私はファミリーに戻れない日が続き、ドフィからの一日一度の連絡もあまり来なくなり、2年という月日が経ってしまった。
その間一度もドフィたちの顔を見れなかった訳ではないが、2年前のようにゆっくりのんびり家族時間を楽しむことはできなかった。
時折珍しいものが手に入ったら電伝虫で伝えていたし、綺麗な宝石だとか綺麗な景色の写真だとかは、必ず手紙と共に送っていた。
返ってくるドフィからの手紙やベビーちゃん、バッファロー、そしてたまにローの手紙も嬉しくて、やる気が出てくる。
ロシーからは転けている写真がよく送られてきていたけれど。
そんなある日。
『ーーロシーが、ローを連れて出ていった』
「……ほー」
そんなことを告げられた。
いや興味なしかよ平和かよ、とドフィの少し苛立ちの混ざった鋭いツッコミが飛んでくる。
いや、だって。
「ロシーだったらそうしそうって思ってたよ?」
『…………』
「はは…まあ、帰ってくるまで待ってたら?」
ドフィとしては自分に相談もなしに右腕候補と実弟が出ていったことが気にくわないんだろう。
それに旅の途中でローが死んだらどうする、という思いも重なってこんな声なんだな。分かりやすい。
帰ってくるまで待て、とは言うものの、ローの命の時間は残り少ないだろう。
うーむ。どうしたものか。
『……それに、不審な点がいくつかある』
「フシン? なにが?」
『…ロシーが居なくなったとたんに、海軍の追手がピタリと止んだ』
「!!」
ウッ、と息を呑んだ。まずいまずい、ばれてるってロシー!
電伝虫の表情でドフィが今どんなに複雑な表情をしているかがわかる。疑いたくはないが、疑っている顔。
この仮定が確信に変わったら、まずいことになりそう。
ドフィはロシーを許さないだろう。そうしたら、きっとーー。
考えて寒気がした。そんなバッドエンド、見たくない。
なるべく動揺が分からないように、白々しい表情を作った。
「偶然じゃないの?」
『いや…おれの情報網だと、おれたちの居場所をすぐに特定し追ってきていたのが止まっているらしい。…ロシーの消えた時期と重なる』
情報網? ドフィは海軍内に情報網を張っているの?
だとしたらそれは、脅された海兵か…あるいは…。
(…そういやロシーのこと、“2代目”コラソンって言っていたな)
ということは、1代目がいたということ。
1代目は死んだの? ううん、そんな話聞いてない。だとしたらーー潜入?
その考えに至って、ドフィなら考えそうと頷いた。
にしても笑えない。ファミリーに海兵が潜入しているのに対し、海賊が海軍に潜入しているだなんて。
海軍に知り合いはたくさんいるが、その人たちでも嗅ぎ分けられないほどのスパイ? …それはすごいな。
押し黙った私の耳に『何かあったか?』というドフィの声が届く。
…私、……私は……。
「…あんまりロシーを疑わないであげて? 姉上、悲しいから」
『…フフ、あァ……なるべくそうしたいさ』
私は、どっちに味方するべきなんだろう。
真っ直ぐで素直で、ドジだけど優しいロシー。
ちょっとワガママだけど、誰より私のことを理解してくれて、心配してくれるドフィ。
どっちも私の宝物。どっちも私の天使なのに、どちらかにつくということは、どちらかを敵に回すことになる。
「じゃあ、私まだ仕事があるから」
ガチャンと逃げるように電伝虫を切って、下を向いた。
心臓がうるさい。この決断は、私の運命を決めるだろう。
“こいつ、姉上をバカにしやがった!”
“あねうえは、いたんなんかじゃない”
ドフィか、ロシーか。
そんなの……
「……そん、なの…」
ーーー決められるわけ、ないじゃない。