緋弾のアリア 円盤は静かに転輪する 作:新月の時を待つ人
が……そんなことは些末な事だ。
さて、奇妙な溝とその溝に宝石の付いた鍵をはめ込まれている亀だが、甲羅に触れたらいきなり内側に引き摺り込まれた。いざ吸い込まれてみると咄嗟に着地できずに頭を打ったしまったが、確かに内部には豪勢な部屋があった。腰を掛けるとどこまでも沈んでいきそうな錯覚に襲われるソファ。キンキンに冷えた飲み物の入っているちょっと小さめの冷蔵庫。(中にモエ・ド・シャンパンが入っていたのを確認した時はたまげた)地上デジタル放送が映るのか少し不安になったがちゃんと映るレトロな趣の液晶テレビ。
それ以上に驚いたのがクローゼットの中だ。数枚のキッチリと折りたたまれた白と黒のチェック模様の紙が入っていた。それぞれ『SC』『DU』『GW』『SO』というメモ書きが貼られている。
これは……エニグマの紙か? 恐る恐る『SC』のメモ紙の貼られたものを開いてみると中には数枚のDISCがあった。そのDISCをよくよく見ると表面に
間違いない。これは『スタンドのDISC』だ。
入っていた紙をすべて広げて中を確認したが、やはり全てのスタンドのDISCはなかった。そして中に入っていたスタンドのDISCから察するにメモ紙はジョジョの奇妙な冒険の各部の副題『スターダストクルセイダース』『ダイヤモンドは砕けない』『黄金の風』『ストーンオーシャン』を意味するのだろう。最後の一枚……『SO』の紙を開くとDISCと共に一枚の紙切れが入っており、それにはこう書かれていた。『因果は一巡せず』と。恐らくこれは一巡後の世界である第七部以降のスタンドのDISCはここにはない、という事だろう。確かに
『本体、頭ノ悪ソウナ顔ヲスルナ……別ニ難シイ事デハアルマイニ』
「お前がいるからここにDISCがある、みたいなチープな奴はナシだぜ」
あっ、こいつ目を逸らしやがった……つまりそういう事なんだな……
『コウシテ私ノ有能サヲ見セテオケバ自我ヲ消サレル事ハナイカラナ……』
なんともしまらない理由だが、聞いたところによると此奴は
まあよく分からん物体と融合させられた挙句二回も整形も真っ青な変化を起こされたらそりゃそうなるわな。スタンドは己の精神エネルギーである以上、ああいった方法でスタンドの姿や能力を変質させるというのは矢を用いて新たな能力を得るよりもリスキーな事なのだろう。
そう一人合点しつつ手元にあった適当なDISCを頭に入れたら……自分の精神が自分の精神ではなくなっていくような気がして吐きそうになった。船酔いならぬDISC酔いか。
『マズイッ!』
白い掌が頭に付き刺さる。頭に何か入っていく感覚はDISCを入れた時にもあったが、脳に直接何かが入り込んで来るようで不快感がある。幸いホワイトスネイクがすぐにDISCを弾き飛ばしたが、あのまま入れ続けたらどうなっていたか気になるが……考えたくもない。
『オマエハ思ッテイタ以上ニアブナッカシイナ』
「次はもう少し慎重にやる」
DISCを頭に差し込んでも酔わなくなってからいくつか試してみたところ、次のようなことがわかった。
・入れることのできるDISCは同時に2枚まで。それ以上入れると弾き飛ばされる。
・入れた対象と相性の悪いスタンドDISCは短い時間しか効果を発揮しない。
・スタンド像を動かすよりもスタンド能力を発動する方が倦怠感に襲われる。
この『同時に2枚』しか使うことが出来ない、という縛りのおかげで調査には大分時間がかかったが大きな収穫である。スタンドを動かしたり能力の発動で倦怠感に襲われるのは精神が運動不足という事なのだろう。自分の肉体年齢はまだ15歳のピチピチでも使用したスタンドに精神が追い付いていない、或いはスタンドとの相性がよろしくない。ホワイトスネイクは自分の手足のように自在に操ることができ、体にかかる負担や疲労が少ないという点から相性の悪いスタンドのDISCであれば負担は大きくなり、最悪使用することが不可能になると見るべきか。
自分とDISCを用いて一通りの『実験』を済ませ、亀の中に散らかしたDISCをしまって天井から外へ出ようとした時にふと疑問に思ったが……
この亀のスタンド『ミスター・プレジデント』はスタンド使いではなくとも視覚できる物質同化型という特殊なタイプのスタンドの筈だが、なぜ今まで自分も両親も気が付かなかったのだろうか? ……仮説だが、スタンドの像はどこであるのか、という事に焦点を当てて考えると甲羅の中あるセーフハウスが像ではなく、『亀の甲羅にある窪み』とそこに『嵌まっていた鍵』こそがスタンド像であると考えるとしっくりくる。そしていままで亀の中に入ることが出来なかったのは明確な『入る意志』を持たずに……というよりも亀の甲羅の中に入るイメージを想像できていないせいだろう。亀の甲羅に触れたらブラックホールに吸い込まれるようにその中に引っ張り込まれるなどとは普通想像もしない。その証拠に中に入ろうという意思を持たずに亀の甲羅に触れても中に吸い込まれることはなかった。これで安心してこいつの甲羅を磨いてやれる。
元々『ミスター・プレジデント』は物質同化型という特殊なタイプのスタンドだったが……スタンド使いでなければ知覚できないとなると有用性が増すな。こいつには申し訳ないが入り用の際は付き合ってもらうことにしよう。
「しかし一年経っても他のスタンド使いと一切出会わないってのはどういうことだ……?」
『マア、スタンド使イ同士ガ引カレアウトハイエ……0ニ何ヲ掛ケテモ0トイウ事ダナ』
附属中に編入したのも闘争本能が一般人より強い環境であれば他のスタンド使いが見つかる可能性も上昇するのではないかという思惑ありきだったので素質を持つ者すら見つけられないと両親には申し訳ないが
「まあスタンド自体
超能力。
ここでポイントなのは超能力者にスタンドが見えているか? という事である。スタンドは原則スタンド使いでなければ視認することは出来ず、触れることも不可能である。編入生である自分が見学の為に東京武偵高の中を見たい、と担任の教師に申し出たら当日の内に許可が出たのでその際にホワイトスネイクを
それだけではない。そも、何故自分はホワイトスネイクを宿すことになったのか。あまりにも唐突で、脈絡がない。これについては心の折り合いをつける為に一つの答えを心に置いている。何かを為すためにこの力に目覚めたのだ、と。実際のところどうなのかはどうだっていい。『スタンドに覚醒した』という事実だけが重要なのだ。
スタンドとは己が精神の発露。形を持って見える姿。自身の無意識の奥底で望んだ姿形が
主人公の名前出しどころさんなくてたまげたなあ……