【ONE PIECE】天駆ける竜   作:柚木 彼方

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26.卑怯者と罵ってほしい

まずロシーと、これからの作戦について話し合った。

ドフィは必ず時間通り、ミニオン島にくるだろう。そうして気づく。待機している海兵に。弟が、私が、裏切ったということに。

まぁ裏切ったもクソも、ローを助けたいだけの行動だ。裏切りといわれるのは心外であるが、もうこれは仕方ない。

 

私はもう一人の弟と姉弟喧嘩をすることに決めた。

 

 

「見えた。あれがスワロー島だ。そして、ミニオン島」

 

「ひ~……あ、あれ、おつるさんの船じゃんか…」

 

「あァ」

 

 

とりあえず私とロシー、ローはここで別れる。私は先にバレルズ海賊団のもとへ。ロシーにはローをゆっくりできる安全な場所へ一旦おいてきてもらうことにした。

 

彼らのアジトは実に分かりやすい。

私は念のため…まぁ使う気は満々であるのだがピストルを一丁と手榴弾をひとつ、それからペットボトルに詰めた海水を持っていった。何があるかわからないし。

それから止血用の包帯だとか。

 

ローのボディガードにシャクもつれていくことにした。

 

 

「じゃあ先にいって様子をうかがってくる」

 

「わかった」

 

 

雪道を歩いて、アジトと思われる建物に近づく。

そこからは下品な笑い声と酒をグラスに注ぐ音が聞こえてきた。バレルズ海賊団と海軍との取引では、膨大な金がバレルズ海賊団に渡るらしい。だとしたらこんな大きく騒ぐのもわかる。ここでまちがいないようだ。

 

窓からそっとのぞいて間取りを確認。…そんなに広くないみたい。オーケー。

電灯はひーふーみ、それからロウソク。あれをうち落としてからロシーが音なしで実を奪えば、この作戦は完璧だ。あとはドジらなければ。

 

外に見張りは6人ほど。中に人は…10と少し。まぁ援護すればバレずにいけるだろうな。

 

 

(……まっててね、ロー)

 

 

ガチャリと重い音を立てる手の中のピストル。ぎゅっとにぎりしめて、空を仰いだ。

あのかなしい少年を救うため。あのこの未来を作るため。

 

 

「姉上」

 

「! ロシー」

 

 

なるべく音を立てないようにと慎重に近づいてきたロシーが横に来た。

息は切れていて、腕の中にローはいない。…よし。

 

 

「あの電灯を銃で撃って。そうしたら私が窓を思いきりあけるから、さっさと中に入って実を盗むの。…全速力。オーケー?」

 

「あァ、もちろん」

 

 

ガチャン、とロシーの手元の銃が音を立てた。

いくよ、と目線を送る。ぐだぐだしていられない。ドフィより先に、奪わなくては。

 

一瞬の照準合わせのあと、ーーロシーが引き金を引いた。激しい発砲音と、ガラスの割れる音。

 

 

(よし!)

 

 

混乱の声に混じって窓を開け、ロシーをまず突っ込んだ。そのあと私も入って、奪うのに邪魔になりそうな人を蹴散らしておく。

ちら、とロシーを盗み見ればーー…はやい。もう実を持っていた男をぶん殴り、オペオペの実を手中に入れていた。

 

さすがだ。身のこなしを見て、ああ、中佐だもんなぁと感心してしまう。

あんなにちっちゃかったロシーが、と嬉しくなった。こんな状況だけど。

 

 

「出るよ!」

 

「っ、あァ!」

 

 

ひそ、と話しかけて、入ってきた窓から再び寒い外へと身を投じた。ふかふかの雪がクッションになって、さっさと起き上がれる。

実は、と確認すれば、しっかりとロシーの手の中に。

思わずガッツポーズをしたくなったけど、まだ早い。まずはローのところへ戻らなくては。

 

そのときだ。

嫌なピンク色が、私の視界に飛び込んできた。

 

 

(ーーヌマンシア・フラミンゴ号!!!)

 

 

ドフィの乗る船。それが今まさに、この島に船を寄せてこようとしていた。海軍の船にバレないよう避けているから、気づいているだろう。私たちが裏切ったと。

 

 

「…ロシー、走って」

 

「姉上…!?」

 

「いいから早く!」

 

 

早くローのところへ、と振り向こうとすれば、泣きそうなロシーに腕を掴まれた。

ギリ、とすごい力で掴まれて、思わず顔を歪める。

 

 

「いやだ」

 

「ロシー!」

 

「いやだ!! もう姉上を置いていくのはいやだ!!!」

 

 

ああ、まずいなあ。バレルズ海賊団の人たちが集まってきちゃう。海岸沿いにはドフィ。それにまだ先には見張りの人もいるんだよ?

愛しいわがままだけど、その傷がどんなに深いのか知っているけれど、ーーそれを聞き入れることは、今はできない。

 

 

「今は私じゃないでしょ!? ローを助けるために来たんでしょ!!」

 

「でも…!!」

 

「お願いロシー!! 姉上のお願いを聞いて! ローを助けて!」

 

 

誰か私を卑怯者、ずるいやつ、と罵ってほしい。ロシーの傷を知っていたのに、ローの大切さを知っているから、それを利用して諦めさせようとしてるなんて。

何て最低な姉だろう。

ゾロゾロとアジトの外へと出てきたバレルズ海賊団に、ロシーが冷や汗を垂らしたのを私は見逃さなかった。

 

 

「先にいって! 私は大丈夫!」

 

「っあ、姉上…っ!」

 

 

思いきり押して、ロシーをわざと転けさせる。その勢いのままに、下へといけばいい。

見張りもほら、私に引き付けてあるから大丈夫。うまくいく。私は大丈夫。

 

 

「ーーーごめんね、ロシー」

 

 

涙目で転がっていく弟に、そっと微笑みかけた。

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