【ONE PIECE】天駆ける竜   作:柚木 彼方

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5.苛立ちではなく焦りであって

家に戻ると、ドフィが血相を変えて私を医務室に連れていった。

胸、腕、足を撃たれたせいか、出血していたからだろう。そんなに急所でもないから慌てる必要ないのに。

 

 

「一体なにがあった!! 誰にやられた!? 少し仕事に行っただけでどうしてそうなるんだまったく!!」

 

「そんな怒んないで…イテテ。ちょっと滅亡寸前の国に様子見に行っただけだよ…」

 

「“様子見に行っただけ”、だァ? …ならそうはならねェだろうが!」

 

 

ドサリと苛立たしげに椅子に座らされた。…いや、慌ててる? 私が怪我したから。

可愛い、なんて笑ってる場合じゃないけど、普通に嬉しいなあそれ。

私の傷を確認して、そこを止血しつつドフィの大きな手が傷口を包む。

糸での応急処置ね、と理解した。

 

暖かい部屋と手が、気持ちいい。

思わず寝そうになったけど、ドフィのこわーい声で現実に引き戻される。

 

 

「どこに行っていた?」

 

「ん…フレバンス」

 

「……フレバンス…白い町、だな。珀鉛病だったか」

 

 

こくんと頷く。ドフィのことだから、正しい知識を持っているのは知っていた。

珀鉛による珀鉛病とそれに対する政府のひどい行動、近隣諸国との戦争などのつらさひどさも、知っているはずだ。

眉間にシワを寄せたドフィが、「それで?」と尋ねてくる。

どうして行ったのかは言及しないようだ。私が感情で動く人間だと知っているからかな?

 

 

「まあ、ひどかったの一言に尽きるでしょ」

 

 

ごうごうと燃える国。生き残りを探し、見つけては射殺する兵たち。

涙を流しながら息絶える人たちと、それを人とも思わない者たち。

それはまるで地獄絵図。同じ人の命のはずなのに、どうしてこんなに扱いに差があるのかと疑問しか浮かばなかった。

 

生きているかもと期待したトラファルガー夫妻と娘ちゃんは亡くなっていて、生き残っていたローくんは目が濁りかけていた。

 

吐き気と苛立ちがこみ上げてきて、我慢ならなくて、どこの国のか知らない兵を十数人ボッコボコにして戻ってきた。こっちもかなりボッコボコにされてたし、増援呼ばれたし。

 

とにかく、ローくんが逃げれてればいいんだけど。

 

 

「…ホント、柄にもない喧嘩しちゃった。いつもはもっと計算高いはずなんだけど」

 

「嘘つけ。いつも当たって砕けろだよ、アンタは」

 

「はぁぁ? そんなことありませんー。姉上ナメんなよコラ!」

 

「どうだかなァ?」

 

 

挑発的に笑いかけてきたドフィを殴ってやろうかと思ったけど、治療してもらっている手前無理である。チクチョウ。

 

 

「あんまり無理はするんじゃねェ。…いいな?」

 

「はぁーい」

 

「今日は夕方までここを空ける。コラソンと留守番でもしとけ」

 

「え? ロシー…じゃないコラソン、連れて行かないの? なんで? ハブり? 姉上許さないよそういうの」

 

「違ェよ」

 

 

これからもしかしたら戦るかもしれない、と伝えられて納得した。

なるほど、ドジすぎてつれてけないと。

撃たれたら士気が乱れるし足手まといだしそりゃそっか。

ドフィだってロシーが大事みたいだし。

 

残ってる私たちが狙われる可能性は、と聞いたら即答で「ない」と言われた。

ああそう、下っ端くんたちがスパイダーマイルズには居てくれるわけね? はいはい、了解したわ。

 

治療が終わったらしいドフィの手がスッと離れる。

 

 

「気を付けてね? 怪我したら姉上ドフィ傷つけた人倍返しで済ませる自信ないから」

 

「フッフッフ! おれがその場で切り刻むから安心しろ」

 

「…んねーんねー、物騒な会話してるとこ悪ィけど、もういくぞ、ドフィ~」

 

 

あ、いたんだねトレーボル。

って言うとまた何かにつけて…例えば表情とか「ドフィと似ている」といちいち言ってくるトレーボルに絡まれるから、何も言わずに手を振って送り出してあげた。

 

 

「コラソン、ドジ踏むなよ」

 

『わかってる』

 

 

ドフィとロシーが会話(?)をして、ドフィは満足そうに出ていく。

 

 

「コラソン、暇だね! 何しよっか?」

 

 

ソファーに居心地悪そうに沈む我がもうひとりの天使に、そう笑いかけた。

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