まずロシーと、これからの作戦について話し合った。
ドフィは必ず時間通り、ミニオン島にくるだろう。そうして気づく。待機している海兵に。弟が、私が、裏切ったということに。
まぁ裏切ったもクソも、ローを助けたいだけの行動だ。裏切りといわれるのは心外であるが、もうこれは仕方ない。
私はもう一人の弟と姉弟喧嘩をすることに決めた。
「見えた。あれがスワロー島だ。そして、ミニオン島」
「ひ~……あ、あれ、おつるさんの船じゃんか…」
「あァ」
とりあえず私とロシー、ローはここで別れる。私は先にバレルズ海賊団のもとへ。ロシーにはローをゆっくりできる安全な場所へ一旦おいてきてもらうことにした。
彼らのアジトは実に分かりやすい。
私は念のため…まぁ使う気は満々であるのだがピストルを一丁と手榴弾をひとつ、それからペットボトルに詰めた海水を持っていった。何があるかわからないし。
それから止血用の包帯だとか。
ローのボディガードにシャクもつれていくことにした。
「じゃあ先にいって様子をうかがってくる」
「わかった」
雪道を歩いて、アジトと思われる建物に近づく。
そこからは下品な笑い声と酒をグラスに注ぐ音が聞こえてきた。バレルズ海賊団と海軍との取引では、膨大な金がバレルズ海賊団に渡るらしい。だとしたらこんな大きく騒ぐのもわかる。ここでまちがいないようだ。
窓からそっとのぞいて間取りを確認。…そんなに広くないみたい。オーケー。
電灯はひーふーみ、それからロウソク。あれをうち落としてからロシーが音なしで実を奪えば、この作戦は完璧だ。あとはドジらなければ。
外に見張りは6人ほど。中に人は…10と少し。まぁ援護すればバレずにいけるだろうな。
(……まっててね、ロー)
ガチャリと重い音を立てる手の中のピストル。ぎゅっとにぎりしめて、空を仰いだ。
あのかなしい少年を救うため。あのこの未来を作るため。
「姉上」
「! ロシー」
なるべく音を立てないようにと慎重に近づいてきたロシーが横に来た。
息は切れていて、腕の中にローはいない。…よし。
「あの電灯を銃で撃って。そうしたら私が窓を思いきりあけるから、さっさと中に入って実を盗むの。…全速力。オーケー?」
「あァ、もちろん」
ガチャン、とロシーの手元の銃が音を立てた。
いくよ、と目線を送る。ぐだぐだしていられない。ドフィより先に、奪わなくては。
一瞬の照準合わせのあと、ーーロシーが引き金を引いた。激しい発砲音と、ガラスの割れる音。
(よし!)
混乱の声に混じって窓を開け、ロシーをまず突っ込んだ。そのあと私も入って、奪うのに邪魔になりそうな人を蹴散らしておく。
ちら、とロシーを盗み見ればーー…はやい。もう実を持っていた男をぶん殴り、オペオペの実を手中に入れていた。
さすがだ。身のこなしを見て、ああ、中佐だもんなぁと感心してしまう。
あんなにちっちゃかったロシーが、と嬉しくなった。こんな状況だけど。
「出るよ!」
「っ、あァ!」
ひそ、と話しかけて、入ってきた窓から再び寒い外へと身を投じた。ふかふかの雪がクッションになって、さっさと起き上がれる。
実は、と確認すれば、しっかりとロシーの手の中に。
思わずガッツポーズをしたくなったけど、まだ早い。まずはローのところへ戻らなくては。
そのときだ。
嫌なピンク色が、私の視界に飛び込んできた。
(ーーヌマンシア・フラミンゴ号!!!)
ドフィの乗る船。それが今まさに、この島に船を寄せてこようとしていた。海軍の船にバレないよう避けているから、気づいているだろう。私たちが裏切ったと。
「…ロシー、走って」
「姉上…!?」
「いいから早く!」
早くローのところへ、と振り向こうとすれば、泣きそうなロシーに腕を掴まれた。
ギリ、とすごい力で掴まれて、思わず顔を歪める。
「いやだ」
「ロシー!」
「いやだ!! もう姉上を置いていくのはいやだ!!!」
ああ、まずいなあ。バレルズ海賊団の人たちが集まってきちゃう。海岸沿いにはドフィ。それにまだ先には見張りの人もいるんだよ?
愛しいわがままだけど、その傷がどんなに深いのか知っているけれど、ーーそれを聞き入れることは、今はできない。
「今は私じゃないでしょ!? ローを助けるために来たんでしょ!!」
「でも…!!」
「お願いロシー!! 姉上のお願いを聞いて! ローを助けて!」
誰か私を卑怯者、ずるいやつ、と罵ってほしい。ロシーの傷を知っていたのに、ローの大切さを知っているから、それを利用して諦めさせようとしてるなんて。
何て最低な姉だろう。
ゾロゾロとアジトの外へと出てきたバレルズ海賊団に、ロシーが冷や汗を垂らしたのを私は見逃さなかった。
「先にいって! 私は大丈夫!」
「っあ、姉上…っ!」
思いきり押して、ロシーをわざと転けさせる。その勢いのままに、下へといけばいい。
見張りもほら、私に引き付けてあるから大丈夫。うまくいく。私は大丈夫。
「ーーーごめんね、ロシー」
涙目で転がっていく弟に、そっと微笑みかけた。