緋弾のアリア 円盤は静かに転輪する 作:新月の時を待つ人
ってな訳でジョジョ六部のアニメが終わる前に今作を完結させることを目標にやっていきたいと思います(意識低い系)
「それでキンジ……どうしたいんだ?」
「アリアがここから出ていけば何でもいい……俺の平穏をブチ壊されてたまるか」
ふむ、何でもすると来たか。そこまで嫌なら手段は一つ……
「お前がこの部屋を出れば間違いなくアリアはこの第三男子寮から出ていくだろうな」
「トンチを効かせてどうする!」
『アリアがここから出ていく』であろう案を出すという要望には応えているつもりだが、キンジがここに留まり、尚且つアリアのみを排除するとなると……もはや法を犯す位はしないと追い出せないだろう。それをガチガチの戦闘特化型の武偵であるアリアに対して遂行可能どうかはともかくとして。
「単にお前がアリアの提案を飲んで強襲科に行くって首を縦に振りゃあ簡単に済む話だ……俺もいつだってお前をフォローできるとは限らん」
キンジは無言で眉間に皺を寄せた。頭では理解していても納得はできない……そんなところか。
普通の人間は初っ端にあんなことを言われれば態度も硬くなる。去年の海難事故で実の兄を亡くしている――――武偵活動に前向きになれ、と言っても逆効果。より意固地になるのは火を見るよりも明らかだ。キンジが渋るのも無理もないか。
「ま、お前とアリアの根比べはアリアが勝つ方に賭けるぜ。武藤と不知火にも吹っかけよっかなー……」
「お、おいッ、見捨てんのか!?」
友人を見捨てるつもりはない。なので正確には――――
「見捨てるというのは正しくないな……『
「……マジで頼むぞ」
正確には『人生は自分次第でどうとでもなる』という意味らしいがそれを言ったところで火に油を注ぐだけだ。武偵憲章にも『武偵は自立せよ。要請なき手出しは無用とのこと』とある。
が、昨晩キンジがアリアの真っ裸を目に焼き付けたお陰で二段ベッドの一部が剣呑なことになっている。
『……コノ私ノ能力デアレバ一発ダロウ?』
脳内にホワイトスネイクの声が響く。確かにその通りだ。適当に『キンジに対して関心を抱かなくなる』DISCを入れてもいいし、部分的に記憶を抜き取ってもいい。『アリアの命令を従順に聞く』DISCをキンジに入れてしまえば表面上はお互いWIN-WINで誰も不幸にはならない……結果だけ見れば、と付くが。
もしそれを実行すれば自分は人として決定的に何かが欠落するだろう。一人殺したら何人でも際限なく殺せる、といったタブーを破ればそれ以降はなんとも思わなくなるといった一般的な理屈ではなく、自分がスタンド使いとして持つ感覚でそれを理解できてしまうのだ。一度枷を外したらそれこそ今までの比ではない能力を振るうことが出来るだろう。しかしそのために自分を精神的怪物に変貌させなければならない。
『マ、私ハ掟造ノ味方ダ……無理ニ勧メルツモリハナイ』
勝手に記憶を弄りまわして相手の尊厳を踏みにじるとか、スタンド能力が露見して周囲から気味悪がられる以上に自分の歯止めが利かなくなってしまうことが怖い。何より
アリアは朝っぱらから大声を出して朝食をせがむわ、仔ライオンを彷彿とさせる犬歯を剥き出しにしてキンジの手を噛むわ、挙句の果てに同じタイミングでここを出ることを嫌がるキンジの足に引っ付いて引き摺られながら寮を出ていった。余程自分の目に付くところにキンジを置いておきたいらしい。
「……なんで如月は絡まれないんだよ」
探偵科の講義を終え、専門棟から去ろうとキンジと歩いているとふとそう言われ、横目で抗議のサインを送ってきた。
「キンジが抵抗しすぎなんじゃねーか? 朝も言ったが、どっかで妥協しないと俺もお前も共倒れだ……」
「それにしたって俺が9に対して如月が1ぐらいの割合でアリアの被害を被るのはおかしいだろ!?」
「別におかしくはないだろ……そもそもアイツ、お前の事を追っかけて来たみたいだから俺に構ってばっかりの方がおかしくね?」
キンジはうぐぅ、と息を漏らした。少々強い語気で正論をぶつけてしまったが、実際自分はキンジのついでにドレイ呼ばわりされたようなものなので割と他人事な部分があるのも事実だ。友人でルームメイトだからこの状況になっても助け船を出しているのであって、完全に他人事であれば助けていない自信がある。不知火や武藤もキンジの友人だが、特に助けの手を差し伸べている訳ではないという点を鑑みるに……武偵というのは情に厚い部分がないとは言わないが、結構ドライだ。
「ま、アイツに一旦アメを差し出すというのもアリだ……一度だけでいいから強襲科に戻る方がいい」
押してもだめなら引いてみろ。硬いもの同士をぶつければどちらか砕け散るのは自明の理であり、そうならないよう間に入って上手く受け流す。この場合はアリアにキンジを諦めさせ、キンジと自分の平穏を取り戻す……というのが表向きの目的。本当の目的は――――
「キーンジ」
「なんで……お前がここにいるんだよ……」
友人を売る(至言)何故アリアがここに現れたのか……それは自分が探偵科の講義が終わる時間を教えたというのが答えだ。
「喜べよキンジ。美少女転校生がお前の為に講義が終わるのを待っててくれたんだぜ?」
「喜ぶかバカ。銃ぶっ放すような奴をありがたがる奴がどこにいる」
何も自身の保身の為に友人を売ったというつもりはない。アリアが自分を名指しにして依頼してきたので断るに断れなかったのだ。武偵が武偵に対して依頼を出すという事例は珍しくはないが、名指しの依頼は基本的には実力者に対しての『委任』だ。理由なく断れば信用に関わるし、武偵の世界は信用無しで生き抜くには少々厳しいところがある。……アリアはもっと直情型の武偵だという勝手な印象を抱いていたのでここまでキンジや自分に対して効果的な手段に出るというのは少々意外でもあった。
当然キンジの要望も叶えるつもりではある。自分の数少ない友人を無碍にする程自分は外道ではないし、何かの心変わりでキンジがアリアに靡くのであればそれはそれでよい。
そしてアリアの依頼内容はあくまでも『キンジがアリアのパートナーになるようにサポートする事』だ。少し下世話だが、アリアからは報酬を前払いで受け取っているので適当な仕事をするつもりは更々ない。
ただ、サポートの程度までは指定されていないので友人として不自然ではない程度の助言、という形でサポートする。アリアも、キンジも。
「俺は用事があるし先に帰ってるわ。また後でな」
悠々と歩を進める背後でキンジの罵声が飛んでくるが気にしないことにする。お互いの為に。
『整理整頓ハシッカリト……タイヤノ中ニ放リ込ムナド論外ダ』
DISCを入れる為だけにタイヤを用意するシチュエーションというものが今一つ想像の及ばないところにあるというのをこいつは理解した上で口に出しているのだろうか。
キンジをアリアに宛がって寮へと戻り、亀の中でDISCの整理整頓に勤しんでいた。一つ一つあるかどうか確認して『エニグマの紙』の中に収納していく。ホワイトアルバム、ハイウェイスター、ハーミットパープル……
『掟造、アノ二人ヲ如何スルツモリダ?』
クラフトワーク、スカイ・ハイ、キラークイーン……最初に不用意に入れて気絶した為、余程の自体でなければ絶対に使いたくはないザ・ワールドのDISCをこのあたりに入れておいたはずだが……
『聞イテイルノカ? コノド低脳ガ……』
「おい今なんつった?」
ド腐れ脳味噌はまだ許せるがド低脳は聞き捨て難い。ヌケサクであったり玉無しと言われた事もあったが……ド低脳と来たか。
『マアソウ怒ルンジャアナイ……私ガ言イタイノハダナ、コノママデハイズレ……スタンドガ露見スル可能性ガアル、トイウコトダ』
「まあ、そうだろうな」
『随分ト自信ガアルナ……自分ノ首ヲ絞メルゾ?』
ホワイトスネイクは普段のからかうような顔つきではなく、不機嫌そうな顔をしている。いかにも物申しがあるといった風体だったので少々意外だった。というのもホワイトスネイクがここまで不満をぶちまけてくるというのは珍しく、普段は何を考えているか読めないのでここまで感情を露にするのは数えるほどしかなかったからである。
「バレた時にどう対処するかも大事だが、そもそもバレなけりゃ問題はない。……スマン、少し意地張った。これは確信に近い予感だが確実にバレるだろうな。例えどれだけ完璧に証拠を消し、上手く立ち回ろうともそうなる『運命』をひしひしと感じるんだ……」
『覚悟トハ幸福デアル、トデモ言イ出スツモリカ?』
そのような事はありえない。生きとし生ける万物は死が運命付けられ、形あるものは何れ壊れゆく。それを理解しながらも人々は恐れ、忌避する。いついかなる時でもソレが付いて回ってくると知りながらもそこからできる限り逃れようともがき続ける。あまり知られてはいないが、覚悟という言葉は仏教においては心理を悟るという意味を持つ。それは果たして幸福なのだろうか。
「そんな大層な事を言うつもりはねえよ。俺が思うよりバレる日が早く来るってだけの話だ。それ以上に警戒せにゃならんのは……『矢』だ」
未だに実家に置いてある劇物がこの世に一本しかないという保証はどこにもない。というよりも両親がどこぞの骨董品屋で買ってきたという時点であれの元々の所有者がどこぞにいたと考えると複数本存在する、若しくは代替品があるというのは想像に難くない。最悪なのはその代替品の場所・形状・所有者のどれも把握できていないというのが痛い。
『フム……安心スルトイイ、掟造。オ前ノスタンドデアルコノ私、『ホワイトスネイク』ハ最高ノスタンドデアルト自負シテイル……』
ここまでハッキリ言い切るとは。自信満々というか、ナルシシズムが強いというか……自分そのものではないにせよ自分の半身に励まされるというのはなんとも不思議な感覚であり、ある種根拠のない自己解決のような気もするが、自分も心の奥底で何者にも劣ることは有り得ない……無意識の内側に底知れぬ傲慢さと絶対的自信が眠っていると一度意識してしまうと自分というものに対して嫌気がさす。
「……そんな事を言うんだから間違いなくお前は俺のスタンドだよ、ホワイトスネイク」
『フン……掟造ノソウイッタ隠シ切レナイ傲慢サハ間違イナクコノ私ノ本体ダナ』
……本当に嫌な通じ合いだ。ホワイトスネイクの口角は不気味に吊り上がっているが、自分の口角も間違いなく同じように……吊り上がっているに違いない。
そして――――――アリアが病院に運び込まれたという一報が飛び込んできたのは三日後の話だった。
どんな人間にもナルシシズムは存在するし……ま、多少はね?(ヒスキンちゃん様)
あとルパンの娘で真っ先に理子を思い浮かべた人は僕と握手(夏なので汗まみれ)