緋弾のアリア 円盤は静かに転輪する   作:新月の時を待つ人

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うろジョジョ見たりディアボロの大冒険やりたくなるスタンド攻撃食らったので初投稿です。




前哨戦

「お前ってさ……もう一人の俺って認識でいいんだよな?」

 

『正確ニハ違ウガ……ソウダナ。他人デハナイナ』

 

「亀ってのは同居人にカウントしてもいいものだと思うか?」

 

『イヤ、一般的ナ感覚ナラバ……ペット、トイウノガ正シイダロウ』

 

 ベランダから見える黒々とした東京湾を眺めながら一人ごちる。正確にはホワイトスネイクが傍にいるが、これをもう一人の自分を別人格・他意識とは称しても全く赤の他人であるかとなるとそれはNOだ。明確な自我があればそれは他人だ、というのであれば他人なのかもしれないが……ホワイトスネイクの思考は手に取るように理解できるし逆もまた然り。性格や喋り方は違えど考えていることは大体同じなのだ。

 

 

「なんつーかさ……飽きない?」

 

『マア……言ワントスル事ハ理解デキルガ』

 

 

あれから8か月経過して現在5月。東京武偵高に晴れて入学して少し経つわけだが……自分の環境にあまり変化はなく、淡々と学生生活を送っていた。強いて挙げるのであれば念願の寮生活を始めたという事か。しかし本来は4人部屋であるこの第3男子寮の一室はがらんどう。ホワイトスネイクと亀の中に入っていたDISCがあればどの科に行ってもそれなりの働きはできるだろう……しかし変なのに目を付けられたくはないしなあ……といった理屈で探偵科(インケスタ)に入ったのが運の尽き。なんでも相部屋になる探偵科(インケスタ)の男子学生がいないので一人で寮に入るように、と教務課(マスターズ)からの無慈悲な通達が届いて膝から崩れ落ちたのは記憶に新しい。同じルームメイトと年相応のバカ騒ぎや下らない世間話のひとつやふたつはしたかったというのにこの始末である。

 寮に入って一週間は快適だった。部屋の中で思う存分スタンドを使って離れた場所にあるリモコンを取ったり、ホワイトスネイクに料理をさせながらスマートフォンで依頼を探したり。まあうっかりスプリンクラーを作動させてしまったこともあったが……それを一か月だ。幾らスタンドが非日常的なものであっても毎日見たり使役していれば流石に慣れる。ホワイトスネイクが話し相手になってくれなければ正直退屈を持て余して死にそうだ。

 

「なーんも変わり映えしねえなあ」

 

『ソウイエバ掟造(テイゾウ)……今度受注スル依頼ハドウスルンダ?』

 

「ホワイトスネイク、掟造(テイゾウ)じゃなくてもうちょい洒落の利いた呼び方できねーのか?」

 

『如月掟造ヲ他ニドウ呼ベバイイ……?オ前ノ母親ト同ジク、ジョウ君トデモ呼ブカ?』

 

 嫌味ったらしいなーこいつ。スタンドは本体の影響を受け、その逆もまた然り。自分も上っ面は良くても実は無意識の内に嫌味ったらしい事を考えて……いや、これ以上はやめよう。なんかホワイトスネイクの表情が心なしか悲しい感じになってきてるし。言葉にすればまるで捨てられた子犬のようだが、正直180センチ強の変な格好のおっさんがそんな表情をしても全くかわいくない。寧ろ気持ち悪い。

 

 さて、落ち込んでいるホワイトスネイクはしばらくほっといて依頼のリストでも眺めてみるか。武偵校の依頼というのは張り込みや人探し、浮気調査といった刑事ドラマでよく見るような刑事ものであったり、SPよろしく警護の依頼をされることもある。稀に武偵校を挟まずに依頼されるようなこともあるそうだが……自分には縁のない事だ。ある程度まとまった単位が入る実入りの良いものがいいがそう都合よくあるか……

 

 人探し 1.2単位 人探しか……ただの人探しなら隠者の紫(ハーミットパープル)を使えば余裕で見つけられるが……単位のデカさが気がかりだ。保留。

 車両整備 0.7単位 クレイジー・ダイヤモンドなら『直す』ことは可能だが、この単位のデカさからするとかなり複雑で時間のかかるものだろう。時間を一切かけずに修復なんざしたら怪しまれそうだ……これはパス。

 用心棒 0.8単位 オイオイオイ、死ぬわこれ……いろんな意味で。用心棒だけならともかく……依頼内容よく読んだらこれゲイバーか! 油断したら命じゃなくてタマとられそうだ……それに何かの間違いで知り合いと会うようなことがあると気まずすぎるからやめておこう……

 

「うーむ、やっぱりまとまった単位が取れるようなものはどれもヤバい雰囲気だな」

 

『美味イ話ニハ裏ガ有ル……マア焦ル程デモ無インジャナイカ?』

 

 旨味があるからその分苦労する……ホワイトスネイクの言う通りだ。同じように無から有が生じるという事はない。……スタンドの中には明らかに物理法則を歪めまくっているものもあるが、基本的には等価交換。1を2にすることは出来ても0を1にすることはほぼ不可能だが……それを理解していてもオイシイ話を聞きたがるのが人間というもの。まあ武偵高では荒事は日常茶飯事だし全く危険じゃない依頼とかないんですけどね。楽勝な依頼でも半日かかるのはザラだ。それに警察がお手上げだったり、事件性がないとかで普通は相手にしないような変な依頼とかもばっかり回ってくるという点から推して図るべしだ。

 

「焦る必要はない、確かに一理ある……が! 危険な橋を渡るからこそ拾えるものもあるということだ」

 

『余リ感心ハシナイガナ……デ、良サゲナモノハアッタノカ?』

 

「まあな……ほら、こいつなんてどうだ? 荷物の輸送とか」

 

 武偵というのは何でも屋に近い。いつも切った張ったをしている荒くれもの集団、みたいなイメージが世間の一部には根付いているものの(武偵校の面々を見ているとあまり強く否定はできないが)強襲科(アサルト)に所属しているからといって毎回毎回テロリストの鎮圧を行っている訳ではない。それに依頼の難易度次第でその依頼を受けることのできないランクの武偵は任務から弾かれることもある。分不相応な依頼を受けることで身を危険に晒すことのないように、という措置だ。

 

『0.3単位……明日ノ午前、アルバイト欠員ノ為ピンチヒッター求ム……依頼主ハ新都城ノ店主カ』

 

 確か……アクアシティお台場の五階フードコートに店を構えている魚介醤油系ラーメンをウリにしている店だったか。それなら怪しい裏はないと見て間違いないだろう。

 

「そこら辺がギリギリまともそうなラインか。受ける依頼は決まったことだし早速亀の中でスタンドの特訓でも……」

 

『スタンドヲ研究スルノハ悪クハナイガ、睡眠ヲ適度ニ取レ……明日ハ早イ』

 

 

 

 

 

「今日は助かったぜ!」

 

「いえ、助けになったのであれば幸いです」

 

 台場一の名店という肩書だけあって、『新都城』の店内は午前中であるにもかかわらず席の七割が埋まっていた。自分が手伝ったのは客の波のピークではなかったが、もう少し時間が経って昼飯時になれば満席になるだろう……このてんてこまい加減であれば依頼として出すのも納得できる。

 

「今度は客として来てくれよな!」

 

「それは保証しかねますけど……今度友達連れてきますよ」

 

 本当は友人と言える存在はいないので先程の発言は自分の下らないプライドを守るための強がりに近いが、今度新都城に客として来るのはやぶさかではない。しかしあの場限りの制服とはいえ脱ぐのを少し惜しく思ってしまった……武偵高に入学しなかったらバイトに明け暮れる生活をしていたのだろうか。

 

『掟造、バイクヲ停メテイルノハ地下ダロウ?』

 

「わかってるっつーの、ちょっと夕飯の材料買ってからだ」

 

 スタンドが使えるとはいえ何も食べないと死ぬし、肉体に異常をきたす。そんなことが頭をよぎるとたとえスタンド使いであったとしても何でもできるわけではないし、寧ろできないことの方が多いと常日頃から思い知らされる。そもそもおおっぴらに使えるような能力など片手で数えるくらいしかないのではないだろうか。幾らスタンドは使いようによって応用が利くとは言えもう少し日常生活において役立つ能力が欲しい。

 

 

 買い物を終え、地下駐車場に停めておいたバイクのエンジン音が鳴るのを確かめ、ゆっくりと発進する。今年父親から譲られた……というよりも新しいバイクを買ったという事で以前使っていたものをおさがりとして息子である自分に押し付けてきたようなものだがなかなか乗心地はよくしっかり整備されている。本当はわざと押し付けるような形で大切なものを渡してきたのではないだろうかと邪推してしまうくらいだ。

 

「……あん? なんだありゃ?」

 

 レインボーブリッジを渡り始めておよそ数十メートルだろうか。視界の端に妙なものが映った。断じて海にゴジラがいたとかそういうアレではない。道路の方に変なものが走っていた。あれは確か……セグウェイとかいったか。金持ちが乗っているイメージが強く、その姿形はなんともアホっぽくてシュールに見えるやつだ。ただ自分の10メートル背後に迫っているセグウェイにはアホっぽい金持ちの代わりに無機質で、人を撃つのに感情を持たないUZIサブマシンガンがくっついていたが。

 

 

『そのバイクには 爆弾が仕掛けて ありやがります』

 

 

 今……何と言った。爆弾? 爆弾と言ったか? おふざけにしては冗談がキツイ。……そう思いたいが銃口が自分の頭部を寸分の狂いなく狙ってきている時点で残念ながら冗談の類ではないらしい。仮にフェイクだとしても家に無事に返すつもりはないようだ。機械音声からは感情など読み取れないがギラギラとどす黒く輝く殺意は伝わってきた。

 

「ホワイトスネイク、いけるか?」

 

『余裕ダ。任セロ』

 

 言葉を解さないやり取りの数秒後にはホワイトスネイクの拳がセグウェイのタイヤをぶち壊し、殴り飛ばされたセグウェイは回転しながらあっけなく爆散させた。これで当面の危機は去ったが……後は爆弾とやらが本当にあるのかを確かめるだけだが……機体の下部にくっつけられているな。任務の隙を突いて何者かが仕掛けていったというところか……こんなに分かりやすい位置にくっつけられているのにどうして気付かなかったのかと小一時間問い詰めてやりたい。

 

『掟造、コレモ弾キ飛バシテイインダナ?』

 

「できれば最終手段にしたいところだがな……俺の制服の中に入れてあるDISC入れてくれるか? そうそれ、内ポケに入れてるやつ……あ、右内ポケットだぞ」

 

 いざという時の為に内ポケットの中に入れておいてよかった……事前に戦闘があると知っているならともかく、普段からスタンドのDISCを差し込んでおく訳にはいかない……精神にかかる負荷がデカすぎるからだ。だが今日はツキがこちらに味方した。こいつの能力を使えば爆弾を起爆させずに容易に処理出来るッ!

 

「どこのどいつか知らないが……必ず落とし前は付けてもらう!」

 

 自分の頭に円盤が入り込んだ瞬間、爆弾のみが厚い氷で覆われた。しかもバイクの発する熱で一切溶けることなく凍り付き、それどころかますます氷はブ厚く大きくなっていく。万物を凍らせるスタンド……『ホワイト・アルバム』の能力である。今やったのは爆弾処理班がやっているように冷却する……それの更にスゴイ版といったところだ。他にもやりようはあることはあるがこれが一番確実で手っ取り早い!

 

「今だッ! 凍り付いた爆弾を海の方に吹っ飛ばせ!」

 

『ウオアアアアアアア!』

 

 遠目からは良く見えないが小さな水しぶきがあがって海の底へと沈んでいった。凍らせていなかったらどうなっていたかは……良くてスクラップと肉塊が一つづつ出来上がっていたかもしれない。そう思うとぞっとしないでもない。

 

 しかし冷静になってくると嫌でも考え事をしてしまうな。遂に新手のスタンド攻撃か! という日が来たのかと思ったが本当にスタンド使いであればわざわざこんな真似をする必要もない。恨みを買うにしても心当たりはない。敵は必要以上に作らないようにしてきたし、武偵歴二年のペーペーに何のいんねんがあるというのか。

 

 となると考えられることはひとつ。本当に偶然狙われた。非常に迷惑な話だがこれが一番ありえてしまうのが恐ろしい。昨今テロというものが珍しくない時代だ。誰がこういったことのターゲットになるか分かったものではない……いや待て。どうしてわざわざバイクなんかに爆弾を仕掛けた?こう言っちゃあなんだが、バイク一台吹っ飛ばしたところでたかが知れている。いいとこ一人、多くても二人始末できるというだけの話。となると自分そのものを狙ってきたのではなく……

 

「『武偵』である俺を狙ってきた……?」

 

 バイクのナンバーから特定の個人を調べる手段があるならばそこから情報を引き出すことも不可能ではない。が、自分がそこから犯人を割り出すことはほぼ不可能だ。こういうのは情報科(インフォルマ)の十八番だが……自分はこういったものを調べるのは得意ではない。スタンドが使えるという事とスタンド使い特有の超人的な理解力以外は一般人並みである。いや、性格は欠陥があるから一般人以下か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あちゃ~、失敗しちゃったかぁ。ただのBランク武偵だと思ってたんだけどアテが外れたかな~?」

 

「そのようだな。遠山金一を誘い出す計画の第一弾……初手で頓挫しているように私には見えるのだが」

 

「まーまージャンヌ、このくらいなら微調整入れて作戦続行すれば問題ないっしょ。でもまあ……」

 

 

 

「今度は潰す」

 

 

 その瞳はパソコンの画面……正確にはその中に映っているバイクに乗った青年をただじっと見つめていた。




緋弾のアリアは時系列一覧欲しくなる……欲しくならない?
理子は高1の時点でイ・ウーに所属してたっぽいけど実際はどうなんだろうか……
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