しばらくして、おやつの用意しなきゃ、と部屋に戻るとロシーがにぱっと花の咲くような笑みで近づいてきて、そのまま転けた。あーあー。
「ロシー、大丈夫? そんなに笑って、どうしたの?」
「あにうえがお花取ってくるって! ぼくのぶんも…えへへ」
「お花?」
「あにうえとぼくの部屋に飾るのと、あねうえに謝るためのって言ってた!」
「…まって姉上泣いちゃいそう」
「え!? あねうえ、泣かないで…?」
お花摘み、というからてっきりトイレかと思ったら…違うらしい。
ドフィが遊びにいくのと奴隷を買いにいく以外で外に出るのはあまりなかったし、それに物を取りに行くためって! 成長したなあ…かわいいなあ…
さっき休ませろって言った奴隷を連れていったのはアレだけど、まあ、うん。迎えに行ってやろう。
私を困惑した表情で慰めようとするロシーを笑顔で撫でて、「ドフィを迎えにいってくるね」と伝えると、自分も行くと言うので、じゃあわかったとしっかり手を繋いだ。
手、ちっちゃーい! ほんと、うちの弟たちってばどうしてこんなに可愛いの?
憎たらしい近所のガキ…じゃない、近所の子とは大違い。ああ、私の天使。
「ドフィどこかなーっ」
「あにうえ…」
どこかなー、どこかなー、と声をかけつつ探してみるけど、どこまで行ったのやら、見つからない。
途中お菓子とジュースをロシーにあげた。ロシーだけだと可哀想だから、ドフィのも持ってきている。
家にもいっぱいおやつはあるけど、小さな子はそんなん関係無いからね。
ここらへんで花が摘めそうなとこなんて限られてるのに、どこに行ったんだろう?
ーーなんて首をかしげていると、ドフィがたまに遊びにいく家の近くから、ドフィの声が聞こえた。
「ドフィ?」
ロシーにここで待っててね、と言い聞かせてから呼び掛けをしてそこに近づいていく。するとーーいた。
「くっそ~…! やめるえ、このゴミが!!」
「むふふ~! だからその奴隷を使うえ、ドフラミンゴ~」
「…っ、ダメだえ!!」
「!!? ドフィ!!」
そこには、憎たらしい近所のクソガキーーその奴隷に幾度もなく挑み投げ飛ばされているドフィと、それをにやにやと眺めているクソガキの姿があった。
慌てて駆け寄り、クソガキの奴隷を手で制す。……鼻血が出ていたので、それをハンカチで拭いた。
頭にかぁっと血がのぼるのを確かに感じながら、私はクソガキの方を振り向く。
ーー最近天竜人の子供の間で流行っている遊びがある。
奴隷同士を戦わせて競う遊びだ。
胸くそ悪いしやめなさい、と弟たちには言いつけてあったけどーードフィはそれをしていたのだろうか?
いや、でもそれならどうしてドフィがこんなボロボロになる?
「ドフィ、なにがあったの?」
「……あいつ、あねうえを『頭がおかしい』とか言ってバカにしやがったんだえ! だから言い返したら…奴隷で戦って勝ったら撤回するとか言って…でもあねうえと奴隷は休ませるってやくそくしたから…おれ……」
「…! ドフィ……」
「…あねうえ…あねうえにあげる花…散ったえ…! ーーおれ、こいつ絶対許さないえ…!!」
ドフィの手に握られていたであろう花はもう花弁が全て散って茎のみ。ドフィの心を表すように、萎れていて。
ーー私の中で、プツンとなにかが切れた音がした。
「…こんの……クソガキ!!」
「ぶべらァッ!!?」
パァンといい音がして、クソガキが吹っ飛んだ。
クソガキの体は大きくバウンドすると、元々立っていたところから数メートル先で止まる。
どうやら気絶しているようだ。…まあそりゃそうか、「親父にも殴られたことないのに!!」の代表みたいなヤツだし。平手打ちでもかなりのショックだろう。
「家族に手ぇ出したら許さない!! 次はないと思いなさいよ!! 次やったらぶっころすから!!」
聞こえてないと思うけど、一応言っておいた。
後ろで呆然としているドフィを立ち上がらせて…うん、大きな怪我はないみたい。
ほっと息を吐いてから、ドフィのことをこれでもかと抱き締める。
「ドフィ…ああ良かった……私の天使…」
「…っ、あねうえ……でも…あねうえにあげる花が…」
「いいのよ、ドフィ…気持ちだけでもすっごく嬉しい。私今、世界で一番幸せな姉上ね。本当にありがとう、
愛してる…」
そういっておでこにキスをすると、ドフィは嬉しそうに、そしてくすぐったそうに体を揺すって笑った。
「おれも嬉しかったえ」
「ん?」
「あねうえが、『次やったらぶっころす』って言ってくれて、嬉しかったえ」
「あっ……やだドフィ、アレは…あんな汚い言葉使うつもりはなくてね、ええと……嘘、じゃないんだけど…」
「フフフ!」
ドフィがとても嬉しそうに私の手を引く。
私があんな言葉使ったら、ドフィたちの教育上良くないってのに……私のバカ。
「真似しちゃダメだからね」と念を押すけど…ダメそうだなあ。
「ロシー!」
「あにうえ…! あねうえ! …あ、あにうえ怪我…!」
「これくらい大丈夫だえ、ロシー!」
「待たせちゃってごめんね、ロシー」
ううん、と首を振るロシー。だけどたぶん、寂しかったよねと申し訳なくなる。
「ロシーの花も、散ってしまったえ。悪いえ」
「ううん…!」
「あねうえ、あねうえには誕生日にもっと綺麗なのをあげるえ!」
「ありがとう、ドフィ」
奴隷のひとは休ませなきゃだから、二人を乗せることはせず、代わりに私がぎゅうっと手を握った。
私が抱っこしてあげられれば良いんだけど、お姉ちゃんとはいえ9歳が5歳と3歳を持つのは無理だから。
「ありがとう、二人がいい子で姉上幸せよ」
体は小さい私だけど、体より大きい精一杯の愛情を、二人には注いでおこう。
後悔しないように。
もうひとつの方もきちんと更新します…申し訳ないです