朝、電伝虫の音で目が覚めた。
寝ぼけ眼でそれをとれば、「おはよう、目ェ覚めてるかい?」なんて陽気な声が頭に響いた。
…すごい眠い。昨日は倉庫の整理をしていたから、寝るのが遅かったのだ。
睡眠時間って大切だな、と思い知らされる。
「起きたばっかりのところ悪いけど、なぜか私のとこにアンタへの依頼が来てるんでねェ。医療器具の修理。アンタ、物の時間巻き戻せるだろ? 頼んだよ」
「…はぁー、い…」
欠伸混じりに返事をして、布団を退ける。
暖かい陽射しがいい感じ、なんて思っている暇はなかった。
さっさといつものカーキシャツに、黒のズボン。上と同じカーキのパーカーを羽織った。ちなみにこれは、アオさんが昔着ていた服らしい。
もう着ないというのでいただいた。何着もあるから便利。
「こんにちはーぁ」
いつものドアを開けて、聞き慣れたベルの音が私を迎えてくれる。
カウンター奥からひらりと手を振ったアオさんは、早速布にくるまれた何かを持ってきた。
「これさ」
しゅるしゅると布をほどいていくと、そこには折れたメスがあった。
真ん中からきれいにポッキリ折れている。一体何があったらこうなるんだ?
まじまじとそれを眺めても何も始まらないので、私はとりあえずメスの時間を巻き戻して直した。これで元通り、とマジックのように大袈裟な動きで手を広げたら、さっさと行けとでも言わんばかりにメスと住所を書いた紙を渡された。
「え、届けに行くんですか?」
「当たり前じゃないか。医療道具さ、早く届けた方が良いに決まっているだろう?」
「いやまあ、そうなんですけど…」
じゃあこのメスどうやってここまで届いたんだと聞いたら、普通にさらっと宅配便だとぬかしおった。
じゃあ返すのも宅配便で良いじゃない、と抗議したが「客が宅配便を使うのは良いが、お前は即行けるんだから良いだろう」とのこと。…いや、いやいやいや!
「言っておきますけど私ここ、行ったことないですから! 手袋使えませんよ!?」
「ん? あぁなんだい、同じ北の海なんだからすぐだろう? ほら、アンタのあの、ウミヘビ…シャクに引いてもらえばすぐさ」
「宅配便の方が安全な気が…」
「アンタが荷物を守ればいい。…まさか守れないだなんて言う気は」
「ないです!! 行ってきます!!」
バアン、と扉を勢いよく開けて船まで走った。くうう。恩人には逆らえないってもんさ。
ごめんね、シャク。君の力めちゃくちゃ借りるよ。あとで美味しい海獣のお肉いっぱいあげるからね。
船に着くと、シャクはわかっていたかのように待っていた。心なしか目が輝いている。
まあ、そうだよね。久しぶりだもんね、船引くの。一緒にどこか行くのもさ。
本当の目的はコレじゃないけど、この仕事結構楽しくなってきちゃってるし、この仕事しながら家族が見つかればいいなぁって思ってる。大きくなったドフィもロシーも、毎日想像しながら寝てる。きっとイケメンになってるんだろうなって。ーーさて。
(フレバンスーー…白い町、か)
行ったことない国だなあ、と不安が心を揺らした。