The New Wolrd ~404 not found~   作:天海望月

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“鎮守府”へ

「とりあえず、私は鎮守府に帰らなきゃならないんだけど……。416、君も来るかい?」

 

「鎮守府……。あなたたちの基地かしら」

 

「そんなものだね」

 

 416はこれを好機と思う。

 

 もし本当に彼女が201X年にタイムスリップなりしてしまったとすれば、彼女には行く当てがない。

 

 行く当てがない自立人形などそれこそスクラップ同然である。

 

 鎮守府というのも、規模は違うがグリフィンと同じような仕事であるようだし、ちょうどいい。

 

 これほど魅力的な案件は他にはないだろう。

 

「ええ。ぜひ連れて行ってほしいわ」

 

「分かった。ターミネーターゲットだ」

 

 そういうと響はオブジェからタブレット端末を取り出した。

 

「さっきから思ってたんだけど、その煙突みたいなオブジェは一体?」

 

「ああ。これは“艤装”と言って、私たち艦娘に力を与えてくれる凄い装置だ」

 

 逆にこれがない艦娘は一般人とほとんど変わらないけどね、と響は続けた。

 

「なるほど。私にとっての銃みたいなものね」

 

 タブレット端末を操作しつつ、響が話す。

 

「その拳銃が君にとっての“艤装”なのかい?」

 

「今は、ね」

 

 そういうと、416は腰に提げていたポーチからライフルを取り出した。

 

 ライフルといっても、マガジン挿入部から先は真っ二つに折れ、あまりにも不格好な姿となっていた。

 

「これが私にとっての本当の銃よ。一見スクラップだけど、機関部さえ残っていれば烙印システムはまた機能してくれる。修理できれば元通りよ」

 

 戦術人形にとって自分の銃は己の身体の一部といっても過言ではない。

 

 なぜなら、“烙印システム”があるためだ。

 

 烙印システムとは、簡単に言えば“人形と銃に特別な繋がりを持たせる技術”である。

 

 人形が自分と繋がりがある銃を使えば、運用効率や命中率が大幅に上がるなど、生身の人間とは比較にならないほどの戦闘能力を有することが出来る。

 

 それに、離れた場所にある銃も、それがどこにあるか感知することさえできるのだ。

 

 烙印システムは機関部に搭載されており、それ以外の構造は通常の銃と同じなため、機関部さえ残っていればバックアップデータがなくとも元通りに修理できる。

 

「まあ、修理できれば、ね……」

 

 だが416はエンジニアではない。

 

 そのため、機関部が残っていてたとしても意味がないのだ。

 

「それなら多分大丈夫だよ」

 

「なぜかしら?」

 

「うちには優秀なエンジニアがいるんだ。その人は私たちの艤装も作れる人だし、その銃くらい簡単に直してくれるさ」

 

「だといいわね……」

 

 すると、響がいままで端末に向けていた顔をこちらに向けた。

 

「連絡が取れたよ。うちの憲兵が迎えに来てくれるって」

 

「そう。私のことは伝えてあるわよね?」

 

「うん。保護した扱いにはなってるけど」

 

「保護、ねぇ……」

 

 それから数時間後。周囲の警戒を怠らず待機していると、森の中から二人の人影が現れた。

 

 416はそれに銃を抜いて威嚇するが、響の静止によって彼らが“憲兵”であることが分かった。

 

「響さんと、416さんですね。すでに周囲の安全は確認済みです。さあ、こちらへ」

 

「全く、待ちくたびれたわ」

 

「すいません。横須賀からここは距離がありますので」

 

 憲兵の一人が申し訳なさそうに言った。

 

 彼らの先導に従い、二人は歩き出す。

 

 しばらく歩くと、その先に黒塗りの高級車が見えてきた。

 

 憲兵たちが後部座席のドアを開き、響がそこに乗り込むのを見て、416もそれに続く。

 

 憲兵が運転席と助手席に乗り込んだ後、エンジンが掛かる。

 

 車が発進した。

 

 しばらくすると木に覆われていた視界も晴れ、綺麗な街並みが見えてくる。

 

 ――いつも見ている、荒れた街とは比べものにならないほどに綺麗だった。

 

 ネオンサインが煌々ときらめき、摩天楼のように高々とそびえ立つビルはそこにはなく、代わりに土地を広く利用し、416がいた時代では土地不足で見ることのできなかった田畑が広がっていた。

 

 建物もビルは少なく、小さな家が点々と並んでいる。

 

 あの時代であったなら、一生見ることはかなわない、のどかな風景だった。

 

「綺麗ね……」

 

「そうかい?」

 

「ええ。私がいた時代は世界が荒れ果てて、人類が住める領域がとても狭くなっていたから。だから、こんな落ち着いた、広々とした街なんて初めてよ」

 

「なるほど、未来から来た人の言う言葉は違うね。流石ターミネーター」

 

「さっきから言ってるターミネーターって何よ?」

 

 そうして416は暗くなりゆく街の風景を堪能していると、疲れが出てきたのかウトウトとしてしまう。

 

 やがてその睡魔に耐えられなくなり、416はスリープモードに入るのだった。

 

 ◆ ◆ ◆

 

 時は変わって朝。

 

 416は大きなベッドの上で横たわっていた。

 

「ここは……」

 

 寝起きで寝ぼけているということもあり、いまいち今の状況が読み込めない416。

 

 部屋の内装はシンプルで、漆喰の壁とフローリングが広がり、それなりに大きい机と二人分の椅子。さながら旅館の一室のようである。

 

 あくびを抑えながら、彼女はとりあえず部屋の外に出ることにした。

 

 扉を開けると広い廊下と対面する。

 

 一直線に続く廊下は、この建物の大きさを物語る。

 

「これは……グリフィンの本部並ね」

 

 レンガ造りの廊下を特に理由もなく歩き始めた416。

 

 廊下の角を曲がると、突然何かとぶつかってしまった。

 

「あだっ」

 

「痛っ!……ちょっと!気をつけなさいよ!廊下を曲がるときはちゃんと……」

 

「……響?――じゃないわね」

 

 響とよく似た服装の少女だった。

 

 服装の差異はあまりないが、響の白い髪とは対照的に、彼女は紫がかった黒い長髪を持っていた。

 

 少女はその黒色の瞳を416に向けると、強い口調で怒り出した。

 

 だが、あまり説得力がない。なぜなら、

 

「レディーに対して無礼よ!」

 

「淑女にぶつかるなんて……」

 

 と“レディー”のみにこだわっているのに加え、目に若干の涙を浮かべているためだ。

 

 よく見れば額が赤くなっている。416の身体の金具にぶつかったのだろう。

 

「痛かったのね。私の不注意だったわ」

 

「えっ?……あ!なでなでしないでってば!」

 

 そうして馴れ合っていると、少女がやって来た後ろから響が現れた。

 

「暁なにやって……。あ、416。こんなところにいたんだね」

 

「響?」

 

「うちの司令官が君を呼んでいたんだ。一緒に来てくれるかい?」

 

「ええ……、いいけど」

 

 響は416から暁と呼んだ少女を引きはがすと、「こっちだよ」と言って歩き出す。

 

 416はとりあえず何もすることがないので、大人しくそれに付いていくことにした。

 

「ところで暁。昨日言ってたターミネーターはあの人だよ」

 

「えーっ!」

 

 すると暁が振り返り、416に向かって、

 

「じゃああなたがターミネーターの416さん!?触ってもいい!?」

 

「え、はぁ……。別にいいわよ」

 

「やったぁ!」

 

 そう言って416に引っ付き始めた。

 

「響、これどうにかできないの?」

 

「……本当は私も触れたいところなんだ、ターミネーターに。分かってほしい」

 

「……?」

 

 程なくして、三人は大きな扉の前に到着する。

 

「ここが司令官の部屋だよ。同行できるのは私だけだからよろしくね」

 

「えっ!私は?」

 

「暁は大人の女性でしょ」

 

「――はっ!そうよ、私はレディーなの!」

 

 暁が416から離れた。

 

「ごめんなさい、私としたことが」

 

 416は目をパチクリとさせる。

 

 暁はぺこりと礼をして去っていった。

 

「……一体何なの?」

 

「こじらせてるんだよ、暁は」

 

 響が扉を叩く。

 

「司令官。連れてきたよ」

 

「分かった。入りなさい」

 

 そうして彼女が扉を開くと、

 

「ようこそ、416君!君には聞きたいことが山ほどある!」

 

「ど、どうも?」

 

 白装束の男性にやたらハイテンションで迎えられた。




CPU=心臓、脳
ファン=肺
スリープモード=睡眠

みたいな感じで、PCパーツと人の部位を絡めてます


響「今日416って人連れてきたんだけど、実はあの人ターミネーターなんだ」

暁「えっ!!……ふ、ふん!レディーはターミネーターなんかに興味はないのよ!」

響「そんなに目をキラキラさせてたら説得力ないよ……」
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