家に戻ると、ドフィが血相を変えて私を医務室に連れていった。
胸、腕、足を撃たれたせいか、出血していたからだろう。そんなに急所でもないから慌てる必要ないのに。
「一体なにがあった!! 誰にやられた!? 少し仕事に行っただけでどうしてそうなるんだまったく!!」
「そんな怒んないで…イテテ。ちょっと滅亡寸前の国に様子見に行っただけだよ…」
「“様子見に行っただけ”、だァ? …ならそうはならねェだろうが!」
ドサリと苛立たしげに椅子に座らされた。…いや、慌ててる? 私が怪我したから。
可愛い、なんて笑ってる場合じゃないけど、普通に嬉しいなあそれ。
私の傷を確認して、そこを止血しつつドフィの大きな手が傷口を包む。
糸での応急処置ね、と理解した。
暖かい部屋と手が、気持ちいい。
思わず寝そうになったけど、ドフィのこわーい声で現実に引き戻される。
「どこに行っていた?」
「ん…フレバンス」
「……フレバンス…白い町、だな。珀鉛病だったか」
こくんと頷く。ドフィのことだから、正しい知識を持っているのは知っていた。
珀鉛による珀鉛病とそれに対する政府のひどい行動、近隣諸国との戦争などのつらさひどさも、知っているはずだ。
眉間にシワを寄せたドフィが、「それで?」と尋ねてくる。
どうして行ったのかは言及しないようだ。私が感情で動く人間だと知っているからかな?
「まあ、ひどかったの一言に尽きるでしょ」
ごうごうと燃える国。生き残りを探し、見つけては射殺する兵たち。
涙を流しながら息絶える人たちと、それを人とも思わない者たち。
それはまるで地獄絵図。同じ人の命のはずなのに、どうしてこんなに扱いに差があるのかと疑問しか浮かばなかった。
生きているかもと期待したトラファルガー夫妻と娘ちゃんは亡くなっていて、生き残っていたローくんは目が濁りかけていた。
吐き気と苛立ちがこみ上げてきて、我慢ならなくて、どこの国のか知らない兵を十数人ボッコボコにして戻ってきた。こっちもかなりボッコボコにされてたし、増援呼ばれたし。
とにかく、ローくんが逃げれてればいいんだけど。
「…ホント、柄にもない喧嘩しちゃった。いつもはもっと計算高いはずなんだけど」
「嘘つけ。いつも当たって砕けろだよ、アンタは」
「はぁぁ? そんなことありませんー。姉上ナメんなよコラ!」
「どうだかなァ?」
挑発的に笑いかけてきたドフィを殴ってやろうかと思ったけど、治療してもらっている手前無理である。チクチョウ。
「あんまり無理はするんじゃねェ。…いいな?」
「はぁーい」
「今日は夕方までここを空ける。コラソンと留守番でもしとけ」
「え? ロシー…じゃないコラソン、連れて行かないの? なんで? ハブり? 姉上許さないよそういうの」
「違ェよ」
これからもしかしたら戦るかもしれない、と伝えられて納得した。
なるほど、ドジすぎてつれてけないと。
撃たれたら士気が乱れるし足手まといだしそりゃそっか。
ドフィだってロシーが大事みたいだし。
残ってる私たちが狙われる可能性は、と聞いたら即答で「ない」と言われた。
ああそう、下っ端くんたちがスパイダーマイルズには居てくれるわけね? はいはい、了解したわ。
治療が終わったらしいドフィの手がスッと離れる。
「気を付けてね? 怪我したら姉上ドフィ傷つけた人倍返しで済ませる自信ないから」
「フッフッフ! おれがその場で切り刻むから安心しろ」
「…んねーんねー、物騒な会話してるとこ悪ィけど、もういくぞ、ドフィ~」
あ、いたんだねトレーボル。
って言うとまた何かにつけて…例えば表情とか「ドフィと似ている」といちいち言ってくるトレーボルに絡まれるから、何も言わずに手を振って送り出してあげた。
「コラソン、ドジ踏むなよ」
『わかってる』
ドフィとロシーが会話(?)をして、ドフィは満足そうに出ていく。
「コラソン、暇だね! 何しよっか?」
ソファーに居心地悪そうに沈む我がもうひとりの天使に、そう笑いかけた。