The New Wolrd ~404 not found~ 作:天海望月
深海棲艦の襲撃から約二時間たった後。
海の向こうから、またもや複数の影が現れる。
だが今度はサメのような姿はしていない。人型を取っていた。
少しすると特徴も分かるほどに近づいてきた。
六人の姿があった。
一人は、巫女服のようなものを着た、茶色い長髪の女性。
一人は、首元にマフラーを巻き、金髪をリボンで飾った、紅色を瞳に宿した少女。
一人は、はちまきを巻き黒髪ショートカットの、やたら大きな艤装を背負った女性。
一人は、茶髪ツインテールの、チャイナドレスのような服を着た女性。
一人は、赤を基調とした袴と弓道の防具を身に着け、大きな弓を持つ、長髪の女性。
一人は、彼女も弓道の防具を身に着け、迷彩服のような袴を着た茶髪ツインテールの女性。
彼女たちは見事な隊列を組みながら、港へ近づいて来る。
みるみるうちに彼女らは近付いてきて、港に着いてからはすぐ上陸した。
「大丈夫ですか!?」
先頭の巫女服の女性が、先に上がっていた三人の元に向かって駆け寄ってくる。
息を切らしていて、どうやら急いでこの鎮守府に向かってきたようである。
「はっ、はい!大丈夫です!416さんのおかげで、あっさり終わっちゃいました」
「416……?ああ、駆逐艦の皆がターミネーターだとか呼んでるあの人ですね」
阿武隈が頷く。
「その416さんは、今どちらにいるんでしょうか?イ級を排除してくれたことに、お礼を言いたくて」
「416さんなら、あっちの倉庫に向かいましたよ」
「あそこというと、武器庫ですね。ありがとうございます」
そういうと、巫女服の女性は巨大な艤装を背負いながら、身軽そうに走っていった。
◆ ◆ ◆
「この中に、まだいるのでしょうか……」
コンクリートを靴底で鳴らしながら、巫女服の女性は倉庫の奥へと進んでいく。
倉庫にはいくつものコンテナが陳列しており、その中には艦娘たちが使用する兵器が入っている。
所々にドアで仕切られた部屋が壁際にあるが、そこは憲兵らが使用する銃器が収納されているガンロッカーとなっている。
知り得た情報によれば、416は銃器を使うようなので、そのどこかにいるはずだろう。
「416さん?どちらにいるのでしょうかー!お礼がしたいのですがー!」
そうして416を探して倉庫の中を歩いていると、ある一つの扉が開いたままになっているのに気が付いた。
「あら?珍しいわね」
倉庫は常に綺麗に清掃されており、隅から隅まで点検も行き届いているはずだ。
もちろんドアも全て閉め切られている。
最初は担当者のミスかと思ったが、いつも完璧に清掃されているので、まさか今日に限ってそんなことが起こるとは思えない。
となると、あの部屋は誰かが入ってその後扉を閉め忘れたか、もしくは――
「まさか、416さんがあそこに?」
彼女はその部屋の前へと向かい、開いている扉の隙間から中の様子をうかがう。
――やはりというべきか、中には416の姿があった。
だが、彼女の様子がおかしかった。
416は、力なく地面に突っ伏していたのだ。
「416さん!?やっぱりイ級を相手にして怪我をして……!」
「あ……あなた、一体……。――悪いわ、ね。CPUが上手く、動いてない、みたい」
「そっ、そんなっ416さん!すぐに医務室へ……、いえ、本当にロボットなら、明石さんに?」
「何を、心配して……いるの、かしら」
「それはっ、もちろん416が怪我をしてないかどうかです!とりあえず医務室に連れていきますね!」
そうして彼女は416を軽々と持ち上げる。
すると、416は弱々しく右手で巫女服の女性の腕を掴んだ。
「あなた……それは、大きな勘違い……よ」
「――勘違い、ですか?」
416が腕の中ではにかむ。
「これは、ただの――」
「バッテリー切れ、よ」
◆ ◆ ◆
「で、どうやって充電すればいいんですか?」
「首の、うなじの部分……。そこに、スイッチがあるはずよ」
彼女にそう指示され、桃色の髪の女性は416の首元をまさぐる。
この桃色の髪の女性こそ、416の持っていたライフルを新品同然にまで修理した“明石”である。
以前司令官からほんの少し説明があった通り、彼女はこの鎮守府の技術整備担当である。艦娘たちの艤装の整備はもちろん、修理や新技術の開発など、艤装のシステムの中核を担う人物である。
そんな彼女は今、報告を受けた司令官の命令を受け、わざわざ司令官の執務室に出向いたのである。
それは416が執務室に真っ先に連れてこられたせいであるが、連れてきた当の本人である巫女服の女性は、
「申し訳ありません提督……。どうすればいいか、分からなくなってしまって」
「いいんだ榛名。ロボットを充電するなんて行為、誰も体験したことがないからな。迷うのも仕方がない」
榛名と呼ばれた彼女は、もう一度ぺこりとお辞儀をする。
「うわっ、まるでリモコンの電池カバーみたいですねこれ……。検査の時、見逃してたのかな……。で、次はどうします?」
「非常時のために、色々……端子が用意されてるはず、よ。この部屋にあるもので、適合するものは……あるかしら」
「うーん、まさかここにケーブルをぶっさすんですか?」
416が小さく頷く。
「一応見てみますけど、まさかここに挿せるものがあるとは思えないんですけどね……。作るしかないのか、な……!?」
すると、明石は目を瞬かせた。
「ウソっ、これもしかしてUSB端子じゃないですか!?それに、マイクロUSB……うわっ、タイプA、B、C、全部ある!」
「ゆーえすびー、ですか?」
「そうです榛名さん。まあ、スマホを充電するときに使う、あのケーブルがそれですね。あれはマイクロUSBですけど」
「そ、そうですか……」
すると、司令官が口を開く。
「つまり、416はスマホのケーブルで充電できるのか?」
「多分ですよ。もしかしたらよく似た別の何かかもしれませんし。……提督、ちょっと充電器借りますね」
「むわっ!私のスマホがっ!まだ充電が終わっていないというのに!」
明石は司令官のスマートフォンからケーブルを引き抜き、それをそのまま416の首筋に突き立てた。
「それっ!……あ、ささった」
「っ!」
途端、弱々しかった416の動きが、急に活気を取り戻した。
彼女はむくりと起き上がり、首に挿しこまれたケーブルが抜けないようにしながら近くの椅子に座る。
「……ふぅ、助かったわ。ありがとう」
「途端に元気になったな」
「充電が始まったから、もう今まで通りに動けるのよ。――私としたことが、失念していたわ。元の世界でしばらく充電していないのをすっかり忘れてた」
「やはりというべきか、ロボットだから充電が必要なんですね」
「当たり前じゃない。一週間もたてばバッテリー切れを起こすわ。私の場合、それがちょうどさっき起こったの」
すると416は大きなあくびをした。
「ごめんなさい、ちょっとスリープモードに入るわ。このケーブルだと、充電効率がすこぶる悪いから、このままだと一日中充電している羽目になりそうよ」
「こちらで、寝るんですか?毛布を持って参りましょうか?」
「いいえ、大丈夫よ榛名。人形は風邪をひかないから」
「それは便利でいいのだが、ここで寝られてしまうと私が非常に困るのだが」
「じゃあ何か案を考えることね。私はもう動かないわよ」
「おいウソだろう?」
416はそれ以上司令官の言うことを聞こうとせず椅子にもたれこみ、腕を組んですやすやと眠りこんでしまった。
「……。困ったな」
「えーっと、じゃあ帰っていいですか?やらなきゃいけないことが山積みなんですけど」
明石はそういうと踵を返し、部屋を出ようとしたが、
「頼む、こいつを予備部屋に連れて行ってくれないか。邪魔すぎる」
「ええ……。嫌ですよ……。ここのところ夜勤続きなんですって」
「じゃあ特別手当も出そう!いつも頑張ってくれてるからな」
「……約束ですよ」
明石は露骨に嫌そうな顔をして、416の元へと歩く。
「榛名さん、手伝ってくれます?」
「あっ、はい!大丈夫です!」
一方榛名は、ようやく役に立てるのかと嬉々として返事をする。
「では、榛名が背負っていきますね」
「ありがとうございま――ちょっと待った!」
さっそくと言わんばかりに榛名は416を背負おうとしたが、明石の急な制止によって中断せざるをえなかった。
「このまま抜いたらまた充電切れを起こしますよ。そうですね……、あっ」
すると明石の目線は司令官の方へと動いた。
その目線の先には、彼がスマートフォンに繋いでいるモバイルバッテリーが置かれていた。
「それだ!提督、借りていきますね!」
「なっ、私のスマホも電池切れそうなのだが」
「スマホと416ちゃん、どっちが大切なんですか?悪いですけど、持っていきますね」
「待て、ならせめてコンセントに繋いである方は残しておいてくれ!」
「予備部屋にスマホとかの充電器ありませんよね。申し訳ないですけどこっちも持っていきます」
「くっ……」
そう言って明石は司令官のスマートフォンからバッテリーを引き抜くと、それをそのまま416の首に差し込んだ。
そうして彼女たちは、勝手にスリープモードに入ってしまった416にモバイルバッテリーを使いながら、別の部屋へと移動させるのであった。
「――む、充電切れ」
一方で司令官のスマートフォンは無慈悲にもバッテリー切れを起こしたのだが。
前回からだいぶ時間が空いてしまいました……
リアル多忙だったもので、お許しください。
ちなみに私のイメージでは、榛名は機械に弱いだろうなーと勝手に思っています。
明石「私のイメージとしては、ああいうロボットって小さい核融合炉とか積んでると思ってたんですけどね」
榛名「かくゆうごう……?」
明石「検査の時に薄々気づいてたんですけど、オーバーテクノロジーで私たちには理解できない構造になってて、それで炉を発見できなかったとかそういうのを期待してたんですけど」
榛名「おっ、おーばぁ???」