クザンフラグちょっとあり。
「へんたァァい!!!」
「ぶべっ!!?」
すごい勢いで廊下の壁にぶち当たった中将クザンに、近くを通り掛かった大男が溜め息を吐いた。
またか、という気持ちの溜め息である。
このクザンという男、毎日毎日万年雑用の女性に言い寄ってはぶっ飛ばされている阿呆であった。
海軍の中でも強さは指折り。この女好きな性格と放浪癖さえなければ、もっと同じ中将であるサカズキと同じくらい信頼を集めていたであろうものを…と皆思っている。
「いやァ~…釣れねェもんだな、レンちゃんは。なァ、ロシナンテくん。君からもオネーチャンになんとか言ってやってくんない?」
「無理ですよ、クザンさん。それに姉上に家でクザンさんの話しようものなら睨み殺されそうになりますもん」
「え、なに? おれそんなに嫌われちゃってる? まいったなァ~…」
嫌われるのも当たり前である。
なんてったって毎回ロレンソに話しかけるときの定例の挨拶が「あれ? またデッカくなったなァ、スーパーボインちゃん」なのだから。
その度に雑用とは思えぬ力でぶっ飛ばされているクザンに、上司としての威厳など微塵もない。
今ごろ顔を真っ赤しているであろう姉の声がクザンの吹っ飛んできた部屋から聞こえ、ロシナンテはもううんざりである。主にこの懲りない男に。
「ほんともう嫌!! 嫌い、だーいっ嫌い!! 助けてお義父さぁん! 助けてロシー!! もうこの際ドフィでもいいからぁ!!」
「ちょ、姉上! さりげに悪魔呼ばないでくれ!」
ドンキホーテファミリーに潜入に行く、というのを止められたのはいつだったっけか。
行ったら姉上死ぬ、とまで言われてしまって行けなくなったのを覚えている。
けれどそんな兄も今では七武海。海賊だからといってここで名前を呼んだりしたら出てきそうなのがあの悪の魔王である。ひょっこり出てきて皆殺しにして帰りそうなのである。
「姉上、おれがいるよ!」
「ううっ…ロシー…! あのクソ氷野郎のセクハラ本当にどうにかならないかな…? あの目で見られる度にこの胸切り取りたくなるの」
「は、早まるな姉上!」
本当にげっそりしてきた姉に心からの哀れみと心配をかけつつ、とにもかくにも家に返すことにした。
クザンさんに出くわしこうなった姉ほど困ったものはない。
センゴクさんにも姉が気力を失うからやめろと言ってもらってはいるのだが、この女好きには聞こえていないようだ。
「あー…悪魔が…悪魔が追いかけてくるーぅ…氷魔神……ーー死に晒せ!!!」
「うお…」
容赦なく撃ちやがった、と頬をひくつかせる暇もなかった。すぐに再生しては追ってくるクザンに向かって、躊躇いなく何発も。
これが昔ドフラミンゴに銃を使うなと言っていた姉の姿です母上、とロシナンテはもはや悟っていた。
ロシナンテがドンキホーテファミリーに潜入しなかったらローはどうなるんだよあァん!? って思った方。
……スルーでお願いします。