緋弾のアリア 円盤は静かに転輪する   作:新月の時を待つ人

4 / 11
 ルーキー日刊13位!?うせやろ?

 なんかこの2日の間に評価バーが赤くなったりUAやお気に入りが滅茶苦茶増えていて驚きましたが……読んでいただきありがとナス!


捜索

 猫が好きな人はいるだろうか。もしくは犬でもいい。もっと広い捉え方なら動物でも構わない。それらがもし忽然と姿を消してしまったらどうだろう。

 慌てるだろうか。悲しむだろうか。どうして、と憤るだろうか。反応は人それぞれではあるものの何の反応も示さないという事はないだろう。何の反応も示さず、気にも留めないというのならそういった人種は動物を飼うのに相応しくないだろう。もっとも、それ以前に失踪したことにすら気付かないだろうが……

 

 自分の場合は亀だ。その能力の有用性というのもあるがこのつぶらな目がたまらなく愛らし……くはならないな。よくよく見るとかなり目つきが悪い。が、どうにも愛着というものが湧いてくる不思議な顔つきをしている。それに人懐こく大人しい。それ故に自分はこの不思議な亀をいたく気に入っている。

 

「頼みますわよぉ~っ、学生さん! 絶対うちの子を見つけてくださいまし!」

 

「はあ、仕事ですしできる限りの努力はしますが……写真とその子のケージを見せていただいても構いませんかね?」

 

「ええ、ええ! いくらでも見ていって! 見つけてくださるのなら協力は惜しみませんわ!」

 

 自分はこのババ……ご婦人の依頼で飼い犬の捜索に駆り出されていた。話によるといつも猫かわいがりしている(犬なのに)愛犬が昨日失踪したとのこと。脱走ではなく失踪と決めつけるのはいかがなものかと思うが実際に忽然と姿を消してしまったのだから脱走ではなく失踪というほかあるまい。

 

 しかし猫探しならともかく犬探しか。猫は自由気ままにどこかへ行くことも多いので探してほしいという依頼はかなり寄せられるが犬探しは珍しい。まあ、昨今は犬を野外の小屋につないでおくのは珍しくなってきている……ましてやこの豪邸とくれば中で散歩が出来そうなくらいだ。

 

「ふーむ、自分で開けたようだな……賢い犬だ」

 

 本当にそうかは別として、そう言っておかないとこの手の女はヒステリーを起こしかねんからな……

 あとは情報だ……犬種はトイプードル、毛色はポピュラーなブラウン、首輪はなし。ほお、これが最近流行りのドッグウェアという奴か。犬が何考えてるかは知らんがあまり喜んでいるようには見えないな……色はライトグリーン。これだけ特徴的であれば先に見つけた誰かがこの子を保護しているかもしれない。『脱走』であればの話だが。

 

「本当にお願いしますわッ! わたくしの大切な家族なので!」

 

「大丈夫です、必ず見つけてきますよ……」

 

 自分の表情は鏡を見ていないのでわからないが、非常に不自然な作り笑いになっているだろう。

『ホスト』という職があるが……彼らはいわゆる『感情労働』とやらを求められるらしい……自分にはとてもできそうにない。今だけは彼らに対して尊敬の念を送れそうな気がした。

 

 

 

 

『アンナ事ガアッタトイウノニ今度ハ犬探シトハ随分精ガ出ルナ』

 

「たりめーだろ、単位はいくらあっても困らない……しかしこんなけったいな依頼受ける事になるとはな。単位と報酬がいいからって選ぶのミスったか?」

 

『反省点ダナ。1.0単位トナッテイルノハ、任務ソノモノヨリモ……アノ女ガ厄介ナノカモ理由カモナ』

 

 どうかんであるそれでも美味しい依頼があれば飛びつかなければならないのが武偵の悲しい性よ……まあスタンドが使える分、弾薬・刀剣代はある程度浮いてはいるが防刃制服や生活費はそうはいかない。ホワイトスネイクの言う通り仕事に精を出して稼がなければならないわけだ。

 

「しかし教務課に呼び出された時は心臓に悪かったぞ……スタンドが露見したのかと焦ったからな」

 

『余程大規模ナ能力デナケレバ、ソウソウバレハシナイガナ……』 

 

 あの襲撃の翌日、教務課の呼び出しを食らう羽目になってしまった。何でもあのバイクに仕掛けられた爆弾の件について聴取を行うため教務課に出頭するようにとのことだったが、武偵校三大危険地帯と呼ばれるだけあって非常に恐ろしく、プレッシャーが実際に重みを持つというのはこういう事なのだろう。……物怖じせずに普通に三回ノックした後に入ったら目の据わった尋問科の教諭に呆れられたが。

 

 肝心の聴取だが、あっさりと終わってしまった。個室の中で一対一の聴取という形ではあるものの、そこまで話すようなことはないので当然すぐに終わる。サブマシンガンのくっついたセグウェイに脅されました、からどこまで展開するというのか。尋問科の教諭……綴先生はその時どこで襲撃されたか、本当にバイクに爆弾は付けられていたのか、どれくらいの速度で走らせていたか……他にも事前にどのような依頼を受けていたかといった質問をされたがどれも後ろめたい事ではないので普通に答えたら綴先生に頭を掻きながら困ったような表情をされた。

 

『あんたさぁー……ほかに何か知らないの? 如月ィ』

 

 あの目で見られた時はバイクに爆弾を仕掛けられたと機械音声に告げられた時よりも身の危険を感じた……日本で五指に入る尋問の名手の呼び声は伊達ではないという事か。相手から情報を抜き出すことにかけてこの人に負けるつもりは一切ないが、もしかしたらこの女性教師の方が自分以上にホワイトスネイクを上手く使いこなせるんじゃないだろうか、などと戦々恐々としていたせいでその言葉をただの確認の意味を持った発言だと自分が認識できずにボケっとしていたが、

 

『別に知らないこと言えって訳じゃぁないんだ、先生も暇じゃないから知らないならさっさと帰んなー』

 

 と態度を一転させるものだから自分は荷物を持ってそそくさと綴教諭の個室から退出した……もしあれが本気で疑っているとかそういった意味であの言葉を吐いたのであれば何をされたか……よくわからん臭いのする紙巻タバコで根性焼きされたり、ケツにツララを突っ込まれる方がまだマシかもしれない事を実行に移したかもしれない。(尤も、どちらもされたくはないが……)

 

 

「熊の巣穴に放り込まれたような気分だったな……」

 

『聞クトコロニヨルト、熊ヲ狩ッタ教師モ居ルラシイナ……アノ部屋ノ方ガ獣ノ巣穴ヨリ危険ダ』

 

 今更そんな情報は聞きたくはなかったな……今度教務課に行く機会があったらブルって膝が小鹿よりも不安定になってしまう。いや、そんな恐ろしい事を考える暇があったら犬を探さなくては。

 

「足跡は……こっちか」

 

 ハイウェイ・スターであらかじめ対象の臭い……今回のケースでは犬の臭いを覚え、住宅街の構造はスマートフォンのマップ機能で把握する。より詳細で正確な情報を得る為に隠者の紫を持ってくることも考えたが、対象の追跡さえできればマップ機能以外は必要ないし、能力を使用することで発生する消耗が小さくても積もり積もれば大きくなる。なのでもう一枚は常時使用するタイプのスタンドではなく、いざという時に護身用として使える近接パワー型のスタンドDISCを持ってきている。

 

 スマートフォンを見ながら住宅街の入り組んでいて同じような道を何度も通りながら先行させているハイウェイ・スターの足跡を追跡していると、臭いは住宅街にぽつりとある公園に続いていた。だが獣の臭いだけではなくほんのりとアイスクリームを作る時の……そう、バニラの香りがした。

 

 そのバニラの香りを発する先客がしゃがんでトイプードルを撫でていた。俗に言うロリータ・ファッションと分類されるであろう特徴を武偵校の制服に盛り込んだ改造を施し、蜂蜜の上澄みのような金髪をツインテールにしている。身長183cmの自分と比べて目分量で行くとだいたい30~40cm程背丈の低い。あの目立つ風貌には覚えがある。確か名前は……

 

「およ? イゾウだー! どしたの?」

 

 峰理子。専門科目が自分と同じ探偵科だったので見覚えがある。普段は能天気でアホそうに見えるが、実際はAランクという優秀な武偵だ。クラスは別なので顔を合わせる機会はそう多くはないが印象的な外見とエキセントリックな渾名のつけ方のせいでかなりのインパクトがあった。自分は別に人斬りではないし、挑発された弟分を止めたりもしない。

 

「峰さんか……なぜここへ?」

 

「知らないの? あのオバさんいろんな武偵に声かけてるらしいよー?」

 

「ああ、成程……経済力はありそうだからな」

 

 あの犬がそこまで大事なのか……我が子のようにかわいがっていればそれだけ全力で動くのも無理はない。ただ、もう少し自由にしてやった方が犬にとって幸せな気もするが。

 

「それじゃ報酬は先払いで既に受け取っているし、さっさと帰るかな……」

 

「待った待った、味気ないなぁーイゾウは! そんなんじゃ女の子にモテないぞー!」

 

 余計なお世話だ。だが話し相手程度はしてやってもいいか……どうせ家に戻っても暇を持て余している。

 

「女性の扱いはそこまで上手ではありませんが、話相手程度であれば」

 

「堅い! 堅いよイゾウ! 他人行儀すぎぃー! あと『理子』でいいよ! 名字で呼ばれるのキライー!」

 

 随分と元気だな……こうも距離をぐいぐい詰められるとこっちが気後れする。記憶の限りではそこまで濃い付き合いをした覚えはないが、そこまで気に入られる要因があっただろうか? それともただ単に彼女がこういったことにかけては超一流なだけか?

 

「では改めて……理子、イゾウ呼びはないぜ。もうちょいイカした奴を頼む!」

 

 本名の掟造(ていぞう)ですら爺臭い響きだというのにイゾウ。元よりも更に古臭い。古すぎて黴の臭いが漂ってくる。彼女が自分をどう見ているのか大変興味がある。

 

「え~? いいと思うんだけどなぁイゾウ。それがお気に召さないのであれば……うーん……」

 

 そこまで悩むのであればイゾウ呼びをされるのもやぶさかではないが……理子は指を側頭部に当てて円を描きながらうんうん唸っている。やっぱいいや、などと口走る事のできる空気ではない。

 

「フルネームが如月掟造だから……全部音読みにするとジョゲツ・ジョウゾウ……そうだ! 同じ音の部分を連続させて『ジョジョ』というのはどうッ!?」

 

「ジョジョ……ふむ、どういう訳かしっくりとくるな」

 

 今まで意識していなかったが『ジョ』と読める部分が二か所ある……理子のセンスがエキセントリックだという評価は訂正しよう。なかなかにハイセンスじゃあないか。

 

 

 

 その後、好きな食べ物や普段聴いている音楽、今期どのアニメ作品を視聴すべきとか……そんなたわいもない会話が続いた。そうこうしているうちに空に赤みが差し、青空と混じり紫色の部分が生まれる。もうそんな時間か。

 

「そんじゃ積みゲーがあるから帰るんで後はヨロ!」

 

 夕焼けに照らされながら理子は敬礼のポーズをとって颯爽と茂みを飛び越えていく。飛んだ勢いで短いスカートの中が見えそうになったので理子の将来が少し不安になる。……ん?

 

 

『後はヨロ』 峰理子は今、確かにそう言ったか?

 

 

 積みゲーの部分はわかる。あいつがオタク、俗に言うギャルゲーマーなのは見たことがあるから知っている。あそこまでおおっぴらにやるのは男子でも難しいのに何があそこまで理子を引き付けるのかは理解できないが何かあるのだろう。だが他に何が……!?

 自分の目の前に……犬がいるな。理子が撫でまわしていたトイプードルがいる。それもライトグリーンの服を着ている。毛の色はブラウン。

 

「チクショウ……! 依頼の報告、全部押し付けられたッ!」

 

『マ、私以外ト話ス機会ガ巡ッテ来タト考エレバ安イダロウ……』

 

 どっちみちやることだからそこまで気にはしていないが……実際に発見したのと、そうでないのでは書類の量が違う。一杯食わされたな……

 

『折角見目麗シイ女子高生ト会話出来タノダカラ、モウ少シ喜ベヨ……ナァ?』

 

 この野郎、薄ら笑い浮かべてやがる……あっ、歯を剥き出しにして笑い始めやがった。そこまで面白かったか。

 

「これだからホワイトスネイクは……ほらワンちゃん、行くぞー」

 

 件の犬を抱きかかえようとしたら抵抗して……ってこいつオスか! (理子)に撫でられるのはよくって自分に触られるのは嫌と。まあ同性としては気持ちはわからんでもないが……連れて帰るのが仕事なので少し手荒くなってしまうが、こうする!

 

「ホワイトスネイク! 『十分間大人しくなるDISC』を差し込め!」

 

 笑いながらホワイトスネイクが銀色のDISCを犬の頭部に差し込む。じたばたして持ち上げられるまいとしていた犬が打って変わって静かになった。これでお互い怪我をせずに済む。

 

『クヒッ、クハハッ……ココマデ笑ッタノハ久々ダ……』

 

「久々だと? 嘘をつくな……武藤と遠山がランバージャックをやった時、俺が『青春だなぁ』と呟いた直後に笑っていたのを忘れはしないぞ」

 

 あの後二人は友人になったらしい。そういう殴り合いから芽生える有情とか、気兼ねなく話せる友人が欲しかった……今度誰かに喧嘩を吹っ掛けてみるか? いや、それで出来るのは悪友か。

 




 まともにホワイトスネイクの能力使うの今回が初めてなの草
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。