アオさんに言われてすぐ、私は自分の船に戻された。
手袋使ってみたけど、言われた通り変な力だった。ひええ。
悪魔の実の能力者は実を2つ食べるとボッカーンだって聞いた覚えがあるんだけど、これは大丈夫なのかな? …大丈夫、なのかな!!?
でも今はそんなこと気にしてる場合じゃない。いいこと思い付いた、と言わんばかりのアオさんの顔。そのアイデアを実行しなかったらどうなるか…今日出会ったばかりでも、彼女の瞳の奥の鋭い光を見逃さなかったわけがない。ひええ。
だから、私は今、海軍の船の前に堂々といるわけである。
内心ビックビクだけど、そこは迫害生活で培った鋼メンタルを駆使して。よかった、お豆腐メンタルじゃなくって。
「なんだ、君は…? 子供が一人で船に乗るなんて、危ないぞ。早く自分の家に戻りなさい。何なら、送っていこうか?」
まあ、海軍の反応なんてこんなもん。だって私、14だもんね。知ってたよ、うん。
でも私はただの14歳じゃないのだ。
家族を捜すため海を旅する、姉上なのだ。
こんなところで海軍ごときにへこたれる姉上じゃないぞ、見てろよ神!!
「は、配達から珍しいものの販売、換金までなんでもござれ! 海上便利屋何でも屋、“ザクロの実”! です!」
あっぶない、最初噛むかと思ったぞ!?
それでもアオさんの考えてくれた何でも屋のキャッチフレーズ、言い切りましたよさあどうだ! と海軍さんを見ると……ですよね、固まってら。
そりゃそうだ、船でゆらゆらしてて迷子かと思った少女が突然訳わからんキャッチフレーズペラペラ言い出して、しかもそれが何でも屋なんて言い出すんだから。
えへ、とおどけようかとも思ったがここでそれは愚策。キッと真面目な顔をして海軍さんを見据えた。さあ、ここで客になるか、否か。
海軍さんたちの中で一番偉そうな人が、困惑した様子で口を開いた。
「…ええと、君は…なんだ、何でも屋?」
「は、はい!」
「何でも売っているし、頼んで良いのか? 例えば……ここらの獰猛な海獣たちを鎮める、とか」
「はい!」
「ここから少し遠い、海軍本部への届け物とか?」
「はい! どんな宅急便より先に届けられる自信があります!」
そういうとその海兵さんは「そうか…」と言って黙りこんでしまった。
えっえっ、なに、なにかまずいこと言っちゃった? 黙らせること言っちゃった!?
海兵さんを黙らせるなんて初めてであたふたしていると、海兵さんに肩をガッシリと掴まれた。ぎゃ!? せ、セクシャルハラスメント!!?
ーーーなんてふざけてるヒマはなく、海兵さんから思わぬ言葉が発せられた。
「…君にいくつも頼みたいことがある。構わないか?」
「へっ!? ……ハッ、も、もちろん!!」
「ありがとう。報酬ははずむ」
び、びっくりした! てっきり疑われるものだとばかり! ……いや、疑われてるからこそ、か? 物は試しだと言わんばかりの視線が送られている気がする。
これで本当に子供のクセに役に立つなら良し、でまかせだったならただの子供、とーー。
(こ、これは、試されている…!)
これからの人生がかかっている。これで活躍すれば名も広まってお金も集まり情報も集まり、家族を捜しやすくなる。活躍できなければ海軍には悪い意味で有名になり、情報もクソもなくなる。アオさんにも面目が立たなくなる。
それだけはマズイ。それだけは。
(なんとかやり遂げる。私の力で。大丈夫、大丈夫よ。そう言って今まで家族を守って……きた、もの)
おじいさんに「大丈夫じゃない」と叱られたけど、今はーーもう。私の大丈夫は、私を縛る呪いじゃないハズだ。たぶん。
やるしかない。それしか道はない。
それしか道がないならそれをやるしかない。私がやるからには、大丈夫なんだ。