これから兄弟どちらかと再会するまでオリジナルキャラクターかなり出てくる可能性高いので、苦手な方は注意。
黄ばんだ地図片手に船を寄せた島は、かなりきれいで派手な街があった。換金するところもありそう、助かったあ。
通りすがりのお姉さまに「はぁい、かわいいお嬢さん」なんて手を振られて、私の気分は絶好調であります。
…にしたってまあ……派手な女性が多いなあ。服も、顔も。
道の途中には美容院的なおしゃれなお店もあるけど、うーん。私はロングがいいかな。
なんせ、私は母上似のマイルドな顔。対してここの方々はハデというか、はっきりしたお顔。あっちがコーヒーゼリーなら私はまろやかプリンである。
まろやかプリンに元気はつらつショートカットは似合わない気がするな、と肩を竦めた。
とりあえず、本来の目的である換金所に足を向けた。
こんなに派手な街の中に建っているのに、ここの店だけ落ち着いた雰囲気なのは、なにか理由があるのだろうか。
ドアを開けると、カランといい音がした。ドアにベルがついている。
そっか、ここ換金所だし、誰か来たとき分かんないとお金盗まれるかもしれないもんね。
「……おやまあ、小さなお客さんだね」
「ふぁっ!?」
考え事をしていたら、後ろから声をかけられた。い、いつの間に!!?
私が目に見えて怯えているのがわかったのか、主人らしき女性はくすっと笑った。落ち着きのある、大人の笑みってやつだ。いいなあ……。
見たことのないパイプ…キセル、って言うんだっけ? それを子供の前だからか懐にしまった店主さんは、換金カウンターの中にあるイスにどさっと腰かけた。
ああ、動作ひとつひとつが色っぽーい。
「ようこそ、換金所“ザクロの実”へ。…なにか御用かしら、お嬢さん?」
「は、はい! あの、これ、お金になりますか?」
「ん……?」
カバンから出した飴玉……と見せかけた宝石を、ころころと取り出した。
私に価値はわからないけど、一応宝石。そんなに安くはならないだろう。
女性は差し出された宝石を色々な角度から見て、明かりに照らして、触ってーーーフゥ、とそれをカウンターに置いた。
「……お嬢さん、これ、どこから盗って来たんだい? かなり良いものじゃないか。…だいぶ高い貴族しか持ってないような物だよ。例えば、世界貴族とかね。…返してきな」
「違います。それ、私のです。家から持ってきました」
「…何だって? じゃあなにか、お嬢さん世界貴族かなにかかい?」
はい、元。
なんて言えるわけないから、「いやその…ちょっと」と言葉を濁す。
元天竜人だとは言えなくても、盗人と思われるのは心外だった。
「とにかくそれを売って、お金を集めなきゃなんです。商売初めて、人脈広げて、家族を捜さなきゃ」
「商売? お嬢さんが? その歳で?」
「私の船には、珍しいものとかたくさんあるから…珍しいもの屋さん、します」
「ーーーップ、あはは!」
不意に、女性が吹き出した。お腹を抱えてけらけらと笑う姿は、私と変わらない少女のように見えた。
「あは、お腹いたい」と笑う姿にきょとんとする私を見て、女性は涙を拭ってまた笑った。
ち、ちょっと!?
「いや、ぁ、ゴメン、面白いねぇお嬢さん! 珍しいもの屋かぁ、そりゃあいいや!」
「いいと思ってる笑い方じゃない気が…」
「いや、いいよ! いい! よし、オバサン協力しちゃおう! お嬢さんの商売をサポートだ!」
元気なきらきら笑顔で女性はグッと親指を立てた。ど、どういう? と頭にクエスチョンマークを踊らせている私に、女性ーーーアオさんというらしいーーーは内容を教えてくれた。
まず、私のところに客が来て、物を買ってお金が入る。そのお金の少しをアオさんのお店に渡すことで、アオさんのお店から好きなものを取ったり、アオさんの人脈で手に入るものを私にくれたりする、ということ。
すると、私のお店には何でもあるようになる。だからーーー
「何でも屋をやりゃいいじゃないか!」
「な、何でも屋って…! そんな大層な」
「珍しいもの屋よりはいいと思うけどね?」
「うぐぅ……」
「心配すんなって! いいものあるんだ!」
そう言ってアオさんが出してきたのは、…なにこれ、手袋? 白い薄めの手袋だ。
防寒性は無さそうに見えるその手袋を自慢気に掲げて、アオさんは笑った。秘密兵器だ、と。
「これ、不思議な手袋でさ。なんか昔の魔女が作った、とか悪魔の持ち物、とかウワサのある手袋なんだけど…不思議な力があって!」
「不思議な力?」
「ドアとか窓とか、空間と空間の境の扉をこの手袋を着けて開けると、その先が自分の行ったことのある、思い描いた場所になってる」
「……なにそれ」
理解しがたいが、アオさんが「契約の記念にあげるよ」と言ってきたので有り難く貰うことにした。
…そっか、これでお客さんができて、そのお客さんに呼び出されても行けるってことですね。
何でも屋にはもってこいの道具だ。ひええ。
とりあえずアオさんとの契約も済ませて、さて。思ったよりトントン拍子で話が進んでるから驚いちゃう。
「それよか、この“何でも屋”っていうのを広めなきゃ」
「そうねえ。まあチラシとかはこちらでつくってあげるけど…宣伝力としては、イマイチかもね。…あ、そーだ」
「なんですか?」
悪戯っぽい笑みを浮かべたアオさんが、唇をチロリと舌で舐める。
めっちゃ妖艶だけど嫌な予感しかしないぞ。
アオさんは口角をニッと上げて、私を指した。
「海軍に商売しなさいな」