「あ、おはよう!」
「…なにをしてる?」
「え? 見て分かんない?」
きょとんとして問えば、「分かるが…」と口をつぐんだのは幹部のピーカ。
不思議な仮面と、男の人にしては少々高いソプラノボイスが特徴的。
声を気にしてかあまり私に話しかけてこなかったピーカが珍しく私に話しかけて来たので、これはチャンスと会話を続けることにした。
というか、ドンキホーテファミリーの人達全般…いやベビーちゃんとかバッファローは置いといて…あとそう、唯一の女性であるジョーラさんはたまに話しかけてきてくれるからアレなんだけど、それ以外の人たちからあんまり接触がなかった。特にグラディウスくんなんかは。
たぶん私が海軍とも繋がりを持っているから危険視しているんだろうけど…いや私別に海軍サイドじゃないし。と心の中で反論を続けている今日この頃。
「朝ごはん作ってるの。目玉焼きでいい? いいわよね? てか目玉焼き以外もう無理」
「ならなぜ聞いた」
「んー? やだって言ったら飯抜きにしてやろうかと思って」
「…………」
「じ、冗談だよ!」
ここの人たちは冗談が通じないから困る。
なんだコイツ、みたいな顔をされたけど無視だ無視。私は傷ついちゃいないのさ。
卵をパカパカ割って焼いて皿に乗せる。ベビーちゃんには「私がやります!」と可愛く止められそうになっちゃったけれど、私だってここにお世話になっている身。朝ごはんくらい作りたい。
……なんて思ってふと、横を見るとピーカが私をガン見していた。えっなにこわっ!? と身構える。
するとポツリとピーカが聞いてきた。
「……お前は、おれの声を笑わないのか」
「…へ? 声? なんで?」
「おれの声は…高いだろう。他の男より」
気持ち悪くないか、と聞いてくるその目は、「気持ち悪い」と言いでもしたら即殺されそうで少し怖かったけど…。
気持ち悪いと言われるのを恐れる目であることも確かだった。一瞬固まった体が緩んで、フッと笑う。
突然の笑みに驚いたのか、眉間にシワを寄せたピーカが「何を笑っている」と私を睨んだ。
「なんだか…怖くなくなっちゃった。あなたのこと」
「…何を、」
「とっても可愛くて好きよ、私」
「!!?」
一気に顔が赤くなった。あ、かーわいー。
けれどバカにされたと思ったのか、肩を震わせている。ちょ、ちょっと待って!
「ごめんなさい、悪い意味じゃないの! ただ…」
「…………」
「…すごくつらい思いをして、笑われるのを怖がったり、傷つけられることを嫌う人を見ると…ドフィたちを思い出しちゃって、守りたくなるの。母性本能? 庇護欲? …なんて言うのかしら?」
ピーカに真顔で見つめられた。ちょっと、真顔はキツいって。
そんな顔されたって仕方ない。だってこれは一種の性癖みたいなもんなんだ。
守りたくなる顔。強気で恐ろしい仮面の裏に隠した、今にも泣きそうな顔を見つけるとーーどうしても、嫌いになれない。
それに、声なんて良いも悪いもあるもんじゃないんだから。ピーカの声が高くたって低くたってピーカだよ。声の高さだけでできてる訳じゃないでしょあなた。……というようなことを伝えたら、今度は笑われた。解せぬ。
「…お前はおかしいな」
「えっ」
「……そしてドフィに似ている」
「そ、そうかな?」
最近ドフィに似ている、とよく言われる気がする。
というかクロコダイルさんも私とドフィが似てるから姉弟だって気づいたんだろうし。
ドフィと似てる、か。まあドフィが母上似だからしょうがないか。
もう一度「おかしなやつだ」と笑ったピーカは、ふとして私の手元のフライパンを見た。……あーっ!!?
「や、やだ、焦げてる! ピーカのばかぁ!!」
「!? お、おれのせいじゃ…」
「あーもう!!」
「…す、すまない?」
コゲコゲの目玉焼きの完成である。やっちまった!
(…まあいいか)
ピーカと打ち解けられたから。
何があった、と駆けつけてきたドフィたちに「何でもない」と笑いつつ、駆けてきたせいで転けるであろうロシーを受け止めるように、ピーカに言っておいた。あの巨体で転けられて皿をひっくり返されちゃたまらないから。