「どうした? ずいぶんとうるせェな?」
「うっ、ううん!!? なんでもないけど!?」
電伝虫の向こうでドフィが訝しげな顔をしている。
当たり前だがロシーも顎が外れそうなほど驚いていて、またそれはローも同じだった。
言わなくてもいいな、と判断したので先を促す。しばらくムッとしていたドフィだったが、先ほど言いかけていた驚くべき情報を話し始めた。
オペオペの実の情報を手に入れた。それを奪うつもりである。そしてそれを、コラソン、お前が食べろ…そんな話。
まさか本当にオペオペの実が見つかると、そして本当にそれをローのために使うと思っていなくて、私は驚いてしまった。それと同時に、複雑な感情。
だって確か、オペオペってーー。
「ドフィ? 口を挟むようで悪いけれど、本当にロシーにそれを食べさせる気?」
「なにか問題があったか? …それともアンタが食うか?」
「いや、そもそもオペオペって医術がないと無理だし、ロシーなんかドジの王様だよ? オペオペなんか食べて、ローの内臓の位置忘れて戻せないとかありそうだよ?」
ロシー涙目。うん、ごめんね。
でもこうでもしないとドフィは説得できない気がするからさ。
ローは想像して真っ青になってるし、ドフィも「あァ…」みたいな顔になった。
作戦としては成功だったみたいだけど、ロシーの心をめちゃくちゃに殴ってしまったのは大変に申し訳なく思っています。はい。
「じゃあ姉上、アンタが食え」
「いやだから医術がね? だからそういう意味でいうと、ローが適任なのでは?」
「……」
不老手術で私たちを犠牲にする気がないなら、という言葉は呑み込んだ。
ーーオペオペの実の最上の技、不老手術。
ドフィがそれを見逃してるわけがないもんね。
そう考えて、悲しくなった。可愛い可愛い弟が、私たちを踏み台にしてまで世界を壊そうとしてるんじゃないかって事実に、涙が出そうになった。
ドフィの声は電伝虫から聞こえてこない。
裏切りの疑惑のあるロシーと、そちら側にいる姉は犠牲にすることを考えられても、右腕として認めた男を犠牲にすることはどうやら嫌らしい。
まったく、ワガママな弟だ。
「…まぁ、誰に食べさせるかなんてのは手に入れてから決めようよ」
「…フフフ! あァ、そうだな」
「んじゃー、待ち合わせ場所は…なんだっけ、ミニオン島? だよね。またその時にね!」
「そうだな。…フッフフ、気をつけて来い」
「ドフィも気をつけて! 体調崩さないように!」
少し不気味な笑みを浮かべて、電伝虫は切れた。
ふぅ、と大きく息を吐く。ドフィの計画はよく分かった。…これから私たちがどうすべきなのかも。
とりあえず、もうドフィたちと仲良しこよしできはしないだろう。
オペオペの実をーー奪おう、ドフィたちより先に。
ロシーは今海軍に連絡しているからそれはいいとして、私の船を使ってミニオン島まで行く。そうしたら…待ち合わせの1日前くらいには着くだろうか。それがいい。
あとはバレルズ海賊団からオペオペを盗んで、できればドフィたちに出会わずにオサラバして、どこかに隠れながら暮らしたいな。
想像して、頬が緩んだ。
「よし行こう、ロシー、ろ……ロー!!?」