「ごめんね、ベビーちゃん」
「仕方ないわ、お仕事ですもの!」
「うっ……ベビーちゃんの物分かりが良くて感激なんだけど…」
ロレンソは涙ぐみつつ、この子には両手いっぱいのお菓子でも買って帰って来てやろうと決心する。
ドフラミンゴを見送った直後、かかってきた電話は案の定というかなんというか、依頼だった。
これがクロコダイルとかからだったらまだ良いのだが、なんとこれが不運。
海軍中将、ガープからであった。
海賊の拠点で海軍の英雄からの連絡を取るのはどうなんだ、という感じだが、「今場所が場所なんで待っててください」なんて言って待ってくれる相手でないことはロレンソも重々承知している。
なんせこのロレンソに「クロコダイルとかからだったらまだいい」とまで言わしめる男であるのだから。
『孫の喜ぶようなおもちゃを用意せい! 金はいくらでも払うわい!!』
『はっ!? え、ちょ、ガープさ…』
『東の海ゴア王国フーシャ村! 待っとるぞ!』
無慈悲にも切られた電伝虫を片手、頭痛を感じてロレンソは眉間を揉んだ。
自由人ってのは本当に迷惑な生き物だ。自由人…というのも、少し意味が違うが。
自由に自分の人生を歩んでいる、という点で意味は合ってはいるのだが、何せ自由すぎる。我が道を行きすぎる。仮にも海軍というきちんとした職についているのだ。人の人生に文句を言うものではないと理解しているロレンソでさえ、「もう少し決まりに縛られてください」と呆れるほどであった。
だからといって彼が海兵たちから嫌われているというわけでもなければ、不平不満を言う者はーーセンゴクを除きーー居なかった。
それなりに人望はあり、自由で、強い。
彼が海兵でよかった、と思うものは海軍や政府に多数いるだろう。…逆に海賊からしてみれぱ、厄介極まりないのだけれど。
「孫ったって…ええと、いくつだっけ? ひーふー……2歳…2歳のおもちゃ!?」
孫が産まれたんだ、と顔を気色悪いほどに緩ませて自慢してきたのはそう、2年前だったはず。
つい5年前にも「孫を引き取った」と電伝虫で騒いでいた気がするがーー彼のは良いんだろうか。
海賊王ゴールド・ロジャーの息子。悪魔の子、要らない子などと言い殺せ殺せと海軍が騒いでいた頃が懐かしい。
何でも屋に子供が居るわけねーだろバカ、と追い返したことをつい最近のように覚えている。…実際は、海軍の英雄が匿っていたのだけど。
「どうも、お待たせしましたーぁ」
「きゃあ!? …って、レンさん!」
東の海ゴア王国フーシャ村の酒場、と考えながら船のドアを開けたら、一瞬でここに着いた。初めてここに来たのも、アオさんに連れてきてもらったとき。だから手袋ですぐなんだ。何者なんだろあの人…。
迎えてくれたのは可愛い女の人。確か…マキノ、ちゃん?
「こんにちはマキノちゃん! ガープさんいる?」
「ここにはいませんよ! 確か…ルフィと山に行ったはずです! もうすぐ帰ってくるかも」
「あー…あの人も飽きないな…生まれたばっかの子を連れて…。…分かった、ありがとうね!」
そう告げて酒場を出ると、確かに少し遠くから赤ん坊の泣き声が聞こえてきていた。
恐らく、いないいないばあでもして泣かせているんだろう。…あれって子供を泣き止ませるためのやつだった気がするんだけど?
矛盾と疑問を感じながら、私はそちらに足を向けた。