷たい。 寒い。

実験にされた際の けもの の気持ちは こうなのだろうか。

 

それが訳も分からず、攫われて針をブスブスされて「自分じゃない ナニカ」に作られる……ゾッとする。

そうでなくても、もしだ。 好きなヒトにソレをやられたら?

心に深い傷を負うだろう。 けもの だから、ヒトじゃないから 何も感じないなんて事はない。 けもの だって心がある。 傷付くに決まってる。

 

ましてや、フレンズならば。

つまり、俺は……傷付いている。

 

アレ。 俺はフレンズ? ヒト?

困惑と悲しみ。 複雑な心境は、垂れ耳を作り、尻尾をしゅん、と下に。 見えないけど、その感覚がある。 意識しているからかな。

 

とにかく。 前に前進しなければ。

 

 

「実験の結果は良い。 無事だったからね。 でも、1歩間違えれば生死に関わるとは思わなかった?」

 

「サンドスターは、今まで死に関わる結果を生み出さなかった」

 

「妄信か?」

 

「確信。 今までの実験結果から、判断して実行した」

 

「今まで?」

 

「…………」

 

「俺の許可を得ずに?」

 

「…………」

 

「所長や他は知ってるよな。 さっきの研究員的に」

 

「…………知っている」

 

 

はぁ。 俺は、来る所を間違えたか。 カコの事は幼馴染だし、信用していたのに。

 

好き、だったのに。

 

結果はコレだ。 ヒトの利益や欲に巻き込まれた。 『また』だ。 これからも、続くだろうな。 パークにいても、それは変わらない。

 

 

「カコ。 俺は これ以上、この件やセントラル事件に突っ込む気はないよ。 謎を明かそうなんて、もう疲れたから」

 

 

カコは ぴくっと反応。 泣きそうな、嬉しそうな。 複雑な顔。

それは喜びと、次に失われる輝きを感じた事で来る不安混じりの表情だ。 俺は知っている。 何年、お前を見てきたと思ってる。

でも、それも 終わりかも知れない。

 

 

「少しお別れだ、カコ。 これ以上、ここに 居たくない」

 

 

背後に手を振って、俺は部屋をスッと出る。 そうしないと、悲しみと怒りで自我を保てなさそうだったから。

 

そんな俺を、カコを含めた研究所のヒトは止めなかった。

こんな姿だ。 ヒトの目もある。 監視もしやすいか。

ひょっとしたら、研究所に戻って来る確信……いや。 妄信をしているからか。

 

だけど、戻ってやらねーぞ。

 

反抗期のガキ。 思い通りになる筈もない。 いや、思い通りになると思っている連中の思い通りになりたくないだけだ、俺は。

 

時が経てば、考えも変わるだろう。 でも、この時の俺は そう思っていた。

 


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