何しよっか、と問いかけたその時、ロシーがパチンと指を鳴らした。
「“サイレント”」
え? 今、喋らなかった?
と言おうとしたのだが、私たちの周りを謎のドームみたいなものが覆って口をつぐむ。
これは…悪魔の実の、能力?
驚いてロシーの顔を見た。額には汗が浮かんでいる。
「…姉上、…悪い」
「コラソン……ロシー」
私の顔色を伺うようにするロシーだけど…。これは一体、どういうことなのかな?
疑問しか浮かばない、という私の顔を理解したのか、ロシーはとても簡単な答えを出してくれた。
その事実に、開いた口が塞がらない。
「MC.01746、ドンキホーテ・ロシナンテ中佐。…それが、おれだ」
騙すようなマネしてすまない、というロシーの声は、昔よりず~~~っとかっこよくなっていた。
なに、うちの弟たちイケメンな上にイケボなのか!
あ~あ、私もきっと男に生まれてたらイケメンだったんだろうな。イケメン三兄弟だったんだろうな。
いや、この二人のところに女として生まれるんだったら、妹がよかったかも。
こんなイケメンが兄上、なんて最高だろうから。
ないものねだりしたって虚しいだけだけどさあ。
「そっかそっか、24で中佐! いいね、出世コースじゃない? 姉上嬉しいなあ」
「…!? お、怒らないのか?」
「へ? 何に? どうしてうちの弟たちこんなイケメンなんだって?」
「い、いや! そうじゃなくて…おれの、仕事で」
ロシーの仕事。ロシーは海軍で、ドフィは海賊。要するに敵同士ってことは…うん?
ロシーは転職したの? あれ?
…あ、そうか!
ロシー潜入か! 潜入調査っていうあれか!
なるほど、それでばれないように顔にペイントして、そんな奇抜な格好してるわけね? 理解した!
へーぇ、ほーぉ、と頷いていたけど、「特に言うことなし」とロシーに笑いかけたら変な顔をされた。
「だってロシーの仕事じゃん? 仕方ない仕方ない。間違ってるとは思ってないんでしょ?」
「ああ、いや、そうだけど…」
「ならいいと思うけど? てか、ロシーが海賊って合わないなって思ってたんだ。逆によかった!」
「……!」
だってあんなに優しいロシーだもの。そんなことするわけないよね。
だってそれぞれに歩んだ道だし。ロシーが選んだなら文句は言うまい。
つーか姉上は心配です。ばれた場合ヤバくない? ってな意味で。
基本姉上は中立だからこの件に関してはドフィに言いませんけど、これからヒヤッヒヤだなあオイ。
手をふるふると震わせて私を見るロシーはどうしたんだろう。
すんごい泣き笑顔だけど。何があった。
というか最近襲撃多いなって思ってたのはロシーが原因だったんだね。
ロシーが来たとたんだから、ちょっと怪しいかもしれない。そこに関してはたぶん上の人が決めてるんだろうから、何にも言えないけどさ。
ばれないでほしいし、ドフィにもあんまり捕まんないでほしい。でもロシーには海軍やっててほしい。複雑な心境だ。
「まぁ、いつだって姉上はロシーの味方だからだいじょーぶ! 潜入に関しては何とも言えないけど、応援してるからさ! ドフィもちょっと応援してるけど」
「…ッフ、はは! ああ、姉上はそれでいい。…それがいい。巻き込みたくないしな」
「……けどドジなロシーが潜入か…ふぅん、へぇ」
ここに来るまで色んな苦労があったんだろうな、と考えて撫でまくりたくなる。
…ああそうだ。
「それ、音消したりする能力? 便利ね!」
「! ああ、よく分かったな。ナギナギの実だ」
姉上がドフィ側じゃなくて良かった、と笑う姿はもうイケメンだ。
ドフィがラスボス系イケメン(?)なら、ロシーは爽やかイケメンだな…うーん、これはいい。
特にステータスない姉上でごめんな、ドフィ、ロシー。心の中で静かに謝っておいた。