The New Wolrd ~404 not found~ 作:天海望月
416は海面に立つ人影に対して複数発砲する。
銃に取り付けられたサプレッサーによって、発砲音の代わりに間抜けな音しか鳴らないが、威力は生身の人間を殺傷するには十分である。
だが放たれた銃弾は、対象にぶつかると同時に甲高い金属音を立てて跳ね返る。跳弾したのだ。
「チッ、人間メ……」
「クソッ、ウロボロスは倒したはずじゃ」
双方同時に悪態をつく。
416の横から、響が話しかけてくる。
「君が何と勘違いしてるのかわからないけど、奴は軽巡棲鬼だ」
「けい……じゅん……?」
聞きなれない単語に416は多少戸惑うが、今の危機的状況をすぐに思い出す。
「って、そんなことはどうでもいいのよ!早く逃げるわよ!」
「分かってる!」
二人は踵を返し、森の中へと走り出す。
持っている武器が通用しない以上、ここは逃げるしかないのだ。
「逃ガシハシナイ!」
だが易々と逃がしてくれるはずはない。響が“軽巡棲鬼”と形容したあの敵は、すぐに砂浜に上陸すると、二人が遁走した場所へと向かう。
だが。
「アッ」
砂浜に足を無様に引っかけ、軽巡棲鬼は前のめりに転んでしまう。
「今のうち!」
そうして彼女が顔を上げたときには、
「アレ?」
二人の姿はどこにも見当たらなかった。
「逃ゲラレタ……」
◆ ◆ ◆
二人が逃げ込んだ森の中。
しばらく逃げて追手がないことを確認した後、二人は安全を確立して座り込んだ。
「追手無し、どうやら逃げれたみたいね」
「そうだね。助かった」
迫る脅威をしのぎ、416はフル回転するCPUと冷却ファンを落ち着かせる。
一方の響も、ほっと一息つく。
響は背負っていたオブジェを降ろすと、途端に力が抜けたように木にもたれこむ。
「あなた……大丈夫なの?」
「ん……、ああ、大丈夫。それより、色々聞きたいことがあるんだけど」
「それは私も同じよ」
そう言うと、二人は同時に口を開く。
「あなた、一体何?」「君、一体何?」
二人の間に少しの空白が生まれる。
「あー、えっと、私から話した方がいいのかな」
「……お願いするわ」
多少の混乱が生まれたものの、響は気を遣って自ら説明を申し出る。
「まず、私の名前は響。横須賀鎮守府で艦娘をやっている」
「艦娘?」
「……君、艦娘を知らないとでも?」
「ええ」
「……」
落胆するかのように響が顔を覆う。
「まあ端的に言うと、私たち艦娘は、この世界の領海権を脅かす“深海棲艦”から海を守るために組織された存在だよ」
「深海棲艦……。鉄血とは違うのかしら?」
「ん……、多分違うと思う。その鉄血がよく分からないからはっきり言えないけど」
「え、あなた鉄血を知らないとでも?」
響が頷く。
「嘘、じゃあコーラップスは?」
響は首を横に振る。
「第三次世界大戦!」
「第二次じゃないのかい?」
「はぁぁ??」
おかしい。話が全くかみ合わない。
この状況に416の混乱は加速する。
「次、私の質問していいかい?」
「え、ええ。いいわよ」
「まず一つ。君の名前は?」
「416よ」
その言葉を聞いて、響が首をかしげる。
「……それ、本当の名前かい?」
「ええ。これ以外で私を呼ぶことは――許さないわ」
ふと脳裏に、“HKM4”という言葉が浮かんだが、すぐにもみ消した。
「じゃあ、君、いったい何なんだい?艦娘のようでも、民間人にも見えないし」
「何って……」
416は一瞬戸惑いを見せるが、すぐに自信をもって答える。
「私は戦術人形よ。それ以上でも、それ以下でもないわ」
「だから、その人形っていうのがよく分からないんだ」
「ああー……、まあ、あなたが説明した“艦娘”っていうのと大体同じようなものよ。私たちはもっと多くの用途に使われるけど」
「なるほど、同業者ってわけか。でも、聞いたことないし、なんというか、こう、生きる時代が違うというか」
「生きる時代が違う……。なるほど」
ふと何か思いついたかのように、416が声を上げる。
「響。今、何年?」
「201X年だけど」
「……なるほど」
そう言って416は座ったまま俯く。
「私、俗に言う“タイムスリップ”みたいなのをしたわけね……」
「タイムスリップ……!?」
本気で悩み始めた416。それに対して、響は、
「ターミネーターか……!」
目をキラキラと光らせていた。
別に全裸で登場するわけでもありませんし、溶鉱炉に沈む予定もありません
響「I'll be backとかやるのかい!?」
416「……はぁ?」